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試乗・解説

存在感200%増し! スズキのストリートファイター、初のフルモデルチェンジ SUZUKI GSX-S1000
GSX-S1000と言えばGSX-R1000をベースにした、スズキのストリートスポーツとしてすっかり定着した商品。このカウルなしファイター版の他にフルカウルのGSX-S1000Fもラインナップし、しかも双方ともリーズナブルであることも魅力だった。今回、まずはネイキッド版がユーロ5対応しつつルックスを大きく変えてきた。
■車両解説:ノア セレン ■協力:SUZUKIhttps://www1.suzuki.co.jp/motor/




ユーロ5対応というタイミング

 新型ハヤブサの登場で特にスズキファンは盛り上がっていたところ、ノーマークだったGSX-S1000がこんな劇的なモデルチェンジをして登場! 事前情報がなかったため驚いたファンもいることだろう。GSX-S1000はもはやスズキのスタンダードモデル。速くて、スポーティで、ネイキッドゆえの気軽さがあり、さらに価格も手が出しやすいということもありファンも多い機種だ。
 しかしモデルチェンジと聞けば当然のタイミングだな、と納得もする。というのもユーロ5に対応しなければいけないタイミングで、この良い商品をみすみすラインナップ落ちさせるはずはないのだ。ユーロ5対応と同時に、2015年の発売から大きなチェンジをしてこなかったこのモデルがガラリとモデルチェンジするのは、良く考えれば自然なこと。角ばった各部デザインと目を引く縦目二灯のヘッドライト以外の部分も少し解説していこう。
 

 

Vストロームと同じ手法

 ユーロ5対応と聞けばさらに厳しい環境規制に対応しなければいけなく、プレジャー領域は犠牲になる……かのようなイメージもあるかもしれないが、スズキで言えばVストローム1050がそうであったように、GSX-S1000も逆にパフォーマンスアップしている。馬力は148PSから152PSへと向上、トルクはピーク値こそ若干減ったものの、ハヤブサ同様に常用域での力強さ、スムーズさを追求し加速性能はしっかりと向上させているのだ。
 その手法は電子制御スロットルの導入、吸排気カムのリフト量及びオーバーラップの変更、エアクリーナーボックスと排気系の変更によるものと、こちらもVストローム1050と基本的に変更箇所は同じ。スズキとして「ユーロ5にはこのように対応しよう」というアプローチが定まっていることが読み取れる。
 

 
 加えて同じタイミングで電子制御も充実させた、というのもVストローム1050と同様だ。新たに「ドライブモードセレクター」「電子制御スロットル」「双方向クイックシフター」といったモダンな装備を投入したことでさらに幅広いシチュエーションでの満足度を高めると共に、トラコンのアップデートの他、停止時からのクラッチミートを補助するローRPMアシスト機能や、セルスタータースイッチをワンプッシュで確実にエンジン始動させるイージースタートシステムといった、最近のスズキ車としてはスタンダードな各種便利機能も同時に投入している。
 Vストローム1050、ニューハヤブサに続く、スズキの「ユーロ5対応というナイスタイミングで本格的なアップデート」シリーズ第3弾である。
 

 

良いことばかり、なのだ。

 とはいっても、より厳しい環境規制に対応しているのだから、なにかがトレードオフされているのでは? と勘繰るものの、資料を読み解いてもほとんど見当たらないのだから技術力というのは凄いもの。装備重量が5kg重くなっているのだけがマイナスにも思えるが、タンク容量が2L増えているため、それだけで2kg近くは増加している計算。マフラー内のキャタライザーが増やされ、クイックシフターなど各種の便利な電子制御技術が新搭載され、それに対して馬力も向上していることを思えば残りの3kgはとるに足らないだろう。
 さらに、モデルチェンジのタイミングでよりアグレッシブな性格に変わってしまったり、先代が持っていた良さを違う方向へと持って行ってしまったりといったことが少なくないが、GSX-S1000についてはハンドルがより手前に引かれ、長距離を考慮してシートの快適性も考えられるなど、ルックスこそよりアグレッシブなイメージとなっているものの、先代の持っていたほど良い付き合いやすさは引き継ぎ、むしろ向上させているとも言える細部のチェンジを施している。ストリートファイターというカテゴリーでこそあるがいたずらに興奮ばかりを求めず、実用的な部分も大切にするスズキらしい姿勢に嬉しくなる。こう考えると本当にマイナス面は見当たらず、純粋に「良くなった」というイメージのモデルチェンジでではないだろうか。
 

