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試乗・解説

もう特別じゃないスーパーチャージャー Kawasaki Z H2
量産市販車初のスーパーチャージドエンジンを搭載した
カワサキNinja H2、Ninja H2 SX。
けれど、その2台はやっぱり見たとおりのモンスターで
おいそれと近づけるモデルではなかった。
そして第3世代のH2として登場したのが
カワサキスポーツバイクの象徴「Z」を車名に抱くZ H2だ。
この超ド級の注目モデル登場に
めずらしく2回に分けて詳細解説からの試乗をお送りします!
■レポート:中村浩史 ■撮影:松川 忍 ■協力:カワサキモータースジャパン https://www.kawasaki-motors.com/

東京モーターショーで注目を集めたのは!

 2019年の東京モーターショー。カワサキブースでひときわ注目を集めたのは、久々に復活する4気筒250ccモデル、Ninja ZX-25Rだったでしょう。なにせ、2008年にNinja250Rで250ccスポーツバイクカテゴリーを復活させた立役者・カワサキが、今度は4気筒エンジンを、約20年ぶりに復活させたんだから!
 けれど、私はもう一台のモンスターが気になって気になって。それが、Newスーパーチャージドモンスター・Z H2。Ninja H2、Ninja H2-SXに続く、3世代目のスーパーチャージャーモデルだ。
 メインステージ上にNinja ZX-25Rとともにディスプレイされていたんだけれど、パッと見、ごく普通のストリートバイクにも見えたためか、Z H2はちょっと地味~に壇上にいたんです。
「新しいZ? え、スーパーチャージャーなんだ」って。

 
 スーパーチャージャーといえば、これまで発売されたNinja H2とH2-SXは、モデルの特別感を強調するためか、ちょっとスゴすぎ! 見た目からしてモンスター感がマンマンでした。そこで、スーパーチャージド第3世代であるZ H2となると、もうひと回りコンパクトで、もう少し身近に感じることができそうなスーパーチャージドなんです。
 スタイリングは従来のH2シリーズの2台よりグッとストリートバイクに近く、ヘッドライトカウルこそ装着しているものの、全体的にはネイキッドスタイル。カワサキのデザインフィロソフィ「SUGOMI」(=凄み)デザインです。

 ちなみにサイズと重量で言うと
■Ninja H2 全長×全幅×全高:2085×770×1125mm ホイールベース:1455mm 車両重量:238kg
■Ninja H2-SX 全長×全幅×全高:2135×775×1260mm ホイールベース:1480mm 車両重量:260kg
■Z H2 全長×全幅×全高:2085×810×1130mm ホイールベース:1455mm 車両重量:240kg
 数字的にはわずかだけれど、Z H2はグッとコンパクト、数字以上にボディサイズの差を感じます。古い世代のイメージで言うと、ハイスピードクルーザーH2-SXがボエジャー、H2はZZ-R1400で、Z H2が900ニンジャ、みたいなイメージ。これは、登場した時の衝撃度も上乗せされているんだろうなぁ、と思います。

 
 そのZ H2は、いわばスーパーチャージドシリーズのネイキッドモデル。ヘッドライトカウルはあるけれど、やはりH2やH2-SXよりひと回りコンパクトに見えて、従来モデルではZ1000やZ900/650に雰囲気が似通っています。
 もちろん、エンジン周りの主張感はハンパなくて、メインフレーム内はスーパーチャージドエンジンでギッシリ。この「タダモノじゃない」感が、スーパーチャージド3兄弟だけが持つ特徴なんです。

 その第3世代スーパーチャージドエンジンは、Ninja H2-SXをベースにバルブタイミングを変更して「やや」ストリート向けにリファイン。それでも最高出力は200ps! これでも、ラム圧加給を廃止して、200psに「抑えた」パワースペックです。
 フレームはZ H2専用設計で、H2-SXよりもややコンパクト。サイズの数字的にはH2に近いけれど、やっぱりZ H2の方がひと回り小さく感じます。3モデルともトレリス構造のフレームなんだけれど、構造や剛性コントロールは3車専用設定。ここで、モデルごとの個性を引き出しているのです。

 サスペンションは、フロントフォークにSHOWA製SFF(セパレートファンクション=片方にダンパー機能、片方にスプリング機能を持たせたフォーク)-BP(ビッグピストン)フォークに、リアにはリンク式ユニトラックサスペンションを採用。このあたりはカワサキビッグバイクで定評ある組み合わせ。決して奇をてらったモデルでないのがわかります。

 見た目からしてモノスゴいNinja H2&H2 SX。そして見た目は普通のネイキッドスポーツなのに、実は200psのスーパーチャージャーを抱くZ H2。さすがにスーパーチャージドも第3世代まで展開されてきただけに、このZ H2の注目度はやや低め。
 しかし、そんなことも吹き飛ばすようなとんでもないバイクでした、これ!
<後半につづく>

 

φ320mmローターにブレンボ製モノブロックキャリパーをラジアルマウント。キャリパーはブレンボM4.32というモデルで、鋳造アルミブロックからの削り出しワンピースで、世界最高峰の逸品。超ド級加速に絶対必要なパーツだ。フロントフォークはSHOWA製SFF-BP、本文中にあるシステムで、伸び、縮みともビッグピストンの作動性の良さが印象的だった。

 

Z H2に採用されたスーパーチャージャーは、「バランス型」と呼ばれる、ハイパワーだけを狙わず、出力と好燃費を両立する仕様。それでも最高出力は200ps。ちなみにベースエンジンを同一のままパワーを追求した「公道走行不可」モデルNinja H2Rはラムエア加圧時に最高出力326psをマーク!

