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試乗・解説

BMWが提唱するシン・ストバイはエクストリーム系EV! ~CE 02にポルトガル・リスボンで乗った!!
■試乗・文:青木タカオ ■撮影:BMW Motorrad ■協力:BMW Motorrad JAPAN https://www.bmw-motorrad.jp





BMWモトラッドは2024年1月31日から2月1日(現地)にかけて、ポルトガル・リスボンにて電動のニューモデル「CE 02」のインターナショナル・メディアローンチ(国際報道向け発表試乗会)を開催した。「CE 02」は手軽なEVスクーターと本格派EVモーターサイクルの中間を狙った電動モビリティで、見た目からして新しさに満ちあふれている。さぁ、その走りはいかに!? 大航海時代に栄華を誇った、古き良き時代を感じさせる美しい街並みを最新のEVで駆け抜けたぞ!!

 

ホビー向けEVバイク市場を独占だ!

 カーボンニュートラルの実現を推し進めようと、そのひとつの手段として世界中でEV開発が進められている。バイクの電動化は、ガソリンエンジンでは排気量125cc以下に相当するコミューターモデルが大半を占め、デリバリーなど業務用が現状では多くを占めている。軽二輪以上のホビーユース向けとなると、まだほとんど発売されていない。

 そんな中、BMW Motorradは早くから趣味性の強いEVモデル「CE」シリーズを発売している。電気自動車「i3」のバッテリーモニター技術と大容量リチウムイオンバッテリーを採用した「C エボリューション」(2017年)にはじまり、2022年には「CE 04」をリリース。セールス初年度に世界で約5000台を売り上げた。BMW MotorradのEV二輪車はそのセグメントで、70%という高いシェアを誇っているのだ。
 

 
 四輪技術を応用し、他社に先駆けてマキシスクーターの電動モデルを市販化してきたBMW Motorradにとって、「CE 02」はEVシリーズの第3弾となる。開発責任者のアンドレアス・ウィンマー氏は、「シーンをリードして培われた技術とノウハウは膨大で、当然ながらCE 02にもふんだんに盛り込まれている」と、完成度の高さに自信を見せる。回生システムやライディングモード、トラクションコントロールなど、さまざまなテクノロジーが引き継がれた。

 コンセプトモデルとして「CE 02」が初めて披露されたのは、2021年9月にドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティ」でのこと。実用的で正統派、いい意味でも保守的かつ真面目なデザインが多いBMWの製品群のなか、デザイン部門の責任者も「らしくない」と自らのブランドの殻を破ったセンセーショナルな参考出展車であった。注目を集め、大きな反響を呼んだのは言うまでもないだろう。
 

 
 実車を目の当たりにすると、コンパクトなサイズであることがよくわかり、フリースタイルパークが似合うBMXのようにも感じてならない。高いハンドルバーに太い前後タイヤ、スケートボードのような座面が平らなシート、後輪を剥き出しにしたシンプルでスッキリとしたテールエンドなど、若者にも受け入れられそうな斬新なスタイルだ。まさに次世代のストリートバイクといった印象で、エクストリームスポーツやストリート系ファッションに馴染む。 
 

 
 BMW Motorradはこれを「eParkourer」(eパークラー)と名付け、「自由にシームレスに都市部を移動できる乗り物」としてZ世代に訴求している。既存路線とは異なる新ジャンルであり、ブランドとしてのチャレンジでもあるのだ。

 またがればライダーにジャストフィットし、アグレッシブなライディングを予感させてくれる。フロアボードに足を投げ出すように置き、ゆったりとした乗車姿勢で乗る「CE 04」に対し、「CE 02」はスポーツバイクのように両ヒザでニーグリップができるから既存のライダーにもすぐに馴染む。フラットなシートは座面が車体の前方へせり上がり、乗り手の身体をホールドさせるのに一役買ってくれる。

 グリップ位置は高く、アップライトなライディングポジションを決定づけている。フットペグは前後にあり、リアはタンデム時にパッセンジャー用にもなるが、ソロならバックステップのようにも使える。ウィンマー氏に聞くと「ステップは好みや状況によって、どちらを使ってもいい」と教えてくれた。オフィシャルムービーを見ても、ライダーは両方のペグを使い分けている。こうしたところも新感覚と言っていいだろう。
 

