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試乗

『受け継がれる素性』 --良いものは変わらず良い。 4代目Vストローム1000、 何も失わずに進化し1050に。
昨年末、浜松のスズキ本社で行われたVストロームミーティングにて国内初お目見えとなった新型Vストローム「1050」。このモデルの世界統一試乗会がスペイン南部、マラガ周辺で行われた。国内販売も控えてるこの新型車のファーストインプレをお届けする。
■試乗・文:ノア セレン ■写真:スズキ ■協力:スズキ http://www1.suzuki.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/ 、 アルパインスターズ http://www.okada-corp.com/products/?category_name=alpinestars

 

進歩、進化、そしてデザートレーサーの凱旋

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/NKdtsgyDxsw

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/f07v2OvTzD8

「本物」のデザイン

 去年末、浜松のVストロームミーティングで来場者を興奮させた一コマは、この新型Vストローム1050のデザインがなんと、DR750をデザインしたデザイナー本人によるものであることだった。新型になって「ますますデザートレーサー感が出てきたな」「DR感が色濃いな」と思ったのならばそれは当然なのである。だってデザイナーが同じなのだから!
 スズキはこのデザインに並々ならぬ情熱を注いでこの新型を開発している。当時のデザイナーに再び担当してもらったことはもちろん、加えて若い女性デザイナーを採用して伝統的なデザインを現代のスタイルと融合させることにも注力。実際にDRを知っている世代にとってはそのリンクを感じられ感動を覚えるはずだし、反対にその時代のことを知らない人にとっても素直にカッコイイ、スズキらしいデザインだと直感的に受け止められるデザインを作り上げている。スズキとしてもこの部分はかなり自信を持っているのだろう。Vストロームミーティングにおいても、そして今回のスペイン試乗会においても、デザインの説明、アピールに割いた時間が最も長く、そして最も熱がこもっていたように思う。そしてスペインでも、DRのデザイナー、宮田さんが登壇した時には会場に「おぉ!」という空気が確かに流れたのだった。
 しかしDRを意識したデザインだけがポイントではない。デザイン担当者だけでなく開発者が皆言っていたことは「質感を向上させた」ということだ。スズキ車は「乗れば間違いない」と言われつつも、「デザインが独特で」だとか「細かい所の処理が……」といった声があったそう。実際に今までは「上手に隠せなかったのかな?」と思えるような、配線の処理などが微妙に見えてしまっているようなこともあった。ところが今回は、細かい所の処理までかなり気を使ったという。エンジンカバー類の塗装はもちろん、ボルト類の種類やサイズを揃えるだとか、隠すべき配線はしっかりと隠すだとか、細かい所の作り込みで質感を高めることにこだわり、結果として確かにワンランク上のフィニッシュを得ているように思える。
 もちろん、機能的にも進化を果たしている新型Vストロームではあるが、こういったスタイリングに対する情熱が最も力を入れたところのようにも感じるし、スズキ製品にとってこれは一つのターニングポイントになるとすら感じた。
 

 

ハードは引き継ぎ、細部をアップデート

 始めに断っておくが、これらは良い意味で言っているのである。
 最初のVストローム1000は輸出モデルとして2002年に登場した。その後、2013年に新しくなったモデルが2014年に国内にも導入され、2017年に現行型へとデザインが改められた。そして2020年、今回の新型である。ところが’02年の初期型を見ると……フレームもエンジンも足周りも(正立フォークは650の方で現役、1000は倒立化)変わってないじゃないか! 18年間変わっていないというのは凄いこと。スズキはこれがけっこう得意なのである。良いものができたのなら、それを少しずつ改良しながらどんどん熟成させていく。突飛なモデルチェンジはせず、地道に良くしていく。これはVストロームに限らないスズキの姿勢なのだが、凄いことだと思うと同時にいかに初期型が良くできていたか、その血筋の良さを証明している。
 今回の1050、車名の数字がかわったことや、このクラスのライバルたちは軒並み排気量アップしていることからVストロームも1050ccになったかと思いきや、排気量は変わらず1036cc、ボアもストロークも変わっておらず、数値の変更はあくまで新型をアピールするためのイメージ戦略である。要はほとんど変わっていない。これだけイメージが違うのにハードの部分は変える必要がないというのが本当に凄い。
 しかし元をたどればTL1000Sまで遡れる歴史あるエンジンが、なんと非常に厳しいユーロ5規制に対応しているだけでなく、パワーまで向上させているのだから驚く。それをなしえたのは最新の電子制御技術。今回、ライドバイワイヤーを導入したことで緻密なコントロールが可能になりスロットルボディを大径化することができた。またカムも環境規制対応のためオーバーラップは減らしているものの、逆にリフト量は増やしてハイパワー化をサポート。結果として、規制対応を果たしつつ燃費はそのままに、そしてパワーは74kWから79kWへの向上を果たしたのだ。
 もちろん、公式に発表されない細部のアップデートは多岐にわたっているとは思うが、基本的なことを変えずにこの進化を果たしていることは素直に驚くではないか。
 

