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試乗・解説

SUZUKI GIXXER 250/SF250 新しい「油冷エンジン」を採用!
 先にインド市場で発売されていた話題のGIXXER 250、GIXXER SF250が国内でも発売された。昨年秋の東京モーターショーに出品されており気になっていた人も多いだろう。
 シングルエンジンにはスズキを代表する存在である油冷方式を採用。その魅力を深く掘り下げる。
■解説:濱矢文夫 撮影:依田 麗 ■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/

 

 

 

油冷シングルスポーツは過去にもあった。

 ネイキッドのGIXXER 250とフルカウルのGIXXER SF250の重要なポイントはシングルエンジンを採用しているところだ。新開発のSOHC4バルブエンジンは冷却方式にスズキの得意としてきた油冷を採用している。油冷のシングルエンジンを搭載したスズキ車といえば1986年発売のNZ250/Sと、1991年発売のグース250/350が過去にあった。

1986年発売、NZ250。
1986年発売、NZ250S。

 

1991年発売、グース250。
1992年発売、グース350。

 
 NZ250/Sは’80年代に急増した女性ライダーをターゲットにしたコンパクトで取り回しの良い車体に油冷DOHC4バルブエンジンの組み合わせだったが、なかなかスポーティーなハンドリングでワインディングでも楽しめた。グース250/350は油冷SOHC4バルブシングルエンジンを使った本格派スポーツとして誕生。キレの良い走りに生産が終了しても根強いファンがいた。油冷シングルエンジンをダイヤモンドフレームに搭載するところにGIXXER 250/SF250との共通性を感じてしまう。

それは一世を風靡したスズキの伝統。

 スズキが油冷システムを初めて採用したのは1985年に発売したGSX-R750からだった。空冷より冷却性能を上げながら、なるべく軽いエンジンにしたかった。そこで潤滑が主な仕事で、冷却はその次という役割だったエンジンオイルを、もっと積極的に冷却に使うアイデアを思い立った。水冷エンジンだと冷却用の水路が必要になるが、それがなくなる分、スペース的にメリットがあり、サーモスタットやキャッチタンクをなくせるなど部品点数も削減できた。

 冷却のキモはシリンダーヘッドカバーに噴射ノズルを設けてシリンダーヘッドに大量のオイルを噴射したこと。水よりも冷却効果が低いオイルながら、それで熱境界層を破壊して冷えやすくした。これは扇風機をつけて涼しいと感じるのと同じ。体のまわりには空気がまとわりついた層(境界層)があり、体の熱をその外の空気中へ放出するのを邪魔している。扇風機で風を当てることでその層が壊され、外の空気と入れ替わる速度が速くなって体の温度が低下、涼しくなる。GSX-R750は発売初年度で全日本ロードレース選手権を制し、高性能から多くのプライベーターも使用。サーキットを席巻しただけでなく、ストリートでも世界中のライダーに愛された。
 

1985年、GSX-R750。初の油冷エンジン搭載車。

 

昔とは違う仕組みの新エンジン。

 新しく開発されたGIXXER 250/SF250の油冷エンジンは、昔のGSX-R750とは違う新しいやり方の油冷を採用。SOCS(Suzuki Oil Cooling System)と名付けられたそれは、熱の発生源である燃焼室周りに潤滑用とは別の冷却用オイル通路をぐるっと張り巡らして、オイルクーラーで冷やされたオイルを速い速度でダイレクトに流し込む。その通路内側はフラットな面ではなく、バウンダリーレイヤーブレーカーという突起を設けた形状。それによりオイルの流速に変化をつけて、熱境界層を壊し、熱伝達率を増加させる。最初の4気筒油冷エンジンと違いひとつのオイルポンプでまかなう。
 

SOCS(Suzuki Oil Cooling System)を採用。

 

 
 シリンダーやシリンダーヘッドには昔の油冷エンジンと違いフィンがない水冷エンジンのようなシンプルさ。これも軽量化につながる。SEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジンとしてフリクションロスを低減させる理由もありダブルカム、DOHCではなく、摺動部が少ないシングルカムのSOHCにした。

