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試乗・解説

Honda GB350 『こんなのが欲しかったんだ、GB350降臨』
ライダーから熱い注目を浴び、発売も目前であるホンダの新作「GB350」。このクラスの久々の新作であると共に、誰でも楽しめそうな極スタンダードな作り込み。乗る前から「絶対良い」とわかっていたが、乗って「やっぱり良かった」その第一報をお届けしたい。
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:松川 忍 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/ ■ウエア協力:アライヘルメットhttp://www.araihelmet.com/、KADOYAhttp://www.ekadoya.com/




もうね、買ってください

 試乗前に書いた紹介文でも言った通り、細かいことはヌキにしてとりあえず乗った方が良いバイク(※ノア セレンさんによる解説はコチラ→ https://mr-bike.jp/mb/archives/20542 )。試乗を終えて、重箱の隅をつつきまくるジャーナリストのクセがついている筆者でも、思わず開発陣に「最高です! 言う事ありません!」と発してしまった。もう試乗インプレを書くのすらバカバカしくなるほど、とにかく良い。レンタルバイクやドリーム店の試乗車で是非とも体感していただきたい。誰にでも薦められる良いバイクである。
 

国内仕様の一つの特徴として、フレームも外装も国内で塗装しているというのがある。そのおかげで深みのある、ハイクオリティなフィニッシュが実現されているのだ。展開されるカラーリングは(写真右から)落ち着いたマット系のブルーである「マットジーンズブルーメタリック」、CB1000Rなどともイメージが共通する高級感のある赤「キャンディークロモスフィアレッド」、そして今回の試乗車であったマットがかった黒の「マットパールモリオンブラック」の3色展開。これらカラーリングが施されるのはタンクとサイドカバーのみで前後フェンダーは共通のため、外装着せ替えやサイドカバーのみカラーリング違いとするなど楽しめそうだ。

 

とはいえ少し内容を

 何がそんなに良いのか。全体的にバランスがとれていて、クラシカルなのに最新であることがその良さの肝なのだと思う。
 ロングストロークの空冷シングル、鉄のセミダブルクレードルフレーム、19インチのフロントホイール&前後バイアスタイヤといった、バイクの歴史が始まった頃から変わらないバイクらしさや親しみやすさといった基本骨格と、インジェクションや前後ディスクブレーキ、キャストホイール、ABS&トラコン、セルスターター、モダンでクリーンなエンジンなど今の技術だからこそできることが、ものすごくハイレベルでリンクしブレンドされていると感じる。これによって雑味がなく、古臭さを感じることなく、とてもニュートラルなアプローチでバイクが本来持つ楽しさや接しやすさ、伸びやかな気分を楽しむことができるのだろう。
 開発者は「SRやロイヤルエンフィールド、さらには旧い英車などは参考に、及びリスペクトしつつ、しかしそれらをライバルとせず、ホンダらしいものを作りました」と話していたが、乗った感覚もその通りだ。昔から引き継がれたものをずっと良くし続けてきたSRやエンフィールドに対して、こちらはまるっきりの新規機種なのである。いたずらに旧臭くしようとするのは違うだろう。旧いバイクが持っていた魅力を最大限活かしながらも、今の技術で今のバイクを作っているのである。
 

 

クリアなエンジンを楽しむ

 今の技術で、の際たるものがエンジンだ。ロングストローク空冷シングルを今の技術でホンダが作るとこうなるのか! と唸らせられた。とにかく一発一発の爆発がとてもクリアに感じられて、それ以外の部分がまるで気にならないのだ。
 昔からある空冷シングルではどこかフリクション感や必ずしも心地よいとは限らないブルブルとした振動、もしくはメカニカルノイズや、設計の旧さゆえのミッションのシブさやクラッチの抵抗感などがついて回ったりもするもの。さらに言えばアクセルを開けてからスプロケに動力が伝わるまでのタイムラグというか、メカニカルロスみたいなものが感じられることが多いものだが、GBではそれがなく純粋にそのエンジンフィールや鼓動感、排気音が楽しめ、全ての操作感がとてもモダンで一切ストレスがない。
 

「まっすぐ走っていても、さらには信号で止まっていても楽しい」と開発者が言っていたが、その通りだろう。飛ばさないと楽しくないだとかそういったことがなく、ドッタッタとリズムを刻むエンジンがいつでも気持ちよい。クルージングの場面では良き脇役、良きBGMに徹してくれ、走っている場所の景色を楽しんだりすることに意識を向けやすく感じた。

