Facebookページ
Twitter
Youtube

エンタメ

「砂漠の怪鳥」が復活した! SUZUKI V-STROM 1050 / XT
 EICMA 2019で発表された新型のV-STROM 1050 / XTが日本国内でも4月24日から発売された。大きな特徴は、砂漠を駆け抜けたスズキの伝説的スタイルの復活と、大きく進化した電子制御だ。
 個性を強めながら、よりアドベンチャーらしい装備も増えてライバルに見劣りしない仕上がりとなった。その気になる進化した部分などを詳しく解説する。
 パリ・ダカールラリーを走ったワークスマシンを彷彿とさせるカラーリングは当時を知る人の胸を熱くさせる。XTにはこの2色の他にグラススパークルブラックもあり全3色だ。
■取材・文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗 ■協力:SUZUKI https://www1.suzuki.co.jp/motor/

 

パリ・ダカールレーサー譲りの往年のスタイルを彷彿とさせる。

 新型V-STROM 1050/XTは、V-STROM 1000シリーズからフレームやエンジンを引き継ぎながらも大幅に変わった。一目瞭然なのが、’80年代に砂漠を駆け抜けたワークスレーサー、「砂漠の怪鳥」とも言われたDR-Zのイメージを色濃く感じるスタイリングだろう。当時大きな話題となった燃料タンク、シュラウドから前に伸びたフロントフェンダーと一体となった今では定番となっているいわゆる“クチバシ”の先駆だった。旧1000では縦長のバルブ式の異型ヘッドランプだったけれど、新1050では昨年発売された新型KATANAと同じLEDでスクエアに近いカタチのものを採用し、それを収める黒いカバーの形状との組み合わせでまさにDR-Z、DR-BIGという雰囲気を醸し出す。それもそのはず、スタイリングを担当したのはDR-Z、DR-BIGにも携わったデザイナーだということ。

 クチバシスタイリングでもV-STROM 1000は各要素を上に重ねていったような造形だったが、新型はディテールにこだわりながらも、シンプルでわかりやすい一体感。実車を見ると、テールまでつながった伸びやかプロポーションで存在感を高めている。ここで紹介するワイヤスポークホイールで装備が豪華なV-STROM 1050 XTの黄色と白赤のモデルは、その往年のパリ・ダカールラリーレーサーを彷彿とさせるヘリテージスペシャルカラーで、昔を知っている世代は思わずニヤリとしてしまう。シートに腰をかけると、ライダーの視線に入るボリュームのある外装から大柄に思えるかもしれないが、実際は股下のボディに太い印象はなく、ニーグリップもぴったりフィットする。
 

 

進化した電子制御で安定した走りと多機能を手に入れた。

 ’90年代後半に誕生して進化と熟成を重ねてきた水冷1,036cm3 DOHC4バルブV型2気筒エンジンは、理論上一時振動をゼロにできる90°のバンク角。車名は1050になっているが、これまでのV-STROM 1000と同じ排気量で、最高出力は73kW〈99PS〉/8,000rpmから78kW〈106PS〉/8,500rpmに増えた。最大トルクは100N・m〈10.2kgf・m〉/4,000rpmから99N・m〈10.1kgf・m〉/6,000rpmに。2020年12月から適用される環境規制、EURO5もクリア。

 エンジン周りで重要なポイントは、これまでワイヤーで物理的にコントロールしていたスロットルバルブが、電子制御スロットルに変わったことだ。エンジンを制御するコンピューターが速度や回転数など各部をセンサリング。ライダーのスロットルグリップ操作、意思を尊重しながら滑らかに走れるように制御が入る。エンジンが効率よく回るようにして燃費を良くするのみならず、より幅広い運転技量のライダーが気持ちよくイージーに乗れるように縁の下の力持ちとしても働いてくれる。この電子制御スロットル化によって、以前の1000にはなかった、エンジン制御マップを任意に切り替えられる3段階のドライブモード(SDMS)が加わった。

 さらにIMU(慣性計測装置)が前の5軸から6軸になって、車体が上下に動くピッチ、タイヤの接地面を軸に左右に動くロール、車体が水平に回転する動きのヨーの角度だけでなく、3つの動きの加速度も検出。これによってより細かく車両の動きがわかるようになり、電子制御スロットル化に伴うドライブモードも含めたS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)のメニューは豊富になった。極低回転域を扱いやすくするローRPMアシスト、3段階+OFFのトラクションコントロールシステム、ボタンを1度押すだけでエンジンが始動するまでセルモーターが回るスズキイージースタートシステムといった、スタンダード版と言えるV-STROM 1050と共通の機能に加えて、このXTは、その6軸IMUを使ったもっと進んだ電子制御になっている。