 
 シート高は750mmで、ジャーナリストらに用意された試乗車にはクッション厚を10mm増したコンフォートシートが備わっていた。足着き性に優れ、身長175cm/体重65kgのライダーだと、地面におろした両足はカカトまでベッタリと届く。ヒザは伸び切っておらず曲がったままだ。

 車両重量は132kgで、押し引きも軽い。リバースモードも備わり後退を容易にしているが、車体は軽く足もしっかりと届くから、今回の試乗では必要性を感じなかった。ただし急坂にフロントから入り、引っ張り出せないなんてときには心強い。小柄で非力なライダーには、ありがたい機能となるだろう。アップ&ダウンの多いリスボンなら役立つことがありそうだ。
 

 

カンタン操作で走りは機敏!!

 操作を教わらなくとも、直感的にボタンを触っていたらメーターパネルに「READY」と表示され、走行準備が整ったことがわかった。バイクに乗ったことがあれば、誰でもすぐにわかるはずだ。ブレーキレバーを握りながら、スターターボタンを押せば発進スタンバイとなる。サイドスタンドを出したままだと「READY」にならないなど、安全機能もしっかりと備わっている。キーフォブをポケットの中に持っていれば、イグニッションをONにできるスマートキーシステムを採用した。

 停止時からのスタートダッシュが鋭く、リニアに加速していく。走り出してすぐに、コイツはすばしっこいぞとワクワクしてくる。0→50km/hに到達するのに、たった3秒しかかからない。最大トルク55Nm(5.6kgf-m)をわずか1000rpmで発揮してしまう。発進トルクが力強いのは電動ならではの特性のひとつで、そのままフラットにパワーが出て、最高出力11kW(約15PS)を5000rpmで発揮。7200rpmまでモーターはストレスなしに回っていく。トランスミッションはなく、右手のグリップをひねるだけで加速していき、操作はとてもイージーだ。
 

 
 開発責任者のウィンマー氏は「誰でも乗れる」と言う。そうなのだ、我々ジャーナリストに用意されたのは最高出力11kW(定格出力6.5kW)のフルパワー仕様で、欧州(EU)では「A1免許」が必要だが、MAXパワーを4kW/最高速度を45km/hに抑えたよりイージーな仕様も用意され、これは日本の原付1種に相当する「AMライセンス」で運転できる。

 バイクに乗った経験のない若者に乗ってもらおうと、より身近な50ccモペットに相当する仕様もEUでは設定。ティーンエイジャーらを新たなBMWオーナーへ迎えようと、開発陣は本気で取り組んでいることがよくわかるラインナップにしている。

 日本の免許区分は電動の場合、定格出力で分けられ、6.5kWのフルパワー仕様は軽二輪扱いとなる。4kW仕様も定格出力(3.2kW)で原付2種枠上限の1kwを超えてしまうため同じ軽二輪枠となり、メリットは感じられない。日本導入は見送られるのではないかと、筆者は読んでいる。どうなるのか、発売時期や価格などは未定だが、こうして国際発表試乗会に日本のジャーナリストも招かれたことを考えると、フルパワー仕様の日本市場導入は秒読みとみて間違いないだろう。
 

 

日本の都市で活躍できる

 話を戻そう。走行モードが3つあり、右手のスロットル操作にもっともダイレクトにレスポンスするのが「FLASH」、中間的な味付けが「SURF」、そしてマイルドで穏やかなのが「FLOW」だ。いずれもMAXパワーは同じで、変わるのはスロットルに対する反応だ。また、エンブレの役割を果たす回生ブレーキの効きも「FLASH」では強くなり、スポーティな走りが味わえる。

 石畳の路面にトラムのレールが敷かれ、見るからにスリッピーであるものの前後サスペンションがなめらかに動き、前後14インチのホイールに履いた太いタイヤを食いつかせてくれる。電子制御もしっかりと調教され、トラクションコントロールシステムが駆動輪の空転を防いでくれた。もちろんブレーキはABS搭載で、思い切ってレバーを握ることができる。ストップ&ゴーの繰り返しが「CE 02」は得意で、交通量の多い混雑した都会を走れば、水を得たように持ち前の機動力をフルに発揮してくれるのだ。
 

