ヤマハ NMAX ABS 車両解説
2015年の1月にインドネシア市場向けとして発表されたグローバルスクーターNMAX125は、翌2016年3月になって国内にも投入された。“MAXシリーズ”スクーターの一員として開発されたこのNMAX125は、ヤマハが走りの楽しさと燃費、環境性能の両立を高次元で具現化する“BLUE CORE”思想に基づいた次世代小型エンジンを搭載するモデルだった。
1)高効率燃焼、2)高い冷却性、3)ロス低減、の3点を徹底的に追求するというのが“BLUE CORE”エンジンの開発思想で、2014年8月にベトナムで発売した女性向けスクーター「Nozza Grande」へ搭載し、実に2008年の同クラスモデル比で50%もの燃費向上を達成したという。NMAX125の最大の特徴といえるのがもちろんこの“BLUE CORE”エンジンで、VVA(可変バルブ)機構、冷却性とスペース効率に優れたラジエター、ロス馬力低減を図るオフセットシリンダーなどを主な特徴としていた。
車体周りでは優れたねじり剛性を実現した新設計フレームを採用。エンジン懸架もリンク式エンジンマウント方式を採用し、ライダーの操作に対するダイレクト感と、低振動化を両立させている。ホイールは前後13インチ。前後にディスクブレーキを備え、ABSも標準装備とされた。“MAX”スクーターテイストでデザインされたボディ、ヘッドライト、ストップ&テールランプにはLED、メーターは液晶マルチファンクションディスプレイを採用。
2017年8月にはマイナーチェンジを受け、平成28年度国内排出ガス規制への適合とカラー設定の変更が行われた。また2017年4月に兄貴分のNMAX155が登場したことで、こちらは排気量を表す「125」の数字が外され、標準装備のABSに合わせて「NMAX ABS」と車名が変更されている。
翌2018年2月にはカラーリング変更が行われ「ビビッドパーリッシュブルーカクテル5」、「マットグレーメタリック3」の2色のニューカラーと、「ホワイトメタリック6」の継続色1色を合わせ3色のラインナップとなった。
2019年6月にもカラーチェンジが行われ、従来からの「マットグレーメタリック3」と「ホワイトメタリック6」の2色は、MAXシリーズを象徴するブーメラン形状のサイドカバーやホイールなどのコンポーネントをブラックに変更し、アクティブなシティコミューターを表現したという。高級感と遊び心を演出するという「ビビッドパープリッシュブルーカクテル5」はカラーの変更もなく継続販売となった。
今回のフルモデルチェンジにあたってのポイントは、スマートフォンとの連携を深めた専用アプリの採用(ヤマハの国内モデルでは初対応)と、トラクションコントロールシステムを採用した平成32年排出ガス規制適合の新“BLUE CORE”エンジンの搭載、そしてユニークな静かなエンジン始動、再始動を可能とした“Smart Motor Generator System”の装備、またヤマハの国内原付二種モデルとして初採用のアイドリングストップシステムなどがあげられる。
★ヤマハ ニュースリリースより (2021年5月20日)
専用アプリで“つながる”スクーター「NMAX ABS」を発売
~静かなエンジン始動や燃費節約をもたらす制御技術を採用~
ヤマハ発動機株式会社は、水冷・124cm3の“BLUE CORE※”エンジンをコンパクトなボディに搭載した原付二種スクーター「NMAX ABS」をモデルチェンジし、2021年モデルとして6月28日に発売します。
主な特徴は、1)着信通知や燃費管理が可能なスマートフォン用専用アプリ当社国内モデル初対応、2)トラクションコントロールシステムを採用した平成32年排出ガス規制適合の新「BLUE CORE」エンジン、3)静かなエンジン始動/再始動を可能にする「Smart Motor Generator system」、4)低燃費に貢献する 「アイドリングストップシステム」、5)スタイルと機能性をバランスさせた新フレームと快適な乗り心地を支える前後サスペンション、6)信頼性と質感の高さを表現したスタイリングなどです。
「NMAX ABS」は、欧州や日本で人気の「MAXシリーズ」のDNAを受け継ぎ、その特徴である斬新なスタイルやスポーティな走りをコンパクトなボディに凝縮。通勤や街乗りなど、市街地の移動における快適性を追求したシティコミューターです。
なお、製造は当社グループ会社PT. Yamaha Indonesia Motor Manufacturing (YIMM)が行います。
※ BLUE CORE:ヤマハ発動機株式会社は、“走りの楽しさ”と“燃費・環境性能”の両立を高次元で具現化するエンジン設計思想として、2014年より“BLUE CORE” を掲げています。この思想は高効率燃焼、高い冷却性、ロス低減の3 点にフォーカスして性能実現を図るもので、「NMAX ABS」のエンジンもこの“BLUE CORE”思想に基づき開発しました。商標登録第5676267号。
- ●名称
- ●発売日
- ●メーカー希望小売価格
