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THE COLLECTOERS古市コータローさん、 40年間募らせたWへの想い『Wはやはり「650」でないと!』
モッズ系バンド、「ザ・コレクターズ」のギター担当、古市コータローさん。実は10代の頃から根っからのバイク好き。ただ忙しくなってからしばらく離れてしまっていたのは多くの人と共通するところだ。コロナ禍で時間ができた今、時間を有効活用して大型二輪免許を取得、そして憧れの「W」ブランドでカムバックした!
■取材・文:ノア セレン ■撮影:渕本智信 ■協力:The Collectors https://thecollectors.jp/

10年ぶりのカムバック

 プロのミュージシャンたるもの、バイクでフラフラ遊びまわる暇もなかなかないだろう。いや、ミュージシャンに限らず働き盛りの年齢に差し掛かると「しばらくバイクはお休み」となるのはよくある話。ザ・コレクターズのギタリスト、古市コータローさんもその一人。若かりし頃は主に移動手段としてバイクに乗っていたが、生活環境の変化に伴いしばらくバイクから遠ざかっていた。
「若い頃からバイクへの憧れはありました。それこそミスター・バイクとか、雑誌を読んだりして、もう最初からWに憧れていましたね。でも当時は大型二輪免許って取るのがすごく難しかったし、Wなんて非現実的。憧れのまま10代を過ごしました。二十歳を過ぎて中型免許を取り、最初に手に入れたバイクは200ccのベスパでした」
 その後も数台乗り継ぎ、「四輪はその時も今も特に興味がなくて、ずっとバイクでした」という古市さんだったが、ミュージシャンとしての活動が進んでいくうちにいつしか乗らなくなっていく。練習するスタジオが近くになったり、お酒を飲む機会が増えたりして、移動手段としてのバイクはあまり使わなくなったのだ。
「それでも最初はバイクを置きにわざわざ一回帰ってから電車でまた改めて飲みに行く、なんてこともしてたぐらいだから、バイクは大好きだったんですけどね」
 

 
 しかし年齢と共に忙しくなり、バイクに乗らなくなるという道筋はよくあるもの。気づいたら10年ほどバイクに乗っていなかった。そこへ来てこのコロナ禍。ここ10年でなかったぐらい、突然時間が空いた。ライブができなくなったミュージシャンならなおさらだろう。
「暇になっちゃったな、となった時、仲間たちと共に、じゃあバイクでも乗るか!ってなったんです。そこからは話が早く、みんなでそれぞれ教習所に行って大型二輪免許を取得、バイクも購入、と突然リターンできたんです」
 お仲間たちはゼファーやトライアンフ、Z900RSと新旧様々なバイクを購入したが、古市さんは40年前、ミスター・バイク誌を読んでいた時に憧れたあの「W」に決めた。10年ぶりのカムバックで40年あたためた恋心を成就させた古市さん。嬉しくてしょうがない様子である。
 

 

何台か乗りついだ末、やっぱりW

 古市さんの車歴は最初のベスパに続き、スズキGT125、エストレヤ、DAXとバラエティに富む。どんな嗜好だったのだろう。
「若い頃のバイクってやっぱり不良のアイテムというか、友達の家に行くとだいたいポパイとミスター・バイクが転がってるみたいな、そんな感じだったんですよ。そんな中でもWは特にカッコ良く見えた。カミナリ族とかね、そういうのも憧れたし、W3はタンクの形が特に良かった。最初から憧れてましたね。今と違ってエレキギターも不良のアイテムでしたから、そういったものに憧れがあったんでしょう。でも結局バイクの免許を取ったのは21か22の時でした。その頃にはベスパに乗りたくて」
 

