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レース・イベント

●レポート:高山正之

 
 この大会は、1981年に第1回大会を鈴鹿サーキットで開催したのがルーツです。1滴のガソリンも無駄にしないという環境保全を目的に、創意工夫を凝らしたマシンで競う“科学のモータースポーツ”とも言われてきました。エンジンは、ホンダの4ストローク50ccエンジンをベースとしています。2020年と2021年は、コロナ禍のため開催を断念しました。この期間、中学生や高校生たちは、先輩たちが創り上げてきたこのような厳しい環境の中ですが、今年は中学生クラスに16台がエントリー。高校生クラスは83台のエントリーがありました。

 では、最も敷居が低い”二輪車クラス”から紹介いたします。

静岡工科自動車大学校Ⅱ
静岡工科自動車大学校Ⅱのマシンは、レッグシールドに規定の燃料タンクを搭載。リアサス部にバックステップを取り付けています。ノーマルと大差ない外観です。205.564km/L でクラス4位の成績でした。
Team中燃費
Team中燃費②のマシンは、1986に発売されたスーパーカブ90カスタムのようです。ガスパワー発電機のエネポが活躍しています。

がんばる98才
がんばる98才5
“がんばる98才”の車検シーン。ライダーは98才の菅原文雄氏。灼熱の中、悠々と走行する姿は圧巻でした。

がんばる98才
がんばる98才
サポート役の724番チームと無事ゴールです。燃費は98.292km/Lを記録しましたが、惜しくもタイムオーバーで順位の記録には残りませんでした
(平均速度が25km/h以下になるとタイムオーバーになってしまいます)。チーム関係者によりますと、日ごろの鍛錬により若々しい身体を保っているとのことです。ゴールの後に、燃料計測ブースまでスーパーカブを押していく姿は、どう見ても70才くらいにしか思えません。来年もお会いできることを楽しみにしています。

市販車クラス
これが市販車クラスのライディングスタイル。
ドリーム50
ドリーム50も燃費に挑戦。

水戸藩
“Super Cub’s +水戸藩”は、ライダーが娘さんで、父親がマネージャーを務めます。このクラスでは常に上位を争う常連で、今年は237.262km/Lで2位でした。
親子で、カフェカブイベントにも参加するカブファミリーです。
市販車クラス優勝
市販車クラス優勝の“Little Cubs” 燃費は294.424km/Lでした。外観はノーマルですが、制御機器とライディングテクニックが特別なのだと思います。

 
 最もフレッシュな中学生クラスは、あきる野市立東中学校の3チームが、上位を独占しました。

あきる野市立東中学校Team-A
“あきる野市立東中学校Team-A”のマシン。地元の商店街や企業が協力している様子が分かります。サマーランドは、練習用に駐車場を提供していたと想像できます。3チームそれぞれ車体構成が違うことに驚きました。

水戸藩
あきる野市立東中学校Team-A
中学生クラスの表彰式。優勝の“あきる野市立東中学校Team-A”は、全員女子のチームです。記録は、他を圧倒する808.630km/Lでした。

 最も台数が多いのが高校生クラスです。今年は83台のエントリーがありました。

宇都宮工業高校科学技術研究部A
“宇都宮工業高校科学技術研究部A”のマシンは独特なスタイリングが目を引きます。
静岡吉原工高A
“静岡吉原工高A”のカウルには、10年間のステッカーが貼られています。伝統の重みが感じられます。470.170km/Lの記録で22位でした。

都立田無工科高等学校自動車部A
都立田無工科高等学校自動車部A
“都立田無工科高等学校自動車部A”のピット風景。役割分担表には、時間や担当者名などの詳細が記載されています。初めて参加する生徒もいますから、抜け漏れがないよう配慮しています。537.426km/Lで19位でした。このチームのマシンは、デザイン賞を受賞しました。

千葉県立下総高等学校自動車部
千葉県立下総高等学校自動車A
クラス優勝した“千葉県立下総高等学校自動車部B”のピット作業シーンと表彰式。2105.226km/Lの好記録で7連覇を達成しました。

 
 ベテラン勢ともいえる一般クラスには、31台がエントリーしました。

チームファイアボール
“チームファイアボール” 29回目の出場を誇る名門チーム。毎回美しいマシンで挑んでいます。2138.408km/Lの記録で4位でした。
HTFTエコランクラブ
“HTFTエコランクラブ” 独創的なスタイリングです。1296.211km/Lで11位。

水曜クラブ
水曜クラブ
一般クラスの優勝は、2451.870km/Lの記録で“水曜クラブ”が獲得。同時に最高記録のチームに授与される本田宗一郎杯も獲得しました。マシンは表彰台の左側です。正面からのスタイリングにも見とれてしまいます。

