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試乗・解説

Kawasaki Z125 PRO ※タイトル FUN要素がキッチリ詰まった、 ミニマルZの突き抜け感。
大は小を兼ねる──この大きいことは良いことだ、という言葉は、どこか肯定的な響きがあるが、実は心中にあるマイナー要素にフタをするためにエイヤッと決断をするための言葉だったんだ……! そのことをZ125 PROは教えてくれた。市街地で走らせると、この楽しさを知らずしてバイクライフを過ごすのも勿体ないだろ? と語りかけるこのバイク。たった125、たった4速マニュアル、しかしそこに詰まった楽しさは、まさに無限大。遠出だって近場だって等質の走る悦びに溢れている。しかも空冷単気筒らしいトルク感と、回し倒す面白さ。全身全霊で走るこの感覚。電チャリ価格で手に入る最小Zの魅力を味わう!
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:依田 麗 ■協力:カワサキモータースジャパン https://www.kawasaki-plaza.net ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html 56design https://www.56-design.com/




最新Zファミリーなスタイル。

 今、125クラスが熱い。CVTのお手軽スクーター人気に加え、C125、CT125、グロムにモンキー、GSX-R125などあえて変速操作するミッションのファンバイクが人気だ。今回紹介するカワサキZ125 PROもその1台。ブラックの外装にキャンディレッド調にペイントされたホイール。小柄でもしっかり自己主張するあたり、さすがZの末弟。スポーツバイクであることをはばからないのだ。

 エンジンは空冷水平シリンダータイプのOHC2バルブシングル。ミッションはワイドレシオの4速。マニュアルクラッチを装備。フロントサスペンションは倒立タイプ。リアサスペンションはモノショックユニットを採用。そして12インチホイールの内側には内径ギリギリまでボリュームを持たせたペタルディスク+キャリパーを押し込んでいる。
 バックボーンタイプのフレームにそうしたマテリアルをしっかりとレイアウト。どこを見ても見応えがあるあたりはさすがスポーツバイクだ。1175mmというショートホイールベースながらシート高が780mmと長身の私(183cm)でも膝周りが窮屈になることなく乗れるのが嬉しい。重心位置が高く感じるが、わずか102㎏の車重だけに運動性への期待が高いことを直感。シートとタンク周りのつながりもスムーズ。ミニマルなスタイルにぎゅっと詰め込んだZらしさ(最新の)は見事。
 スターターボタンで目覚めた単気筒エンジンは比較的高めのファーストアイドルを刻み回り始めた。アナログのタコメーターと液晶モニターで造るインストルメントパネルはシンプルながらここにも「走るぞ!」という主張が宿る。
 

 

光る走り。

 1速に入れ3000rpmほどでクラッチを繋いでも125㏄単気筒のトルクは車重+私の体重を押し出した。しかも軽々と! 1速と2速の間にギア比の開きを感じるが、そこから3速、4速とはギアレシオは均等割りという印象だ。全体的にはワイドなレシオになるし、6速ミッションに慣れたつま先は思わず5速へとシフトアップをしてしまう。
 ただし、このエンジンの特性から言えば4速で充分。信号からダッシュを掛ければ、レッドゾーンまで低いギアでは一瞬で吹け上がり、3速、4速では、排気音の高まりと加速感が見事にリンクする伸びやかな加速をエンジンのトルクが後押しする。体感的にも実際にも速い。市街地で全開走行を心置きなく楽しめた。60km/hまで全開、シフトアップを繰り返し猛烈にぶん回した感が楽しめるのもこのクラスに許された特権だ。
 

 
 サスペンションだって働き者で、市街地のアスファルトのギャップをしっかり飲み込んで行く。だから前後12インチで小径だとか、短いホイールベースが不安要素になるコトがなかった。もちろんコーナリングも想像の斜め上を運動性と安定感のマリアージュだ。良い塩梅。軽くタイヤも小径、車体もコンパクトながらバイクを傾け旋回力が高まり、少々の遠心力とそれをタイヤに伝える縦方向のGがライダーを地面に押しつけるような感覚で曲がり出す。もちろん、これは速度によるから交差点レベルでは味わえないが、市街地でも多く存在する直角カーブで頻繁に味わえた。制限速度程度なのにスポーツしている感覚。
 

 
 フレームもライダーの大ぶりな動きをじんわりいなしてくれる印象で、妙にトリッキーな動きを見せない。これはいい。ブレーキは前後とも制動力は適度。タッチはやや硬い印象ながら、初期制動力を上手くタイヤの接地面とサスペンションで吸収させるようであり、握り込むとしっかり止まる緩急使い分けるタイプ。止まる!という信頼感もしっかりある。安定性と旋回性をバランスさせたタイヤサイズと、12インチらしいワイド感のあるタイヤに負うところ大だろう。
 