 
 不良アイテムとしてのバイクへの憧れとベスパでは路線が違うようにも思えるが、もうその頃は「不良とかそういうのはもうないですよ」と古市さんは笑う。
「そもそもは移動の手段としてバイクが欲しかったんです。で、バンドがモッズ系だったんでやっぱりベスパだな、と。モッズバンドやってて、ファッションもキマってて、でもベスパ持ってません、じゃあちょっとツラいもんね(笑)」
 モッズバンドとしてはミラーだらけにカスタムしたかと思えば、このベスパはノーマルルックを大切に乗っていたそう。
「モッズらしくスーツは着てましたけど、ベスパはノーマル派でしたね。僕、ギターもそうなんですよ。あんまりいじらない」

 移動手段として活躍したべスパだったが、プラグはカブるしパンクはするしで、なかなか苦労もさせられたという。おかげで押し掛けが得意になり、タイヤ交換もすぐにできるように。
「あの頃のベスパはエンジンがかからないってことがよくあったんです。街でもベスパ難民がよく困ってました(笑)。もう押し掛けの天才になってたから、困ってるベスパがいたら『俺が押し掛けしてやるよ』って助けてたもんね(笑)」
 そして次は……GT125。
「Wへの恋心はずっとありましたが、あの頃は大型二輪免許もまだ教習所では取れないしWはまだ非現実的。当時はまだ安かったからヨンフォアもいいな、なんて迷ったけど、なーんか自分っぽくないな、って。結局買ったのはGT125。値段も高くなくて、自分の旧車的欲求も満たしてくれイイ感じでした」
 ブルーのGT125は排気音が仮面ライダーのソレで、気に入って乗ってはいたものの故障が絶えなかったそう。
「もうその頃には立派な旧車ですよ、もうね、何から何まで全て壊れた! 最後はバイク屋さんが『もうどうにも直せない』とあきらめたもんね(笑)」
 

 

旧車は避けたい!

 旧車的な楽しさはあったものの、故障に悩まされたGT125は古市さんに「新しいバイクに乗りたい」と思わせる。基本的には移動の手段として乗っているのだから当然だろう。ベスパ押し掛けの苦悩もフラッシュバックしたはずだ。
「旧車はやめようと思いましたね(笑)。壊れない、安心して乗れるのが欲しいと思って、今度は新車でエストレヤを買ったんですよ。雰囲気がちょっとWぽいし、新車だから安心でしょ。これがけっこう良いフィーリングで、気に入ってましたよ」
 

 
 今でもミーティングなどでWといっしょに集うことの多いエストレヤは、カワサキのロングセラーモデルでファンも多い名車だ。あまり飛ばす方ではない古市さん、「60キロぐらいでトコトコ走るのが最高だよね」とお気に入りだったのだが、2年ほどで友人に譲ってしまう。
「なぁんか違うな、ってなってきちゃって。憧れ続けていたWに似すぎてたのかなぁ」と回想するが、長身の古市さんには車体がちょっと小さかったという事情もありそうだ。

 こんな車歴から、今回10年ぶりにカムバックした際に選んだのは、ずっと憧れ続けてきたW3ではなく、OHCとなったW650。
「ベスパとGT125で旧車はもう絶対イヤダ!となってたんですよ(笑)。だいぶ苦労したから。だからタンクだけW3に換えればいいな、とW650にしました。W800も考えたけど、やっぱりWと言えばキャブ車、そして650ccじゃなきゃいけないだろう!と」
 かつてバイクは移動手段としての要素も強かった古市さんだが、今回は初めての大型バイク。「イベント的に乗る」ものだからこそ故障とは無縁でいたいというわけだ。購入したのはW650のファイナルエディション。付き合ってみたらすっかり気に入り、当初予定していたタンク交換もせずにいる。
 

 

Wと共にノンビリと

 10年ほどのブランクから復帰したきっかけは、仲間もみんな同時にリターンしたという事情もある。
「みんなで大型二輪免許を取ってバイクも買った。みんなで盛り上がってる感覚が凄く良かった。まさに青春ですよね! そしてついに、大型二輪免許を取ったことで憧れのWに乗れる時がやってきたわけです!」
 いい年のオジサンたち(失礼!)がみんなで集まって大型免許を取り、「俺はアレにする、俺はコッチにする」とバイク選びに盛り上がるのはまさに青春のプレイバック。古市さんのW650納車にはみんな立ち会ったそうだからその盛り上がりが目に浮かぶ。
 