 

では、ルックスについて少し

 この新型でショッキングなのは縦目二灯のヘッドライトをはじめとするシャープなスタイリング。とはいえルックスについては各個人の感じ方次第のため言及するのが難しい。
 コンセプトとしてはこのモデルの持つパワーやパフォーマンス、自由自在に扱えるイメージや扱いやすさをデザインとして表現するためのスタイリングチェンジであり、モチーフとしたのはスズキのレーシングマシンや最新のステルス戦闘機。結果として先代より角ばったデザインが生まれ、国産モデルとしてはかなり攻めたルックスの縦目二灯ヘッドライトが採用された。無駄を徹底的にそぎ落とし、アスリートの筋骨隆々なイメージやアグレッシブさを表現したというが、確かにかなり存在感が高まったといえそうで、この顔がルームミラーに映ったら「いったい何が来たんだ!?」と目を引くこと間違いないだろう。
 

 
 しかしこれだけ尖ったスタイリングとしながらも、シート高は先代と同じ810mmを維持し、またタンク容量を2Lも増やしているのは素晴らしいことである。そういった部分がデザインを阻害せずに成されていることもまたスズキらしいと感じる。
 ただ、スタイリングについて一点だけ個人的な感想を言うとすれば「なぜここにきてタンクにSUZUKIと入れたのか……」ということに若干の違和感を覚えてしまう。先代のSマークで良かったのに、あえてここで90年代の油冷ネイキッドのようにタンクにSUZUKIと入れるのは、スタイリング的には逆行しているように感じるためなにか強い意志があるとしか思えない。海外市場向けに、売れに売れたあの「バンディット」の血筋を感じさせようという意図なのだろうか。あくまで個人的感想ではあるが、少しだけ不思議に思ってしまった部分である。
 

 

出そろうストリートファイター

 ストリートファイターという言葉自体が既に過去のものになっているようには思う。いわゆる90年代の鉄フレーム2本ショックの「ネイキッド」がカテゴリーとしてはほぼ消滅した今、これらストリートファイターがむしろスタンダードとなっている。スーパースポーツモデルをベースとしたネイキッドモデルはもはや普通に「ストリートスポーツ」などと呼ばれて良いだろう。
 そしてこのカテゴリーはホンダのCB1000R、カワサキのZ1000、ヤマハはMT-10の他に3気筒シリーズも展開し、BMWやトライアンフも類似する商品を持っており、公道で気軽に超ハイパフォーマンスを味わいたい人にとってはもはやスタンダードなスポーツバイクカテゴリーであり、スズキがこれだけ力の入ったアップデートをするのも当然のことだ。
 もう一つ嬉しいニュースは、どうやらこの新型GSX-S1000、ごくわずかな値上がりに抑えられていそうなのである。国内での価格は未公表だが、海外での価格はこれだけ劇的なモデルチェンジにもかかわらずリーズナブルな路線は守られているようで、海外メディアからその点も評価されている模様。実力のある魅力的なモデルでありながら、ハヤブサなどと比較した時、プレミアム路線ではなくあくまで普及版のスポーツバイクと位置づけ、いたずらに高価格化させないのもまたスズキらしい。実物のルックスや乗り味と共に国内での価格設定も楽しみなところ。追って試乗レポートができる日も遠くないはずだ。
 

