CBRはいったいいくつまで「R」が増えるのだろう? と余計な心配をしてしまうほど、CBR1000RRに「R」がまた増えたのは2020年3月。軽口はともかく、ホンダのフラッグシップ・スーパースポーツ、CBR1000シリーズがフルモデルチェンジを受けて4代目に生まれ変わった。
かつては“レーサー・レプリカ”と呼ばれていたスーパースポーツモデルのフラッグシップともなれば、毎年のごとく改良が行われて、と想像をしてしまうが、CBR1000シリーズといえども通常のスポーツモデルと同様なモデルチェンジサイクルに則って行われているのを再確認した。だたフルモデルチェンジ、マイナーチェンジ等をどうとらえるかによっても世代数は変わってくるのであくまで目安だが。
ここでは、便宜上、共通の車体型式を1世代と数えてみたので、4代目、とさせていただいている。リッターマシンになったCBR1000RRの初代が「SC57」、2008年9月の初のフルチェンジで2代目「SC59」、2017年3月の2回目のフルチェンジで3代目「SC77」、そして2020年3月のフルモデルチェンジで4代目「SC82」に発展というストーリーに。
CBR954RRの後継モデルとして2004年4月に発売されたスーパースポーツが、CBR1000RRだ。
2002年、2003年と2年連続でMotoGPチャンピオンマシンとなったRC211Vの先進技術を取り入れて新開発された水冷4ストロークDOHCエンジン、ユニット・プロリンクサスペンション、センター・アップ・エキゾーストシステム、電子制御油圧式ロータリーダンパー、HESD(ホンダ・エレクトロニック・ステアリング・ダンパー)など当時のホンダの先進技術の粋を集めたマシンだった。
その後、2006年2月には、車両重量を4kg軽量化、カウル表面積を約13%縮小するなどの改良が行われた。エンジンもシリンダーヘッドの形状やサイズを見直し、バルブ形状、燃焼室形状を含めての改良で、足回りではフロントディスク径の拡大、キャスター角、トレール量を変更するなどにより、より軽快な操縦性の実現とマスの集中をはかっていた。
2008年9月には「オール・ザ・ベスト・イン・スーパースポーツ」をキーワードに初のフルモデルチェンジが行われた。更なる運動性能の向上を図るため、空力性能の向上とマスの集中化が行われ、よりコンパクトなフォルムのボディデザインに変更されている。スタイリング上の特長でもあったセンターアップ・マフラーは、キャタライザーを内蔵する特徴的なデザインの角張ったサイド・マフラー形式となった。
エンジン面ではシリンダーヘッドが小型化され、各パーツの徹底的な軽量化と合わせて、エンジン単体で約2.5kgの軽量化とコンパクト化を達成している。継続して採用されたPGM-FIと新採用の触媒により平成19年国内二輪車排出ガス規制をクリア。
2011年12月には、足回りを中心に大幅な見直しが行われた。操縦性を大きく左右する前・後サスペンション及び前・後ホイール形状を変更。ブレーキング時の安心感と立ち上がりのトラクション性能を向上させ、スポーツライディング時の扱いやすさもさらに向上させた。その他、メーターは視認性の高いフル液晶画面を採用、新たにギアポジションインジケーター、サーキットでのスポーツ走行に役立つラップタイマー、REVインジケーターを設定し、スポーツライディングにふさわしい装備としていた。
外観では、空力性能の向上とマスの集中化を図ったコンパクトなフォルムを引き継ぎながら、「スピード感と躍動感あるダイナミック」をキーワードに、ウェッジシェイプを基調にしたシャープでスピード感あふれる造形とされた。また、フロントのノーズカウル下には、空気の流れをコントロールし、ハンドリングの向上に貢献するチンスポイラーを新たに装備していた。
2012年11月のモデルチェンジでは、ロスホワイトとグラファイトブラックの2色を新たに設定したのみで2013年モデルとして発売された。また、同時にMotoGPで活躍する“Repsol Honda Team”カラーを施したCBR1000RR Special Editionを11月12日から2013年1月7日までの受注期間限定で発売している。
2014年2月には、エンジンの吸排気ポート形状を変更することなどにより、4kWのパワーアップが行われたのを始め、新形状のウインドスクリーンを採用するなど、各部の見直し、熟成を図るマイナーチェンジが行われた。また、オーリンズ社製前後サス、ブレーキキャリパーにはブレンボ社製を採用するなど、より特別な仕様とした「CBR1000RR SP」タイプもこの時点からラインナップに加わっている。
2017年3月は、久々のフルモデルチェンジを受けたCBR1000RRシリーズだが、歴代マシンのコンセプトである「トータルコントロール~操る楽しみの最大化」を“ネクストステージ”に発展させるべく、クラス最軽量の車両重量の実現(直4、リッタースポーツクラス)、マス集中化がもたらす軽快性、そして出力向上と扱いやすい特性を両立させたパワーユニット、ファンライディングをサポートする電子制御技術の採用など、操る楽しみをMAXに追求した新たなCBRシリーズのフラグシップマシンに生まれ変わった。
