CBRにはいったいいくつまで「R」が増えるのだろう? と余計な心配をしてしまうほど、CBR1000RRに「R」がまた増えました。軽口はともかく、ホンダのフラッグシップ・スーパースポーツ、CBR1000シリーズがフルモデルチェンジを受けて4代目に生まれ変わました。
かつては“レーサー・レプリカ”と呼ばれていたスーパースポーツモデルのフラッグシップともなれば、毎年のごとく改良が行われて、と勝手な想像をしてしまうが、CBR1000シリーズといえども通常のスポーツモデルと同様なモデルチェンジサイクルに則って行われているのを再確認した。だたフルモデルチェンジ、マイナーチェンジ等をどうとらえるかによっても世代数は変わってくるのであくまで目安ではありますが。
ここでは、便宜上、共通の車体型式を1世代と数えてみたので、4代目、とさせていただいてます。リッターマシンになったCBR1000RRの初代が「SC57」、2008年9月の初のフルチェンジで2代目「SC59」、2017年3月の2回目のフルチェンジで3代目「SC77」、そして今回のフルモデルチェンジで4代目「SC82」の誕生というストーリーに。
CBR954RRの後継モデルとして2004年4月に発売されたスーパースポーツが、CBR1000RRだった。
2002年、2003年と2年連続でMotoGPチャンピオンマシンとなったRC211Vの先進技術を取り入れて新開発された水冷4ストロークDOHCエンジン、ユニット・プロリンクサスペンション、センター・アップ・エキゾーストシステム、電子制御油圧式ロータリーダンパー、HESD(ホンダ・エレクトロニック・ステアリング・ダンパー)など当時のホンダの先進技術の粋を集めたマシンだった。
その後、2006年2月には、車両重量を4kg軽量化、カウル表面積を約13%縮小するなどの改良が行われた。エンジンもシリンダーヘッドの形状やサイズを見直し、バルブ形状、燃焼室形状を含めての改良で、足回りではフロントディスク径の拡大、キャスター角、トレール量を変更するなどにより、より軽快な操縦性の実現とマスの集中をはかっていた。
2008年9月には「オール・ザ・ベスト・イン・スーパースポーツ」をキーワードに初のフルモデルチェンジが行われた。更なる運動性能の向上を図るため、空力性能の向上とマスの集中化が行われ、よりコンパクトなフォルムのボディデザインに変更されている。スタイリング上の特長でもあったセンターアップ・マフラーは、キャタライザーを内蔵する特徴的なデザインの角張ったサイド・マフラー形式となった。
エンジン面ではシリンダーヘッドが小型化され、各パーツの徹底的な軽量化と合わせて、エンジン単体で約2.5kgの軽量化とコンパクト化を達成している。継続して採用されたPGM-FIと新採用の触媒により平成19年国内二輪車排出ガス規制をクリア。
2011年12月には、足回りを中心に大幅な見直しが行われた。操縦性を大きく左右する前・後サスペンション及び前・後ホイール形状を変更。ブレーキング時の安心感と立ち上がりのトラクション性能を向上させ、スポーツライディング時の扱いやすさもさらに向上させた。その他、メーターは視認性の高いフル液晶画面を採用、新たにギアポジションインジケーター、サーキットでのスポーツ走行に役立つラップタイマー、REVインジケーターを設定し、スポーツライディングにふさわしい装備としていた。
外観では、空力性能の向上とマスの集中化を図ったコンパクトなフォルムを引き継ぎながら、「スピード感と躍動感あるダイナミック」をキーワードに、ウェッジシェイプを基調にしたシャープでスピード感あふれる造形とされた。また、フロントのノーズカウル下には、空気の流れをコントロールし、ハンドリングの向上に貢献するチンスポイラーを新たに装備していた。
2012年11月のモデルチェンジでは、ロスホワイトとグラファイトブラックの2色を新たに設定したのみで2013年モデルとして発売された。また、同時にMotoGPで活躍する“Repsol Honda Team”カラーを施したCBR1000RR Special Editionを11月12日から2013年1月7日までの受注期間限定で発売している。
2014年2月には、エンジンの吸排気ポート形状を変更することなどで、4kWのパワーアップが行われたのを始め、新形状のウインドスクリーンを採用するなど、各部の見直し、熟成を図るマイナーチェンジが行われた。また、オーリンズ社製前後サス、ブレーキキャリパーにはブレンボ社製を採用するなど、より特別な仕様とした「CBR1000RR SP」タイプもこの時点からラインナップに加わっている。
