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試乗・解説

YAMAHA MT-07 絶好のミドルパッケージ。 どこでも笑顔になる走り、 究極の「ほどよさ」がアップデイト。
ヤマハのMT-07はかねてからその乗りやすさで一目置かれていた。700という排気量を持ちながら400クラス顔負けの車重と、豊かで扱いやすいトルクで開けても開けなくても走りを楽しませる多様性が印象的だった。2021年型ではその程よさがさらに進化し、250クラスからステップアップしてもそのままイケるのでは、という懐の広さと、惚れ惚れするような峰の高さを合わせ持つ理想的な一台だったのである。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:渕本智信 ■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/ ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、56design https://www.56-design.com/




ほれぼれするパッケージ。

 ヤマハにとってこのMT-07は一つのピークだと思う。MTシリーズを俯瞰してみると、MT-25、MT-03、そしてMT-07が親しみやすいキャラクターで注目であり、MT-09とMT-10はどちらかといえば濃い目のキャラクターで注目されている。何より圧倒的に扱いやすく、軽く、強烈な主張を持たないにもかかわらず、自然な振る舞いで個性強めな兄貴分たちにもひけを取らないアジリティーを持つMT-07は、ワインディング派、ツーリング派、そして街乗り派からも高く評価されているはずだ。

 まずそのサイズ感。長さ、幅、高さ、重さといったスペックは400並。いや、それ以下の場合も少なくない。さすがにMT-03や250をベースにしたZ400、Ninja400の170㎏を切るモデルには敵わないが、CB400SFやCBR400Rなら勝負ができる。もちろん、ホンダの2台が重たいとも思わないが、MT-07の184㎏という車重、サイズは、例えこのクラスのバイクに初めて乗るライダーでも無駄なプレッシャーを与えない。
 

 
 積まれている688㏄並列2気筒エンジンは90度位相のクランクシャフトを持ち、90度Vツインエンジン同様の不等間隔爆発をする。スズキのエンジンの爆発間隔だけで見れば、SV650がまさにそのパッケージなのだが、MT-07の強みは、クランクシャフト横置き並列2気筒としたことで車体そのものをコンパクトにまとめていること。ホイールベースを見ても、SVの1450mmに対し、1400mmで納めているのもエンジン全長の短かさのなせる技。たしかに幅で見たらVツインの方がナローかもしれないが、パッケージ全体で見たらMT-07のコンパクトさが光る。

 例えばホイールベースが短ければ旋回性が機敏、車体が軽ければ加速も減速も有利だとされるが、それが全体の造り込みの中できれいにチューニングされていないと走りの良さに反映できない部分がある。その点でMT-07は丁寧に走りのチューニングを取っているな、と思う。走り出してそれはすぐに解った。

 まずポジションがしっくりくる。先代のMT-07は有り体にいえばネイキッドバイクのポジションだった。新型ではハンドルバーを少し拡げ、マウント位置を上げている。この改良はMTらしさ、とでもいおうか、強烈な個性を放つ上位2台のMTと見事にクロスオーバーしたような印象を持った。ポジションにすらキャラが立つ。
 

 

走りも納得。

 今回の走行テストは袖ケ浦フォレストレースウエイというサーキットで行われた。途中に一時停止を設けたり、速度が乗る部分などにシケインを設定したり、ただ攻めるだけではないコース設定で行われた。また、当日、新型のMT-09、トレーサー9 GTなどMTファミリーのテストと同時に開催されたことも知らぬまにハイペースのテストとなったことをお断りしておく。

 ピットを出てほどなく設けられた一時停止ポイントへ。そこからスタンディングスタートで走り出す。その加速感は排気量なりの力感をしっかり伝えるものでありながら、トルクの強さで乗り手を驚かせることがない。その印象はYZF-R1のエンジンが持つ、どこまでも前輪が路面にへばりつかせるように猛然と加速する印象と近い。もちろん、あれほど劇的な加速ではないものの、速いのだ。たまたまシケインでMT-09と絡むことがあっても、そこからの立ち上がりで右手を捻ると遜色のない加速をする。もちろん、レースをしているワケではないので相手がどの程度の加速をしたかは推し量るしかないが、格上の排気量のバイクを平気で追い回す。それだけアクセルを開けやすいのだ。
 

 
 劇的な加速をするMT-09に対して、MT-07は冷静沈着にその加速を手の内にできるようなイメージだ。また、試乗車が履いていたミシュランのロード5というスポーツツーリングラジアルとのマッチングが良かった。直線、ブレーキングからの旋回、深いバンク角でクリップに向かい、寝かせた状態から加速をする、というようなスポーツライディングの一連でサスペンションと共働して好印象を連発してくれる。グリップの確かさをしっかり伝えつつ、旋回性でも足りない部分がない。なによりタイヤが溶けるほど走ってもグリップ重視タイヤにありがちな接地面が粘ってハンドリングが重くなるような印象がない。

