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試乗・解説

8年ぶりフルモデルチェンジ CRF250シリーズ試乗
CRF250L及びRALLYが新型になったタイミングで、ダカールラリーでホンダが二連覇を果たすという運命! ホンダオフロードが必然的に盛り上がる! そして新型CRF250L/RALLYはそんな機運に応える仕上がりである。オフ車としての進化はもちろん、「フルモデルチェンジとはこういうことなのだ!」といわんばかりの総合性能の底上げ。これは素晴らしい!
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:渕本智信 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/




トレール車としてのCRFブランドが、確かに確立された
“ON”と“OFF”のバランスとは

 CRF250Lは空冷XRシリーズなき後、新しいホンダのオフ車として2012年に初登場し、2017年にマイナーチェンジしたものの基本的には8年間、大きく何かを変えることなく販売され、そして堅調な売り上げを維持してきたモデルである。今回はめてのフルモデルチェンジ。軽量化を軸に、さらなるオフロード性能を追求している。

 先代が登場した時には久しぶりのオフ車ラインナップを歓迎した人が多かったものの、本格的なオフ車としては車重が軽い。
 
 先代が登場した時には久しぶりのオフ車ラインナップを歓迎した人が多かったものの、本格的なオフ車としては車重が軽い方ではなく、また車体構成もオフロード性能というよりは、コンセプトでもあった「ON(日常)を便利にOFF(週末)を楽しく」を追求していたため、本気で道なき道に突っ込んでいくような突き詰めたオフロード性能よりもむしろデイリーユースを重視したバイクであった。
 代わりにオンロードではすこぶる扱いやすく、安定していて、またアスファルト上でのコーナリング性能も大変に高かった。こういった性格に、一部オフロード愛好家たちからは「あれは正確にはオフ車とは言えないんじゃないか」などとささやかれたりもしたようだが、しかし筆者はこの先代CRFの設定はとても現実的だと思っていたし、広く受け入れられ堅調なセールスを記録。個人的にもけっこう好きだった。というのも、ナンバー付オフ車で実際に走る路面の9割はアスファルトのハズであり、一般的なユーザーは本格オフロードアタックをする機会よりもツーリングすることの方がよっぽど多いはずだからだ。
 
 しかし軽量であることはオフロード性能向上だけでなく、全てにおいて有利に働くこと。今回のモデルチェンジでは軽量化が重視され、結果としてオフロード性能も含めトータルでの性能引き上げを目指している。
 

 

 

完全にオフ車になった!

 試乗会に先立って事前のオンライン開発者インタビューがあったのだが、そこで繰り返し開発者が言っていたことは「軽量化の恩恵」だった。オフ性能向上は国内だけでなく世界中から要望が出ていたそうで、確かにその分野は追求したものの、そうなるとこれまでの高いオンロード性能は犠牲になってしまっているのではないか? と思ってしまいそうなもの。しかし「軽量化は全ての方面に良い方に働いています。オンロード性能も決して犠牲になっていないのでご安心を!」とのことだった。
 
 楽しみに試乗会に臨んだが、残念ながら冷たい雨。個人的に気にしていたオンロード性能をしっかりと試す環境ではなかったが、逆に用意されたオフロードを満喫するにはベストコンディション(?)とも言えた。
 新型のCRF250Lは見た目にも何だかコンパクトになったようだ。スタンダードモデルはこれまでのローダウンモデルの車高で、逆に足が長くシートが高い方が「S」モデルという位置づけ。試乗車はこの車高の高い「S」の方だったが、それでも全体的にコンパクトに感じられた。実際に車体はスリムになりLEDヘッドライトの採用でフロントも薄くなっているのだが、跨った時の「小さくなったな」感は数値以上だ。
 