 
「もうね、免許取る前に買っちゃったんですよ(笑)。それなのに教習所の予約が取れなくてヤキモキしました。走り出してちょうど1年(取材時)、もう3000キロ以上走りましたが、凄く僕に合っているバイクだと思います。なんかね、ギターといっしょかな、弾かなくても手にしただけでビビッとくればだいたいアタリ。とても気に入っています」
 楽しみ方は主にツーリング。無理に長距離を走りたいわけじゃないが、結果としてかなりの距離を走ることが多いとか。
「なんか、ストイックなツーリングですよ(笑)。普通美味しい食事とかがツーリングの醍醐味じゃないですか。俺ら止まんないもんね(笑)。ずーっと走ってる(笑)。仮面ライダーのロケ地とか行ったなぁ。ツーリング行きますって言って最初から300キロ以上のルートを示されたら絶対行かないけど、僕らのツーリングって結果300キロ以上走ることが多い。走るのが大好きなんです(笑)」

 より大排気量の仲間たちと共に走るには、Wは少し頼りないとも言う。ワインディングでは仲間と同じペースでコーナーに入っていくと「オットット」となってしまうこともあるし、高速道路では快適な速度域が違う。しかしそれでもWが良く、「信号のない田舎道を延々走るようなシチュエーションでは特に最高!」とWライフを満喫している古市さんだ。
 

 

カスタム心がうずいちゃう?

 バイクもギターもノーマルがイイ、と言っていた古市さんだが、愛車Wを見るとリアサスだけはナイトロンのものに換えていた。話を聞くとなんと、子どもの頃にはヤマハのバイク風自転車「モトバイク」を所有し、それにマメタンのハンドルをつけるなどカスタムしチョッパー化させていたとか。ご本人も「チョッパーのケがある」と認めるが、カスタムプランは?
「基本的にノーマルが良いんですよ。マフラーも静かな方がいい。だけどね、チョッパースタイルもちょっと気になってはいるんだよね。Wでチョッパーって良くない?」
 良いですよ、良いですよ! と、ブライアン・セッツァーが乗っていたトライアンフのチョッパー画像を撮影スタッフが見せると、「カッコいい! ねぇ! いいよね!」と古市さん前のめり。
 

 
「実はもうチョッパー化は考えてて、ショップに相談もしてるんですよ(笑)。そんなハンドル付けたらワイヤーやケーブル類の延長が大変って言われちゃいました(笑)」
 さらには「Wはちょっと大きいからさ、普段の移動用に、これ、どうかなぁ」と値札の付いた250TRの画像を、バイク覚えたての少年のように無邪気に見せてくれた。憧れのWを更に自分スタイルに染めるだけでなく、早くも増車を考えるほど……これは完全にバイク病再発だろう。
 移動の手段として始まったバイクライフが、時を経てこのように楽しめる趣味として再びスタートしたのは素晴らしいこと。そんなバイクライフを楽しく語っている古市さんのユーチューブチャンネルもぜひチェックしてほしい。
 
 

■THE COLLECTOERS ── 1986年に、今回登場いただいた古市コータローさん(ギター)と加藤ひさしさん(ボーカル)により結成された「ザ・コレクターズ」は、翌87年にメジャーデビューを果たし、今年は結成35周年の節目となる。ザ・コレクターズとしての活動とは別に、古市さんソロデビュー30周年に先駆けて1stアルバムのアナログ化が決定。「The many moods of KOTARO」が11月3日に発売される(¥3500+税)。また、コロナ過により見通せない部分があるが、ザ・コレクターズの35周年記念公演も計画されているため、オフィシャルページhttps://thecollectors.jp/もチェック!
 





2021/09/27掲載