2気筒ロータリーバルブエンジンをカワサキ初のパイプフレームに搭載した本格スポーツモデル250A1と同時開発された、ボアを9mm拡大した上級モデル。A1が登場した翌年の春に発売を開始した。A1とはシリンダ-のフィン形状が異なる他、クロームメッキタンクや国産車初採用と言われるタックロールシート、ステアリングオイルダンパー、2重サイレンサー方式のマフラーなどは、A7のみに装備された。ゼロヨン13.6秒、最高速度は175km/hという高性能で人気を博し、対米輸出車にはアベンジャー(復讐者)の名が付けられた。
1966年の東京モーターショーでデビューし、翌年の春に「こういうクルマをスポーツと呼ぶ」のキャッチコピーで登場したヤマハ初の350専用設計車。ゼロヨン13.8秒、最高速度173km/hの高性能を誇り、スリム&コンパクトが信条であった従来のヤマハデザインから一転した重厚な車体とデザインは、グッドデザイン賞を受賞している。それまでは250のボアアップが定番であったヤマハのBIG2ストスポーツモデルの開発は以後350メインとなり、250はボアダウンという手法が取られた。1968年12月に起きた三億円事件では、盗難車の350R1がニセ白バイとして使われ、バイクに無縁の一般にも名前が知れ渡った。
余裕のある大排気量車が求められていた北米をメインターゲットに、世界GP参戦で蓄積した技術力を結集して4スト以上の性能を持った2ストを目標に開発された当時世界最大排気量の2スト量産車。前年の東京モーターショーに参考出品されたスズキファイブをベースに、高速安定性を高めるためホイールベース延長、タイヤサイズ変更などの改良を施し慎重なテストを重ねた末、国内では3月1日から発売された。アルミシリンダー、分離給油CCIを採用したエンジンは、250ccのツインモデルT20をそのまま拡大したようにも思えるが、各部を大幅に改良し焼き付き防止の対策もなされ、最高速度は180km/h、ゼロヨン13秒フラットをマークした。7月には白バイ仕様の2台が警視庁に寄贈され、翌年に本格採用となった。翌年モデルでは、タンクのメッキやラバーが廃止されたスマートな姿となり、フレームなども見直されると共に、キャブ径を2mm小型化して中低速域での扱いやすさを向上させている。
350R1をベースに、5ポートのニューエンジンに変更され、タンク形状などもよりスポーティーなスタイルへとモデルチェンジ。アップマフフラー、ブリッジ付きのハンドル、フォークブーツなどを装着したスクランブラーYR2-Cもラインアップされたが、どちらも輸出専用で国内では販売されなかった。ちなみに外装系の変更はなかったが、5ポートのニューエンジン自体はこの年の5月から350R1にも搭載された。
1968年から生産が開始された500-SSは、輸出仕様のミッドナイトホワイトが最初に登場した。北米向けはCDI点火で、チャンピオン製のブリッジのない沿面プラグ(溝なしプラグ)を採用し、メーターはマイル表記。リアフェンダーが短く、初期型はウインカーも装着していなかった。欧州仕様はアメリカ製チャンピオンプラグの入手が難しかったため、CDI点火ではなく3ポイント式3コイルバッテリー点火でシールドプラグキャップを装備し、標準プラグを沿面ではないNGKとした。リアフェンダーが長く、ハンドルは700mmのフラットバーと840mmのアップタイプが存在する。国内では1969年8月に、雨水の侵入によりリークする電装トラブルが多かったディストリビューターのキャップ部分やコードを改良した1970年型となるH1のピーコックグレーが「黒の疾走車」のキャッチコピーで最初に発売された。翌年6月には、ミニスカ風の白いショートコートに、サイケ模様のブーツとヘルメットの女性のカタログが話題となり、日本ではイメージカラーとなったキャンディトーンレッドが追加された。※写真上段は欧州仕様、下段は北米仕様。
分離給油システムCCIを採用し、外装もスポーティなスタイルへフルモデルチェンジをおこなったT250と共に、1968年の東京モーターショーでデビューし、翌年5月に発売されたニューモデル。空冷2気筒のT250がベースのボアアップモデルで、パワーアップに対応してフレームも強化されている。当時はまだ少数だった6段ミッションも装備していた。
1968年の東京モーターショーで発表されたA7のモデルチェンジ版。北米で人気の高かったW1スペシャルのイメージで、タンクラバーのないシンプルなスタイルへ外装を一新。トリップ付きのセパレートメーター、前後ステンレスフェンダーの採用などと、キャブをφ2mmアップにより1.5馬力パワーアップし、最高速は177km/hとなった。1969年3月から国内でも販売された。
CB750FOURが圧倒的な人気だった1968年の東京モーターショーで、グランプリ350(輸出車)として発表された350R1の後継車。スポーティーなタンク、タックロールシート、セパレートメーターでモデルチェンジ。エンジンは1968年5月から350R1にすでに採用されていた、350R2と同じ改良型5ポートで最高速度はR1から変更なく173km/h。車体色は写真のブリリアンレッドの他にアドリアンブルーも用意された。アップマフラーやブリッジ付きのバリエーションのスクランブラーR3-C(車体色はカリフォルニアオレンジ)も同時に発売された。