 

あの頃からの系譜。

 歴史をひもとけば、今から30年以上前、スーパーバイカーズミニとして登場したKS-1、KS-2がKSRとなり、そのDNAがそっくりZ125 PROへと続いている。そう実感させる走りだ。AR50/80の心臓を持ったミニサイズバイクとしてホットな走りを見せてくれたKS。かつての2スト時代のそのマシンがこれでもか、とブン回したくなるキャラだったのに対し、Zの125単気筒エンジは大人びているが全然遅くない。のんびりもブン回しても楽しめる文武両道な印象。ビギナーにもお勧めできるし、乗り方の引き出しを沢山もった経験豊富なライダーが自分を研鑽する場としてもオススメできる。もちろん、カスタムの誘惑を断ち切れず手を染めれば一生抜けられない沼にもなる。置き場があれば、これは大型バイクを数台持つのと同じように贅沢な選択肢だ、とその拡張を含め魅力と可能性を味わったテストだった。そう、だからこそ大は小を兼ねる、と言う言葉が短絡的かつ怠惰な言葉に思えたのだ。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態を見られます。

 

空冷SOHC2バルブエンジのボア×ストロークは56.0×50.6とショートストローク。圧縮比9.8:1。最高出力を8000rpm、最大トルクを6000rpmで生み出す。スペックどおり、5500rpmあたりから9000rpmあたりまでがパワフルゾーンだ。

 

φ30mmのインナーチューブを持つ倒立フロントフォーク。フロントブレーキはφ200mmのペタルディスクと片押し1ピストンキャリパーを組み合わせる。スポークとのクリアランスが少ないためキャリパーサポートは薄さを優先し鉄製を採用。100/90-12というタイヤサイズでリムは2.5インチ幅を持つ。

 

最新のカワサキZ一族のフェイスを持つ。デビル型のヘッドライトとその上にあるメーターバイザーが特徴的。Z125PROがミニバイク的であることを主張するのは、高めに立ち上がったハンドルバーぐらいか。
テールエンドもZ流を踏襲する。テールランプはLED、ウインカーは白熱球を使う。

 

角形スイングアームの上にインナーフェンダーをかぶせるように取り付けたデザイン。リアタイヤは120/70-12のサイズをフロントよりも1インチ広い3.5インチリムに履いている。リアブレーキはφ184mmのペタルディスクと片押し1ピストンキャリパーを組み合わせる。

 

 

エンジン下に膨張室をもつ排気系。エンドピースをつけることでシャープなデザインを主張する。
104mmのストロークを持つリアサス。2人乗りも可能なためスプリングイニシャルプリロードアジャスターを装備。1人乗りでもライダーの体重によって合わせ込めるのも嬉しい。

 

3000rpmまで目盛りの幅が詰まったタコメーター。4000rpmを下回るあたりからもりもりとしたトルクが湧きだし、市街地では6000rpm以上を回す必要性を感じないほど満足感がある。しかもレッドゾーンまで引っ張ると市街地でもシャープな加速を楽しめる。
ハンドルバーは比較的高めの車体サイズにあったもの。スイッチ類は扱いやすい。ミラーの後方視認性も上々だった。

 

シートはしっかりとした肉厚があり、ライディングで体を預けてもしっかりと受け止めてくれるタイプ。シート下には小物入れスペースも。バックボーンフレームは鉄製。樹脂の外装プレートでツインチューブ風に見せているのが面白い。

 

小ぶりなステップながらしっかりといた食いつき感のあるステップバーにより不安なくライディングできた。シフトペダルはリンケージを介してミッションとつながっている。

 

こうした造形のシャープさがカワサキらしさ、Zらしさを主張。燃料タンク容量は7.4リットル。レギュラーガソリンが指定だ。WMTCクラス1の燃費値は54.2km/l。

 

●Z125 PRO 主要諸元
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:124cm3 ■ボア×ストローク:56.0×50.6mm ■圧縮比:9.8 ■最高出力:7.1kW(9.7PS)/8,000rpm ■最大トルク:9.6N・m(0.98kgf・m)/6,000rpm ■全長×全幅×全高:1,700×750×1,005mm ■ホイールベース:1,175mm ■シート高:780mm ■車両重量:102kg ■燃料タンク容量:7.4L ■変速機形式: 常時噛合式4段リターン ■タイヤ(前・後):100/90-12 49J・120/70-12 51L ■ブレーキ(前/後):シングルディスク/シングルディスク ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■車体色:メタリックフラットスパークブラック、パールナイトシェードティール ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):352,000円

 



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2021/10/22掲載