 走り出すと軽さにもすぐに気づく。約6Kgの軽量化というが、実際の重量減に加えてマスの集中や前後の重量配分の変化も効いているのだろう、ヌタヌタのオフロード路面を走ると先代のフロント周りの重さは全く感じられなく、外車のコンペモデルも頭をかすめるようなワンランク上のオフロード性能をすぐに感じられた。またシートの低さや接しやすさという面ではかつてのSL230やXR250も連想させてくれた。特に粘土質のツルツル路面は先代が苦手としていたシチュエーションと言えるが、新型では臆することなく楽しめたのが嬉しい。オフロード好きとしてはタマラナイ今回のシチュエーション、要するに一般的なライダーからしてみれば地獄のようなバッドコンディションの中でも怖くなく、むしろ楽しめてしまうこの進化。これは本当に素晴らしかった。
 

 

 

総合的なアプローチで

 オフロード性能向上といっても簡単なことではないと思う。軽くしたからって途端に良くなるわけでもなかろう。実際、ヌチャヌチャの路面ではしゃいでいるうちに軽量化以外の進化した要素に気付かされた。
 もちろん一番は軽量化にまつわることではある。車体全ての軽量化に加え、ハンドルが段違いに軽くなっている。サスセッティングによるところやボトムブリッジの730gもの軽量化、そしてフロントフェンダーの軽量化。加えてヘッドライトやウインカーといった、フロントフォークと共に動く保安部品の軽量化もハンドリングの軽快さに効いているはずだし、これらの変更の結果として車体の重心位置もだいぶ変わっているはずだ。
 
 軽量化の他に、ライディングポジションの自由度も大きいと感じる。車体がスリムになり様々なライディングポジションを取りやすいということもあるし、いざという時に足を地面に着きやすく、リカバリーも容易になっていると感じる。リアサスのリンクレシオ変更もこの路面へのアクセスのしやすさに効いていることだろう。
 
 そしてエンジンである。インテークカムの変更、吸排気系の変更によりトルクフルな設定に改められているのももちろんだが、最も効いているのはギアのローレシオ化ではないだろうか。1~5速をローギアード化したおかげで瞬間的なパワーが必要な場面の多いオフロードが楽になっていると感じたのだ。体勢を維持したりリアをスライドさせたりするために、意志としっかりとリンクしたトラクション感が必要なオフロード。アクセルを開けた感じやクラッチを繋いだ感じが瞬時に駆動力となってくれる感覚は先代にはなかったフィーリングで、ここでもまたオフロード性能向上になっていると感じ、改めて軽量化だけでは成し得ない総合的なアプローチで今回のオフロード性能向上を追求していると実感した。
 なお、ギアレシオの変更はオフロードだけでなくオンロードでも速度のノリが良く感じ、エンジンのトルク感をうまく使える設定に改められていると感じた部分。今回のモデルチェンジにおいて軽量化の次に肝となっている部分だと思う。
 

 

 

ウェットだがロードも走る

 先代はフロント周りにしっかりとした安定感があり、特にオンロードの峠道などでは素晴らしいペースが可能なバイクだった。しかし新型ではフロント周りのドッシリ感のようなものはなくなり、オフ車的軽快さに代わられている。これはフルウェット路面においてはむしろ良い方に働き余裕をも感じさせる一方で、ドライ路面になったらどうだろうな? という気持ちも少し持った。
 というのも、リアサスの動きもオフ車的になっており、あまり荷重のかけられないこのコンディションでもかなりソフトな印象だったからだ。ドライ路面でしっかりブレーキを使ってしっかりバンクしていくような状況になった場合、「オンロード性能は全く犠牲になっていません」と言われたものの、少なくともそのオンロード性能の「質」は先代とはちょっと違いそうだな、という印象。先代がロードモデル的にグイグイ走っていたあの感じよりは、もっとソフトでオフ車的になることだろう。改めてドライでの試乗が楽しみである。
 

 

 

