- ■試乗・文:毛野ブースカ
- ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor//
以前このコーナーで実走検証したホンダのRebel250やCL250と同様、街中やツーリング先でよく見かけるバイクのひとつが、ホンダのGB350シリーズである。オールドユーザーがホンダの「GB」と聞くと、1980年代に登場したGB250クラブマンやGB400TT、GB500TTを思い浮かべるかもしれない。ホンダの単気筒モーターサイクルの名称として親しまれてきた「GB」の名を冠して登場したGB350シリーズは、クラブマンやTTなどのロープロファイルなカフェレーサーっぽいスタイルではない。共通しているのは空冷単気筒のエンジンを搭載していること。GB350シリーズはインドを代表するバイクであるロイヤルエンフィールド、カワサキのW800やW230、MEGURO K3、MEGURO S1を彷彿とさせるオーセンティックでレトロクラシックなスタイルを採用している。
そもそも近年、GB250クラブマンのような排気量250㏄~400㏄クラスの車種が少なくなっている。250㏄クラスは復活傾向にあるものの、400㏄クラスは各社とも車種が非常に少ない。現在のホンダの400㏄クラスのラインアップは、私が乗っている400Xの現行版であるNX400、CBR400R、そしてGB350シリーズとなっている。さらに、ホンダの全車種の中でGB350のようなレトロクラシックなモデルはGB350以外には存在しない。そういう意味でGB350シリーズは貴重なモデルとなっている。
そんなGB350シリーズはインドで生産されているインド市場向けモデルだ。ホンダの現地インド法人のHPを見ると、バイクはEV、モーターサイクル、スクーターの3つのカテゴリーに分類され、さらにモーターサイクルは排気量100~125cc以内のレッドウイング、排気量200㏄~350㏄以上のビッグウイングに分けられている。このビッグウイングの中心的存在が、GB350の現地名であるCB350シリーズである。日本におけるメインモデルであるGB350は販売されておらず、GB350 Cに相当するCB350、GB350 Sに相当するCB350RS、そして日本では販売されていないCB350 H’ness、CB350Cスペシャルエディションがラインアップされている。CB350、CB350RSは色や細部の違いはあるものの、日本仕様とほぼ同じ。個人的にはCB350 H’nessとCB350Cスペシャルエディションはカッコいいカラーリングと外装をしており、日本で販売しても売れるような気がするのだが……。
CB350の現地価格は19万7500ルピー、日本円でおよそ33万7000円、以前このコーナーで実走検証したスズキのジクサー250の現地価格は約19万ルピーとほとんど同じだ。ちなみに、CB350がカテゴライズされているビッグウイングにはNX400の弟分に相当するNX200、ネイキッドタイプのホーネット2.0があり、それらやCB350、下位カテゴリーのレッドウイングに属する車種すべてが空冷単気筒エンジンを採用している。スズキのジクサー250やVストローム250SXなどのインド軍団もそうだが、空冷単気筒エンジンがインドではデフォルトなのだろうか。それともロイヤルエンフィールドに倣っているためだろうか。
GB350シリーズは上記で述べたことからもお分かりのとおり三姉妹で、長女は生真面目で賢い雰囲気のGB350、次女はワイルドでスポーティーな雰囲気のGB350 S、三女はおっとりとした雰囲気でレトロ感を強調したGB350 Cとなっている。3機種ともエンジン、シャーシは共通しており、主な違いは外装部分だ。今回、このGB350三姉妹の中で次女のGB350 Sに実走検証することとなった。
GB350シリーズの最大の特徴は、GBを名乗るとおり新開発のロングストローク348cc空冷4ストロークOHC単気筒エンジンを採用していることだ。今となっては新鮮な空冷用のフィンが備わり、シリンダーが直立している(正確にはごくわずかに前傾しているが)バーチカルタイプ。同じ単気筒ながら水冷のRebel250のエンジンと比べると、補器類もなくスッキリした、いかにも空冷単気筒の形状をしており存在感はバツグン。レトロクラシックなスタイルにピッタリだ。最高出力は15kW(20PS)/5,500rpm、最大トルクは29N・m(3.0kgf・m)/3,000rpmとパワーよりもトルク寄りで、ワイドレシオの5速トランスミッションとあわせてガンガン回して乗るバイクではない。
車両重量はGB350 Sが178㎏、GB350が179㎏、GB350 Cが186㎏とGB350 Cがわずかに重い。それに伴い燃料消費率は定地燃費値47.0㎞/Lと共通だが、WMTCモードではGB350とGB350 Sが39.4㎞/L、GB350 Cが38.6㎞/Lとわずかに低くなっている。と、さらっと書いているが、排気量348㏄でこの燃料消費率はかなりいい。Rebel250のWMTCモード34.9㎞/hより優秀だ。さらに言えば、NX400のWMTCモード28.1㎞/hよりずっといい。燃料タンクの容量は15リットルなので、単純計算で591㎞走れることになる。燃料警告灯の点灯タイミングを13リットルと想定しても500㎞以上は走れる。1回の給油で走れる距離としては以前実走検証したスズキのジクサー150(約600㎞)に次いで長い。実走検証が楽しみになってきた。
