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試乗・解説

ツーリングバイクで、スポーツツーリングで 乗れば乗るほどスーパースポーツツーリング!
発売から5年も経過したビッグバイクが
今また人気、または今まだ人気を継続している。
魅力的なニューモデルの人気を「瞬間風速」として
人気モデルであり続けるGSX-Sの魅力は
乗れば乗るほどよくわかる!
■試乗・文:中村浩史 ■撮影:松川 忍 ■協力:SUZUKIhttp://www1.suzuki.co.jp/motor/






 私はバイクショップに行くのが好き。とはいえ、なかなか敷居の低い業種ではないから、お友だちのショップに。各メーカーの正規ディーラーも、大型中古車ショップも、個人経営のカスタムショップも用品店も。冷やかしだったり差し入れ持って行ったり、ハナシ聞きに行ったり。最近どーよ、なんて迷惑じゃないタイミングにお邪魔するのだ。
 もちろん、今どきのバイクの流れをチェックさせてもらう。なに売れてる? どんなカテゴリー勢いある? 新登場のあれはどーお、なんて探りを入れるのだ。

 興味深い話を聞いた。大型中古車ショップチェーンで話していると、今いちばん動いているのが、スズキGSX-S1000なんだという。それもテッパンで、ガチで、ぶっちぎりでGSX-Sが動いている、と。そこのショップオリジナルとしてLEDヘッドランプを組んで値段を抑えて店頭に並べておくと、新車も中古車もよく売れるんですよ、と。こんなん書くとお店がバレちゃう?(笑)
 

 
 スズキビッグバイクのベストセラーであり、ロングセラーであるGSX-S1000/1000F。2015年7月に発売された、いわばGSX-R1000のカジュアルバージョン。S1000はライトカウル、S1000Fはフルカウル装着車だけれど、キャラクター的には「ネイキッド」カテゴリーに入るんだと思う。
 ライバルで言えば、並列4気筒エンジンってこともあって、ホンダCB1300SF/SBはピッタリだし、CB1000Rなんかも入るかな。ヤマハではMT-10、カワサキではZ1000/Ninja1000SXってことになるだろうか。いや、4気筒ネイキッドという枠でとらえれば、Z900/RSもこのライバルに入るかもしれない。
 ’03年2月デビューのCB1300SFは別格としても、このライバルの中ではGSX-Sは古い部類に入る。だから「今いちばん動いている」って言葉が意外だったのだ。

 そのGSX-Sは、スーパースポーツGSX-R1000を、もっとリラックスして乗ろう、というところから開発がスタートしたモデルだ。’15年モデルだけれど、エンジンはGSX-R1000のK5~K8(=’05~’08年)モデルをベースに、車体もGSX-R系のフレームとスイングアームを使用。エンジンが’15年当時の最新モデルではなく、K5モデルをベースとしたのは、このK5世代が歴代GSX-Rの中でもストリートの扱いやすさがいい、という評価を受けてのものだ。
 ’14年のインターモト発表時には、ストリートファイターとスポーツツーリング、のような棲み分けがされてあった。いずれにしろ、GSX-Rのハイパフォーマンスをアップライトなポジションで味わえるように開発されたモデルなのだ。

 しかし、GSX-Rのポテンシャルをイージーに味わえる、ってつもりにしては、GSX-Sのパフォーマンスはびっくりするほど高い。スーパースポーツのネイキッド版、という先入観つきで乗ると、その力強さに驚かされる。GSX-Sに乗るのは初めてじゃないし、それでも久しぶりだけれど、あれ……こんなに力強かったっけ、と思い知らされるのだ。

 

 
 発進してすぐは、この力強さを感じることはない。スムーズに発進、さらにGSX-Sに装備されているローRPMアシストのおかげで、発進の時にアクセルを開け増ししなくとも回転のドロップを補正してくれる。
 1500~3000rpmといった発進トルクエリアは、意識的にトルクを薄めてローRPMアシストシステムを働かせている印象だ。なぜなら、このエンジンの「素」の力を出すと、力強さのあまりドンと前に出て、あわててアクセルを閉じてギクシャクしちゃう、そんな挙動を抑えているのだろう。

 GSX-Sが力強さを開放するのは、4000~5000rpmあたりから。このエリアに向かってグングントルクを増していくGSX-Sは、5000rpmを越えたあたりからさらに力強くなって、その下の回転域でのんびり流していたのに、アクセルへのツキもイッキにシャープになって、グンと加速をし始めるのだ。
 トルクの出方は5000rpmから9000rpmまで盛り上がって、それ以上でもう一段ヤマがある。ここに来るともう、ほぼGSX-Rのパワー特性で、一般道では試せないエリア。アップハンドルから体が後ろに持っていかれてしまう感じだ。
 低回転のパワー制御、それが外れる4000~5000rpm、本来の盛り上がりがある9000rpmと、いわば3段ロケット! これは、普段使いではなかなか気づかないGSX-Sのスゴみだ。

 ハンドリングは、コンセプト通りGSX-Rのパフォーマンスをイージーに扱えるタイプ。安定性を軸にしたフットワークで、決して俊敏すぎない、それでも体の持っていき次第で軽快さが増すタイプだ。
 これは、車体のベースをGSX-R系としていることで、特にフロントまわりのディメンジョンや剛性コントロールをGSX-R的なものにしているのだろう。さらにスイングアームは、あえてメインフレームと年式違いのものを使用して、GSX-S的にしてある、そんな感じ。
 ハンドルが高いってことは、それだけフロントタイヤを押さえつける力が少し弱いってことで、普段はGSX-Rよりも安心感があって、意識してフロント入力するような走りをすると、どんどんGSX-Rに近づいていくる――そんなカラクリなのだろう。
 