スタンダード(STD)とS

 オフロード車は軽くて、パンチがあり、燃費がよい、維持費が安いなどの理由から、実際のオフロード走行目的意外に便利な「アシ」として重宝している層もいる。こういう層にとっても更なる軽量化やストリートで活きるトルクフルさ、ギアのショートレシオ化は歓迎する所だろう。また、スタンダードモデルがこれまでのローダウンモデルに相当するため、足着きも有利になった。加えて車体のスリム化や初期沈み込みが大きくなったと感じられるサスペンションのおかげで、Sタイプでも足着きはかなり改善したと言え、ストリートユーザーに重宝されるだろう。なお今回の試乗はSタイプだけでSTDモデルは跨っただけだが、STDはさらに路面が近くかつてのSL230やセローといったモデルを連想させてくれた。日々の使用でもハードルが低いだろうし、オフロード初心者にとっても怖がらずに初めての不整地にチャレンジできる設定だと思う。
 日々の使用でも今回の軽量化はとても活きるはずだ。ハンドルの軽さや車体の反応の軽さは何気ないUターンでも感じられ、自在感が高まっているし、ショートレシオのギアは繋がりがよく信号からの加速は大変に小気味よい。
 
 さらに荷物を積みやすいフラットなシートや標準装備のヘルメットホルダーなど、日常領域でオフ車を使う人にとって大切な装備は変わらず備わっている。もう一つとても使いやすいと思ったのはスタンド。スタンドを出す時に靴にひっかけやすくて、一部オフ車のように長いスタンドがなかなか出しにくいということが全くなくスパッと出しやすく、またしまう時の節度もとても良かった。
 
 もう一つ今回追加された安心項目はABS。オフロード車でABSは不要じゃないかと思う気持ちもわかるし筆者も気持ち半分はその通りにも思っているが、今回粘土質のオフロード路面で実はABSがとても良い働きをしてくれていたし、もう少し状況が好転して積極的なオフロード走行をするならリアのABSのみオフにすることもできる。オンロード路面においてこの軽量な車体を減速させるのにABSが介入する程のことは珍しいだろうが、ツーリングライダーや、雨天時も通勤に使うようなライダーにとってはあって安心の装備だろう。
 
 だた、通勤通学やバイク便など実務的に使う層にとっては、おおよそ10万円のプライスアップはちょっと厳しいかもしれない。先述した扱いやすさや維持費の安さに加えて、オフ車の魅力の一つはそもそもの車体の手頃さもあったはずだ。趣味的な視点から見た場合、今回の進化は素晴らしいものであり、事前インタビューで「値上げ分に対してきっと満足してもらえるモデルチェンジになっていると思います!」という力強い言葉に納得する自分はいる。しかしそれは趣味領域で見た場合であり、実用領域の層からすると「オフ車も高くなっちゃったなぁ」という気持ちも、もしかしたらあるかもしれない。しかしついにファイナルエディションとなった空冷2バルブのセローも約59万円とほぼ同じプライス。CRFはむしろ今までが安すぎたということか。
 

左が250Lのスタンダードで、右がS。見た目で分かるシート髙の違いだ。

 

ラリーはどこまでも無給油で!

 カウルが付いたツーリング版と言える「RALLY」も同時にモデルチェンジを果たしている。車体の基本的な部分はLと同様の進化であるが、ラリーはより長距離を走る前提のため先代RALLYよりも2.7Lも容量を増やした12.8Lのタンクを備え圧倒的な航続距離を誇る。またシートは幅が広くクッションも厚いだけでなく、車体と接する部分にラバーマットを挟み込むなどライダーに振動を伝えない工夫がなされている。同様にステップにもラバーを、ハンドルバーエンドにはウェイトを入れるなどツーリング仕様として細部までぬかりがない。
 こっちこそドライ路面で長距離を走らなければその真価はお伝え出来ないモデルのため今回はあくまで味見程度。ホンダがダカールラリーで2連覇&ワンツーフィニッシュを飾ったことを祝してオフロード路面で走らせてみた。
 ただ、やはりLに対してはかなり重量があり、フロント周りに重さを感じる設定。エンジン横のカウルも張りだしているためLのようにオフロード場面でバランスを崩した際にとっさに足を出すのもちょっと難しいし、特にスタンディングすると車体の幅を感じてしまう。
 
