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試乗・解説

単純明快・シンプル&快活 アフリカツイン「らしさ」をMTに見た!
リッタークラスのパラツインとなって復活したアフリカツインは人気車種となりファンを獲得。その後1100ccへとモデルチェンジしさらに魅力を増した。しかし目にするインプレの多くは日々進化を続けるDCT機構を搭載したモデルのもの。改めてMT仕様の、素のアフリカツインに乗ってみる。
■試乗・文:ノア セレン ■撮影:鈴木広一郎 ■協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/motor/

 

1100化は大きな進化

 アドベンチャー系モデルが外国車を中心に盛り上がりを見せたことで、各社から様々なモデルがリリースされてきた。その中でパラツインとなって復活を遂げたアフリカツインはそのネーミングの歴史から「オフロード性能の確保」もしくは「オフロードらしさ」のようなものを背負わされており、よってフロントには21インチホイール、前後にスポーク、そして他車よりもオフロード走行を意識した構成をして登場した。
 このこともありアフリカツインの復活は大歓迎されたものの、海外勢のアドベンチャーモデルが驚くようなハイパワーをもって超高速・超長距離移動をこなす新世代アドベンチャーモデルになっていたのに対して、アフリカツインはビッグオフ的要素が強めで、少なくともオンロードシーンにおいてはどちらかと言えば優等生的な、おとなしい性格ともいえる面があった。
 ところが1100へのモデルチェンジではその性格にピリッとスパイスが加わったように思う。エンジンは数値が示す以上にパワフルに感じられ、アクセルレスポンスも打てば響く、エキサイティングなものに変わり、走り出してすぐに「速いな!」と感じられるようになった。
 また車体も先代は21インチのフロントタイヤを意識する場面が多く、乗っていても「オフ車感」が高めだったのに対し、新型は言われなければ19インチに感じられるほど、ハンドリングもキビキビしたものになったように思う。ルックスはキープコンセプトだが、乗り味は海外アドベンチャー勢も意識した、「容赦のない高性能」を感じられるように大きく進化している。
 

マニュアルと進化したDCT

 アフリカツインが海外アドベンチャー勢と違った魅力を提供しているのは、DCTモデルの設定も一つだろう。大きなアドベンチャーモデルをクラッチ操作なしで走らせられるというのは違った価値観を提供しており、それは数あるアドベンチャーモデルの中でもホンダの個性を表す要素としてアピールされている。
 特に新型ではさらにそのDCTが熟成され、ツーリングシーンはもちろん、オフロードでさえもダイレクト感のある走りとスムーズでライダーの意思とのシンクロ率の高い変速をしてくれるようになっており、この機構を絶賛する記事もたくさん出回っている。
 筆者もこのDCTモデルにまず試乗したが、確かにDCTは進化しており今まで以上に違和感なく付き合え、また使いこなせるようになると、新たな操作感というか、既存の走り方とは違ったフレッシュな楽しみも確かにあった。
 ただ、である。先述したように、新型ではエンジンレスポンスがワクワクするようなスタッカートの効いたものになり、パワーも増大し、軽量化の恩恵かハンドリングもシャープに変化したことを考えると、イメージとしてはこれまでの「大排気量で、オフロードも意識したツアラー」といったものからもっとスポーティな、いやまさに、スポーツバイクとして振り回して遊びたい! と思わせるモデルチェンジをしているのだ。そうなると便利で次世代的なDCTも良いが、スポーツバイクとして最大限楽しむためにはMT仕様がさらに楽しめてしまうんじゃないか、という気持ちが湧いて今回の試乗となったのだ。
 

 

無意識に走り出す

 いざMT車で乗り出そう。同時に試乗した電子制御サスとDCT、ビッグタンクを備える上級モデル「アフリカツインアドベンチャースポーツES」に対してスタンダードなMT車は20キロ以上軽量であり、そのおかげと、またショートスクリーンによる視覚的な効果も含めて跨っただけで軽く、コンパクトに感じられる。
 エンジンをかけて、クラッチを握って1速に入れるという所作はライダーなら誰でも無意識にできるだろう。慣れ親しんだ操作で走り出せることで、この巨体ながら始めから自信が持てる。
 軽いクラッチを繋ぐとパワフルながら神経質さが皆無なエンジンは反応よく加速してくれ大変に気持ちが良い。先代に比べるとファイナルがショートになったかのような瞬発力がすぐに感じられた。MT仕様は特に右手と後輪がしっかりリンクしているようなダイレクト感がやはり気持ちが良く、豊かな常用回転域トルクを使って流すのも、アクセルをワイドオープンするのもライダーの意志のまま。ライダーの「こうしたい」「このような反応をして欲しい」という意思を、いつもちゃんと後輪に伝えられる気持ちよさは、スポーツバイクをスポーティに走らせる上でやはり爽快であり、その爽快さはDCTモデル以上と感じる。
 

