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試乗・解説

SRにサヨナラなんて 言わなくていい YAMAHA SR400
1978年デビュー、齢43年にもなるヤマハSRがついに生産終了することになってしまった。
ファイナルエディションがデビューするってことでとたんに湧き上がるSRロス説。
でもSRにサヨナラなんて、言わなくていいんじゃない?
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:森 浩輔 ■協力:YAMAHAhttps://www.yamaha-motor.co.jp/mc/ ■ウエア協力:アライヘルメットhttps://www.arai.co.jp/jpn/top.htm、クシタニhttps://www.kushitani.co.jp/




SR狂騒曲スタート! 困ったもんだ

 久しぶりに騒ぎになるバイクが発売された。SR400ファイナルエディションとファイナルエディション・リミテッド。1978年発売、43年間もずっと大きく姿を変えずに売られてきたモデルだけに、本当にひとつの時代がおわっちゃったなぁ、って感じなのかもしれない。
 SR400生産終了──それは度重なる、それも回を追って厳しくなる排出ガス規制、騒音規制、それに安全装置の装着義務が原因だ。今回の生産終了の直接的なきっかけは、SR400がABSを装着していないことが原因なようで、それはSRだけでなく、ABSを装着していないモデルは、2021年の10月以降に生産してはナラヌ、というルールによるもの。
 そのために、2021年初頭に発表されたのは、最後にSRのファイナルエディションを5000台、そしてリミテッドを1000台、計6000台だけ発売します、という内容だった。今や専用の生産ラインを使わなくてはならないSRの生産能力は「日産10台強、月間500台」と言われていて、10か月間で5000台、それメいっぱい頑張って6000台作ります、というギリギリの数字だったのだ。
 

 
 いよいよ最終生産ですよ→ファイナルエディションとして発売という流れでいえば、GSX1100Sカタナ、ZEPHYRやZRX1200DAEGなんかがあったけれど、やはり今回のSR400は別格。なにせ、ファイナルエディション・リミテッドは予約即日完売、通常のファイナルエディションも店舗予約の枠はアッという間に埋まってしまったのだという。それだけ大きな存在だったんですね。
 ちなみに通常、新しいバイクが発売される時には、メーカーから販社や販売店、そしてオーナーの手に渡っていくんだけれど、そのルートはこんな感じだ。
 まずはメーカーが販売店に「コレコレこういうモデル出しますよ」と発表します。すると販売店が「じゃぁウチ5台確保しといて」なんて注文が入って生産、販売計画が決まっていくんだけれど、今回のSR400ファイナルエディションに関しては、この最初の声掛けから狂乱が始まったみたい。
 すでに2020年の秋ごろから、そろそろSR400が生産終了になる、なんて噂が広まっていた。それが2021年1月に正式発表されて、メーカーが販売店に声かけしてみると、最初の台数確保だけで8000台ほどのオーダーが決まったのだという。この一連の数字、あくまでも噂ですよ(笑)。
 

 
 それで、9月いっぱいまでの月産台数は1000+5000台と動かないから、ヤマハは各ショップに少しずつ確保台数を減らしてもらって、なんとか6000台に収めた、と。そうやって、ファイナルエディションは、9月いっぱいまで生産が続いて、今か今かと工場出荷を待っているショップとオーナーさんがいる、という状態なのだという。1000台限定のリミテッドはもうすでに行き先が決まっているけれど、他2色のファイナルエディションは、まだショップ在庫という形で入手は可能みたいです。欲しい人、急げ~。
 そうなると、やっぱり困った人はいるもので、ファイナルエディション・リミテッドなんか、いま個人向けのオークションを見ると成約価格100万円オーバーは当たり前。74万8000円だったから、もう30万円近くノセて売っているわけ。最初からそれ狙いで予約に奔走した人もいるから、困ったものだよね、転売ヤーっていうのかな。
「中村さん、SR何台か回そうか? 1年すれば100万は超えるから、今はどんな商品より利回りがいい投資物件だよ」って、半分は冗談だろうけれど、連絡してきてくれた知り合いもいる。いや、遠慮しときます。
 これから先も、希少モデルだけに、年に数台は「SRファイナルリミテッドの新車発掘!」なんて車両が出てきて、スゴい値段で取り引きされるんだろう。今でも、探せば500万円なんてGSX1100Sカタナファイナルエディションの新車、みつかったりするものね。
 

 