Simply More V-Strom

 前回Vストロームが新型になった時、このコピー「Simply More V-Strom」(単純にさらなるVストローム化)が使われた。古巣のミスター・バイクだから書くが、このコピーを最初に言ったのは筆者である。開発の方が気に入ってくれ、今回の新型のコンセプトにも同じコピーが掲げられていた。要は、コンセプトを堅持する、ということである。ライバルに惑わされず、Vストロームというバイクがどうあるべきか、ということを真剣に追求しているのである。
 新型1050の試乗を経て、やはりこのコンセプトは活きている、と感じることができた。これだけスタイリングがアップデートされ、電子制御も充実し、環境規制に対応しつつパワーアップまで果たしているにもかかわらず、乗ればやっぱりVストロームなのであった。
 実寸法は前モデルとほとんど変わらず、車重はいくらか重くなっているのだが、跨った感じは変わらず、良好な足つきも手伝いむしろ少し小さくなったようなイメージ。これまでは有機的・ボリューミーな曲線があったのに対し、新しいデザインはスパッと直線的であることも影響しているかもしれないが、特にXTではない、スタンダードの方は650と大差ないようなサイズ感に思えた。
 エンジン始動は前モデル同様のイージースタートシステムを備えセルボタンをワンプッシュ、程よく消音されたアイドリングを打つ。いざ走り出そう。
 

 

ジェントルなリッターバイク

 もしTL1000がまだ記憶にある人がいれば、そのエンジンなのだからきっとVストロームも過激なのだろう、と思う人もいるだろう。しかしVストロームは前モデルでは僅か4000RPMで最大トルクを発生してくれるような、とても扱いやすくフレンドリーな乗り物だ。新型もまたそのジェントルさを受け継いでおり、’90~’00年代の荒々しいビッグVツインスポーツのイメージもなければ、一部ライバル車種のエンジンのようなホットなレスポンスもない。クラッチを繋ぐ常用回転域からとてもフレキシブルで、ある意味4気筒のような寛容さを持っている。今回のモデルチェンジで最大トルク発生回転数が高められ6000RPMとなったが、それによりさらに常用域は扱いやすくなった感すらある。1000ccオーバーの2気筒だからと言って構えることはなく、誰でも臆せず走り出せることだろう。
 試乗前半パートで市街地を抜ける際、これがとても役に立った。あまりにエンジンレスポンスが激しかったり、想定速度域が高い車体は逆に低速域では気を使うこともあるが、この1050は前モデル以上に低速が得意に思う。決して小さいバイクではないのだが、イメージとしては650に近いとさえ思えるサイズ感とジェントルなエンジン、全く違和感のないライドバイワイヤーのレスポンスの作り込みにより走り出してすぐに自信をもって扱うことができるのだ。
 とはいえ高速道路を走ればさすがにリッターマシン。アクセルを大きく開ければ他の四輪車などギアチェンせずとも一瞬で抜き去る力を持っている。特に今回はトルク・パワー共に発生回転数が高まっているのだが、これがちゃんと感じられ以前のモデル以上に高回転域を多用する楽しさもあり、シフトダウンしての加速は爽快だ。とはいえこの領域でもジェントルさは失われず、一部1000ccオーバーのライバルモデルに比べれば「速い」という尺度のみで捉えた場合、譲るパートもあるだろう。しかし一貫して、どんな速度域・回転域でも安定してジェントル/扱いやすいというのはいかにもVストロームブランドらしく、好印象はどんな場面でも変わらない。苦手なパートが見当たらないのだ。
 

 