 カウルが付いていること、タンク容量が増えてその分ガソリンの重さが載っていることなどで、ハンドリングの感覚としては先代のLに近いかもしれない。フロント周りにしっかりとした安定感があるため、オフロードではそれがちょっと重く感じるものの、オンロードでは逆にドシッとした巡航能力に感じられそうである。
 

 

こんな貴方に

 速度域に関わらず操る楽しさを提供してくれるオフ車は、誰にでも薦められるのではないかと思う。あらゆる状況を走破できる能力を持つというのは心強いものであり、何かの時に役立つという面もある。そしてSTDとSが設定されていることで体格も選ばず、万人が楽しめるはずだ。
 そんな中で、Lは今まで「CRFが気になっていたけれどオフロード性能がもう少し欲しい!」と二の足を踏んでいた人にジャストミートだろう。かなり厳しい林道などにチャレンジしたい人も、もしくは初めてのエンデューロレースにも出てみたいな、などというレースエントリー層でもきっと納得できるオフロード性能を有している。軽量な車体を自在に振り回す感じは本当に楽しく、そういった車体とライダーのリンクを楽しみたいという人にはピッタリだ。特に基本的に趣味として乗るのならば、開発者が言ったように10万円の値上げが気にならない確かな進化を感じられ、特にオフロードシーンではその10万円分のプレジャーを必ず感じられると思う。
 
 ツーリングライダーはもちろん、RALLYを選ぶとよいが、RALLYはLがよりコンパクトになったこともあって、けっこう車格が大きく感じるという部分もある。STDバージョンはシート高は高くないしサスの沈み込みも大きいため足着きそのものは気にならないと思うが、それでもなかなか「大きいバイク」と感じるのではないだろうか。キャンプツーリングや日本一周的な使い方が最も適していて、チョイ乗りにも使いたいと思うならLでRALLYの領域もだいぶカバーできてしまいそうな印象がなくもない。が、今回のRALLYの試乗はあくまで味見程度だったため、ちゃんと長距離を走ってから追レポートしたい。ただ勇んで「新型をいの一番に買うぞ!」という人は、少なくとも実車を見てLと跨り比べてみて欲しい。
 
 そして実用シティユーザーだが、この層には先代もまだまだ魅力は多いと思う。新型に比べるとだいぶロード寄りの性格なのだが、シティユースはすなわちオンロードなのだから、それで良いわけだし何よりも10万円安いというのは魅力だろう。さらに、実は新型は発売日は過ぎているものの、今の世界の混乱のせいでまだ国内にほとんど入ってきておらず、実際にはいつ買えるのか今のところはっきりしたことは言えない状況。だからこそ、先代を購入するなら今がチャンス!なのである。
 

 

こんなのあったらいいな

 新型の2台に乗って、本当にこれは良いな、と思った。何よりも根本的な部分が本当に進化しているのが嬉しい。「フルモデルチェンジってこういうことだよな!」と納得させてくれて幸せである。というのも特に大型車については、最近は「電子制御増し増しにしました!どうだ!(値段もバリッと上げました!)」的モデルチェンジが目につくようになり、本当の意味でのモデルチェンジ、本当の意味での機械としての熟成・進化ってなんだろうか、などと考える機会が多くなってきてたからだ。その点、CRFはシンプルなシングルで電子制御もABSのみ、色々ゴマカシがきかない中で、本質的な部分でしっかりと進化しているのである。その結果にももちろん納得したが、その心意気にも敬意を抱いた。
 
 そんな新型CRFを前に、もっとこうならどうだろう、という気持ちもやはり盛り上がるもので、無責任に妄想を書いておこう。

●近いうちに期待:カラーバリエーション
現時点ではスポーティなイメージの赤だけだが、蛍光ピンクに近いシートの色など、アラフォーにとってはちょっと照れ臭い気がしてしまう。以前のCRFのような爽やかなホワイト単色や、シックなブラックやシルバーなど、もう少し洗練された、大人らしいカラーリング展開にも今後期待したい。

