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試乗

DUCATI Panigale V4/V4S Panigale V2 『夢のオートバイは まったく普通なツーリングバイク 』
 ドゥカティ・パニガーレと言えば、ドゥカティの、いや世界トップカテゴリーのスーパースポーツ。ワールドスーパーバイク選手権(=WSBK)で常にチャンピオン争いをするブランドのフラッグシップであり、イタリアンメーカーが世界制覇を狙い続けるモデルだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:南 孝幸 ■協力:Ducati Japan

圧倒されるV4、けれど意外なスポーツバイク

 ドゥカティと言えばLツイン(=普通に言うところのV型2気筒エンジン搭載車ってこと)だけれど、Lツイン・パニガーレ=パニガーレV2(あれ、車名ではVって言っちゃうんだ・笑)とともに、2018年からはとうとうV型4気筒エンジンを搭載したパニガーレV4もデビュー。2007年に、世界限定1500台だけ発売された、あのMotoGPマシンレプリカ、デスモセディチRR以来のV型4気筒エンジンモデルだ。

 これ、とんでもないことですよ。ドゥカティのトップモデルは、そのままレーシングマシンだって歴史があって、従来のパニガーレは、即WSBマシンと同等、という歴史を持っているほど。さらに言えばV4は、ドゥカティのMotoGPマシンであるデスモセディチGPのフルレプリカとも言われていて、本物のロードゴーイングレーサーってことです。
 リアル・レプリカ――。この名前がふさわしいのは、ホンダが2015年に発売した「発売価格2190万円」のRC213V-Sと、このパニガーレV4だけ。もちろん、パニガーレV4は213V-Sよりもいくらか公道走行寄りの仕様となっているからこそ、ニセンマンエンもしないのだけれど。
 

カウルサイドにウィングレットが装着されているのがV4。ハンドルがライダーに近く、低い。

 

 そのV4に初めて乗った時、またがって、スロットルをあおって、クラッチミートして、本当に走り出した瞬間に、本当に、本当に感動したのを覚えている。RC213V-Sに乗った時も、もちろん深々と感動したんだけれど、パニガーレV4の時の感動はまた違っていて、なんというか猛烈に普通だったのだ。
 V4ならではのブ厚いトルク、連続するビート、もちろん加速もものすごく、スロットルへのツキが尋常じゃないほど鋭い! それでも、スロットル開度が常識的ならば、とても手に負えないと恐れおののくほどではなく、もうすばらしく馬鹿でかいトルクが完全にしつけられている、そんなフィーリングだった。
 デスモセディチRRにも(少しだけ)乗ったことがあるけれど、あれはもうケモノ感がすごくて、ガウガウジャラジャラガウガウジャラジャラと、きちんとスムーズに走らせることすら難しかったからね。これがきっとインジェクションの進化と電子制御の恩恵なのだと思う。
 けれどパニガーレV4は本当にスロットル微開からトルクが湧き出て、スロットルを1mm開けると1mm分だけトルクが湧き出てくるような、そんなしつけのいいエンジンだった。

 ただ、ハンドリングはヘタクソをきちんと拒絶していた。それなりに曲がるなら何の問題もなくダラーッと曲がるけれど、これをもっともっとと追及していくと、きちんとブレーキングして、フロントを下げて、タイヤをツブしてコーナーに進入、リアタイヤにしっかり荷重を掛けながら立ち上がっていくような走り方で、初めて真価を発揮するようなハンドリング。まさにヘタクソにはそれなりに、上手い人にはとんでもなく高いレベルで応えてくれるようなバイクだったのだ。
 2020年モデルのV4は、そこの印象が大きく変わっていた。試乗したV4Sは電子制御サスペンションを採用していて、乗り心地もいくらかソフトに感じる仕様。ペースを少しずつ上げていくと、そのペースアップに応じてフットワークを身軽にしていく感じで、どんな乗り方をしても身軽に、シャープに、コーナーをくりんくりん曲がっていく。
 これが、メインフレームに大きなホールを空けて剛性コントロールを施した結果なのか、心なしか上がった車高によるものなのかはサッパリわからないけれど、乗り味はハッキリと優しい。もちろん、ペースを上げていくと、より高いレベルで応えてくれる片鱗は見せてくれる。
 

従来のLツインエンジン車とハッキリ違うしっとりとしたハンドリングのV4。

 
 パワーモード、というか電子制御サスとエンジンパワー特性の統合設定なので、これはもはやランニングモードですね。このランニングモードも、ストリート→スポーツ→レースと3段階、プラス各設定を自由数値に組み合わせられるマニュアルモードがあるんだけれど、これがもう見事にペースに合わせてくれて、街乗りではストリートモードで、サスペンションの減衰さえソフトにセットしてくれて、エンジンパワーも穏やかにしてくれるし、スポーツモードではサスの動きがピシッと安定してきてパワーが出たかと思うと、ワインディングではスポーツモードがすごく快適で楽しかった! レースモードはもう、先代のV4で感じた手強さ、まだまだ底がどのへんなのかさえ分からないパフォーマンスを味わせてくれる。
 もちろん、MotoGPマシン譲りのウィングレットの効果なんかわかりっこない。これはトップスピードが200km/hを超えるくらいの速度域で、しっとりとフロントを路面に押し付けてくれるらしいんだけれどね。

