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試乗・解説

Kawasaki Z250『パワーがあって面白い、は 思ったより前に出てコワい、と同義なのだ』
現行モデルでは、Z250/400、そしてNinja250/400は車体サイズも重量も、ほぼ同じモデル。
もちろん出力は150cc分、1.6倍の差はあるけれど
パワーがある、速いだけがバイクの正義ではないのだ。
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:富樫秀明 ■協力:KAWASAKI ■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、クシタニ https://www.kushitani.co.jp/




250と400をガチで比べたら

 2018年2月、Ninja250がモデルチェンジしたのを受けて、19年モデルで追従、2型となったZ250。もともとNinja250とZ250は一卵性双生児というか、カウルの有無とハンドルがセパハンかバーハンドルか、といったくらいの違いでしかないから、ちょっとスポーツバイクっぽいNinjaと、ストリートファイターっぽいZ250という選択の幅だったのだ。
 そしてこのモデルチェンジで、カワサキは水冷2気筒エンジンシリーズであるNinja/Zのラインアップを見直し、新たにZ400をデビューさせ、250/400をほぼ共通の車体設計として発売してきた。
 つまり、従来からNinjaとZは兄弟モデルで、それに加えて18年モデルからZ400が加わったことで、Ninja250/400、Z250/400の計4モデルが、ほぼ同一の車体設計を持つ兄弟モデルへと生まれ変わったのだ。
 

Z250とZ400の2ショット。赤×黒がZ250、緑×黒がZ400。外観上の違いは、ほとんどない。

 
 1つのプラットフォームで4モデルをラインアップするなんてなかなか珍しいこと(ヤマハYZF-R25/3、MT-25/03がそうだ)だけれど、Z400はなかなかスマッシュヒット! デビューから3年連続のベストセラーとなって、ユーザーに「うれしい悩み」まで生み出してしまった。
 それがつまり「250と400、どっちにしよう」という悩みだ。ご存知の通り、250と400は同じ普通二輪免許枠で、250には車検がなく、そのかわりに400の方がパワフル、という関係性だった。これまでの250/400選びでは、400の方に車検があって、400の方がやや重かったり大きかったり、足着きが悪かったり──それが、今回のカワサキミドル4モデルではなくなってしまったのだ。
 

 
 ちなみにスタイリングがほぼ同一のZ250とZ400を比べてみると……。数字は全長×全幅×全高/ホイールベース/シート高/車両重量/最高出力・トルクの順です。
●Z250 1990×800×1060mm/1370mm/795mm/164kg/37PS・2.3kg-m
●Z400 1990×800×1055mm/1370mm/785mm/166kg/48PS・3.9kg-m
 実はもうひとつ違いがあるんですが、それはまたのちほど。見事に一卵性双生児です。諸元の違いはZ400の方が全高で5mm、シート高で10mm低く、車重が2kg重く、出力が11ps高く、トルクが1.6kg-m太い、と。走ればもちろん違いはハッキリしますが、またがっただけでは、シート高10mmはちょっと体感しにくいから、違いは分からないでしょう。
 ちなみに価格はZ250が61万500円、Z400は68万2000円。その差、7万円チョイ、これはどう捉えるか、ですね。
 

 
 そして、ほとんどの人が気にするであろう車検費用ですが、これは自賠責の保険料がずいぶん安くなったことで、1回の車検費用は思ったより安いんです。
 ある1100ccモデルのオーナーである僕の場合、いつもユーザー車検で通して普段のメンテナンスは別でやっているんですが、車検費用は1回2万円しません! しかも、この金額の大半を占めるのは自賠責保険料で、Z250もZ400も必要なもの。実は250よりも400の方が自賠責保険料は安いので、2年に1回の車検で、Z250には不要でZ400に必要なコストは、わずか1万円以内、ってことです。もちろん、整備は250も400もきちんとやるのが大前提で、差が1万円以内なら迷う理由にはならないでしょう?
 

 

400はイイ でも250もイイ!

 実は今回、Z400とZ250の同時比較試乗を行なったんですが、(Z400のページはこちら→https://mr-bike.jp/mb/archives/23145 )ここで僕は、原稿を「(Z400は)2気筒400ccとしては日本の歴史上ナンバー1なんだと思いました」と結びました。その思いは変わりませんし、では250と迷ったときに400の方がいいに決まっている――とはならないんです。
 乗り比べると、やはり400のトルクが印象的です。クラッチミートと同時にトン、と車体を前に押し出す力があるのが400、少しアクセルを開けて行かなきゃいけないのが250、という差があります。
 そこから加速していっても、400はトルクに乗って回転上昇が早く、スピードが乗っていくのに対し、250は発進から4000rpmあたりくらいまでの上昇が穏やかだ。重ったるいってほどではなく、ややゆっくりとパワーが持ち上がってくる感じなのだ。
 

 
 当然、街を流していても高速道路を走っても、同じペースで走るなら、常用回転域は250の方が高い。6速50kmくらいで走っている時のエンジン回転数は、250は3500rpmほど、400が2500~3000rpmあたり。キャンキャン回しているってほどじゃないけれど、やっぱり400の方が余裕があるフィーングだ。
 同じボディサイズ、ホイールベースに、車重は2kgしか違わないとなると、ハンドリングも似たようなものだと思いがちだけれど、これはちょっと違う。実は上に書いた「もうひとつの違い」がタイヤで、250はバイアス、400はラジアルタイヤを履いているのだ。
 このタイヤの差で感じるのは、250は軽快に、400はしっかりと路面を掴んでいるようなフィーリング。スッと軽快に転がって曲がるのが250、しっかり路面を掴んでグリップしているのが400、という印象だ。
 