 
 排気音がまた絶妙で、乗っているとかなり大きく感じるのだがそれがどこまでも心地よく、また近くをGBが通った際も単気筒らしい音は確かに聞こえてくるのにその音に嫌みがないというか、「ウルサイ」とは感じないのが不思議だ。これはゆったりとしたシングルの排気音は人間の感性的にあまり攻撃的に感じないという部分もあるかもしれないが、技術的には排気音以外の音を排除していったおかげ、ということもあるらしい。
 クランクケース内のメカニカルノイズやチェーンからの音、吸気音、タイヤが転がるロードノイズや風切り音といった「排気音以外の音」を徹底的に消したそうで、そのおかげで排気音だけがクリアに耳に届き、結果としてその音自体はわりに大きめではあるのにも関わらず、澄んだ音に聞こえてライダーも周囲の人もみな心地よいという結果になっているのだ。近年の騒音規制の国際化によって一部モデルは純正でもいたずらに大きな、モデルによっては攻撃的な排気音を発している中で、GBは本当に上品にまとめていると感じる。
 

穏やかな操作感、を目指してはいるものの、しなやかなフレームとフロント19インチホイールのジャイロ感をうまく使うとなかなかスポーティなテイストも味わえる。ロングストロークシングルの蹴りだし感を満喫しながらワインディングを駆け抜けるのは、速度域に依存しない得も言われぬ充実感がある。

 
 音とは別にエンジンそのもののフィーリングも、もう最高である。アイドリングはなんとわずか1000RPM。スットンスットンスットンとアイドリングする姿は抱きしめたくなるような優しさがある。そしてとても軽いクラッチと、やはりとてもスムーズなミッションを操作して走り出すと、極低回転域からドッタッタッタッタタタッと後輪を蹴り出してくれる。2速、3速とどんどんシフトアップしていって、同じドッタッタッタッタタタッを繰り返し、50キロを超えたあたりでトップ5速に入る。そこからはひたすらクルージング。無理をしない速度域、おおよそ合法的な速度域でこそ、本当に素晴らしい味わいをもってドッタッタと走り続けられる。
 高めのギアに入れて大きめにアクセルを開けるとなおそのドッタッタ感が楽しめるが、5速はいくらかオーバードライブ的な感覚もあって、登り坂に差し掛かると加速が鈍ったりすることも。実際に一般道をツーリングペースで走っている時は4速に入っていることが多かったのだが、それでもドッタッタ感は潤沢で、かつ燃費は余裕で30を超えていた。

堂々としてコンパクト

 エンジンがあまりに気持ちよく、車体の方は脇役というか、あまり印象に残らない感じもあるのだが、見た時の堂々としたサイズ感に対して跨った時の意外なコンパクトさは嬉しく感じた。350ccながらより大排気量に近いサイズ感としたのは堂々とした存在感や乗り味を求めてのことだが、実際のライディングポジションはコンパクトかつ極ニュートラルで、ハンドルも適度に手前に引かれて一切の違和感がない。着座位置とステップの位置関係はカブやスクーターに準ずるそうで、そのおかげでニーグリップを特別意識することなく、尻とステップでバイクの重心をうまくコントロールできるよう設計されているそう。

 走り出しはそれこそカブで走り出すぐらい気軽なもので、軽いハンドリング、十分なハンドル切れ角、エンストしにくいエンジンによって、極低速の、例えば駐車場から公道に出る間といった場面でも、すぐに自信をもって取りまわすことができた。公道を走るとアップライトな乗車姿勢により見晴らしがよく、コンパクトな姿勢から大き目のバイクを自在に操っている感覚に充実感があった。開発時に「ライダーが乗った状態でカッコいい」ことを意識したというが、そのライダーも165cmから180cmぐらいをイメージしつつ様々な体格を想定したそう。185cmの筆者が乗っても窮屈に感じることはなく、かつ外から見た時に小さく見えないというのは嬉しいところ。ライダーの体格を選ばないカッコ良さや扱いやすさがあるというのもまた、カブ的なのかもしれない。
 

