多くのヤマハファン待望のニューモデルとしてYZF-R25が国内発売開始されたのは2014年12月。新設計のダイヤモンドタイプフレームに、249ccの排気量を持つ水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載しての登場だった。最高出力は、27kW(36PS)/12,000rpm、最大トルク23N・m(2.3kgf-m)/10,000rpmを発揮。蘇った250フルカウルスポーツクラスの最後発モデルとしてトップレベルの性能を誇っていた。
足回りでも600ccクラスに匹敵するφ41mmのインナーチューブを持つ剛性の高いフロントサスに、リアにはモノクロサスが組み合わされた。余分なクオリティとしてではなく、必要にして十分な路面追従性と乗り心地を両立させるための採用と説明されていた。
なによりも、YZF-Rシリーズ一族の血統を色濃く感じさせるスタイリングが秀逸で、“マスフォワードシルエット”を構成する逆スラントの2眼ヘッドランプや切れ上がったテールなど、YZF-RシリーズのDNAを色濃く持って開発されたニューモデルだった。
YZF-R25に兄貴分、YZF-R3 ABSが登場したのは2015年4月。車体は、YZF-R25とほぼ同一で、エンジンの基本構成も変わらず。YZF-R25のボア66.0mmに対して68.0mmへ拡大し(ストロークは44.1mmと変わらず)、余裕のパワーを生み出す排気量320ccとしている。最高出力は31kW(42PS)/10,750rpm、最大トルクは30N・m(3.0kgf・m)/9,000rpmにそれぞれアップ。メカニズム面での変更は、その他に6速ミッションの各ギア比を再設定したことと、足回り面でも、タイヤを同一サイズながら、対応スピードレンジを「S」からミシュラン製の「H」レンジタイヤへとグレードアップした程度。またYZF-R3では、ABSを標準装備するモデルのみのラインナップとなっていた。
このYZF-R3 ABSと弟分のYZF-R25/R25 ABSだが、車両本体価格で3万円しか違わない(ABSモデル比較)ので、リターンライダーの足慣らしや、初心者の入門スポーツモデルとしてメリットの多い軽二輪版のYZF-R25を取るか、それとも車検のある400クラスとなっても、より本気の走りを目指せるYZF-R3 ABSを取るか、ヤマハファンにとっては、“嬉しい悩み”言うところだろう。
2017年3月には、YZF-R3/YZF-R25シリーズ初のマイナーチェンジを受け、3色のニューグラフィック&カラー設定が行われている。また2018年1月にもカラー&グラフィックの変更により2018年モデルがラインナップされた。カラーは「ディープパープリッシュブルーメタリック C」、「ブラックメタリック X」、「ホワイトメタリック 6」の3色だった。
今回はYZF-R3 ABS初のモデルチェンジといえるもので、新形状のフロントフェアリング&スクリーンの採用をはじめ、新デザインの燃料タンク&タンクカバー、倒立式フロントサス、視認性の高いフル液晶メーター、そしてLEDヘッドランプ、快適ハンドリングに貢献するラジアルタイヤの採用などが行われた。
★YAMAHA ニュースリリースより (2019年5月9日)
扱いやすさと走行性能を追求したスーパースポーツ、レースマシンイメージを強調
「YZF-R3 ABS」をマイナーチェンジ
ヤマハ発動機株式会社は、水冷・4 ストローク・DOHC・直列2気筒・4バルブ・320cm3エンジンを搭載した「YZF-R3 ABS」をマイナーチェンジし、6月10日より発売します。
「YZF-R3 ABS」は、「毎日乗れるスーパーバイク」をコンセプトに開発、同コンセプトの「YZF-R25 ABS」同様に、日常的な扱いやすさを確保しながらも、320cm3エンジンのゆとりあるパワーで爽快な走行が楽しめるモデルです。
2019年モデルは、レースマシンイメージのスタイリングや定評ある走行性能に磨きを掛けました。
主な特徴は、MotoGP マシン「YZR-M1」をシンボルとする新しいデザインを採用するとともに、1)エアロダイナミクスを追求したフロントカウルとスクリーン、2)乗りやすさとサーキットでの扱いやすさを両立した新デザインのタンク&タンクカバー、3)旋回時など良好な接地感に寄与する倒立式フロントサスペンション、4)快適でスポーティな走りにフィットするライディングポジション、5)視認性の高いフル液晶メーター、6)LED ヘッドランプ採用のフロントフェイス、7)軽快なハンドリングに貢献するラジアルタ
イヤなどです。
なお、製造はグループ会社PT.Yamaha Indonesia Motor Manufacturing(YIMM)が行います。
- <名称>
- 「YZF-R3 ABS」
- <発売日>
- 2019年6月10日
- <メーカー希望小売価格>
- 675,000円(本体価格625,000円/消費税50,000円)
- ※メーカー希望小売価格(リサイクル費用含む)には、保険料、税金(除く消費税)、登録に伴う諸費用は含まれていません。
- <カラーリング>
- ・ディープパープリッシュブルーメタリック C(ブルー)
- ・マットブラック 2(マットブラック)
- ・マットディープレッドメタリック(マットレッド)
- <販売計画>
- YZF-R3 ABS 6,000台(シリーズ合計/年間、国内)
- ※YZF-R25/YZF-R25 ABSとの合計
- 【主な特徴】
- 1)エアロダイナミクスを追求したフロントカウルとスクリーン
- フロントカウルとスクリーンは、空力特性の向上に重点を置き開発、フロントカウルは、“クロスレイヤード・ウイング”と呼ぶ立体的な構造で、走行風を後方に逃がすことによる空気抵抗の低減と効果的にエンジンを冷却する機能的なデザインを採用。スクリーン形状は車体の周りの空気を整流する効果があり、それぞれの優れた空力特性が空気抵抗によるライダーの負担を減らします。
- 2)乗りやすさとサーキットでの扱いやすさを両立した新デザインのタンク&タン
クカバー - ハンドル位置を22mm、タンクトップ位置を20mm下げ(従来比)、サーキットの直線で前傾姿勢を取りやすく、旋回時には高いニーグリップ性を発揮します。さらにタンクの左右最大幅31.4mm広げており、燃料タンクの容量は従来同様14Lを確保しています。
