久しぶりに袖ケ浦フォレストレースウェイに一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)のパラモトライダー体験走行会が戻ってきた。この体験会は、レジェンドライダー青木三兄弟の、三男・治親と長男・宣篤が立ち上げたSSPが主催するイベントで、障がい者を対象にバイクを乗る機会を設けようというものである。
ここであえて説明するまでもないが、1990年代から2000年代にかけて国内外で活躍したレジェンドライダー・青木三兄弟。その次男で、事故によって、バイクを降りざるを得なくなった青木拓磨選手をもう一度バイクに乗せたいという企画から立ち上がったSSPが、次に展開をしたのが、このパラモトライダー体験走行会である。
拓磨選手と同様に事故などでバイクに乗れなくなった元ライダーを再びバイクに乗せ、バイクの楽しさをもう一度味わってもらいたいというもので、SSPの定期的な活動として頻繁に行われてきた。障がいの内容もバイク経験も問わず、対象をどんどんと広げてもいる。
パラモトライダーを送り出したボランティアスタッフたちがホームストレートのピットウォール越しに見守る中、パラモトライダーたちはその声援に応えながら走行を重ねていく。
開催場所は、バイクを動かすだけの広さがあり、貸し切りの状態にできるのであれば、とサーキット、自動車教習所、駐車場とさまざまな場所で開催してきた。その最初の体験走行会の場所が、今回の袖ケ浦フォレストレースウェイである。SSPの活動に真っ先に協賛し、場所を提供してくれたのが2020年6月のこと。以来今回で8回目、約13ヵ月ぶりの袖ケ浦での体験走行会となった。
パラモトライダーたちが乗るバイクはSSPが用意する。参加者それぞれの障がいに合わせ、バイクをカスタム。下半身不随のパラモトライダーには、ビンディングでライディングブーツを固定できるようにし、シフトチェンジを手元で行なえるハンドドライブユニットを装着している。
ボランティアスタッフも、当日朝からサポートについてのレクチャーを受けシミュレーションを行った後、班分けをし、それぞれの役割を明確にして、ライダーの移乗や発進、そして停止のサポートを行う。
今回参加したパラモトライダーは、脊椎損傷の4名と、右足大腿切断による義足、そして脳出血による半身麻痺という全6名。いずれもパラモトライダー体験走行会での経験があることから、走行経験の少ない牧原伸之さんのみ転倒を防止できるアウトリガーを装着したKTMデューク250で走行の再確認をしたが、他のパラモトライダーたちはそのままサーキット周回をすることとなった。今回袖ケ浦のコースは他の一般スポーツ走行の時間とのシェアとなっているため、20分間の走行枠を5回使用して、同時に3名のパラモトライダーを走らせるという展開となった。
発進や停止のタイミングで不安定になるバイクを支えるボランティアスタッフが支えるのだが、今回はボランティアスタッフに、この春に就職したばかりの新入社員を連れてきた企業もあって、多くのボランティアスタッフが集まった。
コース上でも万が一何かあったときに備えて、パラモトライダー走行時にはボランティアスタッフが待機し、「いつでも受け止める」と。
青木治親SSP代表から、2度目となる箱根パラモトライダーツーリング「やるぜ!!箱根ターンパイク」開催決定が知らされ、参加者から大きな拍手が沸き起こった。
今回の体験走行会の場で、SSPの青木治親代表から重大発表が行われた。昨年、神奈川県にあるアネスト岩田ターンパイク箱根にて占有貸し切りで行なわれた「やるぜ!!箱根ターンパイク」だが、これを今年も開催することができる、というもの。その開催日は2023年9月10日(日)だ!
(文・写真:青山義明)
一般公道だが、借り切ることができて、免許がないパラモトライダーでも走行が可能となる。詳細はSSPのホームページ(https://ssp.ne.jp/)で今後発表されるだろう。
2020年に初めて開催となったパラモトライダー体験走行会の第一回から参加をしている野口 忠さん(脊椎損傷 胸椎Th12)。「今日は天気も良くて、バイクに乗るには一番いい季節。いつもどおり楽しかったですが、今日は気持ちも良かったです。今年も箱根のイベントに参加するつもりです。自分の周囲にはバイクに乗ってみたいと言っている人も多いですし、もっと多くの人にも参加してもらえるように声かけもしていきたいですね」とコメントしてくれた。
パラモトライダー体験走行会には、ボランティアスタッフとして頻繁に参加している丸野飛路志さん(右足大腿切断)。今回は一年ぶりにライダーとして走行を経験。最近は青木拓磨選手主催の「レッツ! レン耐」への参戦が多かったため「やっぱり大型バイクってアクセルの付きも良いし、今日の走行もけっこういいスピードで走ることができて楽しめました」と。
丸野さんとともに「レッツ!レン耐」に参戦を続けており、先週末にも筑波コース1000でレースをしてきている古谷 卓さん(脊椎損傷 胸椎Th12腰椎L1)は、「久しぶりのSSPでの走行は楽しかったです。今回KTMのスーパーデュークに乗せてもらって、けり出しがすごくて乗り味は初めての感じで楽しめました」とコメント。
脳出血による右半身麻痺の障がいを持つ早岐伸子さんは、今回4回目にして初めてのサーキット走行となった。まだ身体の反応の遅れと、右手の細かな動きが伴わず「もっとしっかりリハビリをしてなんとか克服したい」とコメントしてくれた。また、箱根でのイベントにも参加が可能となったことで「箱根に向けて頑張りたい」と。
「最高でした。スタッフの皆さんのおかげです、ほんとにありがたいです。もう言葉になりません」と脊椎損傷での半身不随となっている牧原伸之さん。今回の走行で、きちんと走れることが確認できたことから今年の箱根でのイベントにも参加が許されたことについての「ただただうれしい!」といコメントしてくれた。
栗本秀幸さん(脊椎損傷 胸椎Th2)は、「今日はハプニングがあって1回しか乗れなかったですが、もともと(バイクを乗るという)諦めた時間が、また始まったということですから」と、すこし走り足りなかったようだが「それでもバイクの乗れたことに感謝ですよ」と楽しめた様子。
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