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試乗・解説

Moto Guzzi Stelvio アドベンチャーも個性の時代。新世代グッツィの提案
モトグッツィがアドベンチャーバイクカテゴリーに帰ってきた。新型の「ステルヴィオ」は、新世代の縦置きVツイン水冷ユニットを搭載するモダンなモトグッツィラインナップの2機種目。軽いオフロード性能も確保したツーリングモデルとしてデビューしたのだ。さて、果たしてムルティストラーダやアフリカツイン、あるいはタイガーシリーズといった強力なライバルと肩を並べることができるのか??
■試乗・文:Klaus Nennewitz ■写真:Moto Guzzi ■翻訳:ノア セレン ■協力:Moto Guzzihttps://www.motoguzzi.com/en_EN/models/stelvio/






 水冷Vツインエンジンを搭載し2022年に登場したマンデッロに続く、新世代のモトグッツィラインナップの第二弾として、ステルヴィオは大きな注目と期待を集めている。ステルヴィオはより存在感が大きく、フロントカウル周りに質量が集中しているような印象もあるが、しかしシリンダーヘッドが左右に飛び出しているモトグッツィならではの独特の構成をしていながらも、フロントビューは意外とコンパクトに仕上がっている。

 新たな「コンパクトブロック」水冷Vツインユニットは、基本的にマンデッロと共通のものであり、1042ccの排気量から115hp/8700rpm、105Nm/6750rpmを発するスペックも同じだ。レッドゾーンは9500rpmからであり、エアクリーナーボックスや排気系もマンデッロのものを引き継いでいる。
 ドライサンプ方式のクランクケースにはオイルタンクが内蔵され、またクランクにはバランサーを装備し過剰な振動をカット。ミッション後部に湿式のクラッチが搭載されるのもモトグッツィとしては新たなアプローチであり、これにより整備性も向上している。パワーやトルクに加え環境規制にも対応するべく、Vツインエンジンにはダウンドラフト吸気が採用され、オルタネーターはそのVバンク内にコンパクトに配置されている。
 

「ジアッロ・サヴァナ」と「ネロ・ヴァルカノ」の2色展開。

 
 決して軽量ではない上に、重積載も想定されるアドベンチャーモデルをオフロードで走らせたときの負荷に対応するため、片持ちのスイングアームの肉厚はマンデッロの5mmから7mmに増やされ、またフレームも主にステアリングヘッド周りを補強し20%の高剛性化を実現。
 サスペンションはフロントにインナーチューブφ46mmの調整式倒立フォーク、リアにはリンクレスのモノショックを採用し、前後とも170mmのストロークに設定。アドベンチャーモデルであるステルヴィオらしい装備は21Lに増量された燃料タンクで、これによりライダーの着座位置はマンデッロ比で30~40mm後方へと移動した。シートの高さは830mmとしている。

 ライディングモードは「ツーリスモ」「レイン」「ストラーダ」「スポーツ」「オフロード」の5モードから選択できるが、さらに各モードにおいて好みに合わせエンジンのマッピング、トラクションコントロール、エンジンブレーキ、ABSの度合いを調整することも可能だ。
 シート高は比較的低く、かつまたがる部分はスリムのためライダーは170cmもあれば両足が十分届くだろう。エンジンは始動直後からスムーズに回るが、クラッチバスケット内に新しく設けられたトーションダンパーは1速に入れる時のショックを和らげきれてはいないため、慣れるまでは1速に入れる際にリアブレーキを踏んでおいた方が良いかもしれない。この一点を除けばミッションやクラッチはクイックシフターの作動性含めとてもスムーズで、ギアレシオも適切だ。
 

大きなコーナーでのモトグッツィ・ステルヴィオはとてもリラックスしてこなすことができ、車体やエンジンの良さをもっとも感じられる場面である。

 
 試乗会場であったスペイン・アルメリア郊外のワインディング路に踏み入れると、ステルヴィオは次から次へと現れるコーナーを完璧にこなしていった。特別な操作を必要とせず、容易に狙ったラインに乗せることができるうえ、加速時もシャフトドライブの癖を感じることのないスムーズさを持っている。また倒立のフォークがハードなブレーキングでもしっかりと対応してくれたのも嬉しい。場面によってはステップを擦ってしまうことがあり、そんな時にはサスペンションの設定を出荷時よりももう少し固めても良いかもしれないと感じることがあったものの、それでもワインディングをハイペースで駆け抜けるうえで不満は皆無だった。