 
 コーナーが連続する道も走ったが、ここでは19インチのホイールがとても良い働きをしてくれた。エンジンをフレームに固定するボルトがクランクケース前方と後方に位置しシリンダーヘッド周辺に無いため、フレームはネックからそのエンジンマウントまでかなり距離がある設定。このおかげで穏やかな運動性能を達成しているそうで、走っても確かにとてもしなやかに感じられる。
 この設定で「ため」のあるハンドリングを実現している、とされるが、一方で19インチのフロントホイールのおかげかバンク角が増大すると共に一度コーナリングを始めると、グイグイと曲がっていく旧車的感覚が楽しめるのだ。これが本当に気持ち良い。大きな前輪がグイーィン!とコーナーを切り取っていく感覚はダイナミックで充実感があるし、バンク角に関わらずとても安定していて、多少路面が悪くてもフロントからすっぽ抜けるような感覚は皆無。どこかアドベンチャーモデル的な寛容さがあるが、アドベンチャーモデルほどのサスストロークは無いため適度なダイレクト感もある。この感覚はきっと、それこそ開発の上で参考にしたかつての名車たちに通じるものだろう。ずっと昔からある、おおらかで、実用的で、多くの人の感性にマッチした操作性。それの根本部分を決して変えることなく、現代的にリファインしていると感じる。
 

熊本発・上質なスタイリング。そしてカスタムは?

 興味のある人は既に知っていることだとは思うが、このGB350はインド市場の「ハイネス350」の日本版である。350ccという排気量もインドでの制度に合わせて設定されたものだし、市場が拡大する彼の地での販売が、まずは「ありき」だったのは事実。ただ当初からグローバルに展開できるモデルとして作り込まれていたのもまた事実。世界各国の二輪サイトがこのモデルに注目している中、先行して日本国内に投入されたことにまず感謝したい。

 とはいえ、インドの仕様をそのままこっちに持ってきただけ、ではないのである。基本的な構成部品は輸入しているが、ボルト類やタイヤなど国内で調達した方が合理的かつ日本市場に合うものは日本で調達しているし、塗装や組み立てはホンダの熊本工場で行われ、当然こちらの法規に合わせた変更もなされている。組み立て精度などは「ホンダの世界基準ですからどこで組まれても機械的な部分は同じです」と回答されたが、一方で「塗装は日本仕様で深みのあるカラーリングを展開しています」との話も。外装類だけでなくフレームも国内専用に塗装しているそうで、そういった部分からもこの上質さに繋がっているのだろう。各部のフィニッシュはとても美しく、この先世界各地の成熟したマーケットに展開されていっても全く問題ない仕上がりである。
 

乗るライダーの体格を限定しないということもあるし、乗る場面を限定しないというのも魅力だが、さらに乗るファッションも限定しないのも魅力だろう。ライディングウェアできっちり乗ればエンスージアスト的カッコ良さがあるし、写真のようなカジュアルなスタイルで乗れば街に溶け込むこともできる。あらゆる使い方に対応してくれるという意味でもどこか旧車的、もしくはカブ的なのかもしれない。

 
 そしてこういったモデルだと、何か手を加えたい、といった気持ちも出てくるはず。そんな楽しまれ方も想定し作られているというのだから、エンスージアストとしては嬉しいではないか。
 まずはマフラー。「純正以上のものを作るのはなかなか難しいとは思いますけどね!」と開発陣は自信を見せていたが、それでもアフターパーツを楽しみやすいよう、キャタライザーはエキパイ部に配置し、簡単にスリップオン交換ができるよう設計されている。
 またインド仕様ではエンジンガードがついたりすることもあるためフレーム各所にネジ山があるのだが、日本仕様でもそこを埋めてしまうことなく、プラスチックのカバーをして可能性を残しているのもポイント。後付のステーなどを工夫しカスタムの幅が広がる。
 さらに骨格部分では、例えば電装系部品をフレーム各所に散らばせることなくまとめるなどして、何か手を加える時に作業が複雑化しないよう配慮してくれているのだ。なお「バリエーションモデルがあることも楽しいですよね」とも語ってくれ、追って発売されるGB350「S」の部品も基本骨格が同じのため互換性がかなりあるのだとか。ちょっとデザインの違うヘッドライトユニットをSのものに交換する、もしくはSをベースにハンドルをよりらくちんなSTDの方に交換するなど、そういった純正流用の中での安心のモディファイも楽しめるというわけだ。

