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試乗・解説

がむしゃらに走る楽しさ Benelli 125S
80年代に一度姿を消したイタリアの名門ブランド、Benelli。中国のメーカーの手に渡り、その資本によって蘇った。その中から40万円くらいで買える125ccクラスのシングルエンジンネイキッドスポーツ、“125S"に乗った。
ライディングした感想をお伝えしよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:プロト https://www.plotonline.com/benellimotorcycle/lineup_125s.html、JAIA https://www.jaia-jp.org/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、KADOYA https://ekadoya.com/




数値よりコンパクトに感じさせるサイズ感

 100/80-17・130/70R17という前後17インチホイールで、全長×全幅×全高のスリーサイズは2030mm×780mm×1070mm。そしてホイールベースは1345mm。ホイール径が小さいミニモデルではなく、いわゆるフルサイズ原付二種ネイキッドスポーツモデルになる。スタイリングはストリートファイター的。サイズがわかりやすいように国内メーカーのネイキッドモデルと比較すると、スズキのGSX-S125 ABSがホイールベース=1300mmでスリーサイズもちょっと小さい。スズキのジクサー250とホンダCB125Rとはホイールベースが一緒で大きさも同じくらい。

 だから数値だけを見れば、17インチホイールのライバルとそんなに変わらない。けれど、シートに腰を下ろし、アップハンドルを掴んで走り出すと、それらよりひと回りコンパクトに感じるから不思議だ。前輪がライダーに近いところにある感覚。シート高は810mmで、ちょいと高く感じるCB125Rより5mm低く、GSX-S125 ABSの785mmよりは高い。これも他とそれほど変わらない。170mmの最低地上高が、ほかより少し高いくらいか。ショートテールで数値より実質的な外装が短いことから勘違いをしているだけかもしれないが、GSX-S125 ABSに似た動きながら、さらに小さく曲がれてしまう乗り味。くるくる思ったとおりに面白いように向きが変わる。
 

 

軽快なフットワークを心から楽しんだ

 旋回する能力、曲がるときの姿勢、スピードを上げたときの安定性など、バイクとしてのフルサイズ感は250ccクラスの方が確実に立派。16歳で原付一種免許を所得して、そこからライダーになったくちだけど、その頃、毎日乗って遊んでいた2ストローク50ccスポーツの楽しかった記憶が蘇った。
 54.0×54.5mmとほぼスクエアなボア×ストロークの水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒エンジンのパワーは、排気量からイメージする範疇だけど、アクセルを大きく開けてぐんぐん回るから気持ちがいい。トルクは147kgの車両重量と体重66kgのライダーを走らせるには十分で、加速が鋭いとかはないけれど、もどかしいなんて思わせない。低中回転域でもある程度加速し、高回転域とのバランスがいい。

 ガソリンがなくなるまで、あまり目的もなくただがむしゃらに走り回っていた高校生の頃を思い出す。前後のサスペンションは低速時からよく動いてくれる。もうちょっと性能レベルの高いフロントフォークだったらもっといいのに、と思わせるところも昔50ccスポーツを思い出させる部分なのかも。かといって、狭いながら、制限速度がないクローズのコースをアクセルをなるべく全開にして走っても、著しく不安定になるところはないから、出せる速度と足周りや、シャシーなどとの折り合いは悪くない。一生懸命で思わず笑顔になるフィーリングだからこそ、せっかくならもうちょっといい足があったらなぁと思うだけ。高めのギアで回転を上げずに走っても4ストローク125ccとしての使い勝手はアベレージレベルだから、日常的な移動の手段としても困らないと思う。ビギナーライダーにも相応しい。
 