 19インチのフロントホイールと、マンデッロに比べると2サイズ細い170/60-17のリアタイヤサイズにより、ステルヴィオは軽やかで素晴らしいハンドリングを提供してくれ、非常に正確な操作を可能としている。純正装着タイヤのミシュランアナキーもそのハンドリングに一役買っているだろう。ただライディングポジションは上体が起きたものであるため、スポーティに走る場合は前輪荷重を確保するべく上半身をしっかり伏せたほうがより楽しめると感じた。
 

着座位置がマンデッロよりも後方になったことで、スポーティな気持ちで走る時は意図的に前傾姿勢をとって前輪荷重を稼ぐと良い。

 
 エンジンは振動や過剰な騒音もなく素晴らしい加速を見せてくれ、とても楽しいユニットと言える。トップギアのまま2000rpmまで落ちたとしても、そこからアクセルを開ければ極スムーズにそのまま1万回転付近のレブリミットまで引っ張り切ることもできるほどフレキシブル。極低回転域でもう少しトルクがあれば、と感じなくもないが、しかし4000~5000rpm辺りでの推進力は非常に強力で頼もしかった。
 各ライディングモードの「ツーリスモ」と「ストラーダ」ではその違いを感じることはできなかったが、「スポーツ」モードとすればアクセルレスポンスがいくらか鋭くなったことに気付けた。今回の試乗行程においては「レイン」は試すことはできなかった。
 

ステルヴィオはあくまでオンロードをターゲットとしたモデルである。締まった未舗装路を走破することには問題はないが、その際は注意を持って走った方が良いだろう。

 
 オフロード走行は写真撮影のための極短時間だけだったが、その限られた時間でも本格的なオフロード走行にはやはりシートやステップが後ろすぎることに気付かされた。加速時にはフロントがかなり軽くなってしまうのだ。170mmというサスペンションストロークと限られた最低地上高を考えると、例えばアフリカツインのような本格的オフロード性能を備えたアドベンチャーモデルと同等に不整地を走ることは難しいだろう。
 しかしその代わり、ステルヴィオはオンロードにおいてただひたすらに快適なツーリングバイクとして、モトグッツィの新たな価値観を提供しているのだ。車体もエンジンも、そして快適性も含めて、公道で乗るにはモトグッツィ史上最高のモデルだと言い切ったとしても言い過ぎではないだろう。

 電動で上下させることができるウインドスクリーンをはじめ、空力には特に力が注がれたようで上半身やヘルメットへの防風性はとても高い。一方で肩周りは風を受ける印象で、かつウインドスクリーンを保持する2本のアームの剛性が心もとなく、バンプを超える際に振動してしまうような場面が見受けられた。
 

ライダー及びパッセンジャーには十分なスペースが用意され快適性はとても高い。

 
 ライダー及びパッセンジャーには十分なスペースが用意されており、特にライダーよりも高い着座位置のパッセンジャーは膝の曲りも緩く、またしっかりとしたタンデムグリップもありがたい装備だ。タンデムする際には車体左側にあるノブを回してリアサスのプリロードを調整するとなお良いだろう。ステップに貼られた分厚いラバーのおかげもあって振動は極小で極めて快適だが、一点気になったのはシフトペダルがアドベンチャー系ブーツで操作するには低すぎることだ。もっともこれは調整すれば済むことだが。

 オプションで搭載することができる電子制御「アドバンスト・ライダー・アシスト・システムズ(ARAS)」は「レーンチェンジアシスト(LCA)」、「フォワードコリジョンワーニング(FCW)」そして「ブラインドスポットインフォメーションシステム(BLIS)」の3つ。メーターで音声及び視覚的に確認できるほか、ミラーにもその内容が表示される。その他「アダプティブクルーズコントロール(FCC)」は前車に追いついた場合にエンジンブレーキを効かせることでスピードをコントロールする仕組み。またコーナリングABSやLEDによるコーナリングライトといった安全装備も搭載する。
 