 ちょっとマニアックな話にはなるが、ルックスのカスタムだけでなくチューニングの領域も楽しめそうなのがエンジン。アルミメッキシリンダーなどとせず昔ながらの鉄スリーブが入っているためボアアップなどの夢も広がる。「スリーブの厚さには余裕がありますか? このエンジンフィールだと、500ccとかあるとまた良さそうですよねぇ」とニヤニヤしながら聞いてみると、アンオフィシャルな返答ではあったものの、若い開発者が「かなり余裕あります(ニヤリ)。500……うーん(笑)」とポロリしてくれた。各チューナーたちの検証及びチャレンジが楽しみである。
 

 

これぞホンダの考える「スポーツバイク」

 とても大らかで、誰にでも薦めることができ、走る場面を限定しない、大きくてとてもテイスティなカブのようなGB。「いわゆる究極性能を求めるスポーツバイク路線との決別ですね」と聞いてみたら、返答は「ホンダの考えるスポーツバイクとは、『お客様が自由自在に扱える』なので、そうするとこのバイクは、今回ターゲットとしているお客様にとっては最も意のままに扱えるスポーツバイクという表現になると思います」というものだった。

 いかにライダーが意のままに操ることができ、一体感をもって充実感を得られるか。特に公道環境においては確かにそれこそがスポーツだろう。GB350は数値的には決してハイパフォーマンスな類ではない。しかし誰でも直感的に走らせることができ、気持ちの良いスポーツ性にもアクセスしやすいという意味では、よりスポーツにフォーカスしたバイクよりもスポーツを身近に感じられるはずだ。特にこの19インチの接地感、エンジンの蹴りだし感はワインディングロードでは本当に気持ちの良い一体感を味わわせてくれるものであり、そこにはタイムや数値では測れない確かなスポーツがある。……もっとも、どんなバイクであれスポーツマインドをもって走らせれば、それぞれに一体感を得られる気持ちの良いパートはあるものではあるが……そんなことも思い出させてくれるGBである。
 

 

振出しに戻るが、とにかく乗って欲しい

 日本のラインナップの長寿選手、SRが引退するタイミングとこのGBがデビューするタイミングが重なったのは完全に偶然だという。しかしこれは嬉しい偶然ではないか。ああいったテイスティで誰にでも薦められるバイクが、メーカーが変わったとはいえ途切れることなく国内にラインナップされたことを(そしてそれがセルモーター付きでABS&トラコン付きで前後ディスクでチューブレスタイヤであることも!)素直に喜びたい。新GBの歴史はここから始まるものではあるが未熟な部分は感じられず、そして旧いものを研究し、リスペクトしたその作り込みは決して模倣やフィーリングだけを求めたハリボテではなく、ライダーの感性を刺激する、誰もが直感的に「本当に良いもの」と感じられる仕上がりである。
 

 
「なにも書くことはない。もう乗ってもらうしかない」と思いながら書き始めたこの原稿もいつの間にかこんなに長くなってしまったが、結局は「もう乗ってもらうしかない」のである。
 ベテランライダーでそろそろダウンサイジングを考えている人なら、その豊かなフィーリングと懐かしさもあるハンドリングやエンジンに魅せられることだろう。
 スポーツバイクばかり乗り継いできた血気盛んな人なら、免許や命を失わない速度域での潤沢なスポーツ感に目覚めさせられるだろう。
 そして免許を取得したばかりの人でも、怖がらずにスッと乗ってみることができるだろう。
 近年のバイクは「ちょっと過ぎるかな」というものも少なくなく、それこそ誰にでも気軽に「もう乗ってもらうしかない」なんて言えないモデルもあった。しかしGBは本当に誰にでも乗ってみて欲しい、気軽で、優しく、安全で、味わい深いモデルである。
 

 
 

外寸はCB1100シリーズとほぼ同じという、非常に堂々としたスタイリングをしているが、跨った感じはまさに400ccクラスでフィット感が高く、コンパクトで自信が持てるポジション。ステップの位置がかなり前の方で、これのおかげでゆったりとした感覚もあるのだが、それだけでなく着座位置とこのステップ位置の関係性により、積極的にニーグリップせずともバイクの重心を捉えやすく、気軽に走らせられるようになっているそうだ。確かにワインディングを走っても積極的にバイクを抑え込むようなことはなく、前輪を泳がせながらコーナーを楽しむ感覚は絶版旧車的であった。車格こそCB1100と同等ながらスリムゆえ、足つきは良好。スネがステップの後ろに自然と下ろせるため地面が近く感じる。ライダーの身長は185cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

