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レース・イベント

■文・写真:青山義明 ■協力:一般社団法人サイドスタンドプロジェクトhttps://ssp.ne.jp/

伝説の兄弟ライダー、青木三兄弟の三男・治親が理事を務める一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)が2020年から活動を展開している「パラモトライダー体験走行会」。今回は鈴鹿サーキットと、同敷地内にある交通教育センターで開催された。

 強烈な暑さの日々が続いている中、鈴鹿サーキットでSSP(サイドスタンドプロジェクト)のパラモトライダー体験走行会が開催となった。
 SSPは、1998年にGPマシンのテスト中の事故によって脊髄を損傷し、車いす生活を余儀なくされている元WGPライダーで、青木三兄弟の次男の青木拓磨を再びバイクに乗せようという企画から発展したもので、拓磨を乗せられるなら、ほかにも同じようにバイク事故などで障がいを抱えてしまい、2輪車を諦めた人に再びバイクに乗ってもらって、バイクを一緒に楽しんで行けるように応援しようということで立ち上がったもの。

SSP
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青木治親が代表理事を務める一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)。SSP専属パラモトライダーに青木拓磨、そしてSSPテクニカルアドバイザーに青木宣篤が名を連ねる。

 2010年からスタートしたこの『パラモトライダー体験走行会』では、すでに100名以上のパラモトライダーを輩出している。27回を数えるその開催は、関東を中心とした開催が多く、この鈴鹿サーキットでの開催は昨年の3月以来、3回目の開催となった。まずステップアッププログラムを行う鈴鹿サーキット内の交通教育センターには、朝から中部および関西地域からボランティアスタッフが大勢集まり、このパラモトライダー体験走行会へのボランティア経験者を中心に班分けがなされ、それぞれの役割や手順を確認していく。

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参加者には同じ境遇にいるからこそのアドバイスを行い、そして自身も仲間と一緒に走ることを誰よりも楽しんでいるのが青木拓磨だろう。

 今回はこの体験走行会初参加の3名(いずれも脊椎損傷による半身不随)、そして2回目の参加者(視覚障がい)がまずはステップアップとしてアウトリガーを装着したKTM デューク250を使用して走行練習。
 今回は2つの新アイテムが投入された。ひとつはファン付きウエアである。パラモトライダーへの着用で、少しでも体温を抑えられるようにという配慮。もちろん、こまめに何度も休憩を入れながらボランティアスタッフの体調にも配慮しながらの体験会となった。そしてもう一つが、電動補助輪を装着したBMW K1600B。ステップの後ろ側に装着された補助輪が手元の操作で収納&展開されるもので、ボランティアスタッフがいなくても発進と停止ができ、走行中はバンク角も確保されており通常の走行も可能となる。これにSSPのハンドドライブシステムを組み込んで鈴鹿に持ち込まれた。今回はステップアッププログラムの横で、パラモトライダーが試乗をし、夕方のサーキット走行にも使われることとなった。

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体温調整の難しい脊椎損傷者にとって真夏の走行会開催は厳しいものとなっている。そのため、革ツナギの上からファン付きのベストを着用。ステップアッププログラムではライディングの上達によって、ライダーを下ろさないままアウトリガーの付け替えを行うがその作業も急ピッチで行われた。

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SSPパラモトライダー体験走行会で初お披露目となった電動補助輪車両。このシステムの導入事例が増えていけば、パラモトライダーの2輪免許取得にもつながるかもしれない。

 そして夕方には国際レーシングコースの東コースを使用し大型バイクを使用したサーキットでの走行も行われた。パラモトライダー、そしてボランティアスタッフと見学者が交通教育センターから鈴鹿のパドックに移動をしたタイミングで、鈴鹿周辺は激しい雷雨に見舞われ、コース上には川ができるほどの大雨となった。参加者はコース走行ができるのか、不安な表情で空を見つめていたが、この夕立は20分ほどで再び青空が戻ってきた。青木治親が実際にコースに出て状況の確認。路面はウエットながら走行ができるという判断となり、予定通りパラモトライダー6名がバイクに乗りコースへ出ていく。