ツイスティなワインディングを楽しむには最高のお供となるステルヴィオ。ただ時としてバンク角がもう少しあってもいいと感じる場面はあった。

 
 5インチのTFTディスプレイはアクセサリーの「モトグッツィMIAマルチメディアプラットフォーム」を搭載することでスマートフォンとのブルートゥース接続ができ、各種情報の表示およびナビの使用も可能となる。メーター横のUSBポートもありがたい設定だ。
 この他様々なアクセサリーが用意されているのも魅力。アルミ製/樹脂製の各パニアケースやトップケースをはじめ、より大きなウインドスクリーンや厚みの違うヒーター付きのシート、グリップヒーター、エンジンガード、センタースタンド……などなど、自分好みに仕上げることが可能だ。

 ステルヴィオはアドベンチャーバイク的なルックスではあるものの、乾燥重量で230kgほどある車重とストロークの短めのサスペンションで本格的なオフロードを走るのは得意とは言えないだろう。良くバランスされた車体と個性的かつ魅力的なエンジン、そして充実の電子制御により、ステルヴィオが輝くのは長距離のオンロードツーリングである。
 スズキのVストローム1050、トライアンフのタイガー900、ドゥカティのムルティストラーダV2、ホンダのアフリカツインといった、中~大排気量アドベンチャーバイクカテゴリーにおいて、ステルヴィオは興味深い存在となることだろう。これらライバルの中で唯一、メンテナンスフリーのシャフトドライブを採用しているのも魅力に思えた。
(試乗・文:Klaus Nennewitz)
 

大きなコーナーでのモトグッチ・ステルビオはとてもリラックスしてこなすことができ、車体やエンジンの良さをもっとも感じられる場面である。

 

スイッチボックス関係はアプリリアのものと共通となっている。特に左側はサイズが大きく、個人的にはモトグッツィのスタイリングにはそぐわないと感じる。

 

ミラー内に表示される「ブラインドスポットインフォメーションシステム(BLIS)」と「レーンチェンジアシスト(LCA)」のワーニングランプ。
ヘッドライト周りはマンデッロと共通部品。ウインドスクリーンは電動で70mmの調整幅を持っている。

 

新たな燃料タンク形状と左右に飛び出たシリンダーヘッド、そして大きなカウルのおかげで対候性はとても高い。フロントのφ320mmのダブルディスクと4ポッドキャリパーを備えるブレンボのブレーキシステムは抜群の性能を発揮。そしてテール周りはスリムだが、パニアケースを装着できるサポートを標準装備する。パッセンジャーにありがたい大きなタンデムグリップも備える。

 

シートは前後の分割式。高さ調整機能は持たないが、アクセサリーで厚み違いのものを選ぶことができる。
ショートサイレンサーはスポーティな印象。メインのサイレンサーは車体下部に納められている。また短めのサイレンサーのおかげで、左右に大きなパニアを装着できるスペースが確保されている。

 

モトグッツィの印象にマッチしたクラシカルなテールライト。中の光源は最新のLEDだ。
かつてのモトグッツィに搭載されていたCARCシステムは採用されていないが、それでも不自然なトルクリアクションを感じさせないとても優秀なシャフトドライブ機構を持つ。

 

リアのモノショックは伸び側ダンパー調整と、手で回せるノブによるプリロードアジャスト機構を持つ。出荷時設定は少し柔らかめか。
ツインカムのシリンダーヘッドは上から吸気して下に排気するタイプ。

 

シリンダーヘッドにかぶさるように広がるタンクなど、伝統的なモトグッツィデザインも見て取れる。
シフトペダルはアドベンチャータイプのブーツにはいささか下過ぎるか。

 

縦置きVツインエンジンの造形はモトグッツィらしさのアイコンだ。
キャストのマンデッロに対して、チューブレスとなるクロススポークホイールを採用したステルヴィオ。

 

ステップにはかなり大きめのラバーが貼られており、微振動をライダーに伝えない。
メーターは5インチのTFTだ。

 

ARASシステム用のレーダー。

 

●Moto Guzzi Stelvio 主要諸元
■エンジン種類:空・水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ ■総排気量:1042cm3 ■ボア×ストローク:96.0×72.0mm ■圧縮比:12.6 ■最高出力:84.6kW(115PH)/8,700rpm ■最大トルク:105N・m(10.7kgf)/6,750rpm ■全長×全幅×全高:2,195×945×–mm ■軸間距離:1,520mm ■シート高:830mm ■車両重量:246kg ■燃料タンク容量:21L ■変速機形式:常時噛合式6 段リターン ■タイヤ( 前・後):120/70R 19・170/60R17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク(ABS)・油圧式ディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式■現地小売価格:16,499€~


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2024/03/15掲載