 とはいえ、このV4Sでワインディングを往復、その道中は完全にツーリングなんだけれど、ここでも快適に走ることができたのが意外だった。もちろんランニングモードはストリートにしていれば、渋滞を含む一般道、高速道路をクルージングするのすら平気だった。もちろん、この強烈なライディングポジションで腰も肩も首も悲鳴を上げていたけれど、6速4500回転くらいで100km/hで流すときも、エンジン回転を3000回転以下くらいまで落としても、エンジンはまったく快適に、振動なくスムーズに回ってくれる。
 V4は、この強烈なライディングポジションさえ何とかなれば(これは個人の好みだけどね)、素晴らしくスムーズなエンジン特性、快適なサスペンション特性を持つ、大パワーを隠し持つツーリングバイクとしても成立するなぁ、という感じだった。ハッ、それが近々に登場するストリートファイターV4なのか!
 

左V4、右V2。ウィングレットの有無とマフラー取り出し、リアサスのマウントがパッと見の相違点だ。

 

V4のポジション。ライダーの身長は178cm。

 

V2のポジション。ライダーの身長は178cm。

 

V2は従来のドゥカティLツインらしいハンドリング。スパッと斬れてシャープにグリングリン曲がる!

乗り比べると、なんと扱いやすいスーパーバイク

 同時に試乗したパニガーレV2は、従来「ミドルパニガーレ」と呼ばれていた848→959パニガーレの最新モデル。排気量はそのままで車名をパニガーレV2と変更したもので、従来の1199→1299パニガーレがVツインエンジンから1103ccのV4エンジンにとってかわられ、現在のパニガーレラインアップはV4とV2、ということになったものだ。
 従来のミドルパニガーレからの変更は、スタイリングがV4そっくりになって、大きくはスイングアームが両持ちから片持ちになったこと。やはり、V4よりもスリムなV2は、この日の試乗で同時に乗り比べたからでもあるだろうけれど、V4よりずっとずっとライダーフレンドリーだ。これは、1199→1299パニガーレに対する959パニガーレの印象と同じこと。

 これも比較試乗しての印象だけれど、やっぱりV2は身のこなしは軽快! 車重は実はV2の方が数kg重いんだけれど、フットワークが明らかに軽い。V2もライディングモードがストリート→スポーツ→レースの3段階なんだけれど、フルパワーのレースモードで走っても、足周りの動かなさ(=つまりはライダーがきちんと荷重を掛けられていないってこと)は感じるにせよ、ドカンとライダーを振り落としてしまいそうなトルクもなく、なんとか扱えるパワーで、操る楽しさだって感じられてくる。
 

ドゥカティスーパースポーツLツイン史上、最も高速クルージングがラクで快適かも。

 
 V4に乗ると「うわぁ、スゴいパワー……だけど、そんなに開け開けで行かなくても普通に走るなぁ」って感想を持つし、そのままV2に乗ると「うおぉぉ、パワー湧き出てくる!でもなんとか使えるぅ!」って感じ。
 パワーはもちろん強大なんだけれど、スロットルの開け具合に合わせて徐々にトルクが立ち上がってくるパワーフィーリングは、750ccクラスの4気筒エンジンというか、伸び感が気持ちいい! スロットルを開けられれば、きちんとサスペンションも動かすことができるし、これはワインディングが楽しい! 150psなんて使い切れるはずもないけれど、600ccの4気筒モデルというか、そんなフィーリングでバイクをコントロールすることができるのだ。

 パニガーレは、本当に特別なバイクだと思う。V4もV2も、この強烈なライディングポジション、荷物も積めなければタンデムも出来ない姿は走る用途を限定するし、街乗り、ツーリングでは他に素晴らしいバイクがたくさんある。ドゥカティではSupersport Sこそ「まともな」スポーツバイクだと思う気持ちに変わりはないけれど、それでもパニガーレの強烈な魅力にはクラクラしてしまうものだ。
 ドゥカティを選ぶなら、どうせならパニガーレ、どうせならV4に! そんな気持ちも、わかるなぁ。
 ちなみに僕が選ぶなら、やっぱり最高峰モデルのV4Sだろうし、それでもきちんとコントロールできる、楽しく走れるのはV2だなぁ、と思う。サーキットを走ったって、鈴鹿やもてぎならV4で走る私に追いつけないだろうけれど、筑波ならV2で走る私の方が速いだろうなぁ――そんなニヨニヨとした妄想が止まらないのがパニガーレの魔力なのだ。
(試乗・文:中村浩史)

V4はザックス製、V4Sはオーリンズ製スマートEC(=電子制御)サスペンションを採用。リザーバータンク根元にコードが連結されているのが電子制御サスペンションの判別点だ。V2は959から引き続き、サイドマウント式リアサスを採用。ザックス製モノショックはフルアジャスタブルで、サイドマウントのおかげで調整がしやすかった。

 