SRの変遷、ずっと知ってる。初めて乗った80年代中期モデル

 そのSRだけれど、私は「所有」したことはない。けれど、ことあるごとに試乗してきたし、いろんな年式の新車、中古車、チューニングバイク、友人のバイク、といろんなパターンに乗って来た。それどころか、兄も一時期SRオーナーだったこともあって、仲間うちで誰かしら持ってるバイク、それがSRの印象だったものだ。
 そのSR、姿かたちはほとんど変わらないまま43年間生産されてきた。
 その中で、SRは大きく分けていくつかのタイプがある。それがキャブレター車とインジェクション車。さらに言えばドラムブレーキ車とディスクブレーキ車があって、排出ガス規制前と規制後のタイプもある。どれがイイ、どれが悪い、は時代時代によって違うけれど、いちばん乗って楽しかったのは1980年代後期のキャブレター/ドラムブレーキ車かなぁ。
 もちろん、速く走る、鋭く止まる、シャープに曲がるようなスポーツランにはドラムブレーキ車では無理だけれど、雰囲気やSRらしさも含めてイイな、と思うのだ。
 仕事で「試乗」させてもらう、メーカー所有のSRの広報車というものに初めて乗ったのも1988年頃。この頃のSRがいまだに印象に残っている。

 
 エンジンは、ずっとSOHC2バルブの空冷単気筒。キャブレター型式が変わったり、キャブレターがインジェクションになり、キャタライザーがマフラーに内蔵されたりしてきた中で、だんだん一発ずつの爆発の「カド」が取れてきたというか、大げさに言えば「ドドドドド」、が「タタタタタ」とか「トトトトト」とか「ルルルルル」って変わって来た。
 初めて乗ったSRは友人の所有車だったけれど、鉄板の上にセンタースタンドで立ててアイドリングしていたら、ドドドドドって停車場所がずれて行っちゃうほどの振動だった。走り出しても、1~2速の守備範囲が狭く、すぐに吹け切って、その高回転(と言っても3~4000rpmほど)はジャァァァッと振動がひどかったのを覚えている。重いしブレーキは効かないしだらーんとしか曲がらないし……。
 その頃私はスズキの2ストローク2気筒車、RG250に乗っていて、SRってのはとんでもなく振動がある、乗りにくいバイクなんだ、って思ったほどだ。
 そのあと、仕事で「試乗」として乗った88年ごろのモデルに出会ったのだ。印象よりずっと洗練されていて、そんなにひどい振動、そんなに高回転が回らないエンジン、という印象は弱まったけれど、それでも当時は250ccも400ccも750ccもスーパースポーツ志向ばかりの世の中で、やはりSRは異質だった。
 もちろん、SRは何ひとつ変わらなかったけれど、まわりがスポーツバイクばかりで、スポーツ「度」の基準が底上げされてしまったものだから、とたんに変わらない位置にいるSRが走らない、曲がらない、止まらない「オートバイの化石」的扱いをされてしまったのだ。
 

 

振動の多い回転域を超えたところに力がある

 あれから世の中もずいぶん変わって来た。スポーツバイクの最高峰であるレーサーレプリカブームが廃ってしまい、時代はネイキッドや国産アメリカン、トラッカーやビッグスクーターが次々とバイクの主役になっていた。
 けれどその横で、SRはずっと変わらずにいたのだ。もちろん、SRも排出ガス規制や音量規制に少しの変身を余儀なくされてはいたものの、スタイリングや存在感はまるっきりSRのまま。いつの時代も「あ、SRってバイクあったっけね」って存在だった。
 主役のバイクは一定期間に代わっていく。それでもSRはなにも変わらない。だから、いつの時代もSRがバイクの基準になって、いつの時代も見直される存在だったのだ。
 バイクの販売台数に関しても、なにか流行が起こった時にSRは目立たなくなり、その流行が勢いを失ったとき、またSRが脚光を浴びるという歴史を繰り返してきた。SRは強い光によってできる濃い影だったのかもしれないのだ。
 

 
 そして、とうとうSRが最後を迎えることになった。ファイナルエディション/ファイナルエディション・リミテッドって名前がなかったら、単なる2021年モデル。SRは、相変わらずSRだ。
 エンジン始動は相変わらずのキックスタート。インジェクションになって、エンジンの始動性はかなり良くなったっけね。
 そんなに軽くはないクラッチを握り込んで、がっちゃん、とローギアにシフト。クラッチミートすると、かつてのドンというスタートトルクはまろやかになったし、低回転もフリクションロスなく、きれいに回る。すぐに回転は頭打ちするけれど、次々とシフトアップしてスピードを乗せていくのが楽しい。回転が頭打ちせず、シフトアップして失速しないよう、シフトアップのタイミングが上手く合った時には、お、上手くイケた!って思うようになる。
 アイドリングから2000rpmあたりまでは「加速の通過点」、2~3000rpmは鼓動を楽しむことができて、3~4000rpmはトルクが乗ってきて振動も減ってくる、一番きもちのいいエリアだ。
 4~5000rpmは、両ハンドルに、両ステップに振動がビリビリ来る。このヘんの回転域がSRのストリートでの常用回転域で、だからこのへんの回転域を多用するオーナーは「SRは振動が多い」って言うし、それ以下の回転域で走る人は「そうでもないよ」なんて感想になるのだ。
 そして、実はもうひとつ上の回転域にヤマがあって、5~7000rpmに力のあるエリアが隠れているのだ。不快な振動が徐々に連続したビートに変わってきて、車体をグイグイと前に進める力がある。実は、ここがSRのスポーツ的な楽しさがあるエリア。空冷単気筒では、なかなかにエンジンを「いじめている」回転域なもんだから、あんまりこんな回転域まで踏み込むオーナーは多くないんだけれど、SRは、実はただの穏やかなバイクではないのだ。
 

