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試乗・解説

BMWブランドで、 最も小さなネイキッドスポーツ BMW G310R
BMWブランドの中で最も小さいロードスターがG310Rである。
この普通二輪免許で乗ることができるネイキッドスポーツの魅力をライバルと比較しつつ乗った感想とともに掘り下げよう。
■試乗・文:濱矢文夫 ■撮影:渕本智信 ■協力:BMW Motorrad Japan https://www.bmw-motorrad.jp ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html




ライバルが多い普通二輪免許で乗れるネイキッド

 シングルエンジンらしい細身でコンパクトな車体が持ち味だ。このBMWブランドで最も排気量が小さいロードスターのシート高は780mm。跨がってシートに腰を下ろすと、それよりもっと数値が低いと感じさせる。身長170cm、体重66kgで、それほど足も長くない私でも普通に両足カカトまで届く。312ccだから400ccクラスに属し、近い排気量でシングルエンジンといえば373ccのKTM 390 DUKEがある。こちらのシート高は830mmだから、G310Rの方が足着きは確実にいい。足着きだけでバイクの良し悪しは語ることができないけれど、ビギナーやリターンライダーも多い普通二輪免許で乗れるカテゴリーにおいて、足が届くか届かないかはユーザーにとって重要なファクターになる。
 

 
 乗った感じ、運転した感じの重量感は390 DUKEと同じくらい。国内メーカーなら、ホンダの空冷4ストロークOHC単気筒348ccのGB350が近くなる。ちなみにGBのシート高は800mm。ただし、レトロテイストのスタイリングだけでなく、エンジン、サスペンションなど走りの領域はまるで違うので、購入で悩む候補には入らないかもしれない。ホンダでいえばCB250Rと乗った感じは似ている。スズキのジクサー250も遠からず。ただ両車より排気量が多い分、確実に最高出力、最大トルクはG310Rが上回る。バイヤーズガイド的にまとめると、KTM 390 DUKE にパワーで少し負けるが、標準モデルで5万4千円安い。足着き性は普通二輪免許で乗れるネイキッドスポーツの中ではトップクラスに良い方。乗って感じる軽さは国産250ccシングルモデルのよう。2気筒の250cc、ヤマハMT-25とNinja250とシート高が近く、カタログに記載されている重量はほぼ同じだが、動的な質量というか、操作して感じる車体の軽さはG310Rの方が勝っている。価格もスペックも、周りと大きな隔たりはなく、差別化も一緒にしていいところをついている。
 

 

BMWは怠らずバージョンアップをした

 走らせてみると、BMWブランドにあぐらをかかず、誰もが楽しめる小排気量ロードスターとしてコストを下げながら正面から取り組んでいるという感想を持った。そう思わせる訳に、昨年のモデルチェンジがある。見た目はたいして変わっていないようで、ヘッドライトがLEDになって明るさだけでなく、顔つきがシャープに変わった。しかしモデルチェンジの核心はそこじゃない。現行モデルは電子制御スロットル、ライドバイワイヤの採用とスリッパークラッチの導入という走りに関わる部分をブラッシュアップしてきたのである。最初のG310Rが登場したばかりに何度か乗ったことがあるけれど、それと比較してエンジンのフィールが上質になり、回転上昇も滑らかになったとことに気がついた。初期のモデルは、洗練されていないと言うか、どう良い方に解釈しても“滑らか”という表現は使えない印象だった。ただ、それでも個人的には普及モデルなのだからと納得し不満とまでは考えなかった。
 

 

走りとフィーリングは確実に良くなっている

 水冷DOHCバルブシングルエンジンはライドバイワイヤ化によって、ECUの介入が増えて燃焼するのを微細に調整するようになったこともあり、回転が上がっていくときのスムーズさに拍車がかかった。スリッパークラッチは、大きくない排気量から高い回転数を使う機会が多いので、シフトダウンでエンジンブレーキを抑制する機能の追加は歓迎だ。最大出力34PS、最大トルク28Nmのパワーは順当なものだが、その滑らかさがトップエンドまで続くことから、加速するのが気持ちいい。驚くような速さはないが、混合交通の中をリードして走れるだけの加速は見せる。高回転域だけでなく、極低回転域では粘りながらトコトコと歩くような速度で進ませることもできて、そこから続く中回転域はトルクが増したようで、コーナリングがスムーズにできる。回転数が落ちたところからでも繋がり、急ぐことがなければギアを落とさずスロットルだけで右、左と倒し込んで流れるように操れた。
 

