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試乗・解説

Honda Gyro e: あのジャイロUPが戻ってきた?
ビジネス用電動二輪車「ベンリィ e:」が登場したのが2020年4月。それから約1年、シリーズ2機種目となる「ジャイロ e:」が3月25日に登場した。
■試乗・文:青山義明 ■撮影:依田 麗、青山義明 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパンhttps://www.honda.co.jp/motor/






 ジャイロといえば、1982年に登場したジャイロXがその祖となり、1985年にUP、そして1990年にはキャノピーとバリエーションを広げたスリーターモデルである。その3つのタイプのうちのひとつ、大型のリアデッキを採用し積載能力を向上させたジャイロUPのみ、4ストローク化せずに2008年に生産を終了している。が、今回そのUPを現代に蘇らせた電動モデルが登場となった。
 

 
 それがHonda e:ビジネスバイクシリーズの第2弾モデル、ジャイロ e:である。大型のリアデッキは、ジャイロUPと同等の高さと広さを確保しており、ビールケースなどを楽々積める広さだという。またこのデッキも程よく低く、スタンド不要でレバー操作によるワンタッチ・パーキング機構も装備する。

 駆動ユニットなどは基本的にベンリィ e:を踏襲しており、モーターは同じものを使用し、電圧48Vのモバイルパワーパック2個を直列に接続させた96V系のシステムで駆動する。ただ、2輪のベンリィ e:と異なり、スリーターとなるジャイロ e:はその出力の仕方が異なっている。モーター出力軸から減速ギアを介し2本の後輪へ駆動を伝える。また、ジャイロUP同様、その同軸にディファレンシャルギアを採用し、旋回時の左右の回転差を収束することとしている。
 

 
 その最大の特徴であるスイング機構の前後にバッテリーとモーターという駆動ユニットを分割搭載する形となるが、ベンリィ e:のリソースを流用することや、一番の重量物であるバッテリーを車両中央部に搭載したい、という思いから、分割以外の方法に譲ることができなかったのだろう。
 そのためジョイント部分にはオレンジ色のハーネスカバーが見え隠れする。開発者もこのハーネスの揺動部分については様々なテストを繰り返してきたという。そのボディ下部を見ると、アンダーパネルがジョイントケース前で出っ張り、飛び石などからハーネスをカバーをするようになっているようで、そのあたりの配慮もみられる。
 

 
 車両前部はベンリィ e:を、車両後部はジャイロUPを継承しており、車両のディメンションとしてはホイールベース長はベンリィよりも80mm長い1360mmとなるが、ハンドル切れ角は2°深い50°とし、最小回転半径はベンリィ e:と同じ1.9mを実現している。ライディングポジションはアップライトで上半身はしっかりと立ったイメージとなる。

 積載能力や登坂性能を考慮し、その最高出力はベンリィ e:の2.8kWに対し3.2kWへと向上させている。定格出力は同じなので車両区分も同じとなるが、電費は落ちることとなり、一充電走行距離はベンリィ e:の87kmに対し、72km(ともに30km/h定地走行テスト値)となる。ちなみに最大積載量30kgの荷物を積んだ状態で傾斜15°の登坂性能を実現しているという。
 

 
 今回、自動車教習所敷地内のコースを使用してその試乗会が行われた。実は個人的にはベンリィe:に試乗する機会を得ていなかったので、今回がこのHonda e:ビジネスバイクシリーズの車両初試乗の機会となった。

 ホンダの電動バイクで言えば、PCXエレクトリックの試乗以来となる。まず発進の前にほんの少しだけアクセルを開けてみる。PCXの時に感じていたコギングが見られず、極めて上質な感じでするりとスタートする。荷台はカラであって発進加速の雰囲気は良い。

 もちろん他に気になるような振動はない。それなりに音はあるが、近接警告音の代わりと考えれば、適度な音量で、EVらしさもあって、ありだと思える。中間加速でもスロットル操作に対しての反応は極めてダイレクトで、十分楽しめる。アクセル開度に対して少しトルクが大きいイメージがあるが、荷物の積載で印象は変わるのかもしれない。
 

