世界で戦っていた野左根航汰が全日本に復帰、日本郵便でST1000を走らせていた8耐ウィナーの高橋巧、同じく8耐ウィナーの長島哲太もJSB1000に参戦。長島に至ってはタイヤメーカーはブリヂストン勢が優勢なJSB1000クラスにおいて、ダンロップタイヤで殴り込みをかける。そして最も話題をさらったのが加賀山就臣率いるチームカガヤマ。長年のスズキを卒業してドゥカティのファクトリーマシン、パニガーレV4Rを駆ることになり、ホンダから水野涼をスカウトし、イタリア大使館で参戦発表のレセプションを行うなど開幕前から話題沸騰、まさに「黒船襲来」の騒ぎで全日本を盛り上げている。またスポット参戦でも、ST1000のV3チャンピオン・渡辺一馬、EWC参戦発表をした渡辺一樹やヨシムラの渥美心など、開幕戦のJSBクラスは豪華な顔ぶれが揃った。
F1日本グランプリの開催日程の都合で、例年より1ヶ月ほど早い開催となった鈴鹿2&4レース。気温、路面温度ともに低く、予選前に降った雨が雪になり、強風など荒天により開始直前に予選がキャンセルされた。このため、決勝グリッドは金曜日のART走行の総合結果から算定され、長島哲太がポールポジション、2番グリッドに水野涼、ヤマハの岡本裕生がフロントローに並んだ。
14周の決勝レースがスタート、抜群のスタートを決めたのは水野、そして逆バンクで長島が水野をパスしてトップに、これにチャンピオン・中須賀克行が続きトップ争いが展開されるが、渡辺一樹の最終コーナーの転倒により赤旗中断。全車が3ラップを消化していなかったため、MFJ規則により「やりなおし」となり、再度14ラップのレースを行うことになった。
仕切り直しとなったレースでは長島がホールショット。中須賀、岡本、水野、渥美、岩田悟と続く。そして1ラップ目の裏ストレートで4番手の水野が見事な3台抜きを見せ、トップで最終コーナーを立ち上がってきた。水野を逃したくない中須賀は背後にピタリと付け2台で逃げていく。少し間をおいて長島、岡本、渥美の3台。ペースの上がらない長島は岡本にパスされ4番手に後退、渥美も長島をパス。7ラップ目に、中須賀が一瞬の隙をついてトップに立つと今度は水野が中須賀を背後から狙う展開に。レースはこれから後半戦というところ、4番手にいた渥美が転倒しセーフティーカーが介入。11ラップを紹介した時点でレースは赤旗で終了。
開幕戦を制したのは中須賀、2位にドゥカティ初レースの水野、3位に岡本となった。
中須賀克行コメント
「決勝は思っていた以上に気温があがってくれ、ただ昨日より風が強い状態だったのでタイヤがあたたまるまでは落ち着いていこうという作戦でした。ダンロップの長島選手がアウトラップから速いのはわかっていたので、とにかくスタートで前にでて序盤から抑えようという作戦を立てていました。付いていくのに必死だったのですけど、思ったよりも行けて、その後は落ち着いて走ることができた。水野選手のドゥカティがどんな走りをするのか分からなかったのですけど、自分たちのメーカーの長所を活かせたのかなと。セーフティーカー後は赤旗中断で終わってしまったのですが、いつもより早いタイミングで前に出て、仕掛けていったことが結果に繋がりました。ファンの皆さんのまえでチェッカーを受けられなかったのは残念ですが、レースとしては1位でフィニッシュすることができて良かったと思います」
水野涼コメント
「今週は走行日が1日多く始まったのですけど、昨日の予選がキャンセルだったのでスーパーフォーミュラの走行後のコンディションで走るのは決勝が初めて。レースが始まってみると思ったよりグリップ感が得られなかったが、序盤からペースを上げていこうと思って、赤旗前も赤旗後も自分がレースを引っ張っていました。ペースを落としたときに中須賀さんに抜かれてしまい、最後は赤旗で終わったのですけど、自分が前を許してしまったことで2位という結果になりました。ただ、先週のテストでのシェイクダウンからわずか5日間での走行時間を考えると、2位という結果は前向きに捉えられますし、強敵のヤマハファクトリーに対してまだ叶わない部分と、自分たちのポテンシャルをレース中に感じることができた。もちろん悔しいですけど、チームの準備を考えると最低限の結果は残したと思うので次のもてぎは優勝を狙います」
岡本裕生コメント
「金曜の最後の走行で転倒してしまい、その後の予選がキャンセルとなり、修復してもらったバイクを朝フリーから走らせたのですが。タイヤのウォームアップの課題が克服できないまま決勝を迎えることになりました。赤旗後はウォームアップ性のいいタイヤに変更し感触は良かったのですけど、初めて履いたタイヤだったことと、長島選手とのバトルで前の2台と離れてしまった。自分としては完走できたことはひとまずホッとしたのですけど、今までと同様に課題のたくさん残るレースでした」
(文・写真:楠堂亜希)