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- ■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/
今回、バーグマンストリート125EXを実走検証するにあたり、自宅からアームズマガジン編集部への通勤や近所の移動に使用した際の燃費は計測できるとして問題になったのはツーリングだった。原付二種なので高速道路を使った移動はできない。すべて一般道を走らなければならず、そうなると移動できる距離が限られてしまう。少ない日程の中で行って帰ってこなければならない。個人的には最低でも2回は給油して燃費を計測したかった。そこでツーリングの行き先を熟考した結果、国道17号線を走って高崎市から国道406号線に入って群馬県にある八ッ場(やんば)ダム、榛名湖、榛名山、そして伊香保温泉を巡って前橋市に宿泊。前橋市から再び国道17号線を走るルートとした。
試乗車をお借りしてから3日間は通勤で使用した。自宅からアームズマガジン編集部までは国道20号線を走って片道約13㎞。いつも午前9時過ぎに自宅を出発するのだが、夏場は毎日のようにそこかしこで渋滞している。ストップアンドゴーの繰り返しだと、アイドリングストップシステムが作動する直前で走り出したりすることがありもどかしさを感じることもなった。帰宅時は渋滞がほとんど発生しないのでアイドリングストップシステムの恩恵を感じる時もあった。結局、ツーリングに出発する直前まで124.2㎞走行して給油量は2.50リットル、リッター49.7㎞となった。メーター上に表示されている平均燃費リッター53.8㎞(偶然WMTCモード値と同じだった)よりも悪い数値になってしまった。それでも渋滞の中を走ってリッター50㎞に近い数値は上出来だろう。
バーグマンストリート125EXに慣れてきたところで、いよいよツーリングに出発する日が来た。少しでも距離を稼ぐためにアームズマガジン編集部を夕方出発して埼玉県熊谷市に前泊することにした。トリップメーターAをリセット、燃料を満タンにして午後6時に新宿を出発。まずは都道317号環状6号線(通称山手通り)を国道17号線の分岐地点まで進む。帰宅時間帯、しかも金曜日ということもあり車の流れは悪い。国道17号線への分岐地点に差し掛かったところで国道17号線方面に進む。ここからは熊谷市までひたすら国道17号線を走る。
国道17号線近辺にお住いの方ならわかると思うが、国道17号線は浦和駅や大宮駅の近くを通る本道(中山道)と、国道254号線から分岐して首都高速5号池袋線と高速埼玉大宮線と並行してさいたま市まで走る新大宮バイパスの2種類ある。どちらのルートも交通状況も把握したうえで本道を進むことにしたのだが正直失敗した。想像以上に車の流れが悪かったのだ。荒川を超えて埼玉県に入るだけで1時間以上かかってしまった。その間、メーター上の平均燃費は徐々に下がってリッター53㎞を切ってしまった。
蕨市、さいたま市に入ったところでようやく流れ始めたが信号で停車することが多くなり、なかなか進まない。浦和駅近くに差し掛かり、気が付けばすっかり日が落ちていた。熊谷市のビジネスホテルに午後9時00分チェックイン予定だが、休憩なしで走っても間に合わない。大宮駅を過ぎて上尾市に入ると交通量と信号がグッと少なくなりペースアップ。メーター上の平均燃費も上がってきた。
上尾市、桶川市、北本市を通過して鴻巣市に入り、さすがに休憩せずに走ってきて疲れたので、国道17号線沿いのマクドナルドでしばし休憩。気を取り直して再び走行開始し、熊谷市のビジネスホテルに到着したのは午後9時30分。本来なら2時間30分かからずに到着する予定だったが3時間以上かかってしまった。ここまでの走行距離は66.4㎞。メーター上の平均燃費はリッター58.4㎞。燃料ゲージは減っていなかった。実走検証にとって様々な走行条件で走れるのはいいことだが、帰りは新大宮バイパスを走ることを決意した。