 
 価格が7万円ほど、車検費用も1万円かからないで、走りの差がこれだけあるとなると、僕はきっとZ400を選ぶ。けれど、世の中のライダーはみんな僕なわけじゃない。
 250/400ccクラスのユーザーに多い、ビギナーやリターンライダーたち。彼や彼女たちに「250と400、迷ってるんだけどどうしよう」って聞かれたら、僕は迷わず250を推すだろう。その理由は、サイズや価格、ランニングコストではなく、250の「乗りやすさ」だ。
 乗りやすさって言うのはすごくあいまいな表現なんだけれど、そこには「誰でも扱えておっかなくない」という意味があると思っている。初めてのライダーでも、久しぶりにバイクに乗るライダーでも、Z250はとても従順におっかなくない。Z400が史上最高によく走る2気筒400ccモデルだからこそ、Z250の従順さが光るのだ。
 

 

 アクセルをパッと開けた瞬間にトンと前に出るトルクは、ビギナーにとっては予想以上にバイクを押し出す力に感じるものだ。逆に、僕みたいなバイクバカが250をちょっと重ったるいかな……と感じる発進トルクは、ビギナーにとっては優しく感じるもの。
 力が足りないと優しくパワーが出る、は同じ意味。同じくパワフルで面白いという走りは、思ったより前に出すぎて怖い、と同じ意味なのである。
「大きいことはいいことだ」って言ったのは、故・山本直純さんだったっけ。直純さん、今はそうでもないんですよ。
(試乗・文:中村浩史)
 

 

ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると、両足着き時の状態が見られます。

 

大きく分けて3世代目となる2018年登場のNinjaは、バランサーつきの水冷2気筒エンジンという基本レイアウトはそのまま、31psから37psにアップし、2気筒250ccスポーツでは41psのCBR250RRに次ぐ高出力をマーク。クラッチ入力を軽く、バックトルクリミッターを併用するアシスト&スリッパークラッチを標準装備した。

 

φ310mmのペタル型シングルディスクにニッシン製片押し2ピストンキャリパーを採用。基本的にNinja400/250とZ400/Z250と共通のブレーキ周りで、2018年モデル以降はABSも標準装備となった。フロントフォークはφ41mmの正立で、調整機構こそないが、倒立フォークの必要性も感じなかった。タイヤは前後ダンロップ製バイアス。

 

リアブレーキはφ220mmのペタルディスクに片押し2ピストンキャリパーを採用。ショートホイールベースでありながらロングスイングアームとして、軽快でサスペンションの動きがいいハンドリングとしている。二次減速比はZ250/Ninja250とも2.857で、ドライブ/ドリブンスプロケットは14/40丁。マフラーは2in1レイアウト。

 

リアサスはリンクつきモノサスで、5段階のプリロード調整機構付き。リアサスのアッパーマウントはシリンダー背面に別体プレートを介して連結。軽量化と剛性強度を確保。
Ninja250/400とも共通の14Lフューエルタンク。今回は実走参考燃費が約28km/Lだったからフルタンク300kmオーバーは余裕でクリア。タンクパッドステッカーはアクセサリー。

 

前後セパレートシートは、タンク側の形状がスリムに絞り込まれていて、ライバルと比べても足着き性良好。タンデムシートはキー開閉で中のケーブルを引くと前シートも外れる。
Ninja250/400はセパハン、Z250/400はバーハンドルで快適なライディングポジション。メーターはZ250/400専用設計で、アナログ文字盤+デジタル針のワンピース構造。縦に、上からギアポジションインジケーター、スピード、オド&ツイントリップ、残ガス走行可能距離、瞬間&平均燃費、水温、時計などを表示する。好燃費運転時にEcoランプが点灯する。

 

Z250/400独特の顔つきは、ストリートファイター系のイメージを強くするミニスクリーンつきの異形デュアルヘッドライト。ライトはLEDでウィンカーはバルブ式。
テールランプもLEDを使用。ウィンカー奥にあるフックは荷物積載用のドローコードフックで、この位置、この形状がどのメーカーのものよりも使いやすい!

 

タンデムステップ裏側にもドローコード用フックを装備。ヘルメットホルダーもきちんと外部別体式で、やや奥まった位置についてはいるが、使いやすい。ここがカワサキの親切心。

 

●Z250 [Ninja250] Specification
■エンジン型式:2BL-EX250P ■エンジン種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ■ボア× ストローク:62.0×41.2mm ■最高出力:27kW〔37ps〕/ 12,500rpm ■最大トルク:23N・m〔2.3kg-m〕/10,500rpm ■変速機:6段リターン ■全長× 全幅× 全高:1,990×800[710]×1,060[1,125]mm ■ホイールベース:1,370mm ■シート高:795mm ■タイヤ(前・後):110/70-17M/C・140/70-17M/C ■車両重量:164[166]㎏ ■ブレーキ(前・後):油圧式シングルディスク・油圧式シングルディスク ■燃料タンク容量:14L ■メーカー希望小売価格(消費税10% 込み):610,500 [654,500]円※[ ]はNinja250

 



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2021/08/12掲載