- ■文・写真:中村浩史
■写真提供:SUZUKI
■協力:SUZUKI
スズキ・アドレスシリーズといえば、古くは1987年発売のアドレス50。2ストローク50ccの少年たちのスポーツスクーターは38年経って今、オトナのシックなパートナーとなりました。
目指したのは上質で快適な高級車
2022年発売の現行アドレス125がフルモデルチェンジ。モデルチェンジ方向は、良く走る、便利で快適なスクーターを全方位ブラッシュアップした、という内容でした。
スズキが考えるスクーターは「毎日どんな用途にも使うし、休日にはちょっとお出かけもOK」という生活の相棒。いつでもどこでも乗る、乗りたくなる乗り物だ。
もちろん、現行モデルだってそのレベルはゆうにカバーしている。けれどスズキは、もっともっとアドレスを進化させたのです。それがデザイン、動力性能に及ぶ「より上質で、ゆとりある快適さ」というポイント。
エンジンはSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)スペックで、従来型エンジンの出力特性を変更し、最大トルク発生回転数を500rpm下げた新仕様。最高出力は8.7PSから8.4PSとなったものの、使用回転域では、この数字ダウンは感じないのだそう。むしろ、カムプロファイルを変更して、低~中回転あたりのトルク変動を少なく、つまりスムーズに回転と車速が伸びるエンジンとしているのです。
「さらに上質なエンジンとして、走っている最中の振動も低減しています。細かいことですが、セルモーターのシステムを大きく変更して、エンジン始動時の『キン』という一瞬の金属音をなくしています。エンジン仕様変更とCVTの設定を見直して、スムーズにいつの間にか車速が乗っている感じに仕上げています」(パワートレイン技術部 山口純平さん)
スクーターの乗車フィーリングといえば、エンジン特性だけではなく、車体の要素も大きく、新アドレスはここも刷新。スクーターで感じる不安さは、フラフラする、安定して走れない、といったポイント。ここを、さらに従来モデルよりブラッシュアップして、フレームを改良。ねじり剛性を25%アップして、約1kgの軽量化を実現。ピシッと直進安定性があって、軽いハンドリングに仕上げていると言います。
さらに従来モデルのアドレスでも評価の高かったのがシートで、前後に長く、足つきのいい形状だったこと。これもさらにブラッシュアップして、シートの横幅を広げて、シート前部の幅を詰めて、足つきしやすい、つまり足を下ろしやすい形状としています。
アドレス125は、タンデムがしやすい、
パッセンジャーが快適だってポイントも
「アドレスは、生産国のインドでは年間80万台も販売されている人気モデルです。それこそ一家に一台のレベルで使っていただいていて、ちょっとその辺まで出かけるのも、週末に少し離れた場所の寺院巡りにもお使いいただいてる。その用途を満たしながら、もっと楽に、もっと快適に、もっと安全に、というのが新アドレスです」(商品部チーフエンジニア 田鍬洋介さん)
さらにもうひとつのブラッシュアップは、そのスタイリング。もちろん、スクーターの商品性としてはこれが大きいんですが、ここもベストセラーらしく、より高級志向に舵を切っています。
スタイリングは、従来の丸みを帯びたカワイイ系から、洗練された高品質なものを目指しています。
「ボリュームある立体曲面構成で、フォーマルさ、洗練されたテイストに仕上げました。従来モデルから大きくは変えていないんですが、全体的にはワンランク上質を目指した感じです。より広いお客さんに受け入れてもらえるようなシャープさも意識しています」(商品部デザイングループ 斉藤航平さん)
全体のボディパネルやヘッドランプのメッキモール、リアのコンビネーションランプやエンブレムに至るまで、全体のイメージがちょっと高級に見えるのが、このためなのです。特に気に入ったのは、テールランプ上にある給油口で、スクーターによくあるシート下じゃなく、シートを開けなくても給油できるようになっていて、そこにきちんとリッドがある。このリッドはキーでオープンする構造で、ちょうど乗用車では当たり前の装備が、スクーターにも採用されたのです。
まだ発表会だけで試乗は済ませていませんが、スクーターはやっぱり毎日のように乗り回して、ラクで速くて、便利で燃費が良くて、カッコいいのがイチバン。そんな全方位の魅力をブラッシュアップしたのが新アドレスなのです。
「アドレス」というロングセラーブランド
思えば初代アドレスは、スズキ初のメットインスクーターとしてデビューした2ストローク50ccモデルでした。ヤマハJOGや、ホンダDJ-1のライバルとして生まれたボーイズスクーター。初代モデルは「ん? ちょっと大人しいデザインかな?」ってモデルだったけれど、7PSバージョンの「アドレスチューン」が発売されて、少年たちは熱狂。バカッ速のモデルでした。
のちに発売されたアドレスV100は、50ccのサイズで100ccのパワーというパッケージで、二段階右折もしなくていい、法定速度も30km/hじゃなくていいスクーターとして、一時は都内のスクーターがみんなV100になっちゃった、ってほど「通勤快速」の異名で大人気モデルとなりました。
そして4ストローク化された2000年代からは、グッとシックな存在になって、相変わらず街角で見かける身近な存在として、ずっと発売され続けている人気スクーター。
「近所に買い物に行くのもいいし、ちょっと遠乗りしたっていい、とにかく毎日、いつでも乗ってほしい相棒にしたかった」というのが新アドレス。そうそう、アドレスという車名は、そのまま「住所」って意味じゃなくAdd+Dress=ドレスを加える、転じてドレッシーさ、みたいな造語でした。どんどん車名の源流に近づいてきましたね。
(取材・文:中村浩史)
■型式 8BJ-EN11J ■エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■排気量:124㎤ ■最高出力:6.2kW(8.4PS)/6500rpm ■最大トルク:10.0Nm(1.0kg-m)/5000rpm ■燃料給油:フューエルインジェクション ■燃料消費:53.4km/L(WMTCモード) ■全長×全幅×前高:1880×690×1155mm ■ホイールベース:1260mm ■シート高:770mm ■始動:セル/キック併用 ■燃料タンク:5.3L ■ブレーキ前・後:油圧シングル・機械式ドラム ■タイヤ前・後:90/90-12・90/100-10 ■装備重量:108kg ■車体色:マットステラブルーメタリック、ソリッドアイスグリーン、パールグレイスホワイ、マットブラックメタリックNo.2 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):280,500円
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