2017年3月には、久々のフルモデルチェンジを受けたCBR1000RRシリーズだが、歴代マシンのコンセプトである「トータルコントロール~操る楽しみの最大化」を“ネクストステージ”に発展させるべく、クラス最軽量の車両重量の実現(直4、リッタースポーツクラス)、マス集中化がもたらす軽快性、そして出力向上と扱いやすい特性を両立させたパワーユニット、ファンライディングをサポートする電子制御技術の採用など、操る楽しみをMAXに追求した新たなCBRシリーズのフラグシップマシンに生まれ変わった。
ただ、電子制御系の機能を熟成させることがメインで、外観からの変化といえばカラーリングの一部変更に気づくくらい。電子制御系のアップデートは、Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)では、旋回中のタイヤ周長変化の精度を上げることでHSTCの作動がよりきめ細かに制御できるようになった。さらに、後輪スリップ抑制に対する制御介入量が9段階で任意に選択できることに加え、従来モデルではHSTCが一括制御していた領域の後輪スリップの抑制と、ウイリーの抑制をそれぞれ独立した制御が可能となった。
また、スロットル制御でもTBW(スロットルバイワイヤー)モーターの駆動スピードを向上させたことでスロットル戻し時の応答性を高めた他、スロットル操作に対する出力特性を5段階で任意に選択できるパワーセレクターも高速度領域におけるブレーキコントロール性をより考慮した制御設定に変更したという。
そしていよいよ4代目CBRの登場だ。マシンの詳細は下のプレスリリースを見ていただくとして、開発コンセプトの、
『“Total Control” for the Track サーキットで本領発揮するマシン』
からもわかる通り、新型CBR1000シリーズの狙いはストレートに、プロダクションレースで勝てるマシンへの回帰、だ。牙を抜かれたスーパースポーツから本来あるべき獰猛なレーサーレプリカへ。それが増え続ける「R」に込められた思いだろう。
★ホンダ ニュースリリースより (2020年3月5日)
大型スーパースポーツモデル「CBR1000RR-R FIREBLADE」「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」をフルモデルチェンジし発売
Hondaは、新設計の水冷・4ストローク・DOHC・直列4気筒・999ccエンジンを搭載するなど、フルモデルチェンジを図った大型スーパースポーツモデル「CBR1000RR-R FIREBLADE(シービーアール1000アールアールアール ファイアブレード)」「CBR1000RR-R FIREBLADE SP(シービーアール1000アールアールアール ファイアブレード エスピー)」を、Honda Dreamより3月20日(金)に発売します。
CBR1000RR-R FIREBLADEは、1992年発売の初代モデル「CBR900RR」から一貫して追求してきたテーマである“Total Control~操る楽しみの最大化”を継承しながら、さらに進化させた性能をサーキット走行やレースでの使用において存分に発揮させることを目的に、「Total Control for the Track ~サーキットで本領発揮するマシン」を開発コンセプトに定め、高出力かつよりコントロール性に優れた出力特性のパワーユニットと、操縦性を追求した車体パッケージングを組み合わせ、スポーツライディングをサポートする先進の電子制御技術などを採用したCBRシリーズの最上位モデルです。
CBR1000RR-R FIREBLADE SPは、CBR1000RR-R FIREBLADEをベースに、OHLINS(オーリンズ)社製の電子制御サスペンションのほか、BREMBO(ブレンボ)社製のフロントブレーキキャリパーを装備するなど足まわりを専用化。また、軽量化に寄与するリチウムイオンバッテリーの採用や、より素早いシフトチェンジ操作を可能とするクイックシフターを標準で装備するなど、よりスポーツライディングの楽しみを視野に入れた特別な仕様としています。
- ●販売計画台数(国内・年間)
- シリーズ合計 合計800台
- ●メーカー希望小売価格(消費税10%込み)
- CBR1000RR-R FIREBLADE 2,420,000円(消費税抜き本体価格 2,200,000円)
- CBR1000RR-R FIREBLADE SP 2,783,000円(消費税抜き本体価格 2,530,000円)
- ※価格(リサイクル費用を含む)には保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
- ●カラー
- CBR1000RR-R FIREBLADE(グランプリレッド)
- CBR1000RR-R FIREBLADE(マットパールモリオンブラック)
- CBR1000RR-R FIREBLADE SP(グランプリレッド)
- =主な特徴=
- ■「RC213V」の技術をフィードバックした高出力かつよりコントロール性に優れた出力特性のパワーユニット