●あったら楽しそう:モタード版
これだけ明らかに進化したとなると、かつてラインナップされていたモタードモデルをもう一度ラインナップしても良いんじゃないか、と思った。基本性格がかなりオフ寄りになったからこそ、この軽量さのまま前後17インチで逆にロード向けサスセッティングの「M」が出たら今こそ需要がある気がする。車体の性格はオフ的だが、エンジンのレスポンスやトルク感はモタードとしても十分魅力があるだろうし、オフロードは走らないけれどオフ車の軽さや気軽さ、パンチなどの良さを日常的に楽しみたい層には響くような気がする。

●完全に妄想:300cc版もラインナップして!
これは実現は難しいだろうが、輸出仕様は300ccで、これは大変に興味をそそられる。シングルで50cc違えばまるで違うバイクのハズだ。そろそろ発売されそうなGB350のように、今や排気量の枠はあまり関係ないだろうし、趣味性の高まったCRFならば車検を気にしない層も多そうに思う。250版と同価格で300も出したら、同じぐらい売れるんじゃないか……? なんてことを想像してしまう。

 そんな今後への妄想も膨らむ新型CRF。価格は上がったものの進化は確かなものであり、とても魅力的なバイクである。
(試乗・文:ノア セレン)
 

 

CRF250L<S>のポジション。ライダーの身長は185cm。(以下同様)

 

CRF250Lのポジション。

 

CRF250 RALLY<S>のポジション。

 

CRF250 RALLYのポジション。

 

軽量化を最大限活かしているのがエンジンのアップデート。吸気側のカム変更によりバルブタイミングを見直し、吸排気系、点火時期を最適化することで低中回転域のトルク感が明らかに体感できるレベルで向上している。またこの増強されたトルクを活かしてくれるのが1~5速までショート化されたギアレシオ。軽量化だけではここまでキビキビした性格にはならなかったはずで、エンジン周りの進化は特に評価したい。なお、6速だけは逆にロング化されており燃費確保及び巡航時の快適性を追求しているが、5速とのつながりが悪いなどと感じることは一切なかった。

 

車体全体で6キロほどの軽量化を達成しているが、フロント周りは特にライトやフロントフェンダーの変更も含めてかなり軽くなっている。ハンドリング、操作感に直結する部分だ。なお今回のモデルチェンジでリアのみ任意で解除もできるABSがRALLY共々標準装備されている。
先代のRALLYが採用していた黒いリムとすることで引き締まった印象となったリア周り。リアアクスルを中空とし、またドリブンスプロケットの変更、さらにはスプロケットを留めるボルトまで軽量化している。

 

大きな特長となるLEDライトの採用。CRF450と共通イメージとなり精悍さが増している。先代のハロゲンに対して110gの軽量化とその数値はわずかだが、薄くすることでステムに近づけることができ数値以上のハンドリングの軽さに貢献する。なお海外仕様はハロゲンのままなのは何故? と意地悪な質問をしたら「海外ではシンプルに『ハロゲンで良い』と断られちゃったんですよね」と裏話も聞けた。
ウインカーはフロント同様にLEDを採用し軽量化にも貢献しているが、テールランプは変わらずバルブ式。

 

泥だらけになってもしっかりとグリップしてくれるギザギザのステップが標準。シフトペダルは先端が折れ曲がるタイプでオフロード走行も安心。
リアブレーキのマスターシリンダーはリザーブタンク一体型とすることでコンパクト&軽量化。クラッチはアシストスリッパー機能を備え、操作を軽くすると共に減速側トルクを逃がしてくれる。レバーの操作荷重は20%ほど軽減されているそうだが、特にオフロードにおいて指一本でクラッチを断続的に操作するようなシチュエーションではこの軽さに気付かされ、大変にありがたかった。

 

先代でも、オフ車なのに小物入れがあるのが一つの魅力だったが、新型でも継承。ただいくらか小型化した感もある。車載工具や書類入れに。

 

