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試乗・解説





■試乗・文:毛野ブースカ
■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/

 現在のバイク業界で最も活況を呈しているカテゴリーと言えば排気量51~125㏄の原付二種だろう。特にスクーターはコロナ禍以降出荷台数が倍増しており、通勤・通学用はもちろん、Uber Eatsなどのフードデリバリーサービスで盛んに使われている。今までそうした「移動の足」として重宝されてきた原付一種が2025年11月で生産終了になることから、今後ますます原付二種スクーターの需要と人気が高まるだろう。

 そんな原付二種スクーターに対して、カワサキ以外のバイクメーカー3社は今までになく力を注いている。ホンダは原付二種スクーターの王者であるPCXを筆頭にリード125、Dio110、さらにホンダはPCXに次ぐ人気を誇るCT125・ハンターカブを含めたスーパーカブシリーズもあり、原付二種では盤石の体勢を敷いている。ヤマハはジョグ125、NMAX、シグナス グリファス、アクシスZ、さらにフロント二輪、リア一輪のユニークな機構を持つトリシティ125など選択肢が多い。スズキはアドレス125、アヴェニス125、そして今回取り上げるバーグマンストリート125EXをラインアップしている。

#BURGMAN-STREET125EX1
同じ名称のバーグマン400に似たビッグスクーターのようなフロントフェイスを持つバーグマンストリート125EX。試乗車の色は大人っぽい雰囲気が漂うマットステラブルーメタリック。

 スズキのスクーターといえば、レッツやチョイノリなど豊富にラインアップされていた原付一種に比べて原付二種はアドレスシリーズが最も有名で、スウィッシュやジェンマシリーズなど意外と少ない。実は先に挙げた現行モデル3台はすべてスズキモーターサイクルインディア社で製造されている。以前紹介した同じインド生まれのジクサー150の記事内でも紹介したように、インドでは都市部を中心にスクーター(90~155㏄)の需要が広まりつつある。インド国内向けに販売されているスクーターは日本と同じくアクセス(アドレス125)、アヴェニス(アヴェニス125)、バーグマンストリート、バーグマンストリートEX(バーグマンストリート125EX)がラインアップされている。価格はアクセスが最も安くて8万7,000ルビー(約15万円)、アヴェニスが9万6,000ルピー(約16万3,000円)、バーグマンストリートは約10万ルビー(約17万円)となっている。

#BURGMAN-STREET125EX1
バーグマンストリート125EXはインド軍団のスクーター三姉妹の中でも大人っぽいラグジュアリーなスタイリングと快適性を重視した装備が特徴。見た目だけではなく中身でもオーナーを魅了する。
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スクエアでシャープなフォルムのフロントカウルと、流れるようなフォルムのリアカウルを組み合わせることでバーグマンらしさを演出している。

 スズキが誇るインド軍団のスクーター三姉妹の末っ子であり、アドレス125が明るくて可愛い癒し系、アヴェニス125が元気な体育会系とするなら、バーグマンストリートは大人びた文系のキャラと言えるだろうか。バーグマンストリートとバーグマンストリートEXの最大の違いはアイドリングストップシステムの有無で、スズキの二輪車ではバーグマンストリートEXで初めて採用された。もちろん日本国内向けのバーグマンストリート125EXにもアイドリングストップシステムは標準装備されており、このモデルの最大のウリである。このアイドリングストップシステムについては後ほど述べたいと思う。

#BURGMAN-STREET125EX1
ビッグスクーターを思わせる鋭角的なデザインのフロントビュー。ポジションランプ内蔵LEDヘッドランプはウインカーとともにフロントカウルの低い位置に装着されている。
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見た目の印象と快適なライディングを実現するウインドスクリーン。原付二種スクーターでウインドスクリーンが装着されているモデルは少なく、このモデルの価値を高める一因となっている。

 バーグマンストリート125EXの現車を見ると、ややボリュームのある高級感が漂うスタイルと落ち着いたカラーリングは、キャラ通りの派手さはないものの真面目で成績優秀という印象を受ける。今回試乗するモデルのカラーはマットステラブルーメタリック。それ以外にパールグレイスホワイト、グラススパーブラックが用意されており、いずれもキャラにふさわしい色合いとなっている。ヘッドランプとウインカーはフロントカウルの低い位置に取り付けられており、さらにボディマウントウインドスクリーンも装着され、どことなくビッグスクーターのような雰囲気も醸し出している。

#BURGMAN-STREET125EX1
バーグマン400のように樹脂製のカバーで覆われた高級感漂うハンドル周り。スマホホルダーなどを使いたい方はオプションで用意されているアクセサリーマウントバーを装着することをお薦めする。
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メーターはハンドルではなくフロントカウルにマウントされている。フル液晶ディスプレイを用いたインストルメンタルパネル。ちなみにインド国内向けモデルはBluetooth接続による簡易的なナビゲーションシステムが搭載されている。

