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新車プロファイル2024






今回試乗したコースは栃木県北部にある、つくるまサーキット那須。舗装路サーキットでDR-Z4SM、グラベルサーキットでDR-Z4Sを体験した。当日は初秋の冷たい雨の降る中での試乗だった。まずはDR-Z4SMのインプレッションから。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:渕本智信
■協力:SUZUKI
■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、SPIDI https://store.56-design.com/collections/spidi  、Xpd https://store.56-design.com/collections/xpd

 スズキ最新のデザインコンセプトで作られた外観はスタイリッシュ。シートの厚みとリアフェンダーからラジエターシュラウドまで貫くような一本のラインが見事に調和する。DR-Z4SMはどう見てもカッコいい。17インチのスポークホイールの内径を埋めるように存在する大径フロントブレーキディスクと丸い弧の数が、いかにも強力なストッピングパワーを発揮しそうなフェイスだ。
 エンジンを始動するとDR-Zそのものの音がそっくり継承されたような排気音だ。カタログスペック的には10㎏ほど増加した車重だが追加装備を考えれば妥当だろうし、直接旧型と比べない限り重くなったことがわかり難いようなバランスで付加物は搭載されているようだ。スリムな車体が魅力だ。

#DR-Z4SM

 1速に入れてクラッチを繋ぐ。電子制御スロットルの恩恵か、これ見よがしなアンチストール制御が入るわけでもなくタタタッ、と車体を前に押し出す低速トルクが力強い。かつフレキシブルに感じられる。雨のショートサーキットではこの特性は有り難い。ちょっとブレーキのタッチを確認する。フロント、リア共に突発的な効き味ではない。それでいてタイヤのグリップを生み出すサスペンション設定も味方して硬さ、強さがない。なにせこの日はそこそこの降水量の雨。しかもつくるまサーキットはその名のとおりクルマに連続的な横Gをかけ、シャーシやドライバーの腕を鍛えようというコース。幅が広いのが幸いだが、周回してみて解ったのはすでに川が流れるほどの水膜がある。

 そのドライバビリティはとても掴みやすく扱いやすい。最初、雨量にビビって一番マイルドなCモードで走り始めた。ブレーキング時、コーナーへの進入から旋回、そして立ち上がりと続くわけだが、どこを切り取っても安心感がすごい。気温15度、雨、タイヤが暖まる事なく走り続けることになるがまったグリップ感、接地感に不安がない。

#DR-Z4SM

 つくるまサーキットは長いストレートのあと、ロングな左コーナーがある。その先が左、右、左のS字。それを立ち上がるやいなやタイトな右ヘアピンだ。さらにその先は左、また左と曲がり、浅く左に傾けながら走る短いストレートを経て荷重が掛かるがアクセルを開けていける11時の方向に曲がるような左、その先に最終コーナーを経てストレートに出る左90度がある。
 そう、右は二つ、あとは旋回から旋回、はたまた切り返しを維持しながら走るようなコースレイアウトなのだ。

 履いているダンロップSPORTMAX Q5Aは間違いなくウエット性能が高い。雨という前提ながらペースを上げてもグリップの限界は高いし滑り出しがとても穏やか。接地面がゆっくり外に流れるから察知もしやすく怖くない。さらにシャーシ設定もあるのだろうが、タイヤのキャラもフロントから積極的に舵角を当てて旋回に入るようなタイプだ。
 巧いな、と感じるのはフロントが意外と切れるのに、それがこのコンディションでも嫌な印象にならない。運動性は高いが素直な旋回性に感じた。

 しかしライディングモードがAだとタイトターンからの脱出などスロットルワークでクン、クンとフロントフォークを無駄に伸ばさないように右手首に丁寧さが求められる。Bモードはその点この日のコンディションでもベストマッチ。ブレーキングに集中できるし、この雨なりにペースを上げてもライダーの心が消耗しない。この扱いやすさと、車体全体のマッチングを楽しんでいるうちに走行時間が終了した。