 
 また、幹線道路に出れば、クルマの流れをリードすることもできた。最高速度は95km/hと数値的には大人しく感じるかもしれないが、実際の走行では中間加速でももたつくことはなく、前へ前へとクルマを追い抜かし出ていけた。日本でなら首都高など都市高速で、機敏さを充分に活かせるだろう。

 航続可能距離が95km(WMTCに準拠)であることからも分かる通り、都市内での移動に適している。というか、割り切った。開発チームは「CE」シリーズのオーナーにリサーチし、走行距離を調査したところ想像以上に短いことがわかった。今回のスペックで充分という判断を下したのだ。

 クイックチャージャーでの充電は140分で80%、210分で100%フルチャージできる。バッテリーは脱着式ではなく、車体に積んだまま充電。コネクターの形状を見る限り汎用性はなく、ウィンマー氏も「専用の充電器で家庭用電源を使う」と教えてくれた。
 

 
 ワインディングも走ったが、軽快にスポーツライディングが楽しめた。それだけに、もっと遠くへと郊外へのツーリングも期待せずにはいられない。となると「クルマと同じようにCHAdeMOが使えたら」「航続距離がもう少し長ければ」と、欲張りな気持ちが出てきてしまうではないか。しかし、それはベテランライダーの言い分であり、ターゲットではないこともわかっている。「CE 02」はストリートをスタイリッシュに移動する若者たちにはうってつけであり、無音でスマートに走る姿は若者のファンを増やすだろう。いよいよとなった日本デビュー、楽しみでしかない!
(試乗・文:青木タカオ 写真:BMW Motorrad)
 

 

ライダーの身長は175cm。

 

バッテリー残量などを表示する多機能メーターディスプレイを装備するが、モバイルフォンを追加装着できるようスペースやステーが設けられている。

 

Bluetooth接続したスマートフォンは、ハンドルスイッチで操作ができる。BMW Motorrad Connected アプリで、ナビゲーションやバッテリー残量などさまざま情報を見ることができ、充電するためのUSB Cポートも備わっている。

 

ホイール径は前後とも14インチ。フロントブレーキは片押し2ピストンキャリパー&239mmフローティングディスクローターの組み合わせだ。

 

上下2灯式のLEDヘッドライトに、コンパクトながらスピードレンジが高まれば防風効果を感じることのできるウインドシールドを組み合わせたフロントマスク。倒立式のフロントフォークのインナーチューブ径は37mmで、129mmのトラベル量を確保している。
スケートボードのようにまっ平らなシート。ボタン操作ですぐに外すことができ、シート下には駆動用のバッテリー2つが縦列していることを見ることもできたことを報告しておこう。

 

フットペグは前後に備わり、リラックスしてゆったりと走るならフォワードコントロール、アグレッシブにスポーツ走行するならバックステップと使い分けができた。
リバースモードも搭載し、後退も容易い。

 

片持ち式のスイングアームを採用。ベルト駆動でレイダウンレイアウトのショックアブソーバーを含めて、すべて車体左側に集約されている。

 

ディッシュホイールにワイドタイヤをセット。リヤは150mmと太い。試乗車が履いていたのは、雨天時や濡れた路面で高いウェットグリップ性能を発揮するMICHELIN City Gripだ。

 

充電器のコネクターも車体の左側。保護カバーを外すと、姿を見せる。専用で汎用性はなく、今回の発表試乗会ではチャージャーは公開されなかった。

 

●BMW CE 02 主要諸元
■登録クラス:軽二輪 ■最大出力:11kW(約15PS)/5000rpm ■定格出力:6.5kW(約8.8PS)■最大トルク:55Nm(5.6kg-m)■バッテリー種類:リチウムイオン電池 ■バッテリー最大定格容量:4.6kWh ■バッテリー電圧:12V ■全長×全幅×全高:1970×845×1140mm ■シート高:750mm+10mm ■車体重量:132kg ■駆動方式:ベルトドライブ ■航続距離:95km(WMTCモード)■最高速度:95km/h ■充電時間:140分(80%)/210分(100%)■ホイールリムサイズ(前・後):2.5×14・3.5×14 ■タイヤサイズ(前・後):120/80-14・150/70-14 ■乗車定員:2名
■発売時期:3月頃(予想)■価格:未定


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2024/02/21掲載