キャストホイールのスタンダードモデルとワイヤースポークホイールのXTの差別化がより明確に。

 それは1000 XTにはなかったクルーズコントロールシステムの導入。上り坂停止からの発進で車体が後退するのを抑制するヒルホールドコントロールシステムは、特に足着きに不安があったり、車体を支える筋力に不安のある小柄なライダーにとってありがたい。ブレーキをかけた時の減速度を学習して、タンデムや荷物の積載などにより減速度が変化した場合にABSユニットが連動し、ブレーキの効きを補正するロードディペンデントコントロールシステムは、重量が増しても、いつもと同じ感覚に近づけた減速にしてくれるもの。スロープディペンデントコントロールシステムは、急な下り坂でもABSの制御が入り安定して下れる機能。ABSは車体のリーンアングルに合わせて働くモーショントラックブレーキシステムだ。

 V-STROM 1050になくてV-STROM 1050 XTにある装備は見てわかる部分にも多い。樹脂製ナックルカバー、エンジンのアンダーカバー、パイプのエンジンガード、センタースタンド、12Vアクセサリーソケットが標準装備で、ミラーもXT専用のもの。ウインドスクリーンの調節幅が大きく、シートの高さは調節可能。他にパニアケースのマウントの有無もある。XTは最低地上高も5mm高い仕様。装備重量が11kg軽いシンプルなV-STROM 1050と、より道を選ばずに長い時間走れるツーリングモデルとしての性能を追求したV-STROM 1050 XT。装備の違いを考えるとスタンダードより税込みで8万8千円だけしか高くなっていないXTのお買い得感がきわだつ。
 

 

1050 XTのワイヤースポークホイールのリムは前後ともチューブレス仕様。ダブルのフロントブレーキディスクはφ310mm。キャリパーにはTOKICO製4ポッドを使う。10本スポークのキャストホイールを履いた1050と同じ110/80R19M/C 59Vのタイヤサイズで、専用設計されたBRIDGESTONEのADVENTURE A41を装着。

 

倒立式フロントフォークはインナーチューブ径43mmのKYB製で、無段階のダンピングアジャスターとスプリングのプリロードアジャスター付。一般的な言い方をするなら「フルアジャスタブル」ということだ。1050 XTのキャスター / トレールは25゜30′ / 109mm。ちなみに1050は25゜40′ / 110mmと違っている。

 

リアタイヤは150/70R17 M/C 69V。ワイヤースポークの素材はアルミ。スイングアームもアルミだ。リアブレーキはφ260mmディスクに1ポッドキャリパーの組み合わせ。V-STOM 1000 ABS/XT ABSのEURO4からより強化された排出ガス規制である令和2年国内排出ガス規制、EURO5に対応。

 

リアサスペンションはボトムリンク式で、KYB製リンク式モノショックアブソーバーを採用。スプリングのプリロードアジャストは、ショックのトップ部分に取り付けたダイヤルを回すだけで工具を必要としない。ダンパーには伸び側減衰力調整機構が備わる。
1050 XTはセンタースタンドを標準装備。キャストホイールの1050はオプションになる。

 

エンジンをぐるりと囲うバードケージのようなパイプのエンジンガード。横への張り出しもあり、車体を倒したときに役立ちそうだ。クランクケース下側のサイドにはアンダーカウリングも装着されている。1050では両方ともオプションパーツ。

 

テールランプ、ウインカーはLED。フックが4箇所ついたリアキャリアは旧型と同形状だと思われる。荷台とタンデムシート座面の高さがほぼ同じだから、大きな荷物も積みやすそうだ。

 

表記が1050になっているが1000時代と同じ1,036cm3の水冷DOHC4バルブV型2気筒エンジン。バンク角は90°。100.0mm × 66.0mmとショートストロークなのも変更なし。新型で電子制御スロットル化となったことで3段階の出力特性が任意に選べるドライブモードがついた。アシストスリッパークラッチ(スズキクラッチアシストシステム=SCAS)は、クラッチレバー操作の軽さを実現し、タイヤをスリップさせるような強いエンジンブレーキを軽減させる。カムシャフトは吸排気ともにプロフィールとタイミングが見直され、バルブリフト量を増やし、オーバラップは減った。燃料噴射装置のスロットルバルブは、旧型の45mmから49mmへと大型化。圧縮比は11.3:1→11.5:1と若干高められ、1気筒に2本のスパークプラグを使う。厳しいEURO5をクリアしながら最高出力をアップさせた。オイルクーラーはオイルフィルターの根本に設置した水冷式。
クランクケースのカバー類がブロンズ色になって高級感が増した。クラッチカバーに樹脂のガードプレートが埋め込まれているのが面白い。ステップのペグはラバーを取り外せば、オフロード向きのギザギザタイプになり、同時に足首を動かせる範囲が小さいオフロードブーツで使いやすい、ペダルと同じくらいの高さになる。スイングアームピボット部分に樹脂のプレートをかぶせてあって傷を防ぎながらブーツ内側でホールドしやすそうだ。

 

ボディカラー、ブリリアントホワイト/グラスブレイズオレンジとチャンピオンイエローNo.2のシートは配色が異なる。1000では一体型だったけれど新型は前後セパレート型に。