ハンドル周りはオフ車としてオーソドックスなもの。オンロードを流していてもオフロード路面を積極的に走っても違和感はない。ミラー形状がカッコイイのが気に入ったが、最近のホンダ定番であるホーンとウインカースイッチの位置関係はどうしても慣れない。
使いやすさを重視したメーターは速度表示を大型化すると共に、平均燃費や平均速度などを多機能に表示。70gの軽量化も果たしている。

 

排気系もかなり変更された部分。エキパイはエンジンの性格付けのための変更に加え軽量化も達成。サイレンサー部もインナーボディ、インナーパイプ、テールパイプと細部まで低中回転域トルクを追求して変更すると共に、エキパイと接続する所の径変化をスムーズにすることでピークパワー向上も。目立たないがかなり手の入ったパーツである。もちろんユーロ4対応。
新設計されたフレームはメインチューブの幅がスリムになり、ダウンチューブもかなりスリム化。横剛性は25%減らされ、同時に2150g軽量化された。またフォークを保持するボトムブリッヂはアルミ鍛造品となり730g軽量化。フロント周りの軽量化は今回のモデルチェンジで最も体験できるところだろう。

 

スイングアームはピボット付近の幅を狭く設定することでオンでもオフでも快適な乗り心地を追求。550gの軽量化も果たしている。リアサスのリンクレシオも変更され、従来のLとRALLYの中間ぐらいのイメージ。作動性はかなり柔らかく、跨った時の沈み込みは大きい設定。

 
 

鮮やかな赤のシートは、STDタイプでかつてのLDタイプと同じ830mm。SタイプではかつてのSTDタイプよりも5mm高い880mmに設定される。ただサスの初期沈み込みが大きいことと、メインフレームのスリム化によって足がまっすぐ下ろしやすくなったことなどから、例えSタイプでも足着きは良好といえる。また車体のスリム化はスタンディングする時のフィット感も高めてくれているようだ。タンデムシートからテールカウルにフラットにつながる面には荷物を固定するためのフックが備わり、ヘルメットホルダーも標準装備して日常ユースに応える。またマフラーのヒートガードも充実しており、タンデムの快適性も追及しているのが伺える。

 

7.8L容量を確保するタンクも軽量化した部分。タンク左右につくシュラウドはコンペモデルのイメージが強く、モダンなグラフィックでCRFファミリーをアピールする。フレームのスリム化やフロント周りの軽量化も影響してか、タンク・シートとライダーの密着度、フィット感が高まっている印象がある。
足着きを確保しながら285mmへと最低地上高を10mmアップできた一つの要素は、クランクケースとドレンボルトの位置変更だ。そんな大掛かりなことをしてはコストに響くのでは? と聞くと、実は同系列エンジンを搭載するレブルが開発されるタイミングで、あらかじめこの変更をしておいてくれ、とお願いしてあったという。協力しながら効率の良い開発をしていることが知れて嬉しかった。なおこの最低地上高確保のためにはフレーム形状も変更されている。

 

LEDのヘッドライトはロービームで上側2灯が点灯し、ハイビーム時にはこれに加え下の1灯が点く。LEDヘッドライトの明るさ、もしくはいかに明るく「感じられる」かが一部モデルでは課題になっていると感じるが、今回の新設計ライトは従来モデルよりもさらに配光面積を広く取り、十分な明るさを確保しているとのこと。夜間走行が楽しみである。

 

●CRF250 RALLY

先代から引き継いだコンセプト「アドベンチャーツーリングモデル」として、ツーリング性能をさらに向上させたRALLY。車体の軽量化などはLと同様とし、やはりL同様STDとSタイプを設定する。
RALLYではステップにゴムが備わり、ライダーに振動を伝えない配慮が。取り外しも可能

 

