- ■試乗・文・写真:毛野ブースカ
- ■協力:スズキ https://www1.suzuki.co.jp/motor/
今回のジクサー250は昨年試乗した同じエンジンを積むVストローム250SXの燃費が良好だったため、実走距離は少なくとも600㎞以上は走行したほうがいいと思った。悩んだ結果、長野県の南信地方から静岡県の浜松市と通って東京に戻るルートにした。このルートは以前から走ってみたかったのだが、長野県の飯田市までのルートは問題ないとして、長野県から浜松市まで進むルートは、地図をよく見ると細かな県境にかけて道が複雑に入り組んでおり、ルートの事前検討が鍵を握りそうな感じだった。
出発前日までに都内を31.1㎞走行して燃料ゲージは減らなかった。Vストローム250SXでの経験を踏まえるとリッター約38㎞は出せるのではないかと予想しながら自宅を出発。調布ICから中央自動車道に乗り諏訪ICを目指す。出だしが速くスロットルのレスポンスがいいためか合流はスムーズにできた。徐々にスピードを上げ始め、90㎞/hで約6,000回転、さらにスピードを上げて100㎞/hで約7,000回転まで到達。乾いたエンジン音は軽快で心地良く水冷っぽさを感じさせる。適度な振動が伝わる90㎞/h前後で巡行。八王子ICを過ぎると登坂車線が多くなってくるが、90㎞/hを維持しながらだとパワー不足は感じない。
小仏トンネル、談合坂SA、笹子トンネルを通過して山梨県に突入。登坂車線はなくなりしばらく平坦な道が続く。アップライトなポジションは見晴らしが良く、見慣れた景色だが、試乗車で走るとなぜか新鮮に見える。双葉SAで一服して一気に諏訪ICを目指す。再び登坂車線が多くなるものの、ジクサー250は平然とした様子で走り続ける。自宅を出発してから約3時間で諏訪ICに到着。ここまで205.5㎞走行して燃料ゲージは2つ減っていたが、まだまだ余裕な感じだ。ここから宿泊先の飯田市までは複数のルートがあり、今回は国道152号線を通るルートを選んだ。
国道20号線を山梨県方面に少し戻ってから国道152号線に入る。山間部でカーブが連続する箇所はあるものの交通量は少なく進みやすい道を淡々と進む。走行時期が9月下旬だったため酷暑は収まり湿度は低かったが日差しが強い。諏訪ICから走ること約50分で長野県伊那市の高遠町に到着。高遠町といえば高遠城址公園の桜(タカトオコヒガンザクラ)が有名で、毎年4月にここで「高遠さくら祭」が開催され多くの観光客が訪れる。私も一度訪れてみたいと思っているが、かなり人気らしいので諦めている。城内の木々に桜が咲いていると妄想しながらしばし休憩した。
高遠城址公園をあとにして再び国道152号線を飯田市方面に向けて走る。そろそろお腹が空いてきたところで「道の駅 南アルプスむら 長谷」が見えてきたので、ここで昼食を摂ることにした。洒落た施設内にある「御食事処 よってかし」でこの地域の名物である「ソースカツ丼」をチョイス。地元の人たちによる手作りの種類豊富で美味しい総菜も食べ放題ということもあり満足・満腹。今回はしっかり食にありつけそうだ。
「道の駅 南アルプスむら 長谷」を出発して国道152号線を走る。国道152号線の途中にある分杭(ぶんくい)峠が近づくにつれて道幅が狭くなってきて路面が荒れてきた。そんなシチュエーションでもジクサー250は車体の軽量さと相まってコントロールしやすく、上り下りが続いてもスロットルのレスポンスは良好だ。分杭峠は伊那市と大鹿村の境にある峠で、この周辺は大断層「中央構造線」が通っており、峠からは真っ直ぐな谷の眺望が見られるという。ちなみに分杭峠へは国道152号線からバスを利用して向かうので注意が必要だ。
