2020年、東京都の交通死亡事故が増えている。前年比で22人増(12月27日現在)で、ワーストを続ける愛知県と不名誉な記録を争う。【※表1】新型コロナ感染拡大で移動が減少する中で、死亡事故が増えることは問題だが、さらにライダーにとって、ショッキングな出来事がある。それがライダーの飲酒による死亡事故だ。
東京都交通部が警告する。
「バイク(原付及び自動二輪)の事故件数は減少したものの、死亡事故は増加しています」
東京都内の飲酒による死亡事故は全体で5件5人(11月末日までの集計)だった。この5人のうち3人はライダーの飲酒による事故だ。2019年、バイク飲酒事故による死者はなかった。
これだけ見ても、2020年のバイク飲酒事故は、かなり深刻だが、過去7年間の推移をみると3人と軽視できないことが顕著にわかる。飲酒運転による事故とその死亡事故件数の推移を下記に示した。事故数も死亡事故数も7年間減少し続けている。その中でライダーの飲酒死亡事故が増えているのだ。【表2】
交通部担当者は言う。
「原付と自動二輪の飲酒事故件数は20件。しかし、飲酒死亡事故は3件、発生しております」
ふらつけば転倒するバイクだから、多くのライダーは飲酒運転することは四輪車以上に危険性が高いと思っているはずだ。それは数字も裏付けるが、その危険度は突出している。改めて見てほしい。
上記の指摘でライダーの飲酒事故を単純計算すると、事故を起こしたライダーの15%が死に至った。四輪車の飲酒事故は112件、死亡事故は2件。死亡率は1.7%だ。【表3】
これらはすべて第一当事者の数を集計したものだ。飲酒運転で他者に被害を及ぼした件数は含まれていない。飲酒運転の防止では、他人への危害が問題として取り上げられることが多いが、ライダーの飲酒運転の危険性はその以前の問題。自分自身の死に直結する自傷行為である。
警視庁交通部は訴える。
「飲酒運転は重大事故に直結する非常に危険な行為で、重大な犯罪です。飲酒運転によって大切な命が犠牲になっています。一人ひとりが『飲んだら乗らない』を徹底してください」
飲酒運転についうっかり、という過失はない。防ぐのは簡単だ。運転しないというたった1つの決断だけだ。
(取材・文:中島みなみ)