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試乗・解説

 昨年春の東京モーターサイクルショーでプロトタイプを出品、秋の東京モーターショーでワールドプレミアとなったホンダのビジネス用電動二輪車「BENLY e:(ベンリィ イー)」シリーズが4月24日(金)より法人向けに販売が開始される。
 ホンダの原付クラスのEVは1994年の「CUV-ES」、2010年の「EV-neo」、そして昨年の「PCXエレクトリック」に続く第4弾と言える。
■試乗:高橋二朗 ■写真:依田 麗/Honda ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/BENLYe/ アライヘルメット https://www.arai.co.jp/

 
 原付一種モデル「Ⅰ」と原付二種モデル「Ⅱ」の他、それぞれのモデルをベースに大型フロントバスケット、大型リアキャリア、ナックルバイザー、フットブレーキを標準装備した「Pro」の計4モデルをラインナップする「BENLY e:」シリーズは荷物が積みやすいリアデッキを採用するなど、新聞配達や宅配といった集配業務での利便性を特化させた仕上がり。加えて、狭い場所や傾斜地での切り替えしなどでリバーススイッチとスタータースイッチを押すことで作動する後進アシスト機能など、EVならではの装備も特徴だ。ガソリンエンジンを搭載する「ベンリィ」シリーズがベースとなっており、骨格は重量がかさむバッテリーが搭載される周辺が補強されているという。また、PCU(パワー コントロール ユニット)の冷却用としてボディ量サイドに外気の導入口が設けられ、当然ながら排気マフラーを必要としないため車体右側リアまわりがスッキリとしている。

 EVシステムは昨年よりリースが開始されている「PCXエレクトリック」同様に着脱式バッテリー「Honda Mobile Power Pack (モバイルパワーパック)」を2 個使用し、簡便な交換が可能に。ちなみにバッテリーはゼロ状態から満充電まで、専用充電器で約4時間。一充電あたりの走行距離は原付一種モデル「Ⅰ」で 87km(30km/h 定地走行テスト値)、原付二種モデル「Ⅱ」で 43km(60km/h 定地走行テスト値)としている。「PCXエレクトリック」に対し「BENLY e:」シリーズはモーターをユニット化。メンテナンス向上を果たしているという。

 基本セット(車両本体、モバイルパワーパック 2 個、専用充電器2個)のメーカー希望小売価格(税込)は「BENLY e: Ⅰ 」(最大積載量は30kg) の737,000 円から「BENLY e: Ⅱ Pro」(同60kg) の748,000 円。プロ仕様は1万1,000円高となるが、「Ⅰ」と「Ⅱ」に価格差は無い。実際のところはバッテリーの回収などの要件もあり、PCXエレクトリック同様にリース販売がメインになるだろうとのことだ。

 1月からは既に日本郵便が配達バイクとして導入、今後は環境負荷低減の他、将来的に郵便局の充電ステーションとしての機能の可能性を探ることなどを目的に全国展開を予定しているというBENLY e:。今回、試乗する機会に恵まれた。
 

 

 

ライダーの身長は173cm(写真の上でクリックすると両足着き時の状態が見られます)。

 
 第一印象は、今まで乗ったどんな二輪EVよりも洗練されており好感触。開発スタッフの話によると、PCXエレクトリックに対し滑らかな出力特性としているとか。スロットル開け始めからの出だしがEV特有の唐突感がなく自然なフィーリング。そして街中の集配業務を考えたら必要にして十分なパワーだと感じた。

 原付二種扱いとなる「Ⅱ」にも乗ったが、スタートでやや力強さを感じるものの、回転の伸びも含め特別パワフルな印象は無い。ビジネスユースを考慮した意図的な制御と思われるが、フル積載時などでは「Ⅱ」は大きなアドバンテージを得られるだろう。ちなみに「Ⅰ」と「Ⅱ」のモーターとケースは共通。巻線の材質が異なり、「Ⅱ」の方が熱などに耐える仕様になっているという。

 個人的には「Ⅰ」の方がバランスに優れた印象だった。サスペンションはガソリン車のベンリィと共通だそうだが、車重の重さ(バッテリー10kg×2からガソリン約4kg分を差し引いた16kg分増と考えていいそうだ)のせいか、とてもしっとりとした乗り心地だった。

 特徴とも言える後進アシスト機能は左右両ボタンを押してスロットルを開けるというもの。右スイッチを押しながらのスロットル操作のため操作に慣れが必要だが、フル積載時の狭い場所での方向転換に威力を発揮。特に非力なライダーにとっては助かる装備だろう。

 尚、ホンダは今回の「BENLY e:」シリーズを筆頭に、ガソリン車を含むビジネス用途に特化した二輪車向けサービスとして「Honda FLEET MANAGEMENT(ホンダ フリート マネジメント)」をスタート。これは車両にTCU(車載通信機)を取り付けることで、リアルタイムに車両の位置情報が把握できる他、急ブレーキをかける場所、すなわち危険な場所のデータを蓄積し安全運転意識を高めることができたり、自動日報作成、メンテナンスなどを管理できるシステム。今夏からの運用を開始を予定しているという。
 

ユニット化することでメンテナンス性の向上を実現したモーター部。ステーターを分布巻きとすることでモーターの振動や発生音も減少。
シート下に収まる2個のモバイルパワーパックを直列接続した96V系電力を使用。

 
 

左側スイッチボックス裏側のリバーススイッチ、右側スイッチボックスのスタータースイッチを同時に押すことで後進アシストは作動。
シンプルで見やすい円筒形状のメーターを採用。※写真をクリックするとメーター配置図となります。

 

サスペンションはガソリン車のベンリィと共通。シート高もガソリン車と同じ710mm。インナーポケット、フロントフック、アクセサリーソケットも備わる。

 

ガソリン車の丸型に対し六角形状となるヘッドライトはLEDを採用。ヘッドライトカバーは2cm低くなったことでバスケット位置が下がり、使い勝手も向上。尚、「Pro」仕様は大型フロントバスケット、ナックルガード、フットブレーキ、大型リアキャリアを採用。

 

原付二種モデルの「Ⅱ」は定格出力0.98kw、最高出力 4.2kW [5.7PS ]/3,900rpm、最大トルク15N・m [1.5kgf・m ]/1,500rpmを発揮。車両重量は「Ⅰ」と共通。乗車定員は1名となる。

 

●ベンリィ e: I 主要諸元 【 】内はプロ
■型式:ZAD-EF07【ZAD-EF08】■全長×全幅×全高:1,820【1,840】×710【780】×1,025【1,050】 mm■ホイールベース:1,280 mm■最低地上高:115 mm■シート高:710 mm■車両重量:125【130】 kg■最小回転半径:1.9 m■原動機種類:交流同期電動機■定格出力:0.58kW■最高出力 :2.8kW [3.8PS ]/3,000rpm■最大トルク:13N・m [1.3kgf・m ]/2,000rpm■一充電走行距離(国土交通省届出値):87km (30 km/h定地走行テスト値)〈1名乗車時〉■タイヤ(前/後):90/90-12 44J /110/90-10 61J ■ブレーキ(前/後):機械式リーディング・トレーリング/機械式リーディング・トレーリング■懸架方式(前/後):テレスコピック式/ユニットスイング式■フレーム形式:アンダーボーン■駆動用バッテリー:Honda Mobile Power Pack(リチウムイオン電池)2個■車体色:ロスホワイト ■メーカー希望小売価格(消費税込み):737,000円【748,000円】

 



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2020/04/01掲載