3000RPM付近にトルクピークを持ってきたロングストロークエンジンがGBの一番の魅力だろう。スットンスットンと脈打つアイドリングから、ドッタッタと力強く蹴り出す常用域までとても魅力的なフィーリング。一軸バランサーの他にメインシャフト同軸バランサーを採用することで、爆発によって起きる振動以外の振動を抑え込み「クリアな鼓動」のみを発するようチューニングされた。また密閉式クランクケースやオフセットシリンダーなど現代的な構成で環境性能や燃費性能も確保し、クラッチ操作を軽くしてくれるアシスト&スリッパ―クラッチも装備。シフトフィールの追求もGBの上質感を実現してくれている。
2重管のエキパイがエンジンやフレームに沿うようにサイレンサーへと繋がる排気系は、排気管長をとることでトルクを稼ぐ性能的部分に加え、鼓動を感じさせるサウンドも追及。500ヘルツ以下の音域の低音を追求すると同時に、高音成分も敢えて少し加えることでよりライダーに聞こえやすいチューニングを施している。この排気系の設定と、そもそもゆったりとしたロングストロークシングルの特性より、ライダーは心地よい音を楽しめ、また周囲にもまろやかで攻撃性の低い音をもたらしている。

 

19インチホイールを採用するフロント周りは昔ながらのバイクの操舵フィールを実現。キャスターもトレールもリラックスできる数値とするが、一方で大径ホイールならではの安定した旋回性能としなやかなフレームによりコーナリング性能も決して低くなく、むしろダイナミックに楽しめる。キャストホイールによりチューブレスタイヤを採用し、またディスクブレーキとABSも標準装備。フォークは一般的な正立タイプで径はφ41mmだ。

 

リアは角鉄スイングアームに18インチホイール。一般的な2本ショックを備える。車体右側のブレーキホース類はスイングアーム下部を通すことでスッキリした見た目も実現。なおハブダンパーはより大排気量モデルと同様の5個仕様とすることで緩衝力を増やし、加減速時のギクシャク感を抑えている。
容量15Lのタンクはあくまでスタンダードなスタイリングながら、どこかかつてのホークシリーズなどを連想させてくれホンダの歴史も香る。丸く膨らんだ形でニーグリップしやすいという印象もないが、先述したように積極的なニーグリップを必要としない操作感のため気にならない。燃費の良いエンジンと組み合わせ、メーター上の残走行距離は500km以上を指していた。

 

十分なクッションと広いタンデム部で、ライダーもタンデムライダーも荷物の積載も十分に対応してくれるだろう。ライダー部分のシートは若干前下がりに感じられた場面もあり、もう少し後ろに座りたいような気もしたが、ライダーの体格との相性かもしれない。グラブバーには荷掛けフックと、左側にはヘルメットホルダーも標準装備する。こういった当たり前の装備が当たり前についているのが嬉しい。

 

丸タイプのヘッドライトの中にLEDというのはCB125~1000Rシリーズと同じアプローチ。STDモデルとSモデルでは灯火類のデザインがいくらか違うものの、装着は互換性があるためこういった部品をスイッチするカスタムもアリだろう。
LEDのテールランプはもうスタンダードだろうが、ウインカーもカワイイ丸タイプのLEDで雰囲気がある。このSTDタイプはリアフェンダー上にテールランプがある昔ながらのスタイルで被視認性も高いだろう。タンデムグリップは取り回しや荷物の固定にも重宝するはずだ。

 

とてもリラックスした乗車姿勢をもたらすハンドルは好印象。スロットルの軽さ、クラッチの軽さとキレは最高で、操作することにタイムラグや抵抗感が皆無。こういった部分に旧いものの進化系ではなく本当の最新モデルなのだな、と嬉しくなる。毎度のことながら、ホンダのウインカースイッチとホーンスイッチの位置関係は大変扱いにくいのが残念。
アナログのスピードメーターと、様々な情報を表示させられる小さなデジタル部を組み合わせる。デジタルは小さく文字も相応に小さいため、「老眼には……」という話も出てきそうではあるが、筆者は特に不便は感じず、コンパクトなスタイリングに好感が持てた。デジタル部にはギアポジションの他、ツイントリップ、瞬間&平均燃費、時計、残走行距離などが表示される。なおトラクションコントロールはOFFにすることもできる(オフにする場面は思いつかないが)。

 

シフトペダルはシーソータイプを採用。革靴を傷つけないということもあるが「若いライダーのスニーカーも汚しません」と開発者。ただシフトパターンは通常の1ダウン4アップのため、カブと勘違いしてシフトダウンのつもりで後ろを踏むとシフトアップしてしまうということがあった。慣れが必要か、それとも普通につま先だけで操作するのも良いだろう。ちなみにSモデルはシーソー式ではなく一般的なシフトペダルとなっている。