- 新設計の水冷4ストロークDOHC 4バルブ直列4気筒999ccエンジンを搭載。レースで高いパフォーマンスを発揮しているHondaのレーシングマシン「RC213V」と同一のシリンダー内径・行程とし、大径バルブの採用やフリクション低減をねらったショートストローク化を実現。高強度アルミ鍛造ピストンやチタンコンロッドなど、各パーツ類の徹底した軽量化に加え、フィンガーフォロワーロッカーアームやカムシャフトなどには、低フリクション性に優れ高回転化に寄与するDLC(Diamond-like Carbon)コーティングによる表面処理を施しています。カム駆動機構にはカムチェーン長の短縮が可能なセミカムギアトレインシステムを採用し軽量化と高回転化に寄与。吸排気系では、スロットルボディー内径を従来モデルより大径化したほか、アッパーカウルの先端に設けたラムエアダクトシステムの開口部から吸気ポートまでの吸気通路と、排気ポートからエキゾーストパイプの口元までの断面形状をそれぞれスムーズに変化させるなど吸排気効率の向上を図っています。また、軽量化とマスの集中化に寄与するチタン製マフラーは、レースなどでも豊富な実績を持つAKRAPOVIC(アクラポヴィッチ)社と共同開発しています。
- ■サーキットにおける操縦性を追求した車体パッケージング
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高精度な剛性チューニングが可能となる薄肉GDC(重力金型鋳造)製法を採用した、軽量なアルミ製ダイヤモンドフレームを新設計。リアサスペンションはプロリンクとし、上部をエンジンブロック後部に締結する構造としたことで、フレーム剛性の最適化と軽量化に寄与しています。アルミプレス製のスイングアームは従来モデルより30.5mm長い設計とし、剛性バランスを最適化しながら従来同等の重量とすることで、よりリアタイヤの接地性と優れた旋回性能を追求しています。また、CBR1000RR-R FIREBLADE SPには、走行状況に応じて減衰力を制御し最適な特性を提供する、OHLINS(オーリンズ)社製の電子制御サスペンションや、BREMBO(ブレンボ)社製のフロントブレーキキャリパーを採用※1しています。
※1 リアブレーキキャリパーは、CBR1000RR-R FIREBLADE/CBR1000RR-R FIREBLADE SPともにBREMBO社製
- ■エアマネジメントを追求したカウリングとウイングレット
- フューエルタンクシェルター上面の高さを従来モデルより45mm低い位置に設定し、ライダーが車両に伏せた状態での全面投影面積減少に寄与させたほか、ライダー背面から後方に空気がスムーズに流れる形状としたシートカウルなどにより走行抵抗を低減させています。また、高速度領域において車体を路面に押し付ける方向に空力を発生させるウイングレットをカウル側面に設けることで、加速時のフロントタイヤ浮き上がり(ウイリー)抑制や減速時の車体姿勢の安定化などに寄与しています。
- ■スポーツライディングをサポートする各種電子制御機能
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車体姿勢制御システムには、BOSCH(ボッシュ)製6軸IMU(Inertial Measurement Unit)を採用。従来モデルに対し、より車体姿勢の推定精度を進化させています。スロットルバルブの開度制御を行うTBW(スロットル・バイ・ワイヤシステム)により搭載可能となるライディングモードは、パワー/Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)※2/セレクタブルエンジンブレーキ/ウイリー挙動緩和制御と、CBR1000RR-R FIREBLADE SPでは電子制御サスペンションを加えた各制御レベルを一括で切り替えることができ、ライディングスタイルに合わせたモード選択を可能としています。また、ステアリング操作に対する素早い応答性と耐キックバック性能を備えながら軽量化を図った、SHOWA(ショーワ)社製ロッド式電子制御ステアリングダンパーを新たに装備。さらに、新たな機能として、ライダーの使い勝手に合わせたABS※3モードの切り替えシステムや、サーキットでの使用を考慮し、より発進時のクラッチ操作に集中することができるスタートモード制御を採用しています。また、CBR1000RR-R FIREBLADE SPには、より素早いシフトチェンジ操作が可能なクイックシフターを標準装備しています。
※2 Honda セレクタブル トルク コントロールはスリップをなくすためのシステムではありません。Honda セレクタブル トルク コントロールはあくまでもライダーのアクセル操作を補助するシステムです。したがってHonda セレクタブル トルク コントロールを装備していない車両と同様に、無理な運転までは対応できません