- 368,500円(本体価格335,000 円/消費税33,500円)
- ※メーカー希望小売価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれていません
- ●販売計画台数
- (国内・年間) 3,500台
- ●カラー
- ホワイトメタリックB(シルバー)
- パステルダークグレー(グレー)
- マットダークグレーメタリック8(マットダークグレー)
- マットダークパープリッシュブルーメタリック5(マットブルー)
NMAX ABS
2021年6月28日
- 【NMAX ABS の新たな特徴】
- 1) 着信通知や燃費管理が可能なスマートフォン用専用アプリ当社国内モデル初対応
- 本モデルは、「YAMAHA Motorcycle Connect(略:Y-Connect)」をダウンロードしたスマートフォンとペアリングが可能です。ペアリングにより次のような機能が拡充します。
- (1)電話やメールの着信、スマートフォンの電池残量など、車両側のメーター表示項目の追加
- (2)スマートフォン画面でのエンジン回転数表示
- (3)オイル・バッテリーのメンテナンス推奨時期のお知らせ
- (4)燃費など運転状況把握
- (5)車両の最終駐車位置確認
- 2)トラクションコントロールシステムを採用した
平成32年排出ガス規制適合の新「BLUE CORE」エンジン - エンジンは、吸気・排気系の仕様、およびFIセッティングの最適化により平成32年排出ガス規制適合化を図りながら、これまでのパワー感はそのままに、リニアで扱いやすい出力特性をさらに向上させました。
また濡れた未舗装路等で滑らかな発進性と走行性を実現するため、トラクションコントロールシステムを新採用。状況や好みに応じてオン・オフ選択が可能です。発進・走行時などで後輪空転の兆候が検知されると、点火時期・燃料噴射量を統合制御し、滑らかな発進性・走行性をサポートします。
なお、軽量鍛造ピストン、VVA(可変バルブ)※、放熱性に優れるDiASil シリンダー、ロス低減を図るオフセットシリンダーなどは継続しています。
※VVA (Variable Valve Actuation):
低速向けと中高速向けのカム(吸気側)のリフト量が6,000r/minで切り替わる機構です。相互にトルクカーブを補完し全域でリニアな加速特性と、加速フィーリングに貢献しています。吸排気系の設定、および FI セッティングの最適化により、スムーズな切り替えで唐突感がないのが特徴です。 - 3)静かなエンジン始動/再始動を可能にする「Smart Motor Generator system」
- エンジン始動用モーターとジェネレータの機能を一体化した「SmartMotor Generator」を当社国内モデルとして初採用しました。走行時はジェネレータとして働き、エンジン始動・再始動時はモーターとして働きます。始動時は、スタータークラッチを介さずに直接クランクシャフトを回転させるので、従来のようなエンジン始動時の「キュルキュル」音がなく静かになりました。
- 4) 低燃費に貢献する 「アイドリングストップシステム」
- 信号待ちなどで停車すると自動的にアイドリングを停止して燃料消費を抑え、また再発進時には静かなエンジン再始動で発進できる「アイドリングストップシステム」を当社国内原付二種モデルとして初採用しました。アイドリング停止後の再発進は、スロットルグリップを回すことで、瞬時にエンジンが掛かり滑らかに発進できます。オン・オフ選択可能です。
- 5) スタイルと機能性をバランスさせた新フレームと快適な乗り心地を支える前後サスペンション
- スタイルと走行性能・実用機能をバランスさせた新設計フレームを採用しました。スポーツ系スクーターのプラットフォームとして熟成・進化させており、メインパイプ(60.5mm 径)とダウンチューブ(45mm径)、そして補強材(1.6mm厚)の組み合わせで、軽すぎず、適度に手ごたえのあるハンドリングと接地感を実現しました。また、エンジン懸架レイアウトを最適化することにより各部の振動低減を図っています。
また、前後サスペンションは最適なセッティングを施しました。特にリアサスペンションは、実走行での官能評価を繰り返し、バネ定数と減衰力のバランスを整えました。2段階でイニシャル調整が出来る新構造も新たに追加しました。また、前後ともに新作の軽量キャストホイールを採用しました。 - 6)信頼性と質感の高さを表現したスタイリング
- “Prestige Confidence”をデザインコンセプトに、初めてスクーターに乗る方にも一目でわかる快適性・信頼性の表現やビジネスクラスに乗るような優越感をスタイリングのポイントとしてデザインしました。
広い居住空間や高い収納力、LED による精悍な表情により日常の使い勝手と誇れる外観を融合しました。また、フロントエリアからシートにかけて、ライダーを包み込むような安心感のあるシルエットを表現。加えてMAX シリーズの特徴である前後アクスルを貫く、力強く引き締まったブーメランイメージのサイドパネルにより信頼感を表現しました。 - ■その他の新しい特徴