そしてちゃんと速い

 速さそのものはミッションの形式に関わらず同じなのだろうが、このスタンダードなMT仕様は車体の軽さやタンクの小ささからくるコンパクトな乗車姿勢、また短めのスクリーンのおかげもあってか、ダイレクト感のある速さが印象的だ。
 ダイレクト感をもっとも感じられるのはやはりワインディングシーンだろう。ツアラーではなくスポーツバイクとして、MT仕様はライダーとバイクのリンクが強く、より密な関係性を築けその運動性能を満喫することに夢中になってしまう。低回転域から強いトルクがある一方で低いギアでレッド領域まで回し切っても神経質になることなく、ただただ優秀にすっ飛んでいける。このパラツインエンジンでスポーツバイクを作ればいいのに、などと言ったこともあったが、新型のMT車はまさにスポーツバイクだ。それでいて21インチのフロントタイヤがもたらす寛容さはやはりオフ車的、アドベンチャー的であり、荒れた路面でも怖さが顔を出すことなく常にスポーティさを感じていられる。オフ車が実は峠道で速いのは誰でも知っていることだが、大きな100馬力越えのオフ車もやはり速く、かつ思いのままの回転数を思い通り・無意識に操作し使えるMT仕様では、こういった場面では特にDCTよりも楽しめると感じた。
 一方で高速道路のように淡々と走る場面ではDCTに分があるかと思ったが、実際はMT仕様でも何か特別不便があると感じることはなかった。6速に入れて淡々と走るのに何もストレスはなく、また追い越し加速でシフトダウンが必要な際もとてもスムーズなミッションはほとんどクラッチを握らなくてもスルリと変速が可能。オプションのクイックシフターを装着すればクラッチ操作を全く行わずとも変速できるが、ホンダらしい精度の高いミッションを知るとクイックシフターは不要じゃないかとすら思う。ただ、「アドベンチャースポーツES DCT」と共に距離を走っているとやはりショートスクリーンによる風圧の違いは感じるところ。またコレだけ快適に移動できるとなると、屈強なライダーならば18リッターのタンクも物足りなく感じるかもしれない。同じMT仕様でもビッグタンク/ロングスクリーン、そして電子制御サス搭載のMT版「アドベンチャースポーツES」仕様があるため、長距離を駆け抜けるライダーはコチラの方が良いかもしれない。もっとも、タンクやスクリーンが大きくなるとスタンダードなMTのスパイシーなスポーツ感は若干薄れてしまうだろうからジレンマではあるが……。
 

 

サスも「マニュアル」

 比較試乗した「アドベンチャースポーツEC DCT」とのもう一つの違いは、電子制御サスの有無であった。電子制御サスもDCT同様に日々進化を重ねており、よりライダーの意志通り、もしくは違和感なく適切な作動を提供するようになってきている。実際に高速道路では、船に乗ったかのよう、もしくは宙から吊られているかのような快適性があった。
 しかし一方で、ワインディング路でライダーが積極的な入力をし始めると、今回のMT試乗車が備えるスタンダードなサスペンションの魅力も見える。常に適切な減衰力を提供しようと高度な計算を繰り返してくれているコンピューターの介在が「ない」ことが、スポーツマインドが高く走っている時はむしろ楽しさにリンクするような面もあるのだ。1の入力に対して必ず1が返ってくる感覚。間違った入力に対してはちゃんと間違った反応が返ってきてしまうという意味では電子制御サスに対してマニュアルサスは不寛容かもしれないが、そういった部分もまた、スポーティに走らせる中では逆に魅力にもなり得る。
 走り込むうちに「超優秀な技術が常に適切な判断をしてくれ、かつその適切な判断を押しつけがましくなくさりげなくライダーに提供する」という意味でDCTも電子制御サスも共通する部分があるように感じてきた。反対に言えば素のMT仕様はライダー任せの部分が多く残されており、だからこそ楽しい、オールドスクール的な魅力があると感じたのだ。
 