 4バルブなのは、スポーツバイクとしてパワーを追求したからと思われる。鋳造ピストンは、スカートにスイフトやアルトなどスズキ4輪車にも使われ実績のあるシナジーサークルテクスチャコーティングを施す事で、高速時でも必要な油膜を保持。そしてスカートの左右端に縦溝を入れ、余分なオイルを整流、排出することでフリクションロスの低減を実現した。

GIXXER 150の魅力を引き継ぐ。

 SOHCでコンパクトなヘッドは、重心から離れたところの重量を軽くできる、マスの集中化にも繋がっている。なんと、先に登場していたGIXXER 150のシングルエンジンより単体の高さが低い。軽くて小さいシングルエンジンの利点を活かして、減速、運動性能とオートバイの基本的な動きに大きなメリットを期待できる。

 GIXXER 150は同じ構造のフレームに154ccシングルエンジンで、リーズナブルな価格と、軽快で面白い走りを大いに評価されてきたモデルだ。この250版GIXXERは、その評判の良いところを維持しながら250ccクラスのモデルとして昇華させたようなものと期待する。

 ご存知のようにスズキには同じクラスにGSX250Rというフルカウルスポーツがある。こちらはツインエンジン。ロングストロークの水冷SOHC2バルブ並列2気筒エンジンは低回転域から豊かなトルクがあり、どんな技量のライダーでも乗りやすいと感じる万能性が魅力だ。ライバルとくらべて小ぶりの車体と相まって、街乗り、ワインディングと気持ちよくどこでも使えるバランスのとれた機種だ。
 

GSX250R。2気筒エンジンの間口の広い万能型スポーツ。

 
 スペックを比べると、GIXXER 250/SF250は、同じフルカウルのSF250でGSX250Rより20kgも軽い装備重量158kg。ネイキッドのGIXXER 250はさらに4kg軽い154kgになっている。エンジンの最高出力はGSX250Rの18kW(24PS)/8,000rpmより大きい19kW(26PS)/9,000rpm。最大トルクは同じだが、GSX250Rが6,500回転で発生するのに対し7,300回転と、最高出力も含めもっと高回転型と言えるだろう。

 ホイールベースはコンパクトに感じるGSX250Rよりさらに85mmも短い1345mm。GIXXER 150から10mmだけしか長くなっていないのは驚きだ。φ41mmインナーチューブを採用したフロントフォーク、7段階のプリロード調整が可能なリアサスペンションは専用設計。ダイヤモンドフレームはGIXXER 150より剛性を高めた。スイングアームはねじれ剛性を30%アップ。

250ロードスポーツ市場を大いに刺激する。

 ポジションは、フルカウルのGIXXER SF250がトップブリッジの上にマウントしたセパレートハンドルでやや前傾姿勢。ネイキッドのGIXXER 250はパイプのアップハンドルでもっと背筋が垂直に近いアップライトな姿勢。メーカー希望小売価格はGSX250Rの税込536,800円に対し、GIXXER 250で税込448,800円、フルカウルのGIXXER SF250で481,800円。バイク入門者の若者でも手に入れやすい価格になっている。新しいGIXXER 250/SF250は250ロードスポーツ市場の台風の目となりそうだ。
(レポート:濱文文夫)
 

ノンカウルのGIXXER 250は、モデルチェンジされた新型GIXXER 150と共通した、大きなシュラウドからテールへとつながる造形が印象的なネイキッドスポーツ。

 

カラーはシルバーが入ったマットプラチナシルバーメタリックNo.2 と、黒くて精悍な マットブラックメタリックNo.2 の2種類。

 

GIXXER 250は新設計となったLEDを採用した薄い異型ヘッドライト。上下に3分割されて光る。ウインカーはバルブ式。

 