 

SRはいつでも誰かのそばにいる

 それでも、ズドドドド、なんて時代ではなくなったけれど、空冷単気筒SRの気持ちよさをいちばん味わえるのは、4000rpmあたり。トップギア5速では、この回転域で90km/hくらい。このへんでスーンと走るSRが、なんとも気持ちがいい。
 SRは確かにファイナルエディションになって、新車を手に入れるのはだんだん難しくなる。ただし、1978年から40年以上にわたって生産されてきたSRは、世の中に10万台以上が生まれ、走って来たのだから、ざっと1/10~1/20が残っているとしたって、膨大な数の中古車がある。しばらくはSRの異常人気が続くだろうけれど、適正価格に戻るのだって、そう遠くはないだろう。2010年モデル以降のインジェクション車、それ以前のキャブレター車、予算やスキルに合ったSRを手に入れればいいのだ。
「もうSRに乗れることはなくなっちゃうのか」
「SRにサヨナラを」
 そんなこと、言わなくたっていいさ。いつでも仲間うちが誰か乗っていて、いつでもそばにいる──それがSR400という日本を代表する偉大なバイクなのだ(今回の試乗車は2020年モデル)。
(試乗・文:中村浩史)
 

ライダーの身長は178cm。

 

SRのエンジン始動はキックのみ。難しいと思われがちだが、インジェクション化されて以降は、手順を守れば実にイージー。キックアームにきちんと体重を乗せて踏み下ろし慣れれば、女子だって簡単な作法なのだ。
実に40年以上を生きながらえてきた空冷単気筒エンジン。SOHC2バルブエンジンは、7000rpmあたりまでしか回らないが、キャブレターからインジェクション、そして幾多の排出ガス規制を潜り抜けてきた現行モデルは、フリクションロスなくきれいに回る。

 

ちょうどタンデムステップ下あたりにヒートガードプレートが装着されているが、このあたりにキャタライザーが内蔵されて、シュッと細身だった美しいSRのマフラー形状をスポイルしてしまった。けれど、これも時代の流れなのだ。
お世辞にも効くとはいえないSRのディスクブレーキだけれど、必要にして充分。減速、停車にはリアブレーキをうまく使うのがSR乗りの矜持なのだ。このブレーキで充分なスピードで走る、ブレーキ能力に応じて走るのがSR流なのだ。

 

リアショックも初代から変らず2本サス+丸パイプスイングアーム。これもブレーキと同じく、必要にして充分な装備で、この2本サスに応じた走りをするのがSR流なのだ。どうしてもパフォーマンス不足と思ったら、リプレイスという楽しみが始まってくる。
インジェクション仕様の装備として、タンク補器としてフューエルポンプが必要になった分、容量が減ってしまったものの、全体のフォルムを大きく変えることがなかったフューエルタンク。今回の試乗での燃費は30~35km/Lだった。

 

ダブルシート、小さなシートカウルにメッキフェンダー、別体式テールランプにでっかいウィンカーがなんともSR的! 思えば1970年代の日本車って、みんなこうだったなぁ、って資料的存在でもあったのがなくなってしまうのは、やや惜しい気もする。
パイプハンドルにアナログ式2眼メーター。メーターにはオド&トリップメーターのみを表示し、ツイントリップメーターも燃費計も、残ガス走行可能距離計も燃料計も時計もナシ。けれど、SRはこれでいいのだ。

 

●SR400 主要諸元
■型式:2BL-RH16J ■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ ■総排気量:399cm3 ■ボア×ストローク:87.0×67.2mm ■圧縮比:8.5■最高出力:18kw(24PS)/6,500rpm ■最大トルク:28N・m(2.2kgf・m)/3,000rpm ■全長×全幅×全高:2,085×750×1,100mm ■ホイールベース:1,410mm ■最低地上高:130mm ■シート高:790mm ■車両重量:175kg ■燃料タンク容量:12L ■変速機形式:常時噛合式5段リターン ■タイヤ(前・後):90/100-18M/C 54S・110/90-18M/C 61S ■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク/機械式リーディングトレーリングドラム ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■フレーム:セミダブルクレードル ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):583,000円

 



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2021/05/19掲載