GB350 SはGB350をベースに、より走りに振った軽快なスタイルとなっている。GB350に比べてハンドルのグリップ位置が低く遠くなり、メインステップの位置を後方上部に配置。これによりライディングポジションがやや前傾姿勢になっている。フロントホイールは19インチと共通だが、リアホイールは17インチに小径化。バンク角を増したマフラー、前後ショートフェンダー、よりコンパクトになったテールランプとウインカー、タックロール風ワディングシート、専用サイドカバー、専用リアグリップ、フォークブーツを装備している。試乗車のカラーはヘビーグレーメタリック-Uで、他にベータシルバーメタリックがある。ちなみに価格差はGB350が671,000円に対してGB350 SとGB350 Cは715,000円で44,000円差となっている。
GB350シリーズはタンデムグリップにシート上に荷物を載せる際に使える荷掛けフックはあるもののリアキャリアは標準装備されていない。リアキャリアはGB350とGB350 Cは純正アクセサリーとして用意されているものの、GB350 Sはサドルバッグステーとサドルバッグのみが用意されている。GB350 Sで荷物の積載をお考えの方は注意が必要だ。
また、みなさんお分かりのことかと思うし、当たり前のことではあるが、排気量348㏄のGB350は公道を走る251㏄以上の小型二輪なので、新車では3年、以降は2年おきに車検(継続検査)が必要になる。なので、車検のタイミングはもちろん車検ごとに法定費用や整備代などの維持費が掛かることを、GB350シリーズが欲しい方は念頭に置いておこう。
前書きが長くなってしまったが、現車を見た第一印象は「思っていたより大きくてどっしりとしている」こと。色が全体的に黒基調ということもあり、レトロクラシックなスタイルやバーチカルシングルエンジンと相まって存在感が際立つ。跨ってみると大きさや重さは感じない。ライディングポジションはやや前傾姿勢といった自然な感じで、無理なポジションは強いられない。バックステップは個人的に位置が微妙で、シート高が800mmということもあり、CL250ほどではないが、停車時に足をステップの前に持ってくるか、後に持ってくるかで悩む。実走検証中そんなに慌てふためくシチュエーションはなかったが、ステップの位置は頭に入れておいたほうがいい。
エンジンを掛けると単気筒らしいドドドッとした鼓動が伝わってくる。振動そのものは少なく身体が揺さぶられるような感じはない。マフラーから聞こえてくる排気音も心地いい。アシストスリッパークラッチを採用しているのでクラッチ操作は軽く、トルクフルなので発進も楽。1速→2速とシフトアップし、それほどエンジンが回っているわけではないのに50㎞/hに達している。燃費のいい走りをするとメーター上に「ECO」マークが点灯するのだが、50㎞/h・2速でもECOモードが点灯する。2速でも十分対応できるということだろう。交通量が比較的多い都内の一般道で、交通の流れについていくことを考えると、ほぼ2~3速で事足りる。試乗車をお借りしてから実走検証に出かけるまで都内を中心に走行したが、4速、5速に入れるシチュエーションはほとんどなかった。
エンジンが暖まってくると、エンジンを掛け始めた当初の勢いはなくなり、アイドリング時の回転数がかなり低くなる。タコメーターがついていないので具体的な回転数はわからないが、エンジンが止まってしまうのではないかと心配になってしまうほど。といって1速で発進する時にスロットルを煽ってエンジンを回す必要はない。アイドリング時の回転数が高いのも気になるが低いのも気になる。このアイドリング時の回転数の低さは試乗車を返却するまで慣れなかった。
実走検証に出かけるまでに70㎞を走行したところでメーター上の平均燃費はリッター41.9㎞、走行可能距離は706㎞と表示された。燃料ゲージはまったく減っておらず、このままだと燃料警告灯が点灯するまで本当に500㎞以上は走れそうだ。今回はお借りしてから返却するまでの総合燃費を計測する予定だが、果たしてタンク内の燃料を使い切ることができるのだろうか。期待と不安を抱きながら実走検証に出発することにした。目指すは東伊豆→西伊豆を巡る伊豆半島一周だ。
(試乗・文・撮影:毛野ブースカ)
■型式:ホンダ・8BJ-NC59 ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHC ■総排気量:348cm3 ■ボア×ストローク:70.0×90.5mm ■圧縮比:9.5 ■最高出力:15kW(20PS)/5,500rpm ■最大トルク:29N・m(3.0kgf・m)/3,000rpm ■全長×全幅×全高:2,180[2,175]×790[780]×1,105[1,100]mm ■軸間距離:1,440mm ■最低地上高:166[168]mm ■シート高:800mm ■車両重量:179[178]kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式:常時噛合式5段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-19M/C 57H・130/70-18M/C 63H [150/70R17M/C 69H] ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:パールホークスアイブルー、クラシカルホワイト、マットバリスティックブラックメタリック [ヘビーグレーメタリック-U、ベータシルバーメタリック] ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):671,000円 [715,000円] ※[ ]はS
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