 

スーパーチャージドエンジンのメリットは、もちろんビッグパワーと広いパワーバンド。4000rpmほどから過給が効き始めるのを実感でき、その伸びが10000回転を越えても続く。
いち早く新排出ガス規制EURO5に対応した排気系。排気チャンバーを廃止し、大型触媒と長い集合部を確保。サイレンサーも、Ninja H2、Ninja H2SXと違う別デザインでスッキリ。サイレンサーエンドに別体のキャップピースを装着する。

 

H2シリーズ初の両持ちスイングアームを採用。形状はNinja ZX-10Rにも似るアルミ鋳造品。タイヤはピレリディアブロロッソⅢで、ディアブロシリーズ中、ドライグリップだけでなくウェットグリップや耐摩耗性がバランスされたタイヤ。
リアサスもSHOWA。Ninja ZX-10Rなどで使用しているホリゾンタルマウントではなく、通常のボトムリンク式リアサス。プリロード調整が可能で、ホイールトラベルは134mm。ちなみにNinja ZX-10Rは114mm、H2は135mm、SXは139mm。

 

ヘッドライトハウジングを持つネイキッドスタイルは、Z900やZ650とイメージを共通とするSUGOMIデザイン。ヘッドライト上センターにあるのは「川重」(=川崎重工業)マークで、スーパーチャージドモデルにしか装着が許されていない。
ヘッドライト、テールランプ、ウィンカーすべてにLEDを採用。テールランプは、ブレーキランプを点灯させると「Z」文字が浮かび上がる仕掛け。タンデムステップガードに「カワサキの良心」荷かけフックを装備している。

 

燃料タンクカバー内部にスーパーチャージャーの吸気経路をもつため、上面を盛り上げるスタイルとし、ガソリン容量19Lを確保。写真のタンクパッド(2959円)/ニーグリップパッド(6323円)はカワサキ純正オプション用品。
キーロックで取り外しできるタンデムシート部と、シートカウル内のレバーを使用して取り外せるライダー側シート。国内仕様はタンデムシート下にETC車載器を標準装備。ライダーシート下にはバッテリーが収まる。

 
 

左タンデムステップにヘルメットホルダーを標準装備。Z H2の純正オプションにはこのほか、DC電源ソケット(7907円)、USB電源ソケット(1万1392円)、グリップヒーター(3万1350円)などの親切装備が用意されている。
2500rpm以上で作動するKQS=カワサキクイックシフターを標準装備。クラッチレバー操作なしでシフトアップ&ダウンが可能で、スポーツライディング時だけでなく、ツーリングや街乗り時にも一度味わったら止められない快適装備だ。

 

明暗表示で白黒反転を自動表示するTFT液晶メーター。ハンドルスイッチで表示項目を切り替えでき、デジタルスピード、バーグラフタコメーター、ギアポジションと同時に、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、残ガス走行可能距離などを表示。画面左側、写真の「N」表示の横にはブースト計やABS作動状況などを表示。メーター横に電源供給ソケットあり。

 

スマホとZ H2をBluetooth接続できる専用アプリ「RIDEOLOGY」(=ライデオロジー)に対応。スマホにオド&ツイントリップ、燃料計や燃費、最大バンク角、その日に走った走行ログ軌跡が表示されるほか、パワーモードや電子制御サス搭載車の場合、そのセッティングもスマホ上で行なうことができる。写真は地図表示とオド&トリップ、燃料計を表示中。
セミアップハンドルによる自然なポジションが取れるZ H2。やはりH2やH2 SXよりも「リラックスしたポジションが取れるのにスーパーチャージャー!」感がスゴい。上位は起きたポジションで、身長175cmあれば両カカトが接地しそう。

 

各種設定が行なえる左スイッチボタン。モードボタン上でオド&ツイントリップ、最大バンク角を、下でブレーキ、ブースト、スロットル開度を表示。表示を変えて瞬間&平均燃費、残ガス走行距離、平均速度、走行時間などを表示する。

 

■Kawasaki Z H2 主要諸元
●全長×全幅×全高:2,085×810×1,130mm、ホイールベース:1,455mm、シート高:830mm、最低地上高:140mm、車両重量:240kg
●エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、排気量:998cm3、ボア×ストローク:76.0×55.0mm、最高出力:147kW(200PS)/11,000rpm、最大トルク:137N・m(14.0kgf-m)/8,500rpm、燃料供給装置:電子制御燃料噴射、遠心式スーパーチャージャー、燃料タンク容量:19L
●タイヤサイズ:前120/70ZR17 M/C 58W、後190/55ZR17 M/C 75W、ブレーキ形式:前φ320mm油圧式ダブルディスク、後φ260mm油圧式シングルディスク、フレーム形式:トレリス
●希望小売価格:1,892,000円



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2020/05/29掲載