 
 良くなった、と個人的に思ったところは他にもある。BMWから正式なアップデートはアナウンスをされていないので思い違いかもしれないと前置きして、前後サスペンションの動きが良くなったと思う。特にモノショックをリンクレスで使っているリアサスペンションのフィーリングがいい。もしかしてエンジンのインプレッションが向上したことに引きずられたプレセボ効果なのかもしれないと思案したが、それを含め車体全体で考えてバイクとしての質感が上がったと思ったのは確かだ。前後17インチホイールを履いたハンドリングは、ヒラヒラと軽く反応するクイックなもので、方向転換動作まで思い通りにやれる。リーンしていく時、リーン中も不安定なところを見せず。エンジンのシリンダーが後ろ、つまりタイヤ側へ傾いており、空いた前スペースから吸気、後ろ側から排気するいわゆる後方排気と呼ばれる通常とは逆のレイアウト。マスの集中化を狙ったものだろう。そのおかげもあってかいろいろな速度で走らせていて車両の重さを感じにくい。このフットワークの軽さが実に気持ちいい。ABSはもちろん、ETC 2.0も標準装備。これ1台だけでもおもしろいバイクライフになりそうだ。
(試乗・文:濱矢文夫)
 

 

ライダーの身長は170cm、体重は66kg。写真の上でクリックすると、両足着き時の状態が見られます。

 

赤く塗られたスチール製チューブラーフレーム。エンジンを剛性メンバーに使うダイヤモンドタイプだ。ご覧のようにDOHC4バルブ単気筒シリンダーが後傾しているのがわかるだろう。通常とは違いシリンダーの後方から出るエキゾーストパイプは短めなので、トルクが弱いとおもいきや、そんなことはない。昨年のモデルチェンジでライドバイワイヤ化されスリッパークラッチも標準になった。
裏返したようなアルミ鋳造のスイングアームのデザインはKTMと似た感じがある。リンクレスのリアショックユニットはプリロード調整が可能。コンチネンタル製ABSを標準装備。タイヤはミシュランのラジアル、パイロットストリート。4.00-17幅のアルミ合金キャストホイールに履くタイヤサイズは150/60R17。リアのブレーキキャリパーはバイブレ製。ローターの直径は240mm。リアのサスペンションストロークは131mm。

 

ヘッドランプとウインカーにLEDを採用。これで前モデルよりスランとした眼力のある顔つきになった。よりアグレッシブで小顔に見せるデザインで、後ろのボディとのバランスをうまくとっている。

 

φ41mmの倒立フロントフォークにはサイドリフレクターが付いている。3.00-17のホイールに110/70R17サイズのタイヤ。シングルローターフロントブレーキのディスク径は300mm。ラジアルマウントしたバイブレ製4ピストンキャリパーを使う。フロントのサスペンションストロークは140mm。キャスターは25.1°でトレールは103mm。シュラウドからタンク部分にかけて入る“R”の文字がスポーティーさを演出する。
燃料タンクの容量は11Lで、内リザーブ容量は1L。ハンドルバーはいわゆるテーパーバーではなく太さが同じのミリバー(22.2mm)。ハンドルグリップの位置は肩幅よりちょっと広いくらい。ライダー側への絞りも程よくあって、腕の配置は自然だ。

 

モノクロ液晶を使ったメーターは簡素でコンパクトながら外気温、ギアポジションインジケーター、時計など必要な情報が確認できる。ブレーキとクラッチのレバーが調整可能なのはうれしい。ハンドルクランプ上面に小さいBMWマークがあるのがニクイ。左側のミラー根本付近に標準装備になったETC2.0のアンテナが設置してある。

 

●BMW G310R 主要諸元
■エンジン種類:空冷4 ストロークDOHC 単気筒4バルブ ■総排気量:312cm3 ■ボア×ストローク:80.0×62.1mm ■圧縮比:10.9 ■最高出力:25kW(34PS)/9,250rpm ■最大トルク:28N・m/7,250rpm ■ 全長×全幅×全高:2,025×820×1,120mm ■軸距離:1,380mm ■シート高:785mm ■車両重量:164kg ■燃料タンク容量:11L ■変速機形式:常時噛合式6 段リターン ■タイヤ( 前・後):110/70 R17・150/60 R17 ■ブレーキ(前・後):油圧ディスク(ABS)・油圧ディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:コスミック・ブラック2、カイヤナイト・ブルー・メタリック、ライム・ストーン・メタリック ■メーカー希望小売価格(消費税込み):681,000 円 〜

 



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2022/07/22掲載