どちらも片持ちスイングアームを採用するパニガーレBROS。タイヤはV4Sがピレリ・ディアブロスーパーコルサSP、V2がディアブロロッソコルサⅡを装着。ホイールはV4がマルケジーニ製アルミ鍛造品(V4Sは3本スポーク)を採用。写真のように、V4は車体下のショートマフラーが左右に振り分けられているのがわかる。

 

V4とV2はショーワ製BPF(ビッグピストンフォーク)を、写真のV4Sはオーリオンズ製スマートECフォークを採用。いずれもプリロード/伸び&圧側減衰力を調整できるフルアジャスタブルだ。ブレーキはV4/V4Sがブレンボ製4ピストンキャリパーとφ330mmローターを、V2はφ320mmローターにV4より1グレード落ちるキャリパーを装備。

 

フューエルタンクはV4が16L、V2が17L。後方シリンダーがあるV4は、タンクレイアウトにも制約が多いのだ。ちなみに今回の試乗の参考燃費は、ツーリング用途で、V2が約20km/L、V4Sが約18km/Lだったけれど、これは乗り方もあるので参考程度に。ちなみにV4Sでワインディングを走ると13km/Lほどだった。

 

V2はタンデムシートつきのビポスト、V4/V4Sはひとり乗り専用のモノポスト仕様。もちろんタンデムシートに快適性などなく、あくまでも「ついているだけ」がドゥカティらしい。ヨーロッパでは、タンデムシート付きのオートバイでないと、奥様からの購入許可が下りないらしく、その対策ともいわれている。テールカウル内にタンデムベルトがある。

 

同じ顔つきのV2とV4Sだが、このV4Sは、従来はMotoGPマシンとV4Rにだけ装着が許されていたウィングレットを装備している。写真はどちらもハイビーム状態で、ヘッドライト上部にはまゆ状DR(=デイタイムランニング)ライトが備わる。ヘッドライト&テールライトはフルLEDライトで、シートカウルが貫通式なのが見える。

 

マフラーは、アンダーカウルと一体化したような左右2本出しのV4に対し、V2はサイレンサーエンドキャップが見える右一本出し。左の3×3本スポークキャストはV4Sで、V4はV2と同デザインのホイールを採用。V4は新たにスイングアームタレ角がつけられ、バイクの重心が上がり、ハンドリングに軽快感を出しているという。

 

カウルのカッティングも微妙に違う両車。やはりV4の発熱量は多かったが、予想したほどではなく、真夏の都内の渋滞につかまるような状況以外ならエンジン冷却も問題なさそうだった。V4はメインフレームのサイドに剛性コントロールのためのホールが空けられ、WSBワークスマシン同様の剛性値としているようだ。

 

コントロールスイッチが多いのもやはりV4の方。いずれも6軸IMUを搭載して走行中の姿勢を感知し、コーナリングABS、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、エンジンブレーキコントロールを設定可能。路面コンディションや好みでライディングモードも設定でき、V4Sには電子制御サスペンションも装備される。

 

フォークトップに電子配線が連結されているのが電子制御サスペンションを装備したV4Sの証。V2にはショーワBPF(=ビッグピストンフォーク)が採用され、特に低速域でのサスペンションの動きよさが印象的だった。プリロード、伸&圧側減衰力調整は、V2とV4は工具を使用して調整、V4Sは電子制御のため走行モードに応じて自動設定される。

 

メーターはどちらもTFT液晶ディスプレイで、V4Sがややサイズが大きい。各種電子制御の設定状況の表示はもちろん、オド&ツイントリップ、瞬間&平均燃費、外気温やランニングタイム、航続可能距離などありとあらゆる情報が表示される。メーター本体に切り替えボタンなどがなく、すべてファンクション切り替えをハンドルスイッチで出来るのは秀逸。

 

●PANIGALE V4〈PANIGALE V4S〉
排気量:1,103cc
最大出力:157.5kW(214ps)/13,000rpm
最高トルク:124.0Nm(12.6kgm)/10,000rpm
シート高:835mm
フロント・サスペンション:ショーワ製43mm径BPFフォーク〈オーリンズ製43mm径NIX30、オーリンズ製スマートEC2.0イベントベース・モード付〉
リア・サスペンション:ザックス製ショック〈オーリンズ製TTX36、オーリンズ製スマートEC2.0イベントベース・モード付
ホイール:アルミニウム合金鋳造ホイール〈マルケジーニ製アルミニウム鍛造ホイール〉
乾燥重量:175kg〈174㎏〉
車両重量:198kg〈195kg〉
価格:2,772,000円〈3,442,000円〉
●PANIGALE V2
排気量:955cc
最大出力:114kW(155ps)/10,750rpm
最高トルク:104.0Nm(10.6kgm)/9,000rpm
シート高:840mm
フロント・サスペンション:ショーワ製43mm径BPFフォーク
リア・サスペンション:ザックス製フルアジャスタブルショック、アルミニウム製片持ちスイングアーム
ホイール:軽合金5本スポーク、前3.50-17、後5.50-17
乾燥重量:176kg
車両重量:200kg
価格:2,250,000円


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2020/05/04掲載