#DR-Z4SM

 旋回性はオンロードのスポーツバイクから乗り換えても違和感がない。かつてのスーパーモト系バイクのようなクセを感じにくく、フロントからしっかり旋回が始まるからドライならしっかりとタイヤの接地点に荷重をのせながらグイグイ曲がるだろう。デュアルパーパスベースのどこかグニャっとした印象もなくカッチリした接地感も印象的。コース幅があることに勇気をもらって奥までブレーキングを遅らせてみても、ピッチングこそ深まるがゆったり、しっかりとタイヤで路面を捉えてくれる。良い足周りだ。唯一、流れる川に突入したとき、ABSがズズっと介入したが、その制御も制動力がすっぽ抜ける印象ではなかった。

 正直、今の環境規制で400㏄シングルエンジンながらここまで楽しめるとは。ストレートスピードは120km/h程度まで確認できるほど安心して速度を伸ばせ、そこからスーッと減速でも安心感が高い。基本的な制動性能は高く、それをフロントフォークのマッチしたセッティングで路面に押しつけグリップ力を補強しているのがよくわかる。そこから旋回へと移行するときも自然に入っていけるからライダーのリズムを乱されない。旋回の連続で忙しいサーキット、かつ冷たい雨でもスポーツできるDR-Z4SMだったのだ。

#DR-Z4SM

 2回目の試乗では一般道走行を模してサーキット左半分だけで走行してみたが、その乗りやすさは推して知るべし。50km/h程度から5速で加速もできて、60km/hを超せば充分パワフルな領域にも入ってくる。2速、3速の使い勝手の良さやエンジンのフレキシビリティ、4速で低回転からの粘り強い加速。とにかく扱いやすい。攻めなくても、嗚呼スポーツバイクっていいなぁ、という思いが沸いてくるDR-Z4SMだったのだ。

 春のモーターサイクルショーでは人垣で隠れるほどの注目を集めたこのバイク。予想を以上にスズキ開発陣の仕事は見事。25年目となるDR-Zで、かつ初代をベースにした部分もあるが、まったくの新作としていいだろう。特に走りに関するパートの造り込みにしっかりとリソースを使いものにしたまとめは素晴らしいものだった。120万円という価格に話題が及んだが、2000年当時に出た先代と四半世紀をへてリフォームされた、いや新たに作り込んだDR-Z4SMなら妥当な価格だと感じた。
 世界の販売店、ユーザーからのラブコールが再開発の原資になったそうだが、うなずける魅力を雨のサーキットで確認したのである。(次回DR-Z4Sへ続く)
(試乗・文:松井 勉、撮影:渕本智信)

#DR-Z4SM
●DR-Z4S / DR-Z4SM 主要諸元主要諸元
●DR-Z4S / DR-Z4SM 主要諸元主要諸元
■型式:8BL-ER1AH ■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ■総排気量:398cm3 ■ボア×ストローク:90.0×62.6mm ■圧縮比:11.1■最高出力:28kW(38PS)/8,000rpm ■最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/6,500 rpm ■全長× 全幅× 全高:2,270[2,195] × 885 × 1,230[1,190]mm ■ホイールベース:1,490[1,465]mm ■シート髙:890mm ■車両重量:151[154]kg ■燃料タンク容量:8.7L ■変速機形式:常時噛合式5段リターン ■タイヤサイズ:80/100-21M/C 51P[120/70R17M/C 58H]・120/80-18M/C 62P[140/70R17M/C 66H] ■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS)■懸架方式(前・後):テレスコピック・スイングアーム ■車体色:チャンピオンイエローNo.2 ×ソリッドスペシャルホワイトNo.2、ソリッドアイアングレー[スカイグレー、ソリッドスペシャルホワイトNo.2] ■メーカー希望小売価格(消費税込み):1,199,000円[1,199,000円] ※[ ]はDR-Z4SM


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2025/11/07掲載