【次世代に向けたカーボンニュートラル燃料の取組】

 
 今年の大きな話題は、カーボンニュートラル(CN)燃料のエキジビションが行われたことです。使用する燃料は、ETS RenewaBlazeと呼ばれている植物を原料にしたものです。すでにスーパーGTやMFJロードレース全日本選手権のJSB1000クラスで使用されています。来年のエコマイレッジ大会では、CN燃料のクラスが新設されます。

H-TEC CN-プロジェクト
H-TEC CN-プロジェクト
“H-TEC CN-プロジェクト” ホンダテクニカルカレッジ関東校のマシンとスタートシーン。次世代に向けたプログラムがスタートした瞬間です。709.018km/Lを記録しました。

Team-Truth
Team-Truth
“Team-Truth”は本田技術研究所のチーム。一般的なガソリンとは色も匂いも異なります。1206.419の記録でした。

 
 チームマネージャーが、CN燃料を使用した感想を語ってくれました。
「昨日のテストでは300km/L程度でしたが、タイヤの転がり抵抗を減少させ対策した結果、大幅なアップを達成できました。ガソリンとは特性が異なるので、セッティングがとても難しかったです」(H-TEC CN-プロジェクト 小野智也さん)

「燃料を入手したのが2か月前でした。セッティングを煮詰めきれない状態でしたが、ホンダの社員チームとして1000キロを超えることができほっとしています。ガソリンとは理論空燃比が異なりますので、バランスの調整が難しかったです」(Team-Truth 石手雄大さん)

 
 ガソリン価格が高騰し、電気料金も値上がりするなど、エネルギーを取り巻く環境はますます厳しくなることが予想されます。エコマイレッジチャレンジは、中学生の時からエネルギーに興味を持ちながら、持続可能な社会にするために自らアイデアを出して取り組んでいくことができるイベントです。
 また、年代を超えて同じ目的に向かって挑戦する姿には感動を受けました。そして、40年以上経っても新たな可能性を秘めている稀有なイベントであることを実感しました。

CN燃料
会場では、希望チームにCN燃料を配布しました。各チームは来年に向けて新たな挑戦を始める事でしょう。

【番外編 ホンダの燃費競技のルーツ】 

 
 Honda エコマイレッジチャレンジのルーツは、1981年まで遡ります。当時は第二次オイルショックの最中でした。このような背景から生まれたのが、1981年2月に発売されたスーパーカブ50です。燃費は、これまでの85km/Lから105km/Lに高め、最高出力は4.2PSから4.5PSに高めました。この新設計エンジンは、燃費(エコノミー)と出力(パワー)をともに向上させたエンジンという意味から「エコノパワーエンジン」と名付けられました。

 このスーパーカブの優秀性をPRするために企画したのがホンダエコノパワー燃費競技でした。当時は、SHELL-CAR GRAPHIC マイレッジマラソンという歴史ある燃費競技が開催されていましたので、1981年の競技規則はこの大会に準拠しました。

スーパーカブ50
1981年2月発売 スーパーカブ50 スタンダード。

 

 グループⅠは、ホンダ4ストローク50ccの市販二輪車、グループⅡは、4ストローク50ccのスペシャルマシン(エンジンのメーカーは問わず)。どちらのクラスも、40ccから60ccまでの改造が認められていました。
 スーパーカブは、中古車であればとても安く入手できましたので、出場にあたっての敷居を低く設定したのです。
 主催のモーターレクリエーション本部では、手探りの中しかも準備期間が数か月という厳しい中でしたが、6月21日に鈴鹿サーキットで第1回大会を開催しました。
 この模様を自ら参加してリポートした”ミスターバイク”の記事がありますので紹介させていただきます。

ミスターバイク
ミスターバイク
ミスターバイク0
ミスターバイク誌は健闘しましたがリタイアになってしまいました。第1回大会から報道陣が自作の車両で出場したことは驚きです。

モーターレクリエーションニュース
モーターレクリエーションニュース
こちらは、私が編集担当をしていた「モーターレクリエーションニュース」です。鈴鹿の現地で運営要員として仕事をしていましたが、我々にとっては何もかも初めての体験でした。

 
 そして、同年10月11日に埼玉県桶川市の交通教育センターレインボーの高速コースで第2回大会が開催されました。
 この年の総合優勝(グループⅡ)は、鈴鹿、桶川両大会の記録によって決められました。”ROSINANTE”が両大会ともに2位の成績で初代優勝チームに輝いたのです。
(●レポート:高山正之)

2023/09/15掲載