荒れた路面はむしろ得意に

 Vストロームシリーズは一貫して「オンロードのツーリングバイク」を謳ってきた。オフロードは、フラットダートをこなすぐらいはできても、本格的に楽しむわけではないだろう、と。それよりもオンロードでの良さを追求しているわけだが、前モデルはちょっとオンに寄せすぎていたというか、オンでの楽しさを追求するあまりダイレクト感がアドベンチャーモデルというよりは完全にスポーツモデルのそれとなっていた。
 そのおかげで路面の良いハイスピードワインディングなどでは無類の強さを持っていたのだが、逆に言えば路面が荒れてくるともう少しファジーなパートがあっても良いと感じる場面があった。
 新型ではこの部分がかなり変わっており、フロント周りの剛性感はそのまま、路面が悪くなるとチラッと顔をのぞかせていた前モデルのシビアさみたいなものが完全に消えていた。これはサスの設定を、初期の入りを柔らかく改めたことと、ブリヂストンと共同開発したタイヤのおかげだろう。砂が浮いたような道や、路面のツギハギに対しての許容度は飛躍的に上がっている。今回の試乗ルートにオフロードも組み込まれたのはこういった都合もあるのだろう。オフロードを推奨しているわけではないが、この柔らかな口当たりならイケるはず、と現地の試乗会主催者は踏んだはずだ。そして事実、オフロードでもこのような締まったダートなら平気、というよりもむしろ楽しめるほどだった。
 ユーロ5への対応や各種電子制御技術の進歩が注目されるが、個人的にはこのハンドリングの変化、許容度の増加が新モデルにおける一番歓迎したい進化に思っている。1000ccのパワーや倒立フォークの剛性感を持ったまま、この新型なら650で入っていける所ならどこでも入っていけそうである。
 

 

乗り換えて欲しい一台

 筆者はVストローム650を愛用しており、この優秀なバイクに心底惚れている。特に国内においては必要十分だと思うし、1000が登場した時も「650で十分。1000に対して特別譲るパートもない」と言ってきた。それは虚勢ではなく、本心だった。「足るを知る」と言うか、背伸びをしないというか……筆者はプレミアムさや所有欲と言ったロマンを置き去りに、どうも現実的な使用環境ばかりを考えてしまう所があり、それはある意味スズキの質実剛健路線に似てもいるように思う。しかし今回の1050は「これはちょっと乗り換えたい」と初めて素直に思えた。というのも、ハンドリングに650に似たようなファジーさを備えたことで、荒れた細かい道でも入っていけるようになったと思うし、サイズ感もコンパクトになったように感じたというのもあるだろう。特にXTではなくスタンダードの方、しかもブラックのカラーリングの方なんて非常にスマートで、長距離ツーリングはもちろん普段使いをしても違和感がなくカッコ良く乗れるように思う。
 今回の1050は「乗り換えて欲しいバイク」である。全くの新規ユーザーというよりは、これまで650のVストロームに乗ってきた人や前モデルの1000に乗ってきた人、もしくはライバル車を経験している人こそ、この1050の懐の深さ、フレキシビリティ、付き合いやすさ、万能さなどをよく理解できる気がする。
 一方でこの手のバイクのエントリーモデルとしても推奨したい。先述したようにハンドリングもエンジン特性もとにかく付き合いやすいため、リッタークラスのアドベンチャーモデルなんて……と思っていた人も馴染めるはずだ。電子制御満載ではあるが、それらの設定や操作も直感的に行え難しさはない。スズキの最先端モデルであるのに難解な所が一つもない、非常に間口の広いマシンなのである。
 

 

 

全体的な寸法は前モデルとほとんど変わらず、ホイールベースも同一。ただ以前の有機的なデザインから直線を多用したデザインとなったことからか、見た目も跨った感じもいくらかコンパクトに感じられる。スポークホイールをはじめ電子制御技術がフル投入され、さらに各種オプションも純正装着される上位のXTモデルはこのDRイメージのイエローと、試乗車のオレンジ、ブラックの3色展開。スタンダードは黒・白・グレーの3色だ。(※写真の上でクリックすると大きな画像で見られます)

 

新Vストローム1000シリーズにおいては一貫してアピールしてきたクチバシデザイン。他社も積極的に採用しているフィーチャーではあるが、「元祖はDRだ!」とアピールしており、その伝統をVストロームに引き継いでいる。今回はクチバシがよりシャープになり、かつての怪鳥感が強まっているような?
シンプルなコクピットは脇役に徹する。メーターもカラーではなく、必要な情報をわかりやすく表示してくれるという質実剛健なものなのは流石スズキ。ハンドルも妙に開いたりせず、手前に引かれてしかも垂れ角もあるという、ツアラーモデルに適した形状で非常に好印象。XTについては新たにデザインされたカッコ良いミラーを採用。

 

Vストロームシリーズとしては初めてLEDのヘッドライトを採用。四角形状となったことでスタイリングが大きく変化した要因にもなっている。試乗は昼間だったため視認性の確認はできていないが、オプションではフォグランプも用意されている。
風洞実験を念入りに行い、新しく上下スライド式となったスクリーン。XTモデルはライト上のレバーを起こせば工具なしで上下11段、50mmの範囲で調整可能。STDモデルは、3段階調整で工具が必要。