 

STDもSもセンタースタンドは標準装備。こういったありがたい装備はスポーツモデルが一般化すると共に失われていったが、あれば助かる装備であり復活したのは嬉しい。特にこのGBの性格を考えるとあって当然の装備かもしれない。荷物の積み込みの時やチェーンのメンテ時、もしくはガレージにスマートに収納する際などに重宝するだろう。

 

 

 

GB350のバリエーションモデルとして、少し遅れて7月15日に発売される「S」。パワーユニットや基本骨格は共通としつつ、リアホイールのインチダウン&タイヤのラジアル化がなされている。これに加えハンドルは少し低く、ステップは少し後方へ微調整。車体だけでなくエンジンのセッティングも変更され、よりスポーティなテイストに仕上がっているのが特徴だ。テールセクションも鉄フェンダーの代わりに樹脂製の軽快なものになっており、テールランプはシート後端に埋め込まれたタイプ。足着きはSTDモデルと大差ないが、ステップが後退した分、ステップの前に足を降ろすか後ろに下ろすかは悩ましいところ。

 

STDと性能的には共通だが、Sではマットブラック仕上げとなり、軽快感とさらなるバンク角のため角度も若干後端を跳ね上げている排気系。ロングストロークシングルエンジンはそのままに、よりスポーティな味付けとしたというセッティングが楽しみだ。
フロントは19インチホイールのまま、タイヤも銘柄こそメッツラーに変更されているもののバイアスなのは変わらない。

 

リアホイールは17インチに小径化され、150幅のタイヤをセット。ハイグリップ系ではなく、デュアルパーパス系タイヤがチョイスされているのも雰囲気だ。
SモデルではSTDと共通のφ41mm正立フォークにフォークブーツが追加された。溝の多いタイヤと合わせてどこかスクランブラーテイストを感じさせる。

 

機能的な部分はSTDと共通だが、カラーやフィニッシュ、一部外観デザインがSTDと差別化されているヘッドライトやメーター周り。ウインカーは細身でモダンなタイプに変更されている。
純正でカスタム感あふれるシートは赤いステッチもポイント。STDで感じた若干前下がりな感覚はなく極フラットで好印象。ただタックロールデザインによるものか、腿の内側にあたる部分はSTDよりも気になった。テールライトはレブル1100の流れのLEDで、シート後端に埋め込まれる。荷物積載時には隠れてしまわないように注意が必要だろう。サイドカバーもよりスポーティな形状となり、STDよりもいくらかスリムに感じられた。

 

STDよりも後退したステップは、STDのタンデム別体式から一体のものへと変更。チェンジペダルはシーソー式ではなく一般的なものへと変わっている。低くなったハンドルとこの後退したステップにより、車体のディメンションは変わっていないにも関わらす乗車フィールはだいぶ違うとか。特にニーグリップを意識せずに気軽に乗れるSTDに対して、こちらはもう少し積極的に車体をホールドする感覚も楽しめるという。
STD比ではかなり低くなっているハンドルだが、跨るとそれでもまだリラックスした自然なライディングポジションで違和感はなく、特別前傾に感じることはなかった。なおこのカラーリングは「パールディープマッドグレー」というもので、とてもカジュアルでスタイリッシュ。他に黒もあり。

 

 

●GB350/ GB350S 主要諸元
■型式:ホンダ・2BL-NC59 ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHC ■総排気量:348cm3 ■ボア×ストローク:70.0×90.5mm ■圧縮比:9.5 ■最高出力:15kW(20PS)/5,500rpm ■最大トルク:29N・m(3.0kgf・m)/3,000rpm ■全長×全幅×全高:2,180[2,175]×800×1,105[1,100]mm ■ホイールベース:1,440mm ■最低地上高:166[168]mm ■シート高:800mm ■車両重量:180[178]kg ■燃料タンク容量:15L ■変速機形式:常時噛合式5段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-19M/C 57H・130/70-18M/C 63H [150/70R17M/C 69H] ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:マットジーンズブルーメタリック、キャンディクロモスフィアレッド、マットパールモリオンブラック [パールディープマッドグレー、ガンメタルブラックメタリック] ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):550,000円 [594,000円] ※[ ]はS


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2021/04/13掲載