翌朝、天気は晴れ。取材日は7月下旬で、熊谷市は全国でも有数の「暑い町」だけに朝から暑い。これまでと同じように熱中症対策としてフロントインナーラックにペットボトルを収納して出発。まず国道17号線を走って高崎市に向かう。土曜日ということもあり交通量はそれほど多くはなく、メーター上の平均燃費がリッター60㎞に迫る勢いだ。順調に高崎市に入り、国道17号線から国道18号線を安中市方面に進み、すぐ国道406号線の分岐点に差し掛かるので、国道406号線を川原湯温泉・八ッ場ダム方面まで進む。
川原湯温泉・八ッ場ダム方面に進むにつれて緩やかに登り坂が続く。交通の流れには充分ついていけるもののメーター上の平均燃費は徐々に下がり始めている感じがした。途中、「道の駅 くらぶち小栗の里」で休憩。ここまで130.5㎞走行して燃料ゲージが1目盛り減っていた。「道の駅 くらぶち小栗の里」から国道406号線を走り、県道377号線に入って大柏木川原湯トンネルを抜けると川原湯温泉に到着。JR吾妻線の川原湯温泉駅に向かうとひと気がまったくない。山間部なのにものすごく暑い。川原湯温泉駅近辺で撮影したのだが汗が止まらない。撮影後、川原湯温泉駅まで戻ってしばし休憩した。
八ッ場ダムが完成するまでの長い道のりに思いを馳せつつ川原湯温泉駅をあとにして不動大橋を渡り、国道145号線沿いにある「道の駅 八ッ場ふるさと館」に向かった。人気スポットとあって多くの観光客やライダーが訪れている。ここで「八ッ場ダムカレー」を食べた。「道の駅 八ッ場ふるさと館」で一服後、八ッ場ダムに向かった。川原湯温泉からも見えてダムで堰き止められてできた八ッ場あがつま湖はエメラルドグリーン色の水を湛えている。周囲の山々の景色と相まって風光明媚な場所だ。
八ッ場ダムを見学して、ここからは榛名湖と榛名山、榛名神社、伊香保温泉を通って宿泊地である前橋市に向かう。国道145号線を中之条方面に走り、郷原の交差点を右折して県道28号線を榛名湖方面に進む。県道28号線と榛名神社に向かう県道33号線は登り坂が続くワインディングルートで、勾配がややきつい登り坂に差し掛かるとややパワー不足を感じた。メーター上の平均燃費も下がり始めて、ストップアンドゴーを繰り返すシチュエーションよりもガソリンを消費している感じを受けた。コーナリングは安定しているもののパワーよりも燃費重視のセッティングがされているためだろうか。実際には平地を走ることが多い原付二種のスクーターの特性を考えれば当然なのだろうが、登り坂が多い街中を走ることが多い方は気にしておいたほうがいいかもしれない。
榛名湖に到着すると標高が高いせいか少し涼しい。榛名湖を巡り、榛名山を見つつ県道33号線を走って榛名神社に向かう。榛名神社は入口(随神門)から本殿までの距離が550mあり、バイクを駐車場に置いて登り坂が続く参道を汗だくで歩いてお参りした。榛名神社を参拝した後、県道33号線を榛名湖方面に戻り、県道33号線を進んで日本でも有数の温泉地である伊香保温泉に向かった。
伊香保温泉は群馬県渋川市にある群馬県を代表する温泉地だ。万葉集の中に伊香保について歌った和歌が収められており、上毛かるたでは「伊香保温泉 日本の名湯」と歌われている。伊香保温泉といえば365段も続く石段のある温泉街が有名だ。熱海温泉と同様、近年は若い方に人気の観光地となっている。この日も多くの観光客が訪れていた。私も今まで伊香保温泉を数回訪れている。ここまでの汗を流すべく、共同浴場「石段の湯」に入湯した。やや茶褐色の熱めのお湯はいかにも温泉らしく名湯の名に恥じない。
「石段の湯」を出たところで時刻は午後3時30分を過ぎていた。ここまで200㎞近く走行し燃料ゲージの目盛りが残り1つになった。前橋市駅前のビジネスホテルまでは大丈夫なはずだ。伊香保温泉から前橋市方面に向かう県道15号線を進む。下り坂なのでガソリンの消費を抑えられる。途中、どうしても水沢うどんが食べたくなり、午後4時過ぎでも営業しているお店を発見、水沢うどんを食べることができた。
お腹を満たしたところで県道15号線沿いにある「伊香保おもちゃと人形自動車博物館」に立ち寄った。館内に昭和の街並みが再現され、懐かしいおもちゃやテディベアなどのぬいぐるみ、昭和40~50年代にかけて製造された自動車が展示されており、私のような昭和生まれにはグッとくる、何時間いても飽きない私設ミュージアムだ。一人はもちろん家族連れでも楽しめる場所だ。