 

様々な機能を持たせている各社アドベンチャーモデルにおいて、スイッチ類が難解なことが多々ある。しかしVストロームはとてもわかりやすく、またスイッチも押しやすく好印象。シンプルイズベスト。この左のスイッチのみでトラコン、ドライブモード、ABSの設定が簡単にできる。
右のスイッチボックスもシンプルなもの。ライドバイワイヤーとなったことでスロットルワイヤーも存在しない。新たにクルーズコントロールシステムも装備された。

 

新採用された電子スロットルボディは、ライドバイワイヤーにより駆動される。径は前モデルのφ45mmからφ49mmへと大径化し、環境規制に対応しながらパワーアップを果たしている。また新たにSDMS(スズキドライブモードセレクター)も採用。ABCの3つのドライブモードを備え、いずれもピークパワーは同様としながらもアクセルレスポンスをAが最もピックアップに優れ、Cが最ものんびりとした反応、Bは中間という設定。しかし試乗中は常にAモードを使っていた。というのもそもそもエンジンがとても使いやすく、Aでもコントロールしやすかったためだ。
「ロードディペンデントコントロールシステム」のロードは道ではなく、Load、すなわち負荷のことで、ライダーの体重や荷物の量、もしくはタンデムかどうかという負荷の状態に応じて、適切なブレーキ入力をサポートしてくれるという機能。これには学習機能が備わっており、走り出して10回ほどブレーキを握ると、ブレーキ入力に対しての減速力を覚えてくれ、適切なブレーキのアシストをしてくれる。タンデムや重積載時でも一定のブレーキ入力でスムーズに減速・停止ができるというわけだ。似た機能にスロープディペンデントというのもあり、これは下り坂でのブレーキング時にリアタイヤが浮き上がってこないよう、適切なリアブレーキへの補助をするというもの。いずれもXTのみへの装備。なお「モーショントラック」と呼ばれるコーナリング中も作動可能なABSシステム、トラクションコントロールシステムもそれぞれアップデートして装備しており、これら電子制御技術はS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)と呼ばれている。

 

S.I.R.S機能の一つがヒルホールドコントロール。登り坂で停車した場合、車体姿勢を把握するIMUからの情報によりその姿勢が感知され、下がっていかないように自動的にブレーキをかけてくれる。その時間は約30秒間。坂道発進をサポートしてくれる機能だ。
今回のモデルチェンジでフロントフォークは初期の作動性を柔らかくし、さらに様々な路面に対応しやすくなったが、フルアジャスタブル機能を持つのは前モデル同様のため好みの設定も可能。

 

通常のシガーソケットの他にUSBソケットも備え、各種後付電子機器に対応。スクリーン内側にはアクセサリーをつけるためのバーも用意され、試乗の先導車はそこにナビを取り付けていた。
写真は各種アクセサリー装着例。こちらベースモデルはSTDのほうだが、XTなら最初からセンタースタンドや、ケース類を装着するためのステーなどが備わっている。長距離ライドを想定し、アクセサリー類装着を前提とするならばXTがお得と言えよう。

 

XTには標準装備されるエンジンガード。アドベンチャーモデルらしいルックスはもちろん、いざという時に役立つはず。試乗日には動画カメラ装着にも重宝した。
細身でスマートなグリップヒーターは残念ながらオプション設定。試乗コースも標高が高くなるとかなり寒かったこともあり、やはりグリップヒーターは少なくともXTにおいては標準装備してほしかったのが本音。

 

一部海外メディアは「スキッドプレートは標準装備してほしい」と言っていたが、重量の関係もありこれはオプションの設定。アルミ版と、樹脂のカバー版がオプションで用意される。
XTには標準装備となるセンタースタンド。STDモデルにおいてはオプション設定。

 

XTでは標準となるナックルカバーは風よけとして重宝。これとグリップヒーターがあれば冬でも安心だろう。
純正でもシートの高さは2段階で調整できるが、オプションとしてローシートも用意。Vストロームではスズキ他機種では類を見ない50を超えるアクセサリーを展開して、様々なシチュエーションに使ってもらえる用意をしている。

 

本文中にも登場するスタンダードモデルがこちら。DRイメージは少ないがスマートでXT以上にコンパクトな印象だ。XTよりも11kg軽量なのも魅力だろう。電子制御含めて様々な装備が簡素化されていることもあり、XTとの価格差もけっこうありそうだ。
Vストロームミーティングでお会いし、熱くVストロームについて意見交換したテストライダーの小島さん。現地でも仲良くしてくれました!

 



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2020/02/12掲載