 フロアボードは前後左右とも幅広で広々としており窮屈さを感じない。シート下トランクスペースに加えてフロントインナーボックスやフロントインナーラックなど収納装備が充実しているのもスクーターならでは。さらにタンデムグリップを兼用したリアキャリアが標準装備されているのもこのモデルの大きなアドバンテージだ。

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シート下(足元)には落下防止のストッパーが付いた折り畳み式のホルダーを装着。かばんなどを携行したい場合に便利なアイテムだ。
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前後左右にゆとりのあるフロアボードは左右の足元付近が絞り込まれた形状をしており、足が下ろしやすく足着き性は良好。フットボードも広めで足を伸ばして運転できる。

 全長/軸距/重量/価格をホンダのリード125と比較してみると、バーグマンストリート125EXが1,905mm/1,290mm/112㎏/317,900円、リード125は1,845mm/1,275mm/116㎏/346,500円(マットディムグレーメタリック)となっており、バーグマンのほうが全長/軸距は長いが軽く、価格が安い。エンジンはSEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジンを進化させた124ccの強制空冷・4ストローク・単気筒/SOHC・2バルブのSEP-αエンジンを搭載。最高出力は6.1kW(8.3 PS)/6,500rpm、最大トルクは9.6N・m(0.98kgf・m)/5,250rpm。リード125は124㏄の水冷・4ストローク・単気筒/OHC4バルブのeSP+エンジン、最高出力は8.3kW(11PS)/8,750rpm、最大トルクは12N・m(1.2kgf・m)/5,250rpm。数値上の違いは走行フィーリングに影響を与えるのだろうか。両車ともアイドリングストップシステムが標準装備されており、任意でキャンセルすることが可能だ。

#BURGMAN-STREET125EX1
右ハンドルスイッチはスタータースイッチとアイドリングストップのオンオフを兼用している。スイッチの下部分を押してエンジンを掛けるのだが、スイッチのメリハリがないのと、サイレントスターターシステムと相まって乗り始めはエンジンの掛け方に戸惑ってしまった(アイドリングストップはスタータースイッチを押すことでオンになる)。
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左ハンドルスイッチは上からディマスイッチ、ターンシグナルスイッチ、ホーンスイッチとなっている。

 実走検証といえば燃費が重要チェックポイントだ。定地燃費値はリッター53.8km(60km/h、2名乗車時)、WMTCモードはリッター53.8㎞(クラス1、1名乗車時)となっており、2つの燃費値が同じというのは珍しい。アイドリングストップシステムが影響しているのだろうか。リード125はそれぞれリッター53.0㎞、リッター49.3㎞となっておりバーグマンストリート125EXの燃費は原付二種スクーターとしては優秀な数値だ。燃料タンク容量は5.5リットルで、4.5リットルで燃料警告灯が点灯すると想定するなら約242㎞は走行できるはずだ。そのへんは実走検証で明らかにしていこう。

#BURGMAN-STREET125EX1
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左側にはスマホやグローブなどの収納に適したフロントインナーボックスが配置され、内部にはUSBソケットが標準装備されている。

 外観やスペックをひと通りチェックしたところでいよいよ試乗だ。前回試乗したビッグスクーターのバーグマン400に比べてひと回り小さく、かつ車体重量が100㎏近く軽いので乗車にはまったく苦労しない。さらにセンタートンネルがなくフロアボードがフラットなため跨りやすい。ひょいっと乗れる気軽さは原付二種スクーターらしい。エンジンが掛かるまで押し続ける必要がなくワンプッシュで始動できるスズキイージースタートシステムが搭載されているので、何度もスイッチを押すことなくエンジンが始動できる。ただ、スタータースイッチ(右ハンドルスイッチ)がアイドリングストップのオンオフを兼用しているのと、サイレントスターターシステムにより始動がすごく静かで、さらにエンジンの振動も少なめなので、乗り始めはエンジンが掛かっているのか心配になった。

#BURGMAN-STREET125EX1
キーシリンダーにはいたずらや盗難抑止のためのシャッターが付属。シートオープンの方法はバーグマン400よりわかりやすかった。その横には500mlのペットボトルが収納できるフロントインナーラックが配置されている。
#BURGMAN-STREET125EX1
スクーターらしくフロント中央にはフロントフック(コンビニフック)が装備されており、エコバッグなどを掛けるのにちょうどいい。