- 3)旋回時など良好な接地感に寄与する倒立式フロントサスペンション
- 37mm径インナーチューブの倒立式フロントサスペンションを採用、倒立式のメリットである優れた剛性バランスを活かすために減衰力とバネレートの最適化を図り、旋回や制動時などの良好なフロント接地感に繋げました。また減衰力発生機構はカートリッジ式とし、伸側・圧側それぞれの最適化が可能となり、快適性とスポーツ性の良好なバランスを図っています。
- 4)快適でスポーティな走りにフィットするライディングポジション
- ハンドルクラウン下にマウントしたセパレートハンドルは、スポーティなスタイリングでありながら日常の扱いやすさと快適性に配慮しました。前モデルと同様にシートの高さを低く抑えたことで無理のないライディングポジションを実現し、ツーリング時のライダーの疲労感を緩和します。
- 5)視認性の高いフル液晶メーター
- メーターは、新開発の視認性の高いフル液晶のディスプレイを採用。高精細なバーグラフタイプのタコメーターによりアクセルワークを視覚的に楽しむことができます。また、スピードメーターや燃料計だけでなくシフトタイミングインジケーターなどの情報をマルチに表示し、視認性の高さとレーシングイメージを両立しています。
- 6)精悍なフロントフェイスを演出するLEDヘッドランプ
- 歴代Rシリーズと同様の二眼ヘッドランプにLEDを採用しました。フロントフェイスはLED二眼ヘッドランプと新造形をバランスさせて低い位置から睨みつける表情をもたせ、サーキットでの緊張感や走りへの闘志を表現しました。さらに左右ヘッドランプの中央には「YZR-M1」のアイデンティティであるセンターダクトを採用しMotoGPマシン「YZR-M1」イメージを強調しています。
- 7)軽快なハンドリングに貢献するラジアルタイヤ
- 剛性に優れ、転がり抵抗が少ないラジアルタイヤ※(フロント110mm幅、リア140mm幅)を採用し、ハンドリングの軽快さと快適な乗り心地に貢献しています。
- ※タイヤの骨格を形成する部材のカーカスを中心から放射線状(ラジアル)に配置した構造のタイヤ
★主要諸元
車名型式 | 2BL-RH13J | |
---|---|---|
YZF-R3 ABS | ||
発売日 | 2019年6月10日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.090×0.730×1.140 | |
軸距(m) | 1.380 | |
最低地上高(m) | 0.160 | |
シート高(m) | 0.780 | |
車両重量(kg) | 170 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 41.3(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
27.6(WMTCモード値 クラス3、サブクラス3-2 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | H405E | |
水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 320 | |
内径×行程(mm) | 68.0×44.1 | |
圧縮比 | 11.2 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 31[42]/10,750 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 29[3.0]/9,000 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | T.C.I.(トランジスタ式) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ | |
潤滑油容量(L) | 2.4 | |
燃料タンク容量(L) | 14 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.500 |
2速 | 1.823 | |
3速 | 1.347 | |
4速 | 1.086 | |
5速 | 0.920 | |
6速 | 0.800 | |
変速比 | 3.043/3.071 | |
キャスター(度) | 25°00′ | |
トレール(mm) | 95 | |
タイヤサイズ | 前 | 110/70R17M/C 54H |
後 | 140/70-17M/C 66H | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式シングルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | スイングアーム | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
※3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
- 「YZF-R3 ABS」のフィーチャー ★新フィーチャー
- ★視認性の高いフル液晶メーター
- ★クロスレイヤード・ウイング構造カウル
- ★エアロダイナミクスに基づくスクリーン
- ★LEDヘッドランプ、ポジションランプ
- ★冷却性に貢献するセンターエアダクト
- ★37mm径インナーチューブの倒立式フロントサスペンション
- ★ブラックアルマイト処理のトップキャップ
- ★ラジアルタイヤ
- ・アルミ鋳造10本スポークホイール
- ・前輪フローティングディスクブレーキ
- ・軽量鋼管製ダイヤモンドフレーム
- ・水冷4ストロークDOHC直列2気筒4バルブFI エンジン
- ★新デザインアルミ鋳造ハンドルクラウン
- ★ハザードランプ
- ★従来比22mmダウンのハンドル位置
- ★新デザインタンク&タンクカバー
- ・LED テールランプ
- ・780mmのシート高
- ・モノクロスサスペンション
- ・ロングリアアーム
- ・ショートマフラー
- ・冷却水配管のシンプル設計