 
 昔の50ccと段違いなのはブレーキ性能で、260mm、220mm径のディスクローターにピンスライドのキャリパーを使った前後連動ブレーキはよく効いて、このエンジンから出せる運動エネルギーをコントロールするのは簡単で、困ることはなかった。コンパクトな感覚だと言ったけれど、それは走りのインプレッションであって、原付二種の中にある、より小径サイズのホイールを履いたバイクより居住性や乗車感はちゃんとバイク。狭く感じたり、体に負担がかかるような姿勢にならないライディングポジション。足を載せるペグの位置も高すぎず低すぎず。お尻の真下で、膝の曲がりも普通で、アップライトなポジションから長時間でも気にならないのではないか。試乗時間がそれほど長くとれなかったのでそこは推定になってしまうのはご勘弁。ハンドルは近く、ロックまで切っても170cm身長でも腕に余裕がある。
 

 
 ひらひらと切り替えして、くるりと回って、アクセルを最大に開けきって走り回るのが愉快で、大排気量大パワーのモデルの良さを一旦横において、こういうのが1台あったらバイクライフがまた違ったおもしろさになると実感しながらライディングをしていた。基本的な走りのツボはちゃんとおさえられていて、違和感を感じたところはなくファンライドできた。耐久性など長期で使う部分はわからないが、最近のネイキッドスポーツのトレンドをおさえたモダンなスタイリングも含め、これでメーカー希望小売価格が税込41万8千円は魅力的だ。
(試乗・文:濱矢文夫)
 

ライダーの身長は170cm、体重は66kg。写真の上でクリックすると、両足着き時の状態が見られます。

 

ショートテールにスイングアームマウントのフェンダーは、最近のストリートファイターモデルのお約束造形。モノショックで、正新(チェンシン)ゴム工業の『CST』ブランドのタイヤを履く。サイズは130/70R17。リアブレーキはφ220mmディスクにピンスライドの2ポッドキャリパー。ペグにはラバーがついてライダーに伝わる振動を軽減。タンデムステップ、前後独立したシートで乗車定員は2名。
フロントフォークは倒立式でリアブレーキを踏むと、φ260mmペータルディスクを使ったフロントブレーキも働く前後連動式。フロントのホイールトラベルは110mm。フロントフェンダーは泥跳ねをおさえた十分な長さがありながら後端をブラックアウトにして小さく見せる工夫。アンダーカウルが凝った造形でカッコイイ。シュラウドも含め最近のトレンドをしっかりおさえたスタイリング。

 

樹脂のカバーをかぶせているのではなく、見た目通りの太いツインスパーフレームを採用。ヘッド周りが隠れて見えない125cc水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒エンジン。ボア×ストロークは54.0×54.5mmで圧縮比は11.6:1。9.4kwの最高出力を9500rpmで発生。キャブレターではなくフューエルインジェクションを採用。変速は6段。3スパークシステムのトランジスタ点火(TLI)。
樹脂の外装の中にある燃料タンクの容量は10L。ラジエターシュラウドにつながる面構成で、前側にボリュームがあるけれどニーグリップエリアは細身でフィット感がいい。リーズナブルといえる車両価格ながら、ハンドルにはファットバーを使っていたり、立派な装備やディテール。立体感のあるシート表皮もおもしろい。シート高は810mmで、前が細身で、かなり角を落とした形状だから数値より低く感じさせる足着き。メーターはモノクロ液晶で、ギアポジションも表示する。尖った形状のヘッドランプやウインカーはLED。

 

●Benelli 125S
■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒SOHC 4バルブ ■総排気量:125㎤ ■ボア×ストローク:54.0mm×54.5mm ■圧縮比:11.6 ■最高出力:4.9kW/9,550rpm ■最大トルク:10.0N・m/8,500rpm ■全長×全幅×全高:2030mm×780mm×1070mm ■ホイールベース:1,345mm ■シート高:810mm ■車両重量:147kg ■燃料タンク容量:10L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):100/80-17・130/70R17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:ブラック、ホワイト、レッド、グリーン ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):418,000円(※グリーン:423,500円)

 



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2022/12/07掲載