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試乗・解説

YAMAHA MAJESTY S 『加速に力こぶ。 毎日がファンライドに』。
ミスターバイクBGに連載中の通称ニチギチリポートのWEBミスターバイク連動版、果たして125サイズに155エンジンを搭載したコンパクトスクーターの実際はどうなのか。PCX160ともども体験したリポートのマジェスティS版をお届けします。足、ゲタ、コンビニバイク……。とにかく便利で気軽で楽しくて、を連想する排気量だが、実は乗り出すと知らぬ間に遠出をしてしまう不思議な乗り物。新型PCXをライバルとして見立てたが、同じカテゴリー、同じクラスながらまるで違ったキャラを持っていたのである。
■試乗・文:松井 勉 ■撮影:松川 忍 ■協力:YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/■ウエア協力:アライヘルメット https://www.arai.co.jp/jpn/top.html、56design https://www.56-design.com/




 PCX160と2台並ぶマジェスティSを見るとギュっとカタマリ感のデザインがスタイリッシュかつコンパクト。しかも速そうに見える。実際、スペック表を並べてみると実はマジェスティSのほうが100mmほど全長は長く、ホイールベースは90mmも長い。車輪のサイズが前後13インチでタイヤサイズもPCXよりワイドなものを履くところから、低重心で小ぶりなサイズに錯覚しているのだ。

 マジェスティSの特徴の一つが、フラットなフロアボードだ。その下に燃料タンクを収め、シート下のラゲッジスペースを確保しつつ作られたパッケージング。アンダーボーン的なフレーム構成ながら、その分フロア高を取ることで車体のしっかり感を出している。このフロアステップ、PCXと比較するとかなり高めの位置に足を置くことになるのはそうしたレイアウトの違いがあるからだ。
 

 
 レッグスペースに関してPCX的広々感は少ない。ライダーの膝が当たらぬようにイグニッションキーも途中から折れ曲がる仕様になっているのが面白い(記事下方の部分カットを参照)。ここはキーレスが欲しいところだ。ハンドルバーの幅は比較的タイトでコンパクトなポジションに感じる。そして3分割のメーターパネルの中央には回転計が備わる。

 シートに座るとフロアが高めなこともありシートに体重を預けるようなカタチになったのは、私の体格のせいだ(身長183cm)。走り出しは4000rpmあたりで遠心クラッチがつながり始めるようで、それ以下のアクセル開度だとマジェスティSは転がりださない。PCX160から乗り換えると、あちらは回転計がないため何回転で動き出すというのは判らないが、エンジンの音的にはもう少し低いところから無駄なく回転を推力に変えているようなので、マジェスティSは少し勿体ない気がする。
 

 
 ただし、そこから始まる加速は少しばかり刺激的。回転計があってもCVTに組まれたプログラム通りにしかエンジン回転は上昇しないのでじれったい思いをするのはご愛敬だが、気持ち良く吹き上がるエンジンはさすが4バルブヘッドを持つだけはある。

 信号で止まり加速のたびに炭酸水を飲むような爽やかな刺激を楽しめるのがマジェスティSの美味しいところだ。ハンドリングは小径ワイドなタイヤや剛性感のあるフレームが生み出すものなのか、どっしり感のあるもの。ペースを上げて曲がると広い接地面を意識させるようで、グリップ感が凄い。ガッシリと路面を掴み安心感のある曲がり方をする。全体的にソフトな印象のPCXとはこのへんもキャラが異なるのだ。どこか初期型のTMAXを思い出すハンドリングだ。
 

 
 一般道を西に向かって2時間ほど走った。といっても距離にすればせいぜい40㎞、50㎞程度。高めのフロアに足を置き、お尻にかかる体重の割合が大きいせいか痛くなるのが早い気がした。これも体格による個人差かもしれない。

 帰り道、自動車専用道路を使ったが、マジェスティSの走りは、PCX160ほど余裕は感じなかった。3車線ある道を東に向かったが、追い越し車線に出ても道路のアップダウンを勘案しないと加速が頭打ちになり、追い越したいクルマと併走することになった。
 とはいえこの排気量。多くを期待するのが間違いで、「こんなもの」と割り切って走るのに限る。ここを詰めるなら選択肢としてはこの排気量ではない。明解だ。
 