 そんな私の心配をよそにエンジンは無事に始動。スロットルを回すと穏やかに加速し始める。エンジンはパワーよりも燃費を意識しているためか非常にマイルドな印象。一般道を車の流れに沿って問題なく加速するものの常速域は50~60㎞といったところだろうか。サスペンションがやや硬いためか段差を乗り越えるとポンポン跳ねる印象だが、オドメーターが200㎞も達していなかったので、距離を重ねればこなれてくるだろう。ハンドリングは素直でアップライトなライディングポジションからくるイージーな乗り味は原付二種スクーターらしい。

 エンジンが暖気されたところでアイドリングストップシステムが作動し始めた。停止してから4秒後にエンジンが停止。スロットルを回すと即エンジンが掛かりスタートできる。タイムラグはほとんど感じない。アイドリングストップは以前試乗したホンダADV160にも搭載されており、その際にもアイドリングストップの有無について考えさせられた。今回もアイドリングストップはオンのまま、いろいろなシチュエーションを走行して燃費や走行フィーリングにどのような影響を与えるのかを検証することにした。

#BURGMAN-STREET125EX1
フロントタイヤのサイズは90/90-12 44J、外径190mmのディスクブレーキが採用されている。ABSは非搭載。
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変速機はVベルト無段変速。リアタイヤのサイズは100/80-12 56J、内径130mmのドラムブレーキが採用されている。またキックレバーが標準装備されているのはありがたい。

 ブレーキはスクーターなので右はフロントブレーキ、左はリアブレーキとなっているのは当然として、左ブレーキレバーを握るとフロントとリアが同時に作動するコンバインドブレーキが搭載されている。バーグマン400やホンダADV160には搭載されておらず、最初はその効果を疑っていたが、ストップアンドゴーの繰り返しや、ブレーキに気遣う交通量が多い中を運転すると効果があるようだ。おそらく山道を走行する際にも役立つだろう。ツーリングが楽しみになってきた。

#BURGMAN-STREET125EX1
タンデム走行時のグラブバーを兼ねたリアキャリアは丈夫なスチールプレス製。下面には荷掛けフックが付いているので荷物が積載しやすい。純正のトップケースを装着したい場合、別途購入する必要がないのでコストが抑えられる。
#BURGMAN-STREET125EX1
ウインカー一体型のLEDリアコンビネーションランプはトップケースなどを装着した状態でも高い視認性を発揮。大型ながら一体感のあるデザインはこのモデルの持つ大人っぽさを演出している。

 うだるような酷暑の中を走行してありがたかったのがフロントインナーラック。そこにペットボトルを収納して信号待ちの間に水分補給できた。マニュアル車にはないスクーターならではのメリットだろう。シート下のトランクスペースはレインウェアや小さいショルダーバッグなら収納できるが、私が使っているAraiのオープンタイプヘルメット(VZ-RAM)は収納できなかった。ただトランクスペース上部前方にヘルメットホルダーが付属しているのでバイクから離れる時も安心だ。

#BURGMAN-STREET125EX1
124ccの強制空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブのSEP-αエンジンは、スズキ初のアイドリングストップシステムと、スターターを兼用するジェネレーターによりスムーズかつ静かなエンジン始動が得られるサイレントスターターシステムを搭載。
#BURGMAN-STREET125EX1
サイドスタンドに加えてセンタースタンドが装備されており保管や給油時に便利。

 バーグマン400と同様、原付二種スクーターも通勤や通学をメインに使われることが多いことから、群馬方面へのツーリング時の燃費や走行フィーリングだけでなく、自宅からアームズマガジン編集部への通勤や近所の移動に使用した際の燃費も計測。ジクサー150と同様、インド軍団のポテンシャルの高さを思い知らされることとなった。(続く)
(試乗・文・撮影:毛野ブースカ)

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ツーリングに際してトランクスペースに当初はボストンバッグを収納しようと試みたがスペースが狭くて断念。今回はレインウェア、タオル類を入れたポーチ、三脚、ツーリングマップルを収納した。
#BURGMAN-STREET125EX1
給油口はトランクスペース後方に設けており、給油の際はシートを開ける必要がある。燃料タンクの容量は原付二種スクーターとしては標準的な5.5リットル。

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●バーグマンストリート125EX 主要諸元
■型式:8BJ-EA23M ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ ■総排気量:124cm3 ■最高出力:6.1kw(8.3PS)/6,500rpm ■最大トルク:9.6N・m(0.98kgf・m)/5,250rpm ■全長×全幅×全高:1,905×700×1,140mm ■ホイールベース:1,290mm ■最低地上高:160mm ■シート高:780mm ■車両重量:112kg ■燃料タンク容量:5.5L ■変速機形式:Vベルト無段変速 ■タイヤ(前・後):90/90-12 44J・100/80-12 56J ■ブレーキ(前・後):油圧式シングルディスク/機械式リーディングトレーリング ■車体色:マットステラブルーメタリック、パールグレイスホワイト、グラススパークルブラック ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):317,900円


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2025/08/11掲載