- ・ヘルメットが収納可能な容量約23Lのシート下トランク
(トランクの前方に2個分のヘルメットホルダー装備)
※ヘルメット等収納物の形状・大きさにより収納できない場合があります - ・12V DCジャックを備えた小物入れ&リッド付き収納BOX
- ・明るいLED6灯ヘッドランプ
- ・立体感あるリアビューを演出するテール&ストップランプ
- ・見やすいフル液晶メーター
- ・スマートキーシステム
- ※ヘッドランプ、ポジションランプ、テールランプ、ストップランプおよびメーターパネルは撮影用に点灯したもので、実際の走行状態を示すものではありません。
- 「NMAX ABS」フィーチャーマップ
- ・ゆったりした居住スペースを確保したダブルシート
- ・ヘルメットが収納可能な容量約23Lのシート下トランク
- ・シートオープン状態保持機能
- ・ヘルメットホルダーを2個装備
- ・導光体で立体感を表現したLEDテール&ストップランプ
- ・ハザード機能
- ・7.1L燃料タンク
- ・230mm径ディスクブレーキ(ABS装備/前後)
- ・幅広タイプのフットボード
- ・水冷124cm3・4ストローク・SOHC4バルブ・FI・CVTエンジン
- ・トラクションコントロールシステム搭載
- ・全域での高トルクに貢献するVVA
- ・静かなエンジン始動をもたらすSmart Motor Generator system 搭載
- ・省燃費に貢献するアイドリングストップシステム搭載
- ・大容量4.3Lエアクリーナー
- ・オフセットシリンダー、鍛造ピストン、DiASilシリンダー
- ・新デザイン軽量ホイール(前後)
- ・スマートキーシステム
- ・Y-Connectアプリとの連携でスマートフォンと車両の情報交換を行うCCU
- ・大型液晶メーターパネル(左ハンドルスイッチにメニュー切り替えスイッチ付)
主要諸元
車名型式 | 8BJ-SEG6J | |
---|---|---|
NMAX ABS | ||
発売日 | 2021年6月28日 | |
全長×全幅×全高(m) | 1.935×0.740×1.160 | |
軸距(m) | 1.340 | |
最低地上高(m) | 0.135 | |
シート高(m) | 0.765 | |
車両重量(kg) | 131 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 48.7(国交省届出 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※2 | |
46.9(WMTCモード値 クラス1 1名乗車時)※3 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転半径(m) | – | |
エンジン型式 | E32TE | |
水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 124 | |
内径×行程(mm) | 52.0×58.7 | |
圧縮比 | 11.2 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 9.0[12]/8.000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 11[1.1]/6.000 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | セルフ式 | |
点火方式 | TCI(トランジスタ式) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ | |
潤滑油容量(L) | 1.00 | |
燃料タンク容量(L) | 7.1 | |
クラッチ形式 | 乾式・遠心・シュー式 | |
変速機形式 | Vベルト式無段変速 | |
変速比 | 2.386~0.748 | |
キャスター(度) | 26°30′ | |
トレール(mm) | 100 | |
タイヤサイズ | 前 | 110/70-13 M/C 48P(チューブレス) |
後 | 130/70-13 M/C 63P(チューブレス) | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式シングルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式 |
後 | ユニットスイング | |
フレーム形式 | バックボーン |
*1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
*2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
*3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
・12V DCジャック