- ■レポート・写真:河野正士
今年もEICMAミラノモーターサイクルショーが始まりました。日本にいるとちょっと分かりづらいのですが、欧州は不況の影響で二輪産業の調子があまり良くありません。ビッグブランドがなくなりそうになったり、経営が別会社に移管されたりなんてニュースも、よく耳にしました。
とはいえ、EICMAは皆さんもご存じの通り、いまや世界最大級のモーターサイクルショーであり、しかも歴史も古く、そのなかでは数々の好景気と不景気を乗り越えてきた歴史があります。盛り上がりの大小はあると思いますが、いまだ欧州/北米/日本、近年では中国やインドといったブランドが、ココをめがけて新型車を持ち込んで広くライダーにアピールする姿は変わらず、それを目の当たりにするとワクワクするというライダーの性も変わりありません。だから今年も、僕はココにやってきました。
初日にプログラムされていたのは36のプレスカンファレンス。すべての参加は不可能なので、その中から注目度や移動範囲を考えて10ブランド程度を厳選して参加。そのあいだにインタビューなども行うのです。初日だけで25000歩越えで、歩行距離は20kmちょいでした。足も腰も、パンパンです。ということでここでは、そのなかから速報をいくつかお伝えします。まずは国内ブランドから紹介します。
■ホンダ
注目はやはり「V3R 900 E-Compressor Prototype」ではいでしょうか。昨年のEICMAで、V型3気筒エンジン+電子制御過給器という過激なコンセプトエンジンが発表されましたが、その実車バージョンですね。コンセプトバイクではなく、プロトタイプというのも良いですね。これなら、コンセプトバイクには冷たい反応のEICMA来場者からも注目度が高いんじゃないでしょうか。報道機関向け発表会での反応も上々でした。今回は排気量900ccという発表もありました。ぐっと現実味を帯びてきました。
現車を見た感想は、かなりコンパクト。タンク周りから顔周りにかけてボリュームがありますが、リア周りやエンジン周りのボリュームを考えると、600ccクラスくらいの車体サイズでした。400cc並!と言いたいところですが、それは少し言いすぎかな。過給器が見えなくなってしまったのは、残念ですね。
僕的に意外だったのは「CB1000GT」でした。ホンダのスポーツツアラーは、もっとロードスポーツ的なスタイルとパフォーマンスに軸足を置いたモデルというイメージでしたから。ヨーロピアンスタイルのスポーツツアラーであるNT1100は、そのなかでも異色の存在と思っていましたが、今回発表された「CB1000GT」は、さらにいま欧州で主流のアドベンチャースタイルのアップライトなライディングポジションに前後17インチホイールというカタチ。
ホンダにいままで、こんなモデルあったかなぁと思いを巡らしても、僕の記憶からは探し出すことができませんでした。スタイリングはかなりエッジが効いたモダンなスタイル。しかもCB1000ホーネットのプラットフォームを活用しているとのことで、なかなかかっこよかったです。
そして昨年発表された電動コンセプトバイク「EV Fun Concept」の市販バージョン「WN7」も発表されました。個人的には、去年のままじゃん、と思ったのですが、量産化に向けて細部を造り込み、モーターやバッテリーの制御、車体の煮詰めなどもたっぷりと行い、中身は大きく違うととのこと。まずは欧州を中心に発売を予定しているこのこと。ホンダ初のフルサイズEV、しかもコンセプト車両時にFUNの名が付いた電動バイクがどのような乗り味で、市場でどのような評価を受けるのか、とても楽しみです。
■ヤマハ
ここ数年プレスカンファレンスを開催していなかったヤマハ。しかし今年はEICMA会場ヤマハブースでカンファレンスを行いました。ヤマハはブランド創立70周年の記念年ですから、さきに日本で開催されたジャパン・モビリティショー2025でも、気合いの入ったプレゼンテーションとコンセプトモデル発表を行っていましたから、ここEICMAでもその勢いを継続、という感じでしょうか。
話題は新型「R7」でしょうか。ヤマハの電子制御スロットルシステムYCC-Tや6軸IMU他さまざまな電子制御システムを新たに搭載。フレームも構成パイプのレイアウトや直径、肉厚などが変更され、ほぼ新規設計と言っていいような改良が加えられています。
僕はアンベールされたとき、あれ? R7の顔ってこんなにツルンとしてたっけ?というものでした。そう、ガンダムのモノアイ的なカウル中央の丸型プロジェクターヘッドライトに変わり、カウルと面を合わせた角形ヘッドライトが採用されていたのです。よく見ればエッジは効いているのに、なぜかツルンと見える。そんな印象でした。
それと、赤白バージョンのヤマハ70周年記念カラーの面々も発表されました。こちらも精悍で良いですね。
■スズキ
新型「SV-7GX」、なかなかかっこよかったですねー。スズキは「Vストローム800/1050シリーズ」「GSX-8シリーズ」と、ここ最近は並列2気筒エンジン推しだったので、ここでVツインエンジンモデルが出てくるとは思ってなくて、鈴菌感染率が低い僕でもおぉ! という感じなので、スズキVツイン好きにはたまらないモノがあると思います。近年、モダンとスズキらしさを絶妙にバランスさせたスズキのデザインは個人的にとても好きで、今回発表された「SV-7GX」もそのライン上にあるモデルだと感じました。色使いも、とても良い感じです。
GSX-Rの40周年を記念した「GSX-R1000R 40周年記念車」も現車を初めて見ましたが、色使いも個性的で、良い意味で最近のスズキらしく攻めてる感じがしました。
■カワサキ
ここ数年は盛大にプレスカンファレンスを行っていたカワサキですが、今年はなし。とはいえ新型車も発表&展示されていました。
まずは先に欧州で発表された「KLE500」。少し前までスポーツモデルに加えてアドベンチャーモデルも”サブ1000”と呼ばれ、排気量1000cc以下の車両に注目が集まってましたが、ここ数年でアドベンチャーカテゴリーのトレンドが急速に変化。500cc周りをラインナップするメーカーが増えてきました。500cc周りでもオフで楽しめるパフォーマンスは出せるし、長距離走行での快適性も確保できる。なにより軽くて扱いやすい。そして欧州に加え東南アジアやインドの市場がパワフルになり、その新興市場と欧州市場の良いところを探すと、このあたりになるのかなぁ、なんて想像しています。
現車は、アドベンチャーらしい存在感があるのに、近寄って各部を見るとスリムさやコンパクトさが際立っているという感じでしょうか。こちらも、市場での反応が楽しみです。
そして「Ninja ZX-10R」です。エンジンがEURO5+に対応したり、各部がアップデートされているようですが、注目はやはりウイングレットですね。これまでのヘッドライトライト周りにあった控えめなウイングレット(と言えないかもしれないですが)とは大きく異なり、トレンドの大型ウイングレットを採用。いままでとは違う精悍さが加わりました。
というわけで、駆け足でしたが今回のレポートはこれで終了、これからまた、会場に向かいます。
(レポート・写真:河野正士)
























































