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またしばらく間が空いちゃいましたが、いわゆるギョーカイ関係者の愛車紹介「オレこれ乗ってます」、略してオレコレ。今回はタイトルをあらためて「アタシこれ乗ってます」略してアタコレ。女性レースアナウンサーとして大人気の竹内さくらさんは、こんなイカツいモデルに乗ってるんです!

■文・撮影:中村浩史

サーキットを走るVFRに目を奪われて

「なにがきっかけだったのかはまったく覚えてないんです。でも中学生の頃からクルマとバイクがすごく好きで、16歳になってすぐ原付免許取ったんですよ。それからずっと、バイクとの生活は切れていないです」

 そう言って笑うのは、レースアナウンサーの竹内さくらさん。全日本ロードレースやイベントレース、バイクイベントやミーティングのMCとしておなじみのさくらさんは、実はレディスレースのチャンピオン経験者であり、筑波サーキットを走り込むロードレーサーでもある。
「レーサーだなんて、そんなそんな。いつかはエヌシでレースに出たいな、とは思っているんですが、エヌシではレースに出ていないし、レーサーだなんて恐れ多いです」

#竹内さくら
毎週のように、各地のイベントやレースでさくらさんの美声を聞くことができる。
#竹内さくら
さくらさんのエヌシが発売された91年に鈴鹿8耐をポールtoウィンで勝ったホンダのワークス8耐レーサーRVF。本文中に出てくるOKIカラーがこの車両だ。

 さくらさんが「エヌシ」と言うのは、今回登場のホンダVFR400R。1991年型の、いわゆるNC30、エヌシーサンマルと呼ばれる超人気モデル。NC転じてエヌシ。1991年と言えば今から30年以上も前のモデル。いったいなんで、こんな古い(失礼!)バイクに、うら若き華奢な女性ライダーが??

 話はさくらさんが原付免許を取った頃にさかのぼる。初めて買ったのはヤマハJOG-ZR。毎日のように乗っていたファーストバイク。その頃、仲間がサーキットランをしている、ってことを知ったのだそう。
「神奈川のミニバイクコースなんですが、そこで仲間が集まって走行会をやったり、個人で走りに行っていた人もいたみたいで、最初は走行会とかの手伝いに行ってたんです。参加してるみんなと仲良くなって、でもその頃はあんまり走りたいとは思っていなくて。だってその頃はスクーターだったから、ギアつきは乗れなかったんです(笑)」

#竹内さくら
さくらさんがエヌシ、と呼ぶVFR400R/RVF400シリーズ。初期モデルNC21がプロアームになってNC24に、デュアルヘッドライトのNC30となり、最終型は車名もRVF400と変わってNC35と呼ばれるモデルになった。

 それでもJOGの次に手に入れたNSR50で街乗りするうちに、少しずつ「走り」にも目覚めていった。ギアつきのNSR50も、はじめはエンストの連続で、自宅まで押して帰ったこともあったけれど、それも次第に慣れていって、ついにサーキットデビュー。
「デビューってほどじゃないんです。ギアつきだからうまく乗れないし『楽しくてハマっちゃった』っていうのはなかったですね。そのかわり、うまく走れないから悔しいし、ヒザするのだって上手くいかないから、とにかく走りまくりました。負けず嫌いなんです、ワタシ」
 街乗りの相棒であるNSR50で、サーキットを走ったり、時々ミニバイクレースにも出た。その頃、少しずつサーキットランが楽しくなりはじめたさくらさんに、エヌシとの出会いがあったのだ。

#竹内さくら
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「よくサーキットで会う仲間のひとりがエヌシに乗っていて、なんてカッコいいバイクだろう、あんなふうにアタシも走ってみたい、って思っちゃったんです。ずっとミニバイクで、そろそろ大きなバイク欲しいなぁ、なんて気持ちもなかったのに、仲間が走るエヌシを見てビビッと来たんですね。排気量とかメーカーとか車名に関係なく、エヌシにビビッと」
 そのバイクがVFR400Rって名前だってくらいしか知らなかったさくらさんは、まず格安のVFRを手に入れ、修理と整備を続けながら、VFRの正体を調べていった。負けず嫌いのさくらさんは、なんだか気になったものがあったら、それを調べないと気が済まない——どうやらVFRはレーサーレプリカ、って呼ばれるジャンルのバイクみたいだ、ってこともこの頃に知ったのだ。

#竹内さくら
取材にお邪魔したのは筑波サーキットのスポーツ走行日。筑波で「誰だ、あのブルーフォックスのRVFのライダー?」って評判になるほど、さくらさんの走りは美しく、速い!

#竹内さくら
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ちょっとやらかしちゃうこともある(笑)。この日も1コーナーで「寝かしすぎ」ゴケ。ケガはなかったけれど、寝かしすぎだよ、さくらさん!(笑)

「エヌシを手に入れたのはこの5年くらい。デビュー30年も経っているバイクだから、どんなバイクなんだろう、その頃どんなバイクが人気だったんだろう、っていろいろ調べましたね。雑誌とかビデオとか買い集めて、すっかりこの時代にハマりました。80年代終盤から90年のはじめ頃、まさにエヌシが大人気だった頃だと思います」
 その流れで、というわけではないのだろうけれど、さくらさんがもうひとつハマったものがある。それが鈴鹿8耐。レースの存在はもちろん知っていたけれど、まさにその時代に最高に人気があった日本最大のレースに夢中になったのだ。
「VHSビデオもたくさん買い集めて、当時の8耐にハマりました! ホンダのV4エンジン車が最強だった時代ですよね。手に入れたエヌシも、当時のレプリカグラフィックにしたくて、いろいろ迷ったんですが、この頃に活躍していたanブルーフォックスカラーにしました! OKIホンダカラーは結構レプリカしている人が多いんですよ。PENTAXカラー、ミスタードーナッツカラーとかもいます。この頃の華やかなマシンのイメージも大好きなんです」