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阿部一雄さん、樋榮 聖さん、古谷 卓さん、丸野飛路志さんといったSSPでは何度も走行をこなしてきた面々は青木拓磨と一緒に鈴鹿東コースを走行。
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ホームストレートに戻ってきて通過していくパラモトライダーたちひとりひとりに、ボランティアスタッフが手を振る。その光景も実に美しい。

 パラモトライダー5名に青木拓磨を加えた6名のライダーに対し、ボランティアスタッフが6班に分かれ、それぞれの担当ライダーを送り出し、戻ってきた際にしっかり受け止めるという役割をこなし、ピットロードで大きなトラブルもなく全パラモトライダーの走行を支えた。
 一部参加者の持ち込み車両に不具合があったため、一度走行が中断されることがあったが、無事に全員がケガなく走行を終えた。

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パラモトライダーたちの先導走行を務めてくれたのは、青木宣篤&拓磨以外に、寺本幸司、出口 修、徳留真紀の3名の全日本ライダーという超豪華なライダーがそろった。

 次回のSSPの活動は、アネスト岩田 ターンパイク箱根(神奈川県小田原市早川2-22-1)での貸し切りツーリング企画「やるぜ!! 箱根ターンパイク2023」となる。2回目の開催となる箱根ツーリングに向け、現在「CAMPFIRE」にてクラウドファンディングの受付を行っている。
(レポート・写真:青山義明)

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今回初参加となった油井弘貴さんは、5年前に峠での単独バイク事故により、Th6の脊椎損傷を負い、みぞおちから下の麻痺。インスタグラムでSSPの活動を知り参加。「まずは、楽しかった。本当に久しぶりのバイクは楽しかったです。最初は補助輪ありで乗っていたのに、途中からは補助輪を外して乗りました。そのときはちょっと怖かったけれど、何とか走ることができました。もう少し練習を重ねていきたいですね」とコメント。

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脊椎損傷(Th7)の高橋健太さんも今回初参加。3年前の4月に起こしたバイク事故によるものだが、その後バイクに乗りたいと「脊損 バイク」で検索をかけていたところ、ちょうどこのSSPの活動が始まったタイミングだったことで、これにヒット。活動を知ったものの、社会人となったところで有休もなかなかとれず、さらに関西での開催が少なかったため、今回ようやくの参加となった。「昔の感覚が残っているのか、すごく難しかったところもありますが、事故後で一番楽しい時間でした。もっと時間の許す限り、長く乗っていたいと思いました。ありがとうございました」と高橋さん。

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柴山善邦さんは林道ツーリング中の事故で脊椎損傷(L1)の障がいを負ってしまい、それから約30年、バイクはもちろん、アシゲク通っていたバイク屋とも疎遠になり、バイクが遠い世界のものとなっていたという。そんな中でこのSSPに参加しているパラモトライダーのひとりから「バイクに乗れるイベントがあるよ」と紹介されて、今回の参加となった。「ちょっと乗っただけですが、懐かしく、昔を思い出しました。あんなに緊張したのはほんとに久しぶりです。もうバイクとは縁がなくなったと思っていたけれど、バイクの縁が戻ってきたと実感しています」とコメントしてくれた。

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今回2回目の参加となった山田翔太さんは極未熟児網膜症による視覚障がいを持つ。今回もまずはスタッフが押すバイクのブレーキの利き具合を試した後に、実際にエンジンをかけて交通教育センター内でのデュークの走行を楽しんだ。「まだ2回だけしか乗っていません。もっと回数を重ねていきたいです」とコメント。

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熊本でのパラモトライダー体験走行会に参加経験のある吉村陽平さん(脊椎損傷Th4だが不全麻痺で足を動かすことも若干できる)は、ひさしぶりのバイクということで、まずステップアッププログラムをこなしたうえで鈴鹿のコースを走行した。「ついに鈴鹿を走りました。次は富士も走りたい」

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2023/08/24掲載