ホンダ1000ccネイキッドと言えば、スーパースポーツCBR1000RRのエンジンを使用するCB1000R。新生1000ホーネットは、もう一歩スポーツに振ったネイキッドで、ベースエンジンから変更してきたスポーツネイキッド。走り出してすぐわかる、なんでこんなに違うの??
- ■試乗・文:中村浩史 ■撮影:赤松 孝
- ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン
- ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html
アルパインスターズ https://www.instagram.com/alpinestarsjapan/
パッと乗ってわかる軽さ え? 1kgだけ?
パッと乗ってすぐにわかる。「あ、軽くなったナ」と。けれど実は、1kgだけ軽くなったのみ。む、ではこの感触は、なんなのだ。
ニューモデルCB1000ホーネットは、CBR1000RRのエンジンをベースに専用セッティングを与え、ストリートからワインディングまで軽快に走りを楽しめるモデルです。
ホンダの1000ccネイキッドということで、比較対象はどうしてもCB1000Rになるけれど、CB1000Rは「ネオ・スポーツカフェ」を標榜したネイキッドで、走りの楽しさはもちろん、エモーショナルなところも目指していた。エモーショナル、つまり感覚に訴えかけるモデルで「魅せる、昂る、大人のためのエモーショナルスポーツロードスター」を開発の狙いとしていたんです。
「ホーネット」というブランドは、スズメバチという意味のとおり、ヤンチャで俊敏、元気なスポーツバイクに与えられるペットネーム。初代のホーネットは250で、ヨーロッパ仕様である600や900も、高性能な大型ネイキッドを狙ったモデルでした。そしてこの新ホーネットは「アグレッシブなストリートファイター」。CB1000Rよりもスポーツを狙ったネイキッドで、ちなみにホーネットは、ヨーロッパでも南部、スペイン、イタリアといったラテンなところで爆発的に人気があります。
そのホーネット、パッと跨っただけで「やったるぜ」な気持ちになるモデル。直感的に思った軽量化については、CB1000Rからわずか1kgしか変わっていないんだけれど、うまく錯覚させる車体構成としているのだと思います。車体で言うと、830mmのシート高が809mmと低くなって、シートの着座部分のまたがり幅がスリムにシェイプされているから、またがった時の取り回しのよさから、扱いやすくなっていると感じる、なのかもしれないですね。
車体はスチール製ツインスパーフレームに、フロントに倒立フォーク、リアにプロリンクサスを組み合わせたもの。CB1000ホーネットと、リアにオーリンズ製サスペンション、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーを使ったCB1000ホーネットSPがラインアップされていて、今回の試乗はこのSP仕様。スタンダードも少しだけ乗りましたが、リアのオーリンズは、コーナリングがどうこう言うより前に乗り心地がソフトで減衰がよく効いていて、キャリパーの性能差がわかるペースでは走りませんでした。
走り出して気づいたのは、エンジンも元気さが増していること。CB1000Rとは、とても同じエンジンだとは思えない出力特性だと感じていたら、ベースエンジンから変更されていて、現行CBR1000RR-R(SC82)があって、ホーネットはそのひとつ前のCBR1000RR(SC77)エンジンをベースとしていて、CB1000Rはさらにひとつ前の、初期モデルのCBR1000RR(SC57)がベース。ボア×ストロークが変わって、ややショートストロークになっているから、回転のシュンシュンとした回り方が、さらにシャープになっています。
この、着座位置まわりとエンジンのシャープさが、バイクが軽くなったのだと感じさせたんだと思います。さらにホーネットはCB1000Rよりもリアタイヤがワンサイズ細く、それもハンドリングの軽快感に大きくかかわっています。それくらい、ホーネットはCB1000Rよりも軽く感じられて、運動性が高いのです。
それから、低回転でのトルクの出方もスムーズ。1000ccで158PSも出ているエンジンなのに、発進トルクはスムーズ。ここは、素の力を出してしまうと、ゆっくりクラッチをつないでもドン、とトルクが出てしまうため、より使いやすく制御を入れているはず。ラフにクラッチをつないでも、スッと発進できるのは、ビッグバイクの経験が浅いライダーでも、長距離を走るツーリングの後半なんかでも、とてもありがたいです。
このエンジンがいちばん元気いいのは6000rpmを超えたあたり。実はここにもスタンダードとSP仕様の差が隠されていて、SP仕様のみ可変排気バルブがマフラーに仕込まれているのです。低回転で力強く、高回転では吹け上がりよくセットすることで、高速と低速の出力特性を設定しているんです。
3段階+マニュアル設定をふたつ選べるパワーモードを「スポーツ」にして走り始めると、フットワーク軽く俊敏に走ることができます。今回、ワインディングをメインに走ったんですが、SP仕様にのみ設定されているクイックシフトのおかげもあって、リズムよく走ることができました。
特に、シフトアップかそのまま引っ張るかを迷う一瞬で、そのまま引っ張ってもよし、シフトアップしても良し、のパワー特性が使いやすい。僕は主にシフトアップせずに回転を引っ張る方向で乗りましたが、低回転から中回転域、そして排気バルブがオープンになる6000rpm以上といったところでバイクが機敏に動いて、スポーツランを楽しむことができましたね。
これがCB1000Rだと、ドンツキとは言わないまでも、もう少しパワーの出方がダイレクトだった気がします。CB1000Rの時にダイレクト感があって楽しいな、と思ったキャラクターが、今度は柔軟なパワー特性で楽しい、と。このあたりは、ホンダの狙いにまんまとハマっているんですね。
軽く感じる車体で、柔軟なパワー特性のホーネット。CB1000Rよりもコントロールしやすい運動性なのは、やはり軽く感じることが最大の要因だと思います。それは、車両重量のことではなく、着座位置のユーザーインターフェイス、俊敏なレスポンスのエンジン特性、そしてリアタイヤのサイズによる複合的なメリットなのでしょう。
ホンダの1000ccネイキッドの2車で、ペースをあげずに、ワインディングをのんびり流したいならCB1000R、時々攻め立てたいならホーネット。僕がどちらかを選べと言われたら、うーん、スタイリングはCB1000Rがいいな、でも走りはホーネットがいい。価格的にはホーネットが134万2000円/ホーネットSPが158万4000円、そしてCB1000Rは171万6000円。新しいホーネットの方がいいプライシングなのは、ホンダGJですね。
そして、ここで大きなお世話を書きます。さきのモーターサイクルショーで発表、ごく近い将来に市販されそうなCB1000Fコンセプトですが、それにはこのホーネットのエンジン、使わない方がいいです。せめてギアレシオとかクランクウェイトを専用設定して、どろんどろん回るエンジンで乗りたいですもんね、Fスタイルには!
(試乗・文:中村浩史、撮影:赤松 孝)
■型式:ホンダ・8BL-SC86 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:999cm3 ■ボア×ストローク:76.0×55.1mm ■圧縮比:11.7 ■最高出力:112kW(152PS)/11,000rpm[116kW(158PS)/11,000rpm] ■最大トルク:107N・m(10.9kgf・m)/9,000rpm ■全長×全幅×全高:2,140×790×1,085mm ■ホイールベース:1,455mm ■最低地上高:135mm ■シート高:809mm ■車両重量:211[212]kg ■燃料タンク容量:17L ■変速機:6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70R17M/C・180/55R17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式ディスク■車体色:パールグレアホワイト[マットバリスティックブラックメタリック] ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):1,342,000円 [1,584,000円] ※[ ]はCB1000 HORNET SP
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