#竹内さくら
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 そのさくらさんのエヌシは、91年型のVFR400R。程度があまりよくない状態で購入して、修理、整備して走り出した愛車。まだ登録はせず、ナンバーも取得していないサーキットラン専用車だ。
「NSR50の次の愛車がエヌシです。我ながら極端(笑)。オフロードランも大好きなので、いまCRF125とかトライアル車、サーキットラン用にNinja250SLとか、まだNSR50も持ってます。一度手にしたバイクは手放せない性分なので、車両が増えちゃって、今はガレージも借りてます。エヌシで筑波サーキットを走り始めたのは、この1年くらい。いつかエヌシでレースに出てみたい。スケジュールが合ったらテイストofツクバに出ようかな、と思っていたんですが、同じ日に大阪でシティトライアルのお仕事があって、そちらに行っていました」
 エヌシを所有する上での悩みは、やはりパーツの供給。純正部品として入手できるものもあるが、シールやガスケットなど、細かい部品が徐々に手に入らなくなってきているのだそう。もちろん、サーキットランのためのレースパーツやチューニングパーツも入手困難。同じ悩みを持つ仲間内みんな、オークション巡回が日課なのだそう。
「だから今は、ガレージに部品取りのエヌシも2台分収まってます」
 お…おぉ、リッパにハマってるねぇ。

#竹内さくら
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#竹内さくら
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「整備士の学校に行こうと思ったこともあった」というさくらさんは、もちろん走行準備も自分で。同じくこの頃のレーサーレプリカ大好きな友人と一緒に走りに来ることが多いのだという。

夢がふたつ。鈴鹿8耐の実況と……

 エヌシ購入の少し前、実際に8耐観戦に鈴鹿へ足を運んだことがあるのだという。初めての国際サーキット、その規模に圧倒されながら「スタートはグランドスタンドで見た方がいいよ」という友人のお勧めに従っての、日曜午前11時半のスタートシーン。
「ド迫力でした! たくさんのマシンのル・マン式スタートで、静かだった鈴鹿に60台とかのマシンが目を覚まして1コーナーに向かっていくシーンは今でも忘れられません。あのシーンで、鈴鹿8耐が大好きになったんだと思います。いつだろう、どのチームが勝ったなんて覚えてないんですけど(笑)、とにかくあの圧巻のスタートシーンは忘れられない記憶です」
 さくらさんによると「最後の30分くらいでTSRのマシンに火がついた」というから、2017年の鈴鹿8耐。中須賀克行/マイケル・ファン・デル・マーク/アレックス・ロウズによるヤマハファクトリーレーシングの3連覇も、カワサキレーシングの2位表彰台も、マシンのアンダーカウルから火が出て緊急ピットインしたTSRホンダの3位表彰台も覚えていないくらい、スタートシーンに心を奪われたのだ。

 その頃、レースアナウンサーの「MCシモ」としておなじみの和田鉄平さんのアシスタントをしながら勉強し、レースアナウンサーの仕事を始めたさくらさん。当時は本業のデザイナー&イラストレーターをやりながら、オンロードとオフロードの走行会を企画したり、なにかとモータースポーツと関わって盛り上げたいと思っていたところに始めた、新しい仕事だった。
「レースだけじゃなくて、イベントやミーティングの司会進行から始めました。それから実際のレースはイベントレースや地方選手権から始めて、全日本選手権やMotoGP日本グランプリのタレントカップとかMoto2&Moto3各クラスの表彰式なんかも担当させてもらいました。でもね、やっぱり夢がひとつあって……」

 さくらさんの夢とは、もちろん鈴鹿8耐のレース実況。今までもピットレポートで参加したり、鈴鹿4耐のレース実況はしたことがあるけれど、やっぱり夢は鈴鹿8耐のレース実況。そういえば、2024年に45年の歴史に幕を下ろした鈴鹿4耐で、その決勝レース前の公式練習、予選日に、ピット間を足しげく歩き回るさくらさんがいた。レース中に話す内容、つまり出場する選手やチームの情報の取材に歩き回っていたのだ。イベントレースや全日本ロードレースでもよく見るシーンで、彼女がレース前にライダーやチーム情報をじっくり取材するのは、レース関係者ならだれでも知っていることだ。
「鈴鹿4耐なんか特に、8耐と違って出場するライダーやチームをよく知られていないと思うんです。だから、本当は全チームの取材をして、レース中に紹介してあげたいんですけどね、なかなかその時間も取れなくて、できていないのが悔しいです」
 ごく近い将来、鈴鹿8耐のピットまわりを歩き回り、日曜の決勝レースで披露するさくらさんの美声が、鈴鹿サーキットで聞ける日が来るんだろう。

「もうひとつの夢は、エヌシでレースに出ること! テイスト of ツクバ、出たいです!」
 その日、テイストの実況のお仕事が入らないといいね♪
(文・撮影:中村浩史)

#竹内さくら
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2025/01/22掲載