ただ、電子制御系の機能を熟成させることがメインで、外観上での変化といえばカラーリングの一部変更に気づくくらい。電子制御系のアップデートは、Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)では、旋回中のタイヤ周長変化の精度を上げることでHSTCの作動がよりきめ細かに制御できるようになった。さらに、後輪スリップ抑制に対する制御介入量が9段階で任意に選択できることに加え、従来モデルではHSTCが一括制御していた領域の後輪スリップの抑制と、ウイリーの抑制をそれぞれ独立した制御が可能となった。
また、スロットル制御でもTBW(スロットルバイワイヤー)モーターの駆動スピードを向上させたことでスロットル戻し時の応答性を高めた他、スロットル操作に対する出力特性を5段階で任意に選択できるパワーセレクターも高速度領域におけるブレーキコントロール性をより考慮した制御設定に変更したという。
そして4代目CBRが登場。マシンの詳細は下の【主な特徴を見ていただくとして、開発コンセプトの、
『“Total Control” for the Track サーキットで本領発揮するマシン』
からもわかる通り、コンセプトはストレートに、プロダクションレースで勝てるマシンへの回帰、だろう。牙を抜かれたスーパースポーツから本来あるべき獰猛なレーサーレプリカへ。それが増え続ける「R」に込められた意思だ。
※1 Honda セレクタブル トルク コントロールはスリップやウィリー挙動をなくすためのシステムではありません。Honda セレクタブル トルク コントロールはあくまでもライダーのアクセル操作を補助するシステムです。したがってHonda セレクタブル トルク コントロールを装備していない車両と同様に、無理な運転までは対応できません。運転するときは急なアクセル操作を避け、安全運転をお願いします
★ホンダ ニュースリリースより (2022年2月25日)
「CBR1000RR-R FIREBLADE」「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」の一部仕様を変更し発売
Hondaは、大型スーパースポーツモデル「CBR1000RR-R FIREBLADE」「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」の一部仕様を変更し、Honda Dreamより3月10日(木)に発売します。
●中速域の加速性能向上を図るため、吸気ポートおよびエキゾーストパイプ集合部の形状とドリブンスプロケット丁数を変更
●スロットル操作時の応答性に寄与させるため、エアクリーナーボックス形状やスロットルバイワイヤのリターンスプリング荷重を変更
●制御介入時のスロットルの操作性に寄与させるため、「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」※1の制御プログラムを変更
- ●販売計画台数(国内・年間)
- シリーズ合計 200台
- CBR1000RR-R FIREBLADE
2,420,000円(消費税抜き本体価格 2,200,000円)CBR1000RR-R FIREBLADE SP
2,783,000円(消費税抜き本体価格 2,530,000円)* 価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- ●カラー
- CBR1000RR-R FIREBLADE(グランプリレッド)
- CBR1000RR-R FIREBLADE(マットパールモリオンブラック)
- CBR1000RR-R FIREBLADE SP(グランプリレッド)
- 【主な特徴】
-
CBR1000RR-R FIREBLADEは、高出力かつ、高いコントロール性能を有する出力特性のパワーユニットと、操縦性を追求した車体パッケージングを組み合わせ、スポーツライディングをサポートする先進の電子制御技術などを採用したCBRシリーズの最上位モデルです。CBR1000RR-R FIREBLADE SPは、CBR1000RR-R FIREBLADEをベースに、OHLINS(オーリンズ)製の電子制御サスペンションのほか、Brembo(ブレンボ)製のフロントブレーキキャリパーを装備するなど、足まわりを専用化。また、軽量化に寄与するリチウムイオンバッテリーの採用や、より素早いシフトチェンジ操作を可能とするクイックシフターを標準装備するなど、よりスポーツライディングの楽しみを視野に入れた仕様としています。
今回、「Total Control for the Track ~サーキットで本領発揮するマシン」の開発コンセプトを継承しながら、“操る喜び”のさらなる深化を図るための一部仕様の変更を行っています。 - パワーユニット
- ・中速域における加速性能の向上を目的に、吸気ポート内径の一部を絞る形状に変更することで、吸気流速を上げて充填効率をより高め、エンジン回転数11,000rpm付近の出力向上に寄与。また、エキゾーストパイプの集合部形状と触媒構造を変更し排気抵抗の最適化を図るとともに、ドリブンスプロケットの丁数を前モデルの40丁から43丁に変更することで力強い後輪駆動力を得ています。