子供の頃の懐かしさに浸ったところで、前橋市駅前にあるビジネスホテルに向かう。県道15号線、県道10号線を走って向かう途中で燃料警告灯が点灯し始めた。目的地まで残り数㎞なので大丈夫だろうが、最近ギリギリが多くて困ってしまう。無事ビジネスホテルに到着してここまでの走行距離は242.8㎞、メーター上の平均燃費はリッター58.4㎞となった。前編で「燃料タンク容量は5.5リットルで、4.5リットルで燃料警告灯が点灯すると想定するなら約242㎞は走行できるはずだ」と書いたが、その通りの展開になっている。明日ホテル近くのガソリンスタンドで給油するのが楽しみだ。
翌朝も天気は晴れ。今日は前橋市から国道17号線を走ってアームズマガジン編集部に戻るだけのスケジュールだ。まずはホテル近くのガソリンスタンドで給油。すると4.44リットル消費して燃費はリッター54.9㎞となった。WMTCモードよりややいい数値だが、ほぼ想定通りに燃料警告灯が点灯したことになる。ここからは平坦な道を走るので、渋滞に巻き込まれなければ燃費が向上すると思われる。
前橋市から高崎市方面への国道17号線には向かわずに伊勢崎市方面に向かう国道17号線(上武国道)を走る。上武国道は道幅が広くて信号が少なく、休日のためかかなり流れがいい。まさに淡々と進んでいく。伊勢崎市、太田市を過ぎて利根川を渡り、熊谷市に戻ってきた。鴻巣市に入って本道と合流。桶川市から本道から上尾道路に入り、そのまま新大宮バイパスを進む。ここまでかなり順調に進んだ。一昨日とは大違いだ。
走りながらふと思ったのが、信号が少なく流れに乗って速いペースで走るよりも、ある程度走ってアイドリングストップ、またある程度走ってアイドリングストップを繰り返すほうが燃費にとっていいのではないか。というのも、上武国道に比べて交差点の多い新大宮バイパスを走っていると燃費が上がり始めたからだ。つまり、60㎞/h前後で走行するほうが無駄を抑えられて、アイドリングストップのメリットが生かせるのではないだろうか。新大宮バイパスから国道254号線を池袋方面に向かい、都道317号環状6号線に入って新宿方面に進むとその傾向がより顕著になった。
新宿に到着して一昨日と同じガソリンスタンドで給油。2日間の走行距離は354.0㎞、前橋市からここまで110.1㎞走行して1.87リットル消費して燃費はリッター58.9㎞と最もよい数値となった。2日間の燃費は6.31リッター消費してリッター56.1㎞、WMTCモードを超える結果となった。様々な走行条件だったことを考慮しても立派な数値だ。
ここでいったんトリップメーターAをリセットして、試乗車を返却するまでの2日間は再び自宅とアームズマガジン編集部の通勤に使用。返却時までに92.0㎞走行して1.77リットル消費、燃費はリッター52㎞となった。7日間の総走行距離は570.4㎞、10.58リットル消費して燃費はリッター53.9㎞となった。53.9㎞……WMTCモードの数値(リッター53.8㎞)とわずか0.1リットルしか違わない。こんなことは実走検証史上初めてだ。WMTCモードが正しいのか、今回の試乗条件がWMTCモードの走行条件と同じなのか…。いずれにしてもバーグマンストリート125EXの実走燃費はリッター53㎞後半であるということが判明した。
今回、群雄割拠の原付二種カテゴリーにインドから送り込まれたバーグマンストリート125EXに試乗して、同じインド軍団のジクサー150、Vストローム250SX同様、ポテンシャルの高さを見せつけられた。エンジン特性はマイルドで、かっ飛ばしたい方には物足りないかもしれないが、原付二種初心者や「移動の足」としてスクーターを使いたい方にはピッタリだと思う。パワーよりも燃費に重きを置いたセッティングは、実走後の燃費に現れている。スズキのバイク初のアイドリングストップシステムは走行条件次第で燃費に貢献している。質実剛健、真面目で実直。実用性という点では文句が付けようがない。
まだまだ街中では見かけることが少ないバーグマンストリート125EX。先見の明があるオーナーは羨望の目で見られる日が来るかもしれない。(完)
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