 
 アクセルオフでの減速はスムーズ。いちおう減速エネルギーを回収する回生ブレーキとなるが、それほど強く取りにいっていないようで不自然さはない。また機械式ドラムの前後ブレーキも違和感ない効き具合で印象は極めて良かった。

 ベンリィ e:で採用された後進アシスト機能はもちろんこのモデルでも採用。リバーススイッチとスタータースイッチを押すことで後進が作動する。基本的には人の歩く速度程度(時速4kmほど)での後進だが、空荷ということもあってか、けっこう速く感じる。より重量物を搭載する機会が多そうなジャイロ e:ならば、ベンリィ以上にこの機能は有効だろう。

 価格は税込み55万円となる。ベンリィ e:よりもリーズナブルなプライスをつけることとなった。ベンリィ e:同様に、このモデルも法人向けの販売となる。バッテリーなどの管理を考えると、これは致し方ないところと言える。ジャイロUPの復活に市場がどう反応するのか、気になるところだ。その反応次第では一般販売も見えてくるだろう。
(試乗・文:青山義明)
 

 

ライダーの身長は179cm。写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます。

 

シート下に横並びで搭載されるモバイルパワーパック。1回のハンドル操作で2個のパックを同時に固定と解除する構造となっている。
バッテリーパックはベンリィ e:と同じ。で重量は1本あたり10kgだ。ゼロの状態から満充電まで約4時間かかる。

 

メーターもベンリィ e:と同じ。その視認性は良く、極めてシンプルな印象。バッテリー残量も横バーなどの直感的なグラフィックは使わず、残電力のパーセンテージを数字で表している。
LEDの六角形ヘッドライトはベンリィ e:と同じ。ヘッドライト上部にはオプションのフロントバスケットも用意される。

 

Honda FLEETマネージメントに使われるコントロール・ユニットはオプション。車両の所在をリアルタイムで把握でき、その運転特性の確認、日報の作成もできる。
サイド&センタースタンドはなく、ロックレバーを操作することでスイング機構と後輪軸を同時に固定するパーキングロック機構を備えている。

 

常に地面と平行であることで、荷崩れを防止する低床リアデッキ。ストッパーバーとロープフックを採用し、荷物積載時の扱いやすさにも配慮している。
駆動ユニットを後ろから眺める。モーターのユニット化はベンリィ e:と同様で、メンテナンス性を向上させている。

 

ジョイント部の上側にはパワーコントロールユニット。直接走行風が当たる場所ではないがフィンを立てて冷却をしているのがわかる。
アンダーカバーには、ジョイント部分前に下方への出っ張りがあり、前方で跳ねられた石をここで下に落とす工夫も。

 

試乗会場には今夏の発売が噂されるジャイロキャノピーe:も登場。こちらはリアデッキをボディ側に設けており、宅配ピザなどの積み荷が片寄ることを避ける食品配達を視野に入れている用途違いのモデルとなる。

 

●ジャイロ e: 主要諸元
■型式:ホンダ・ZAD-EF13 ■原動機形式・種類:EF13M・交流同期電動機 ■定格出力:0.58kw ■最高出力:3.2kw(4.4PS)/5,800rpm ■最大トルク:13N・m(1.3kgf・m)/2,300rpm ■全長×全幅×全高:1,945×710×1,030mm ■ホイールベース:1,360mm ■最低地上高:93mm ■シート高:710mm ■車両重量:141kg ■タイヤ(前・後):90/90-12 44J・130/70-8 42L ■ブレーキ(前/後):機械式リーディング・トレーリング/機械式リーディング・トレーリング ■懸架方式(前・後):テレスコピック式・ユニットスイング式 ■車体色:ロスホワイト、ファイティングレッド ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):550,000円

 



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2021/04/21掲載