- ・エアクリーナーの底面形状とインテークファンネルの形状を最適化。スロットル操作時における吸気の流れをスムーズにするとともに、スロットルバイワイヤのリターンスプリング荷重を低減させたことで、スロットル操作における応答性に寄与。
- 電子制御
- ・スポーツライディングをサポートする電子制御機能を熟成。Honda セレクタブル トルク コントロールの制御は、介入時のスロットルの操作性に寄与させることを目的に制御プログラムを変更。また、CBR1000RR-R FIREBLADE SPに標準装備されているクイックシフターの制御は、変速操作時の燃料噴射停止時間を短縮させエンジン回転数の変動を抑えることで、変速後のトルク回復をよりスムーズにし変速ショックの低減に寄与。
- 足まわり
- ・CBR1000RR-R FIREBLADEに採用している、NISSIN(日立Astemo)製フロントブレーキキャリパーのピストン材質及び表面処理の変更を行うことで、サーキット走行における高負荷時の熱によるブレーキレバー操作の遊び量変化の低減に寄与。
- カラーリング
- ・CBR1000RR-R FIREBLADEのカラーリングは、ブラックのホイールに、レーシングイメージ溢れるトリコロールの「グランプリレッド」の1色を設定。
- ・CBR1000RR-R FIREBLADE SPのカラーリングは、ゴールドのホイールに、レーシングイメージ溢れるトリコロールの「グランプリレッド」と、ブラックを基調としたアグレッシブで精悍なイメージの「マットパールモリオンブラック」の計2色を設定。
主要諸元
車名型式 | 8BL-SC82 | |
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CBR1000RR-R FIREBLADE 〈CBR1000RR-R FIREBLADE SP〉 | ||
発売日 | 2022年3月10日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.100×0.745×1.140 | |
軸距(m) | 1.460 | |
最低地上高(m)★ | 0.115 | |
シート高(m)★ | 0.830 | |
車両重量(kg) | 201 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※2 | 22.0(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名〈1名〉乗車時)※3 | |
15.0(WMTCモード値★ クラス3-2 1名乗車時)※4 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | – | |
エンジン型式 | SC82E | |
水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 999 | |
内径×行程(mm) | 81.0×48.5 | |
圧縮比★ | 13.4 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 160[218]/14,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 113[11.5]/12.500 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-DSFI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 16 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.615 |
2速 | 2.058 | |
3速 | 1.700 | |
4速 | 1.478 | |
5速 | 1.333 | |
6速 | 1.214 | |
減速比1次/2次 | 1.630×2.687 | |
キャスター(度)★ | 24°00′ | |
トレール(mm)★ | 102 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 200/55ZR17M/C 78W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立サス/ビッグ・ピストン・フォーク)〈NPX Smart EC〉 |
後 | スイングアーム式(プロリンク/バランス・フリー・リアクッション・ライト)〈TTX36 Smart EC〉 | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※〈 〉は、CBR1000RR-R FIREBLADE SP。
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
※2 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※3 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※4 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます