かつて主にヨーロッパからアジアに向けて、自由と冒険、見知らぬ文化と出会いを求めて多くのヒッピーたちが極貧旅行へと出かけて行った。トルコやアフガニスタンを経由して、インドのゴアやさらにはタイのバンコクを目指す人が多かったという。そんな歴史にインスピレーションを受け登場したロイヤルエンフィールド「GOAN」に敬意を表し、このヒッピースタイルで撮影に臨んだ。
- ■試乗・文:ノア セレン ■撮影:渕本智信
- ■協力:ロイヤルエンフィールドジャパン(総輸入発売元:ピーシーアイ株式会社) https://www.royalenfield.co.jp/
- ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html
ヒッピーマインドとエンフィールドマインド
明るく前向きに生きましょうよ! のスピリッツで「ギャルマインド」なる言葉があるが、似たような意味合いで「ヒッピーマインド」もあるように思う。のんびり、仲良く、リラックスして生きようぜ、ラブ&ピース! ということだ。
そんなヒッピーたちは60~70年代に「ヒッピートレイル」というルートを辿りアジアを目指し、その目的地の一つがインド南西部の海沿いの街、ゴアだった。たいした資金も持たず、のんびりとした地域密着型旅行スタイルは当時行く先々の国々で受け入れられていたというし、若かりし頃にバックパッカーとして海外を巡った筆者からすると、ヒッピートレイルを辿るというのはきっと素敵なムーブメントだったのだろうな、と想像できる。
今では富裕層向けの巨大なリゾート地になっているゴアだが、当時はヒッピーが溢れ、それと共に西洋文化/サブカルチャーが流入し、かなりのホットスポットだったそうだ。様々な音楽やアートが花開いたことだろう。
ロイヤルエンフィールドブランドはご存知の通りイギリス発祥なのだが、早い段階でイギリスと縁の深いインドで生産されてきたという背景を持ち、そして90年代にはイギリスのヘリテイジを色濃く引き継ぎつつインドの会社となった。生産されてきたのはクラシックテイストのモデルが主で、旧き良きものを大切に、コアとなる「らしさ」を失わずにアップデートさせつつ今に至っている。
その姿勢は歴史や文化を重んじる英国的とも言えるし、リーズナブルに質実剛健なものを作り続けるというインド文化も融合していると感じる。ゴアの地で東西の文化がごちゃ混ぜになって新しいものが生まれたように、エンフィールドもまた東西が融合して、新しくはないが素敵なものが今も生み出され続けているわけだ。
そんなエンフィールドが「ゴア」にちなんで、すでに潤沢な350ccラインナップにわざわざ新機種を投入した。そのコンセプトはエンフィールドの歴史、英印の関係性そのものを表すような記念すべきモデルに感じる。ヒッピーマインドとエンフィールドマインドの接点が生んだこの「GOAN CLASSIC350」が、とうとう日本でも9/18から受注開始となる。価格は74万9800円~だ。
This is NOT a technical motorcycle
エンフィールドのラインナップには、スクラム411や水冷シングルのNEWヒマラヤンがあるものの、主となるのは350ccのシングルと650ccのツインの2系統で、このエンジンやフレームを共有して多数の味付けの異なるモデルを展開している。この350と650は最新の規制対応をするなどアップデートはされてはいるものの、空冷2バルブというベーシックな構成は変わらず、今回の発表会でもプレゼンの冒頭で「This is NOT a technical motorcycle(このバイクは決してハイテクではありません)」と宣言されたほどシンプルで、高性能とは別の尺度でバイクの魅力を追求しているのだ。
GOANはその350ccの系譜。「クラシック350」と「BULLET 350」を軸に、よりリラックスしたクルーザーテイストの「METEOR 350」、スポーティな「HUNTER 350」に加わる形で、このボバースタイルの「GOAN CLASSIC 350」が登場した。
「別の解釈でクラシックを追求しました」とのコンセプト通り、いわゆるBULLETなどのクラシック系とは毛色が違うGOAN。もちろん、多様な文化が花開いたヒッピー真っ盛りのゴアをイメージもしているのだが、実は戦後に流行した英車ベースのボバーカスタムからインスパイアされている部分も多いという。
ボバーとはもともと馬のしっぽを短く切る「ボビング」という行為に由来するらしいが、カスタムシーンではテール周りをシンプルにしたこのボバースタイルが広まると同時に、様々なカラーリングも登場したという。よってボバースタイルは造形だけではなくカラーリングを含めたものであるとう解釈でGOANは個性的なカラーを4色展開。特にイメージの強いTrip Tealはタンク横と前後のアルミリムをオレンジにするなど華やかでいて、同時にカッコいいだけではなくどこかヒッピーテイストのリラックスした雰囲気を表現。「ラブ&ピース」感のようなもの(?)を感じさせてくれる。
性能的には他の350系とほぼ同じである。エンジンに関しては兄弟車とまるで同じで、出力特性を変えるようなことは一切していない。GOANは350シリーズの性能はそのままに、プレミアムカスタム版といった位置づけなのである。
ミニエイプバーにぶら下がって
今回はあくまで撮影会であり実際に試乗することはできなかったのが残念。しかし実物に跨り、「ミニエイプバー」と呼ばれるハンドルに手を添えれば他の350シリーズとは違った雰囲気に一気に引き込まれる。
リアホイールを16インチと小径化したこともあってかシートは750mmと低い数値。出荷時にはタンデムシートも備わっているが、撮影車はタンデム部が取り払われ、鞍型のシングルシート仕様。そして例のハンドルを握れば気分はもうすっかり海辺の町、ゴアである。こんな衣装を用意していたこともあるだろうが、本当に心身ともに自由気ままなヒッピーになった気分だ。
またホワイトウォールのタイヤやチューブレスとするべくスポークの角度が個性的なアルミリムホイールなどもとても惹きつけられる部分。エンフィールドに乗っているだけでも個性的なのに、GOANときたらそれにウキウキ感や開放感がプラスされて問答無用で楽しい。信頼の350ユニットに火が入り、ロングストロークを感じながらドッタッタ!と走り出したらさぞかしステキだろうと妄想が膨らんだし、自由な価値観を持った若者やクリエィティブなライダーにノビノビと乗って欲しいと感じさせられた。
様々な魅力的なモデルを精力的に展開し、しかもプライスも良心的なエンフィールドは現在サブディーラーを含め全国で50店舗を展開中。GOANに限らず、エンフィールドの世界を是非ともご自身の目で確かめて欲しい。
■エンジン形式:空冷4ストロークSOHC単気筒 ■総排気量:349㏄■ボア×ストローク:-mm×-mm ■圧縮比:- ■最高出力:14.9kW(20.2PS)/6,100rpm ■最大トルク:27Nm/4,000rpm ■全長×全幅×全高:2,250×825×1,200mm ■ホイールベース:-mm ■車両重量:197㎏ ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:5段リターン ■ブレーキ形式(前・後):300mmシングルディスク・270mmシングルディスク ■タイヤサイズ(前・後):100/90-19 63P・130/90-16 74P ■車体色:レイブレッド、、トリップティール、パープルヘイズ、シャックブラック ■価格:749,100円〜