350R3に変わって登場したミドルクラスのニューモデルは、スポーティに大変身。市販レーサーTD2のエンジンをベースに新たに設計されたフルサイズ350のショートストローク5ポートエンジンを、TD2と同タイプのフレームに搭載した市販レーサーレプリカ。3月の登場時の名称はスポーツ350RXだったが、9月のカラー変更時にRX350に変更された。最高速度170km/h、ゼロヨン13.8秒。
1969年の東京モーターショーでお披露目されたモデルチェンジ版は、マッハシリーズを意識した外装系に一新されると共に、ヘッドライトやメーター取り付け位置を高めにして見た目の車格感もアップさせている。車体色はパールキャンディーブルーのみ。
T500で先鞭を付けたBIG2スト路線で、CB750FOURに真っ向勝負を挑むべく開発された国産市販車初の水冷エンジン搭載車。1970年の東京モーターショーでプロトタイプが発表され発売が待ち望まれたが、さらに耐久性、信頼性を向上させるためテストを積み重ね、発売開始は翌年9月となった。その成果で「ラジエターの電動ファンが回ったのは酷い渋滞のバンコクのみ」という有名な逸話を残した。ピーキーなイメージの強いBIG2ストだが、中低速トルクを重視したセッティングにより、ツーリングユースにも向いた性格であり、大きな車格と水冷エンジンからウオーターバッファロー(水牛)の愛称で親しまれた。車体色はパール系のキャンディーイエローオーカー、キャンディージャッカルブルー、キャンディーブライトレッドの3色。
「量産車で世界最高の加速性能を発揮」を目標に開発されたSSシリーズのフラッグシップ、通称マッハⅣ。単なる500-SSのボアアップ版ではなく、クランクシャフトをはじめ各所が専用設計となった。500で問題となったCDIは、各気筒を独立させた3回路マグネット式CDIによりディストリビューターを廃止、各気筒ごとの点火時期調整が可能となり、信頼性、耐久性が向上した。国内では1971年11月からゴールドが発売され、当初はブルーのみであった輸出仕様も後にゴールドが追加された。
A7に代わり、3気筒マッハシリーズのミドルモデルとして「40年間お待たせ致しました。ウシロまで気を配ったクルマ。はじめて。テールアップGT」「にっぽんの高速GT」などのキャッチコピーと共に1971年4月に登場。海外ではマッハⅡの愛称で呼ばれた。ほとんどないような短いリアフェンダーにアップハンドルが国内、北米仕様で、欧州仕様はロングリアフェンダーに全高50mm、全幅が60mm低く短いフラットバーハンドルを装備した。車体色は国内、海外共にレインボーと呼ばれるグラフィックにレッドとホワイトの2色。
シリンダーヘッドの形状など細部が改良されたGT250のモデルチェンジに合わせて登場したT350の後継モデル。T350と同様にGT250のボアを7mmアップした兄弟モデルで、GT750の誕生に合わせ、500とともに車名がGTに変更された。携帯式の空気入れをフレームの後部右側に標準装備している。
350が主流であったミドルクラスで、ワンランク上を狙って製作されたGT350の後継車。エンジンは俊足の軽自動車として高い評価を得たフロンテ(LC10)の空冷3気筒360ccエンジンを参考に設計され、冷却にはシリンダーヘッドに巨大なボックス状のエアダクトを設置し中央シリンダーの熱問題を解決するラムエアシステムと呼ばれる独自の空冷システムを採用した。マフラーはGT750と同様に真ん中のエキパイが左右に振り分けられた4本マフラーを採用している。1971年の東京モーターショーに参考出品され高い注目を集め、1972年1月から発売が開始され、4月にはフロントディスクブレーキモデルが追加された。電気モーターのようといわれたスムーズな3気筒エンジンと、安定して操縦しやすいことから教習車としても多数採用されている。
GT750、GT380の後に登場したGT500の後継車。GT380と同じラムエアシステム付きの空冷3気筒エンジンだが、上級モデルらしくフロントディスクブレーキとセルスターターを標準装備して登場した。
750-SS、350-SSが登場し、SSシリーズが完成した1972年は、シリーズ共通の通称レインボーグラフィックに。フロントフォークのアウターチューブがφ36mmのアルミ製となり、フロントに油圧式ディスクブレーキなど750-SSと同様の装備が投入された。点火系は熱に弱いCDIと、リークに悩まされたディストリビューターから3ポイント式バッテリー点火に変更されている。国内仕様は1月発売。装備、デザインなどはH1Bと同じだが、点火方式をCDIのままとしたH1Cも北米向けに生産された。
RX350に油圧式ディスクブレーキを装着したPROが4月に登場。ヘッドライト下にアクセントプレート、リアショックは不等ピッチのコイルスプリングが新たに採用された。車体色は写真のマンダリンオレンジと黄色ベースのキャンディオレンジ。
※諸元は基本的に国内仕様です。写真も国内仕様が基本ですが、特に併記ない場合でも輸出仕様の場合もあります。