東京タワーが完成、ミスタージャイアンツが4打席4三振デビュー……
スーパーカブといえば、一部の熱狂的なマニアさんたちを除けば、これはもうお仕事のアシだ。今でこそ少なくなったけれど、かつては日本中にソバ屋さんの、新聞配達の、郵便屋さんの、そしてお巡りさんのアシとしてスーパーカブがあった。
初代スーパーカブは、1958年誕生。1958年って、昭和でいえば33年。東京タワーが完成、1万円札が誕生し、ミスタージャイアンツが4打席4三振デビューを飾った記念すべき年。故・石原裕次郎さんが映画デビューを果たした数年後のことで、東京→大阪間は特急「こだま」で6時間50分かかった、とある。新幹線開業は、あと6年もあとのことだ。
もちろん、今みたいに各家庭にクルマがあるような時代じゃない。私はまだ生まれてはいないけれど、昭和33年と言えば、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」とドンピシャ。東京にだって未舗装路がたくさんあって、日本の主要道路の舗装率は10%にも満たないころ。庶民の足も、ソバ屋の配達も、新聞の宅配も自転車だった。または、徒歩だね。
そこに、スーパーカブは誕生したのだ。「蕎麦屋の小僧さんが出前で乗るために片手で運転できる」バイク(本田宗一郎さんが言っていた言葉とされる)、誰にでも使えて、女性も乗りたくなるバイク、静かでクリーン、混合給油の手間がなく、好燃費であるバイク――それが国民の足としてのスーパーカブのすべてだった。
あれから60余年。スーパーカブは働く人たちのアシだけでなく、遊びの相棒になり、若者のオシャレなコミューターにも、マニアさんたちのハードコアツーリングバイクにもなった。時代の締め付けがスーパーカブにも及んで、排出ガス規制や騒音規制にも対応せざるを得なくなってしまったけれど、スーパーカブはインジェクションモデルとなり、生産をタイや中国に移してまでも生産は続けられた。今では再び、国内生産に戻っているけどね。
スーパーカブは、ハンターカブ、プレスカブ、郵政カブ、リトルカブ、クロスカブという派生モデルを生み出し、そしてついに全面刷新! それがスーパーカブ110が誕生した2009年で、2018年にはついに125ccバージョンも誕生。それが「次世代カブ」ことスーパーカブC125だというわけだ。
2017年の東京モーターショーで姿を現したのが、C125だった。
「次世代カブ」は、これまで何度も見てきた。多くはモーターショーで電気バイクとしてのスタイリングスタディとして出展されることが多かったし、ホンダ自身が純正アクセサリー装着車として「カブラ」なんてカスタムバイクを発表したこともあった。
そして2017年の東京モーターショーで姿を現したのが、C125だった。タイホンダ企画で、決してビジネスバイクだけに特化しない新しい姿として開発がスタートしたのだという。初期モデルC100を思わせるクラシカルなスタイリングと、前後17インチサイズの切削加工したアルミホイール、ディスクブレーキに、灯火類はすべてLEDで、なんとキーレスエントリー――それが新世代のスーパーカブだった。
このスーパーカブ、いざ走ってみると結構に力強い。エンジンはモンキー/GROM系の空冷125ccの新世代ヨコ型エンジンで、シーソーペダル式4速リターンミッションはスーパーカブ独自のもので、2次減速比もスーパーカブ独自の設定となっている。モンキーやGROMよりもダッシュが鋭い、ローギアード化が図られているのだ。
変速アクションは、自動遠心クラッチ(=クラッチレバーなし)で、シーソーペダルをつま先方向に踏み込んでシフトアップ、カカト側に踏み込んでシフトダウン。4速までシフトアップして行ったら、それ以上踏み込んでも4速のままで、信号待ちなどで停車すれば、4速の次に踏み込んだらニュートラルに入る停車時ロータリー式ミッションとなっている。
さすがに125ccの排気量があるだけに、交通の流れをリードするに充分だ。各ミッションを引っ張ると、ローギアで30km/h、2速で50km/h、3速で65km/h、トップ4速で80km/hといったところで、エンジンがうなりすぎない回転域で走ると70km/hくらいのクルージングを快適にこなせる。
ハンドリングは、という乗り方をするバイクではないけれど、17インチのナロータイヤらしい軽快なハンドリングがあって、歴代のスーパーカブと比べると、リアサスペンションのしっかりしたロードホールディング、ディスクブレーキによる制動力にレベル違いの完成度を見ることができる。
おしゃれで、よく走るし、もちろん燃費もいい。
いや、いいな、スーパーカブ。おしゃれで、よく走るし、もちろん燃費もいい。まったく燃費走行を考えずに300kmほど走った取材では、実走燃費は約55km/L行った! 東京大阪間の500kmを、ガソリン10L=ガソリン価格1500円で走り切ることだって不可能じゃないかもしれない。
実は私は、2018年末に、125ccのバイクを買おうとしていたことがある。それまで乗っていた125DUKEからの乗り換えで、スーパーカブC125にしようか、GROMにしようか、モンキーにしようか、それとも新型125DUKEか、スズキGSX-R/S125か、なんて迷っていたわけだ。
C125は最有力候補のひとつだった。けれど買ったのはCB125R。理由は、まだまだスポーツバイクに乗っていたかったからと、C125ならきっと10年先にも姿を変えずに売っているだろうし、その頃60歳になっている私にもドンピシャに似合うだろうな、と思えたからだ。
予言します。私はきっと、遠からず、このスーパーカブC125のオーナーになるはずだ。
(試乗・文:中村浩史)
■型式:2BJ-JA48■全長×全幅×全高:1,915 ×720×1,000mm■ホイールベース:1,245mm■最低地上高:125mm■シート高:780mm■車両重量:110kg■燃料消費率:69.0km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)66.1km/L(WMTCモード値 クラス1 1名乗車時)■最小回転半径:2.0m■エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒■総排気量:124cm3■ボア×ストローク:52.4×57.9mm■圧縮比:9.3■最高出力:7.1kw(9.7PS)/7,500rpm■最大トルク:10 N・m(1.0 kgf・m)/5,000rpm■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)■始動方式:セルフ式■点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火■燃料タンク容量:3.7L■変速機形式:常時噛合式4段リターン ■タイヤ(前/後):70/90-17M/C 38P /80/90-17M/C 44P ■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/機械式リーディング・トレーリング ■懸架方式(前/後):テレスコピック式/スイングアーム式■フレーム形式:バックボーン■車体色:パールニルタバブルー、パールカデットグレー■メーカー希望小売価格:407,000円
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