 
 高速道路では、この軽快性がしっとりとした安定性に感じられる。トップギア6速で80km/hは3200rpm、100km/hは4100rpmほど。この6速100km/hあたりからGSX-Sは本来のパワーを発揮しはじめてくるから、穏やかに走れるギリのラインが、このあたりなのだろう。11500rpmオーバーまで回る150psエンジンとしては、まだまだここは低~中回転域だ。
 GSX-Sは、カテゴリー分けするとツーリングバイクなのだと思う。その中でもスポーツツーリング、そして乗れば乗るほど「スーパー」スポーツツーリングなんだなぁ、と思う。

 GSX-Sが「よく売れている」理由がわかるような気がした。決して目新しくはないけれど、エンジンのキャラクターが奥深くて、どんなキャリア、どんなスキルのライダーでも恐怖感なく扱えるバイク――。だから長く付き合える、それがGSX-Sなのだ。
 ちなみにGSX-S人気は、価格の面もひとつの要因で、GSX-S1000が115万2800円、GSX-S1000Fが120万7800円。これは税込み価格で、税抜きでいうと104万8000円と109万8000円。GSX-R1000Rより90万円ほど安く、兄弟車であるKATANAより40万円ほど安い。価格帯でいうと20年前の油冷ビッグネイキッドGSX1400と同じようなラインなのだ。

 いま「ビッグネイキッド」カテゴリーで販売ランキングのトップを独走しているのはZ900RSだ。けれどGSX-Sの魅力が、発売から5年が経過しても色褪せないのもわかるような気がする。速く、扱いやすく、それでいて価格も安い――だから売れているのだ!
<試乗・文:中村浩史>
 

 

ライダーの身長は178cm。

 

GSX-R1000K5~K8世代の水冷4気筒エンジンを搭載。ちなみに現行GSX-R1000Rよりもロングストロークで、それだけ回転馬力タイプではなく、低中回転からトルクある特性としている。’17年モデルからはスリッパークラッチを追加し、本文中にもあるローRPMに加え、ワンプッシュセルスタート、3段階+OFFのトラクションコントロールも装備。

 

メインフレームは専用設計で、これもGSX-R系のコンポーネントをベースとしている。フレーム剛性やキャスター/トレールなどのディメンジョンもスーパースポーツ流。
バンク角を確保するべく、マフラーを内側に追い込むスイングアーム形状もGSX-Rゆずり。マフラーはGSX-S専用のサウンドチューニングを施され、太く、低いイイ音!

 

φ310mmローターにブレンボ製4ピストンラジアルマウントキャリパーもGSX-R譲りの豪華さ。Fフォークはプリロード&伸/圧側減衰力を調整できるフルアジャスタブル。
ベースエンジンとしたK5世代よりも全長の長いアルミキャスト製ロングスイングアームを採用。2次減速比は兄弟モデルKATANAと同一で、スプロケットは17/44丁。

 

今どきの薄型ヘッドライトやLEDではなく、ひときわ個性をアピールするビッグアイヘッドライト。スクリーンは固定式で高さ調整できないのはちょっと残念でした。
フルカウルは、写真のちょうどウィンカー後方にウィンドフラップが形成されていて、下半身に当たる風を整流してくれる。今回の取材では雨走行でヒザ濡れを防止してくれた!

 

リアサスはプリロードと伸び側減衰力を調整可能。サスペンションの味付けは、スポーツ性はもちろん、乗り心地も考えられているタイプで、長時間乗車も苦にならなかった。
タンク容量は17L。今回の実走参考燃費は21.5km/Lで、巡行距離は300kmオーバーの足の長さがある。タンク形状はショートタンクで車体前寄りに座る設定としている。

 

前後にスペースあるシートは体重移動もしやすく、ロングラン向きでもある。セパレートのタンデム部分は、取り外すとヘルメットホルダーフックがあり、シート裏にはドローコード(荷物縛り用のネットです)用のフラップも内蔵されている。このフラップとタンデムステッププレート裏のフックで荷物を積載するとちょうど具合がいい。

 

ハンドルはセンター部が太いレンサル製ファットバー。ハンドル形状はアップライトで、現行GSX-Rよりコブシ2~3個分高く手前に引かれていて、上半身の前傾が緩やか。
大型液晶で見やすいメーターは、ギアポジションとスピードを中央に、タコメーターはバーグラフ式。瞬間&平均燃費、オド&ツイントリップ、残ガス走行可能距離などを表示。

 

■SUZUKI GSX-S1000 ABS〈GSX-S1000F ABS〉主要諸元
●全長×全幅×全高:2,115×785〈795〉×1,180〈1,080〉mm、ホイールベース:1,460mm、シート高:810mm、装備重量:209〈214〉kg●エンジン種類:T719水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ、排気量:998cm3、ボア×ストローク:73.4×59.0mm、最高出力:109kW(148PS)/10,000rpm、最大トルク:107N・m(10.9kgf-m)/9,500rpm、燃料供給装置:電子制御燃料噴射、燃費消費率:24.3km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、19.1km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)、燃料タンク容量:17リットル、変速機形式:常時噛合式6段リターン●メーカー希望小売価格:1,152,800〈1,207,800〉円


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2020/08/07掲載