 

キーロックを解除すれば、後席が外れ、その下にはETCを収めるには十分なスペース。そして中にはシガーソケットタイプのアクセサリー用電源もある。
燃料タンクは1050、1050 XTともに20L容量。大きく太く見えるけれどニーグリップのフトモモでのはさみ具合は良好。

 

XTはスクリーンとメーターの間に何かと便利に使えるアクセサリーバーを標準装備。ブラックのパイプハンドルはアルミのテーパーバー。
メーター左側の脇にはUSBソケットを標準装備。スマホだけでなくタブレット程度も充電できる2A容量。

 

電子制御スロットル化されたので、スロットルから物理的にスロットルバルブに繋がるワイヤーが伸びていない。セルスイッチを押し続けなくても、ワンプッシュするだけで始動までセルモーターが回るスズキイージースタートシステムを採用。
左手側にあるグレーのモードメニューのスイッチを使っていろいろな設定を変更できる。

 

背景が黒い反転液晶のインストルメンタルパネル。1050は通常の背景が白っぽいもの。ここでも差別化されている。画面は6段階の輝度調整が可能で、スピードメーター、油温/水温/バッテリー電圧警告インジケーター、SDMSモード、トラクションコントロールモード、時計、温度計、故障診断、瞬間燃費計、2つのトリップメーター、平均燃費計、電圧計、オド、航続可能距離計、エンジン回転インジケーター、サービスリマインダー、タコメーター、ギヤポジションインジケーター、水温計、フューエルメーターと表示。このXTはさらにクルーズコントロール、ヒルホールド、ABSモードも加わる。ターンシグナル、ABS警告灯、TCランプ、ニュートラル、エンジン警告灯、マスターウォーニング、ハイビーム、フリーズ、水温/油圧/電圧警告の各インジケーターランプは液晶画面の左右に配置。路面温度が低いことを警告するフリーズインジケーターは外気温が3℃以下で点灯する。
スタンダードの1050とはミラーも違う。クローズドタイプの樹脂製ナックルガードも標準装備はXTだけ。昨年発売された新型KATANAと同じに見えるLEDヘッドランプを使い、クチバシの形状と一緒にDR-Z、DR-BIGのイメージを継承している。

 

ウインドスクリーンを最も上げた状態と下げた状態。中央にある銀色のレバーで固定を解除し工具不要の手動調整するので、走行中の操作は無理で、停車していてもまたがった状態ではちょっと厳しいか。この範囲で高さは11段階の調整幅がある。スタンダードの1050は3段階。スクリーンの下側にある黒い樹脂でできた羽のような形状の部品が、風の巻き込み防止に大きな役割をしていそうだ。

 

身長170cm、体重67kgのライダーが乗車。座面の高さは2段の調整が可能で、これが低い方で標準。シート高は850mm。

 

取り外したタンデムシート裏に高さ調節用のスペーサーとボルトが備わっている。
そのスペーサーとボルトを使って前方、ライダー部分のシートを20mm上げられる。その差は歴然だ。

 

これがハイシートバージョンであるシート高870mmの足着き。さらにオプションで30mm低いシートがあるのはうれしい。

 

★V-STROM 1050〈V-STROM 1050XT〉 主要諸元
車名型式:8BL-EF11M
全長×全幅×全高(m):2.265×0.870〈0.940〉×1.515〈1.465〉
軸距(m):1.555
最低地上高(m):0.165
シート高(m):0.855〈0.850〉
装備重量(kg):236〈247〉
燃費消費率(km/L):29.2(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)
20.3(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-2 1名乗車時)
最小回転半径(m):3.0
エンジン型式:U502 水冷4ストローク90度V型2気筒DOHC4バルブ
総排気量(cm3):1,036
内径×行程(mm):100.0×66.0
圧縮比:11.5
最高出力(kW[PS]/rpm):78[106]/8,500
最大トルク:(N・m[kgf・m]/rpm)99[10.1]/6,000
燃料供給装置形式:フューエルインジェクション
始動方式:セルフ式
点火方式:フルトランジスタ式
潤滑油方式:ウエットサンプ式
潤滑油容量(L):3.5
燃料タンク容量(L):20
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
キャスター(度):25°4′〈25°30’〉
トレール(mm):110〈109〉
タイヤサイズ:前 110/80R19M/C 59V
後 150/70R17M/C 69V
ブレーキ形式:前 油圧式ダブルディスク(ABS)
後 油圧式シングルディスク(ABS)
懸架方式:前 テレスコピック式
後 スイングアーム式
フレーム形式 ダイヤモンドタイプ
※〈 〉内はV-STROM 1050XTの値

 



| 『V-STROM 1050 /XT 試乗インプレッション』の記事へ |


| 新車詳報『V-STROM 1050 /XT』のページへ |


| スズキのWEBサイトへ |

2020/04/29掲載