新開発された油冷(SOCS=Suzuki Oil Cooling System)のコンパクトなSOHC4バルブ249ccシングルSEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)エンジン。昔の油冷エンジンのような冷却フィンがない。シングルカムでローラーロッカーアームを採用して吸気2、排気2の4バルブを駆動する。ロッカーアームはバネで押し付ける構造で、タペットクリアランスによるバタつき音を低減させている。さらに横にそのバネ部分で横にロッカーアームをスライドできるので、取り外さなくてもバルブクリアランス調整(シム交換)を可能にした。縦に取り付けられたオイルクーラーには電動冷却ファンが備わる。ボア・ストロークは76.0mm × 54.9mmで、圧縮比はそれほど高くない10.7。

 

シングルディスクのブレーキローター径はφ300mm。ピンスライド2ポッドキャリパーは、BRIC市場(ブラジル、ロシア、インド、中国)と東南アジア諸国(ASEAN)向けの、小型・中型エンジン用ブレーキシステム専用のブレンボが立ち上げたバイブレブランド。フォークのインナーチューブ径はφ41mm。前と後ろの2チャンネルABSを標準装備。切削加工されたキャストホイールにはダンロップ・スポーツマックスGPR300を履いていた。サイズは110/70R17M/C 54H。
スイングアームはGIXXER 150より太いパイプを使いねじれ剛性を30%アップした新設計。リアサスペンションのシングルショックは7段階のプリロードアジャスターを装備。モダンなスイングアームマウントフェンダーを採用。後輪のタイヤサイズは150/60R17M/C 66H。ABS付油圧シングルディスクのローターはφ220mm。

 

テールランプもLED。グラブレールはアルミダイキャスト製。ロボットの足の裏のように見えるマフラーエンドにはサテンメッキを施している。フレームはGIXXER 150と同じ構造のメインに1本パイプを使ったダイヤモンドタイプで、より剛性を高めている。シート高は800mmで、前後セパレートタイプのシート。タンデム部分はかんたんに取り外せて、そこにはETCなどを設置できるスペースがある。

 

フルカウルのGIXXER SF250。シルバーのマットプラチナシルバーメタリックNo.2と、つや消し黒のマットブラックメタリックNo.2の他に、スズキのMotoGPマシンを彷彿とさせるカラーグラフィックのトリトンブルーメタリックがある。ミラーはカウルマウントになる。

 

パイプアップハンドルのGIXXER 250と違い、GIXXER SF250はトップブリッジ上にあるセパレートハンドルだ。両車でトップブリッジの形状も違う。ワンプッシュでエンジンが始動するまでセルモーターが回るスズキイージースタートシステムを採用。
GIXXER SF250は、前下がりのくちばしのようになったリップスポイラーにワイドなLEDヘッドライトが特徴的な顔つきにしている。カウルの装着などでGIXXER 250と比べて装備重量は4kg増。

 

●ジクサーSF250〈ジクサー250〉 主要諸元
■型式:2BK-ED22B■全長×全幅×全高:2,010×740〈805〉×1,035mm■ホイールベース:1,345mm■最低地上高:165mm■シート高:800mm■車両重量:158〈154〉kg■燃料消費率:45.0km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)37.7km/L(WMTCモード値 クラス3 サブクラス3-1 1名乗車時 )■最小回転半径:2.6m■エンジン種類:油冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ■総排気量:249cm3■ボア×ストローク:76.0×54.9mm■圧縮比:10.7■最高出力:19kW(26PS)/9,000rpmm■最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7,300rpm■燃料供給装置:フューエルインジェクションシステム■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式■燃料タンク容量:12L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ:前110/70-17M/C 54H、後150/60R17M/C 66H■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク■懸架方式(前/後):テレスコピック式/スイングアーム式■フレーム形式:ダイヤモンド■車体色:ジクサーSF250「マットプラチナシルバーメタリックNo.2」、「トリトンブルーメタリック」、ジクサーSF250「マットブラックメタリックNo.2」、ジクサー250「マットプラチナシルバーメタリックNo.2×マットブラックメタリックNo.2」、ジクサー250「マットブラックメタリックNo.2」
■メーカー希望小売価格:ジクサーSF250 481,800円/ジクサー250 448,800円


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2020/05/15掲載