ホンダコレクションホールレーサーレプリカ展 ForceV4 「日本グランプリで、きっと行こう!」
モビリティリゾートもてぎに併設されている「ホンダコレクションホール」で開催されているレーサーレプリカの時代Part2 ForceV4。これがもう! ファン必見! MotoGP日本グランプリの期間中も開催されているので、さぁ行こう、ぜひ行こう!
- ■文・写真:中村浩史
あのときキミは若かった
分かってほしい僕の心を
鈴鹿8耐も終わって、次のバイクレースのビッグイベントといえば、9月26~28日に開催されるMotoGP日本グランプリ。舞台となるモビリティリゾートもてぎでは、8月23~24日に全日本ロードレース第4戦が行なわれましたが、そちらのレポートは後ほどアップされるとして、わたくしナカムラ、この全日本のレース進行スケジュールの合間を縫って、ホンダコレクションホールまで行ってまいりました。それは、7月5日から開催されている『レーサーレプリカ特集Part2 Honda ForceV4』展を見たかったから!
ForceV4とは、1980年代後半かな、バイク界が「レーサーレプリカブーム」だと浮かれている頃に、特に中型、時に大型モデルで大人気を誇ったホンダV4エンジン搭載モデルシリーズのキャッチコピーです。雑誌広告なんかには、ワイン・ガードナーが登場して、V4モデルをうまくレースイメージと結びつけていましたよね。
ホンダのV4エンジンシリーズは、1980年代に入る少し前、ホンダが一時休止していたワールドグランプリ(今のMotoGPですね)に復帰するときに、2ストローク500ccマシンに対抗せんと開発したNRが元祖でしょう。もちろん、V型エンジンといえばハーレー・ダビッドソンやヴィンセントというご先祖様がいるのですが、グランプリレースに登場して--となると、やはりNR。その開発技術を市販車に落とし込んだのがV4エンジンシリーズなのです。
ホンダV4エンジンの頂点は
RC30かNRかRC213VSか
このForceV4シリーズの第一弾は、1982年発売の①VF750セイバー&マグナです。セイバーはちょっとダートトラッカーみたいなスタイルで、マグナはその後にもシリーズ展開されたアメリカン(ホンダではカスタム、と呼びます)スタイル。ここではまだ、スポーツ性は謳っていない、V4人気観測気球的なモデルでしたね。車名の前の番号は写真と対応しています。
本命は、セイバー&マグナの約半年後に発売されたVF750F。1982年といえば、それまでのホンダ750ccスポーツの主軸モデルであるCB750Fシリーズの最終年で、Fに代わるスポーツバイク、ホンダ750ccスポーツ初の水冷エンジン、という側面もあったのです。この時、400ccのVF400FもVF750Fの5日後に発売、それはまた下のほうで述べますね。
その後VF750Fは1986年に発売された②VFR750Fにバトンタッチ。VFR750Fは、のちに白バイにも多数採用されたモデルで、ULF(ウルトラライトフレーム)と呼ばれたアルミフレームを採用。このVFR750Fが、1987年に発売された③VFR750R=RC30につながるわけです。
このRC30が、鈴鹿8耐を制したRVF750のレプリカとして喧伝されたため、プライベーターも多数、このRCで8耐に参戦するし、ストリートでも国内限定1000台/販売価格148万円ということも大きな話題となって、アッという間に限定台数は完売。ちなみにこの価格は、同年発売の同排気量クラスのCBR750が79万8000円でしたから、約2倍近いプライス。それなのに、当時は3000人近くのファンが購入希望として殺到、2000人近くが購入できなかった、というわけですね。
VFR750シリーズは、その後ツーリングバイクとして発展、プロアーム採用のRC36を経て、1994年には④RVF/RC45が登場。これが、RC30の後継たるスーパースポーツで、こちらは500台限定/販売価格200万円でした。