 とにかくこのテスト日で一番早く「今日は上手く乗れているかも」という気持ちにさせてくれた。そこには前後のブレーキが持つ制動力の確かさもあり、減速に身構えることがない。また、エンジン特性も特定の回転域以上、ということを意識せずにも欲しい加速が手に入るし、どこかに明瞭なピークを設けていないから、ギア選択とアクセル開度、そしてライン取りに集中していても感覚通りにエンジンはパワーとトルクを出してくれる。このワイドなパワーバンドとも言える特性が魅力なのだ。

 出来映えを楽しむうちにテスト時間が完了した。乗り出した直後から終わるまで楽しい気持ちが持続したことで、また別の機会に路上でのたのしさを味わいたい。なんて多彩な700バイクなんだ。これが僕の結論です。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

MT-07に搭載されるコンパクトな並列2気筒エンジン。外観意匠にしっかりと貢献するスキのないデザインもアクセントになっている。操作感の軽いクラッチ、シフトフィールの良いミッション、400クラスでは絶対に味わえないトルク感、かといってリッタークラスのように開けるチャンスがあまりないほど剛力の塊でもない「ちょうど良さ」。不等間隔爆発のエンジンが見せる軽快なリズムと聴覚から受けた刺激通りの走りをもたらす一体感あるエンジンチューニングが魅力。

 

フロントフォークはφ41mmのインナーチューブを持つ正立式。フロントタイヤは120/70ZR17を採用。ブレーキローターはφ298mm。対向4ピストンキャリパーを合わせる。10本の細身スポークはいかにも軽そうなルックスを引き立てる。

 

φ245mmのディスクローターとシングルピストンキャリパーを組み合わせるリアブレーキ。このクラスだとリアタイヤに160サイズを履くネイキッドモデルが少なくないなか、MT-07は180/55ZR17を履く。試乗車にはミシュランロード5が装着されていた。乗り心地、ハンドリング、グリップ、旋回性など高い次元でまとまるほか、ウエットグリップ、低温時の安心感にも定評があるタイヤだ。リアサスペンションユニットは、イニシャルプリロード、伸び側減衰圧調整が可能。

 

排気系はエクゾーストポートから出て程なく集合。キャタライザーを経てコレクターボックス、そして排出口のエンドピースへ。環境規制への対応で伸びやかなエキパイを描けない時代になったが、全体としてのスタイルを上手くまとめている。エンジンが持つパルスを上手く伝える音響機器として機能していると感じた。
低い位置に構えるヘッドライト。プロジェクターレンズを介して照らされるその光源はLED。ロー/ハイビーム切り替え式をとる。左右のウインカーはラジエターシュラウドから生える。

 

燃料タンク周りやフレームとのつながりも良好なシート。足着き性を向上させるためにしっかりと絞り込まれた前端部分、後部はクルージングにむいた幅広なもの。サーキットでボディーアクションをとっても、きっちりと受け止めてくれる印象だった。
エッジを効かせた造形が印象的なタンク周り。インナータンク式として外皮を樹脂カバーとしたことでよりダイナミックな外装となっている。タンク容量は13リットルとなる。

 

全体のシャープなスタイルを印象付けるショートテールスタイル。ナンバーステーを兼ねるフェンダーエクステンションを取り付け、そこにウインカーを装着。テールランプ、ウインカー周りはLED光源。
35mmワイド、12mmアップしたハンドルバー。それでも充分にタイトなライディングポジションとなる。

 

コンパクトなメーターの中に必要な表示を綺麗にレイアウトする。ハンドルの中央、ポストの真上にとりつけることでハンドルから慣性マスを低減しているしスタイル的にも効果的に軽快さを演出している。
左右のスイッチ周りは基本的にコンパクトなスイッチを使う。対象的にスターター/キルスイッチは一体で大型のものを使う。シンプルな佇まいを見せる。

 

YAMAHA MT-07 ABS Specification
■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量(ボア×ストローク):688cm3(80.0×68.5mm)■最出力:54kW(73PS)/8,750rpm ■最大トルク:67N・m(6.8kgf・m)/6,500 rpm ■全長×全幅×全高:2,085×780×1,105mm ■軸距離:1,400mm ■シート高:805mm ■車両重量:184kg ■燃料タンク容量:13L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤサイズ前・後:120/70ZR 17M/C・180/55ZR 17M/C ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク/油圧式シングルディスク ■車体色:パステルダークグレー、ディープパープリッシュブルーメタリックC、マットダークグレーメタリック6 ■メーカー希望小売価格(消費税込み):814,000円


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2021/09/15掲載