先代よりも2L増量させ、なんと12.8Lものタンク容量を確保し航続性能を向上。ヘッドライトへと繋がるシュラウドはダカールラリーで活躍する450RALLYのイメージだ。タンク容量が増えていることで幅も広く、その分かなり大柄に感じる。またシュラウド/カウルがエンジンをカバーするところまで伸びているためスタンディングしたり、オフロードでとっさに足を出した場合などにもそのサイズ感には気付かされる。
Lよりも幅広でかつクッションも増やされて長距離での快適性を追求。着座位置の幅はLが170mmなのに対して、RALLYは190mmとなっている。さらにはシートとフレームが接する部分にラバーを挟み込んで振動を伝えない工夫も。

 

車体の進化はLと同様で、軽量化された新スイングアームや中空アクスルシャフトを採用。
エンジン部まで覆うカウルは、車体をガードしてくれる他足元への風当たりを和らげてくれる印象も。堂々としたRALLYルックスにも貢献。

 

よりリラックスできるポジションに設定されたハンドルはバーエンドにウェイトを入れて振動軽減を追求。RALLYでは純正でナックルガードも装備する。メーターはLと共通。任意でリアのABSを解除できるボタンも同様にメーター右側に備える。メーター上にはナビやスマホホルダーなどを装着できる便利なバーが。

 

先代から引き継ぐ異径LEDヘッドライトを備えるフロントカウルは特に高速道路を含めた場合の長距離ツーリングの強い味方。
ダカールレーサーイメージの大きなカウルによりツーリング性能を追求したRALLYにも、STDモデルと、オフロード性能を追求しより車高を高く設定したSタイプを展開。ツーリングユースを想定した各種アクセサリーも充実している。

 

●CRF250L〈S〉 主要諸元
■型式:2BK-MD47 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:76.0×55.0mm ■圧縮比:10.7■最高出力:18kw(24PS)/9,000rpm ■最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,210×820×1,200mm〈2,230×820×1,200mm〉 ■ホイールベース:1,440mm〈1,455mm〉 ■最低地上高:245mm〈285mm〉 ■シート高:830mm〈880mm〉 ■車両重量:140kg ■燃料タンク容量:7.8L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):80/100-21 M/C 51P・120/80-18M/C 62P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク(ABS)/油圧式ディスク(ABS リアキャンセル機能付き) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式(倒立タイプ)・スイングアーム式(プロリンク)■フレーム:セミダブルクレードル ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):599,500円〈599,500円〉

 

●CRF250 RALLY〈S〉 主要諸元
■型式:2BK-MD47 ■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ ■総排気量:249cm3 ■ボア×ストローク:76.0×55.0mm ■圧縮比:10.7■最高出力:18kw(24PS)/9,000rpm ■最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/6,500rpm ■全長×全幅×全高:2,200×920×1,355mm〈2,230×920×1,415mm〉 ■ホイールベース:1,435mm〈1,455mm〉 ■最低地上高:220mm〈275mm〉 ■シート高:830mm〈885mm〉 ■車両重量:152kg ■燃料タンク容量:12L ■変速機形式:常時噛合式6段リターン ■タイヤ(前・後):80/100-21M/C 51P・120/80-18M/C 62P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク(ABS)/油圧式ディスク(ABS リアキャンセル機能付き) ■懸架方式(前・後):テレスコピック式(倒立タイプ)・スイングアーム式(プロリンク)■フレーム:セミダブルクレードル ■メーカー希望小売価格(消費税10%込み):741,400円〈741,400円〉


| 『待望の「オフロード性能強化!」新型CRF250シリーズ、の記事はコチラ』 |


| 2017年型CRF250Lの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |


| 2017年型CRF250RALLYの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |


| 2014年型CRF250L / Mの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |


| 2012年型『通勤快速CRF250L日記 Part1」はコチラ(旧PCサイトに移動します) |


| 2012年型『通勤快速CRF250L日記 Part2」はコチラ(旧PCサイトに移動します) |


| 2012年型CRF250Lの試乗インプレッション記事はコチラ(旧PCサイトに移動します) |

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2021/01/20掲載