 
 100km/hまでは加速もイッキ。その先はじんわり増速ペースが落ちる。風や道路のギャップなどで優雅な気分でいられない高速道路より、やはり一般道的な道が得意技だ。むしろ、2人乗りでオープンエアな走りを楽しんだり、近距離から中距離レンジの走りを楽しむバイクとしてオススメしたい。かつて、125スクーターで片道200㎞以上のツーリングに出たが、一般道で距離を重ねる面白さを忘れていたことに気が付いた。PCX160同様、最後は高速道路で距離が稼げる、というゆとりを持つマジェスティSなら、そんなグランドツーリングも楽しいはずだ。バイクって奥が深い。一周回ってそう思ったテストだったのだ。
(試乗・文:松井 勉)
 

 

ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

13インチのワイドホイールを印象付けるスポークデザイン。120/70-13というフロントタイヤを履く。フロントブレーキはウエーブタイプのディスクプレートを採用。そのサイズはφ267mmとキャリパを合わせるとリム内径に一杯一杯に収まっている印象だ。

 

奥まって見えないが、エンジンは155㏄OHC4バルブヘッド水冷単気筒エンジン。145㎏とPCX160より13㎏重たいがその加速力は互角。チューニングしたスクーターのような加速感が魅力。

 

後輪もディスクブレーキを採用する。φ245mmのディスクプレートと合わせるブレーキキャリパーのタッチはカッチリしたもの。ストローク感は少なくレバーへの入力具合で制動力をコントロールするタイプ。リアタイヤは130/70-13を採用。隠れているのが勿体ないほどホイールの彫りの深さが印象的。マフラーは角形シェイプのエンドカバーなどが印象的。全体のスタイルにあった形状だ。
リアはホリゾンタルマウントのショックユニットを採用する。2本ショックよりもリアエンドのスペース自由度には貢献しているようだ。

 

LEDを使ったテールランプ。粒ダクな構成が特徴。輝度的にブレーキランプが点灯したときのアピール度は高く、被視認性にも優れる。
フロントポケットの左側に燃料の給油口が備わる。高い位置ゆえかがまずに給油できるのは〇。セルフで給油ノズルのトリガーをフルに握っていると、満タンになった時に吹き返しがあったのは△。満タンタイミングが掴み難いのは致し方ないが、エアの抜けがもう少し改善できれば吹き返しは軽減するのではないだろうか。

 

シャッター付イグニッションキーホールと、コンビニフック、12Vの電源ソケットを備える。自分の身長だと膝でキーをまわしてしまいそう……、と思ったら、ちゃんとキーがこのように折れ曲がる仕様になっていた。フロアの高さが足元スペースを限定するわけだが、お尻の痛くなるまでの時間の短さといい、個人的にフラットフロアのメリットをさほど感じ無かったのが正直なところ。

 

ハンドルスイッチ周りは右にスタータースイッチ、左にはパッシング付ディマースイッチ、ウインカースイッチ、ホーンスイッチとコンベンショナルな要素のものが備わる。ハンドルバーは少し前に寝かせたような位置でクランプされている。

 

デザイン的に文句なしにカッコいいシート。表皮もコンビネーションタイプを採用し質感も高い。さすがTMAXを作るメーカーのスクーター、という印象だ。グラブバーもガッシリとしたものが備わり、タンデムも安心だろう。

 

LEDヘッドライトを採用するマジェスティS。夜間も走行したが、市街地でもしっかりと明るさを確認できた。LEDライトを採用するモデルの中には照度、輝度に存在感が無く不安になるものがあるが、マジェスティSのロービーム、ハイビームとも視認性に優れた灯具として信頼感をおけるものだった。
フットレスト的使い方をしたいフロントボードの三角地帯。足元スペースの関係でこの段差が無ければ使いやすかったと個人的には思う。

 

●MAJESTY S主要諸元
■型式: 2BK-SG52J ■全長×全幅×全高:2,030×715 ×1,115mm ■ホイールベース:1,405mm ■最低地上高:90mm ■シート高:795mm ■車両重量:145kg ■燃料消費率: 40.0km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時) 37.5km/L (WMTCモード値クラス2-1 1名乗車時)■エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒4バルブ ■総排気量: 155cm3 ■ボア×ストローク:58.0×58.7mm ■圧縮比:11.0 ■最高出力:11kw(15 PS)/7,500rpm ■最大トルク: 14N・m(1.4 kgf・m)/6,000rpm ■燃料タンク容量:7.4L ■変速機形式:Vベルト式無段変速 ■タイヤ(前/後):120/70-13M/C 53P /130/70-13M/C 57P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク ■懸架方式(前/後):テレスコピック式/ユニットスイング式 ■フレーム形式 :バックボーン ■車体色:シルキーホワイト、グレーメタリックM、ブラックメタリックX、ビビッドイエローソリッド2 ■メーカー希望小売価格(税込):379,500円

 



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2021/07/07掲載