どう使うか、で選びたいMT・DCT、そして各タイプ

 MT仕様のインプレのハズだったが、ミッションだけでなくサスペンション・タンク容量・スクリーンの高さ・重量など様々な要素が絡み合っているため、MTとDCTの印象の違いを変速方式のみに絞り込んで話すのは大変に難しいことに気付いた。ただ新型アフリカツインはなんと6機種、さらにロングサスペンション仕様で追加4機種も展開されているため、使い方に合わせてよくよく検討することができる機種である。
 今回試乗した素のMT仕様はこの10機種ものラインナップの中で最もスタンダードなもの。よって軽く、シンプルで、新型アフリカツインのマシンとしての魅力の中枢に最も簡単にアクセスできる仕様と言えるだろう。筆者のようにスポーツマインドの高い人には是非とも薦めたい。
 一方でマシンとしての魅力に加えて最新電子制御技術による快適性や安心感もまた魅力であり、例えば重積載で高速道路を延々と走るとなると、電子制御サスの恩恵はとても高いだろうし、DCTが活きる場面もあるかもしれない。それぞれのライダーがどのようにこのバイクを使うかを良く吟味して選んでほしいと思う。
 ただ、2台を乗り比べて一つだけ筆者が心配に思ったことは、素のMT車のあまりの良さを満喫した後に「アドベンチャースポーツES DCT」に乗り換えると、乗り物としての優秀さに舌を巻く一方、アフリカツインがもつ「らしさ」や、「魅力の核の部分」には逆にちょっと霞がかかってしまっている気もしたのである。
 今回の素のMT車試乗を通じて、各種電子制御の凄さに気を取られることなく、本当の意味で「アフリカツインってすごいバイクだなぁ!」と実感できたように思うのだ。だから最後に声をあげたい。「アフリカツインはDCTなどの電子的な制御も凄いけれど、そうじゃなくてそもそもバイクとして凄く良いんだ!」と。
(試乗・文:ノア セレン)
 

大柄に見えるが、シート高はこのスタンダードモデルで830mm、さらにローポジションを選択すれば810mmとなり、スリムな形状と車体にも助けられ足着きは比較的良いといえる。スタンダードではタンデムグリップを兼ねるキャリアが省略されているためシートにタンデムベルトが付く。
24Lのビッグタンクを備える「アドベンチャースポーツ」に対して、このスタンダードの方は18Lタンク。WMTCモードで21.3km/Lの燃費のため、常識的なツーリングには十分だろう。ポジション的にはタンクのスリムさがまた自信につながる部分。燃料はありがたいレギュラー仕様。

 

21インチの前輪は前モデルから引き継ぐ、アフリカツインのアイデンティティ。ただこの新型になってよりダイレクトな、オンロードテイストなハンドリングになったと感じる。アドベンチャースポーツモデルはスポークながらチューブレスリムを採用している一方で、こちらはチューブタイプだ。
短めのウインドスクリーンは高速道路を含めて常識的な速度域で十分な防風性を発揮。睨みつけるようなヘッドライトはとても被視認性が高いようで、先行車もすぐに気が付いてくれる。スタンダードモデルではバンク中に内側を補助的に照らすコーナリングライトは省略されている。

 

先代よりも小型・低重心化され排気バルブも備えるマフラーはなかなかハスキーな音を奏でるが、上質で心地よい類。リア周りは先代から引き継ぐ18インチのもので、こちらもタイヤはチューブタイプ。スイングアームは軽量化され、サスの配置も変えるなど実は細かな変更点も多い。
1082ccとなったOHCパラツインエンジンは様々な変更を受けてこのスタンダードモデルで2.5kgもの軽量化を達成。先代よりもよりスタッカートの効いた味付けとなっており、直感的に「速くなったな!」と実感できる味付けに変更。MTのエンジン右側はDCT機構がないためシンプルだ。

 

ツアー・アーバン・グラベル・オフロードに加え、2つのユーザーモードを備えるライディングモード。どのモードが一番力強いのか、どのモードでオフロードを走れば良いのかが直感的にわかりづらいのが難点に感じた。尚、どのモードでも新型エンジンは十分に力強い。
スマホと連携させることでナビを表示させたり、インカムとも連動させることで電話を受けたりといった近代的なハイテクも装備。メイン画面をそういったことに使っても、下のサブ画面で速度など最低限の情報は表示される。尚、キーはスマートキーではなく通常のカギで使いやすかった。

 

所狭しと様々なボタン類が並ぶ左のスイッチボックスの操作は困難を極め、特に冬用のグローブでは基本的な操作すら満足にできなかった。ホーンとウインカーのスイッチが上下逆である近年のホンダスタイルもそもそも使いにくいが、それにしても丸一日乗ったがまるで慣れず、これは要改善に思う。右はシンプルで◎。クルーズコントロールも使いやすい。

 

■CRF1100L Africa Twin 主要諸元
全長×全幅×全高:2,310×960×1,355mm、ホールベース:1,560mm、最低地上高:210mm、シート高:830mm、車両重量:226kg、燃料消費率32.0km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、21.3km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)、エンジン:水冷4ストローク直列2気筒SOHC(ユニカム)4バルブ、総排気量:1,082cm3、最高出力75kW(102PS)/7,500rpm、105N・m(10.7kgf・m)/6,250rpm、燃料タンク容量:18L、タイヤサイズ:前90/90-21M/C 54H、後150/70R18M/C 70H。メーカー希望小売価格:1,617,000円~。

 



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2020/05/25掲載