ちなみにRVF/RC45の前には、まったくスーパースポーツモデルとはルーツの違う⑤NRも発売。このモデルは、やはり世界唯一の楕円ピストンを採用したモデルとしてクローズアップされることが多いのですが、NRだってV4エンジンですからね。V4エンジンといえば、MotoGPマシンのレプリカモデルとして2015年に⑥RC213V-Sも発売されました。こちらはもう、歴史上最も高価で貴重な市販車でしょうね。当時の国内販売価格は2190万円でした。たしか300台の限定発売で、実際に工場から出荷されたのは、その数分の一といわれていますね。
VFRシリーズはその後、800cc、1200ccと発展していきますが、こちらはレーサーレプリカ展には展示されておりませんでした。
400ccのV4モデルは
僕らの手に届く神モデル
ForceV4シリーズといえば、750ccシリーズよりも身近なのが400ccシリーズ。こちらの元祖は、上にも記したVF750Fの5日後に発売された82年発売の⑦VF400Fです。これもCB750FとVF750Fの関係のように、CBX400Fがモデル末期を迎えて発売されたのがVF400Fだったんです。
しかし400ccスポーツのラインアップは、VF400F登場の翌年に、新しい並列4気筒エンジンモデルであるCBR400Fも登場。並列4気筒からV型4気筒に切り替わった750ccシリーズのようにはいかず、400ccはV4シリーズと並列4気筒シリーズが併売され、両方とも人気モデルとして販売されました。市販車としての人気はCBRシリーズ、鈴鹿4耐やプロダクションレースでの戦闘力ならVFシリーズ、という印象でしたね。
1986年にはアルミツインチューブフレームを採用したフルカウルモデル⑧VFR400Rが発売されます。その2週間後にはネイキッドスタイル+デュアルヘッドライトという、今もって珍しいスタイリングの⑨VFR400Zも発売されます。このあたりから、400ccのトップスーパースポーツはホンダV4、というのが定説となっていきますね。
VFR400Rの車名のまま、1987年にはプロアームを採用した⑩VFR400R(NC24)に発展し、1989年にはフルモデルチェンジを果たして⑪VFR400R(NC30)、1992年にマイナーチェンジの⑫VFR400Rがあって、1994年には⑬VFR400R(NC35)に結実しました。
今考えると、400ccにアルミフレーム、V型4気筒DOHC4バルブエンジンという、夢のようなハイメカモデルが、普通に街中のバイクショップで買えて、それがぽんぽん売れていたんですから、本当にすごい時代だったと思います。
こんなモデルもあったのか!
V4モデルの奥深さ
そのほか、グランプリマシンNRからの技術開発をフィードバックされたレーシングマシン群も展示されています。NRの初期モデル0X、デイトナ200マイルや鈴鹿200kmに参加したRS1000RW、世界耐久マシンが1000ccから750ccに改訂されるシーズンを見越して、前倒しで排気量を縮小したRS850R、1990年代の鈴鹿8耐最強マシンRVF/RC45レーサーといったTT-F1やスーパーバイクも展示されています。このへんが、ForceV4が猛威を振るった時期でしょう。RS1000RWや850Rなんて、よほどのことがなければ目にすることはできませんからね、本当に貴重な機会だと思います。
やっぱスゴいなホンダ、と思ったのは、ForceV4展じゃないところにもV4スーパースポーツやV4レーシングマシンが展示されているということ。
「おー、知ってる知ってる、これボールドウィンが当時の8耐最多勝記録持ってたんだよね」とか「RC24ベースで8耐マシン作って出場したチームの成績がさっぱりで、できたのがサンマルなんだよね」とかなんとか、V4うんちくを語りに、MotoGP期間中はもちろん、平日だって、ホンダコレクションホールへまいりましょう!
- ■期間展示:レーサーレプリカの時代Part2 ForceV4
- 展示期間:2025年7月5日~10月19日
- ※開館時間や休業日はWebサイトで確認ください
- 展示場所:モビリティリゾートもてぎ内ホンダコレクションホール
- 入場無料(モビリティリゾートもてぎ入場料のみがかかります)