 

縦目二灯がすぐに目に入るためそっちにイメージが持っていかれるが、タンク形状や各種シュラウドのシャープさも先代と見比べるとずいぶんと変わった部分。ヘッドライトがスリムになったことや、全体的に低く構えているような印象となったがゆえ、特にサイドビューは車体が長くなったような、もしくはキャスターが寝たような印象もあるが、そういった数値的な部分は先代から引き継がれている。ラジエター横には目立たないがウイングレットが隠されておりレースからのフィードバックも活かされ、またシートレール根元部分も露出させるなど変更が加えられており細部まで変更されていることに気付く。カラーリングはスズキらしいイメージカラーのブルーの他、イメージとしたステルス戦闘機を連想させるブラックとグレーの3色展開。

 

タンクが角ばったためかなり違う跨った時の印象。ハンドルは少し持ち上げられ、また20mm手前にも引かれたためライディングポジションはよりコンパクトに変化。同時に幅も23mm広げられ、アグレッシブな操作感をより強調している。
先代の17Lから2L増やしたタンクはそれを感じさせない上手なデザイニング。航続距離が心許なかった先代に比べこれは大きな安心材料だろう。

 

φ43mmのインナーチューブを持つフルアジャスタブルフロントフォークは先代から引き継ぐが、新採用の専用設計タイヤに合わせてセッティングは変更されている。

 

スタイリング的におおきなアイコンとなる縦目二灯ヘッドライトは、LEDの光源をどこにも反射させることなく直接レンズへと照射する「モノフォーカスタイプ」と呼ばれるもの。最上段のポジションライトを含めると3灯となり、ハイビームで全部が点灯する。ウインカーも新たにLEDとなり、スマートなバータイプのデザインを採用した。

 

SV650などと共通イメージのコンパクトなメーターを採用していた先代に対し、こちらはGSX-Rと同様のフルLCDメーターを新採用。今では一般的となった様々な情報を表示するほか、ラップタイム機能も追加することでサーキット走行の楽しみも提供。ライディングモードやトラコンの設定などは左スイッチボックスから操作する。

 

今回のモデルチェンジでユーザーが嬉しいのはクイックシフターの装備ではないだろうか。画像はそのクイックシフターのセンサーである。シフトアップはもちろんシフトダウンも対応し、オートブリッパーも付いているため気持ちよくシフトチェンジが決まるはずだ。
快適性を求め新作されたシート。快適性の確保と同時にスポーツ走行時のホールド性も追求し表皮も変更している。純正アクセサリーでシングルシートカバーも用意されている。

 

エンジンの基本的な部分は変わっていないが、吸排気共にカムが変更されておりそれに伴う部品群は同時に新作に。

 

電子制御スロットルの新採用により各種ライディングモードの設定などのアップデートが一気に進んだ。口径が変更されているとされるが数値が公表されていないため追ってレポートしたい。

 

吸排気系も変更されユーロ5に対応すると共にパワーアップを実現。トルクは常用域を強化すると共に変動を少なくし扱いやすく整えている。排気量、ボア×ストローク、圧縮比は不変ながら、200mまでの加速は先代6.7秒に対して新型は6.64秒、400mまでの加速は先代10.25秒に対して新型は10.15秒と公表されている。

 

●GSX-S1000 主要諸元(欧州仕様)
■エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ ■総排気量:999cm3 ■ボア×ストローク:73.4×59.0mm ■圧縮比:12.2 ■最高出力:112kw/11,000rpm ■最大トルク:106N・m/9,250rpm ■ホイールベース:1,460mm ■シート高:810 ■車両重量:214kg■変速機: 6段リターン ■タイヤ(前・後):120/70ZR17・190/50ZR17 ■ブレーキ(前/後):油圧式ダブルディスク(ABS)/油圧式シングルディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・スイングアーム式 ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):未定


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2021/05/07掲載