※3 ABSはライダーのブレーキ操作を補助するシステムです。ABSを装備していない車両と同様に、コーナーなどの手前では十分な減速が必要であり、無理な運転までは対応できません。ABS作動時は、キックバック(揺り戻し)によってシステム作動を知らせます
- ■レーシングイメージ溢れるカラーリング
- 車体色には、レーシングイメージ溢れるトリコロールの「グランプリレッド」を採用。CBR1000RR-R FIREBLADE には、グランプリレッドに加え、スーパースポーツモデルとしてのプロポーションを際立たせる「マットパールモリオンブラック」を採用した、カラーバリエーションとしています。
主要諸元
車名型式 | 2BL-SC77 | |
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CBR1000RR-R FIREBLADE 〈CBR1000RR-R FIREBLADE SP〉 | ||
発売日 | 2020年3月20日 | |
全長×全幅×全高(m) | 2.100×0.745×1.140 | |
軸距(m) | 1.455 | |
最低地上高(m)★ | 0.115 | |
シート高(m)★ | 0.830 | |
車両重量(kg) | 201 | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L) | 21.0(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名〈1名〉乗車時)※5 | |
16.0(WMTCモード値★ クラス3-2 1名乗車時)※6 | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | – | |
エンジン型式 | SC82E | |
水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 999 | |
内径×行程(mm) | 81.0×48.5 | |
圧縮比★ | 13.2 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 160[218]/14,500 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 113[11.5]/12.500 | |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射装置[PGM-DSFI] | |
始動方式★ | セルフ式 | |
点火方式★ | フルトランジスタ式バッテリー点火 | |
潤滑油方式★ | 圧送飛沫併用式 | |
潤滑油容量(L) | – | |
燃料タンク容量(L) | 16 | |
クラッチ形式★ | 湿式多板コイルスプリング式 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 2.615 |
2速 | 2.058 | |
3速 | 1.700 | |
4速 | 1.478 | |
5速 | 1.333 | |
6速 | 1.214 | |
減速比1次/2次 | 1.630×2.500 | |
キャスター(度)★ | 24°00′ | |
トレール(mm)★ | 102 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17M/C 58W |
後 | 200/55ZR17M/C 78W | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ダブルディスク |
後 | 油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立サス/ビッグ・ピストン・フォーク)〈NPX Smart EC〉 |
後 | スイングアーム式(プロリンク/バランス・フリー・リアクッション・ライト)〈TTX36 Smart EC〉 | |
フレーム形式 | ダイヤモンド |
※〈 〉は、CBR1000RR-R FIREBLADE SP。
■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
※4 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
※5 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
※6 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます