「3ない運動」が唱えられてから久しい時が流れ、その間の二輪車の普及は一時のバイクブームが落着いても、バイクの持つ魅力と、その裏にある危険性はいつまで経っても変わらない。いつも言われる事は、危険な乗り物は追放すべきといった対局にある「臭い物にはフタ」的な意見だ。しかし、世の中には表裏が存在するものばかりで、その魅力や有用性を発展的に利用している物が多くあるおかげで人は豊かな生活を営む事ができている。
今回開催された「高校生の自動二輪車等の交通安全講習会」は埼玉県教育委員会が従前の方向性を転換し、自動二輪車等の免許取得者に対する交通安全講習の実施など、安全確保対策に万全を期すことが記された指導要綱を実践するイベントとして、各方面の協力を得て実現した。
生徒を募集した埼玉県西部地区の高等学校から60名程の申込みがあったが、当日は各学校で指名された生徒39名が「東武かすみ自動車教習所」に集まった。参加者は自前のバイクで来校、一部の参加者は公共交通機関での参加だった。内訳は1年生が1名、2年生がもっとも多く30名、3年生が6名、定時制が2名という参加だった。
早朝8時40分の受付けを済ませた後、教習所校舎前に集まり主催者代表の挨拶を受け、当日の実技指導員である交通機動隊員と一緒に、身体をほぐすための体操を行なった後、実技の実践方法や安全運転に関わる知識や諸注意事項の説明を受けた。
開講式が終了すると生徒達は、自動車教習所内に当日設けられた様々な二輪車安全運転の為の技術習得コースを歩いて回り、それらのセクションで白バイ隊員によって披露される模範走行と、指導員の説明を聞いていた。普段からバイクに乗り慣れたような生徒の中には内心「たいした事はないな」と思った生徒もいただろうが、上手くできるか自信なさそうな表情を浮かべていた生徒の多くは女子ばかりではなかった。
実走訓練ではパイロンスラローム、一本橋走行、傾斜路スラローム、急制動、規制路走行など実際に公道上に出て運転する場合に役立つ技術を指導員のもと行なわれ、初期段階では上手く運転出来なかった生徒も回数を重ねる毎に慣れてきて、多くの生徒が終盤にはセクションをクリアできるようになっていた。
実技訓練が終ると休憩を挟んで校舎内の教室で座学講習と救急救命法の講習が行なわれた。講習内容には重要な交通ルールやバイクの運転特性などが講義されたが、短い講習時間内では必要最小限な事柄に成らざるをえなかっただろう。中でも大事なことは運転する者の意識(心)だという事が強調され、受講者の意識にも十分刻まれただろう。
救急救命法の講習でも万が一の事故への対処方法が説明され、怪我人への具体的な対処方法やAEDの実際の使用方法などが披露された。心臓マッサージやAEDなどは実際に体験学習がされた。
すべてのプログラムを終えた参加者達は再び炎天下の校舎前に集合し、本日行なわれた安全運転講習の目的と結果のおさらいをし、実践した内容の反省で講習会が締めくくられた。
参加した高校生は学校からの指名によって当日の参加者となったのだけれど、講習を終了して得た知識や技術は役に立ちそうだと実感が持てたという生徒は多かった。なによりも自分達が二輪免許を取った理由は二輪車を楽しむ為なので、受講の成果を活かした二輪生活を楽しみたいと元気に教習所を後にしていった。