分杭峠近くを通過して大鹿村に入り、村内にある「道の駅 歌舞伎の里 大鹿」で休憩。施設名に歌舞伎の名があるのは、1767年に上映された記録が残り、今なお続けられている地芝居・大鹿歌舞伎(国重要無形民俗文化財)に由来している。毎年春と秋に定期公演が開催されている。道の駅はそんな歌舞伎をイメージしたものとなっている。ここから飯田市方面へはいったん国道152号線を戻って県道59号線方面に進み、途中県道22号線に入る。周囲は山深く、カーブが多い道が続く。ここまで順調に進んでおり、宿泊地には予定通りが少し早めに到着しそうだ。
県道22号線を進んで行くと天竜川が見えてきた。県道22号線から県道18号線に入り、静岡県方面に進んで国道153号線に合流。国道153号線沿いの中央自動車道飯田IC近くにある今日の宿泊地「殿岡温泉 湯元 湯~眠」に到着。もっと時間がかかるかと思ったが、ジクサー250のおかげで想定より早く到着できた。連休日半ばということと、飯田市から南(静岡県、愛知県)方面は宿泊施設が少ない立地的な事情からかバイクで訪れている方が多かった。ちょっと時間が余ったので周辺を少し走ろうかと思ったが、止めて宿でゆっくりすることにした。ここまで320.9㎞走行して燃料ゲージは残り2目盛りとなった。
翌朝、天気は晴れ。今年の実走検証は天気に恵まれている。2日目はいよいよ静岡県浜松市に向かう。宿の近くを通る県道444号線を進み、国道151号線が見えてきたところで国道151号線を愛知県方面に進む。宿から20分ほど走行したところでJR飯田線の天竜峡駅が近くに現れるので、天竜峡駅方面に向かって名勝「天龍峡」を見学。天竜川沿いの南北約2㎞にわたる峡谷は独特な景観を作り出している。その峡谷を見ながら船で下る天竜ライン下りは有名だ。平日の朝ということもあり観光客はほとんどいなかった。
天龍峡を出発したところで燃料警告灯が点灯し始めたので国道151号線沿いにあるガソリンスタンドで給油。337.2㎞走行して8.73リットル給油。燃料消費率はリッター38.6㎞となった。想定通りの良好な数値だ。タンク容量は12リットルなので350㎞は無給油で走行できる。次の給油タイミングまでどのくらい数値を伸ばせるかが楽しみだ。
国道151号線を愛知県方面に走行し長野県と愛知県、静岡県に接する南信地方の下伊那郡阿智村、下條村を通過。国道151号線沿いにある「道の駅 信州新野千石平」で休憩し、少し国道151号線を戻って国道416号線に進む。ここからは静岡県側の山の中を進んで行く。やがて県道1号線(長野県道・愛知県道・静岡県道1号線)が見えてくるので、県道1号線を富山(とみやま)方面に進む。左側に見える天竜川の色が濃く人家の少ない山道を進んで行く。県道1号線が県道426号線に分岐する箇所で看板があり、国道1号線・佐久間方面には通行止めで進めないという。仕方ないので、案内に従って県道426号線、県道74号線を進み、そのまま県道74号線を南下して国道473号線を通って再び県道1号線に戻ることにした。山間部だとこういう通行止めがよくあるが、何㎞も来た道を戻らないだけまだましだ。
県道426号線→県道74号線→国道473号線を通る道は周囲の景色や路面状況が似ており、既視感に襲われることがあったが、ジクサー250はそんなことは気にもせずに安定して走行してくれる。軽量でお尻もそれほど痛くならずストレスを感じない。再び天竜川に合流してJR飯田線の佐久間駅を通過。橋を渡った先にある国道152号線を浜松方面に進む。天竜川が場所によって澄んだり濁ったりと異なるのが面白い。ここからは国道152号線をひたすら浜松方面に走っていく。途中「道の駅 天竜相津 花桃の里」で昼食。想定通りのルートではなかったものの意外と早く浜松市に到着できそうだ。
道の駅を出発したのが13時30分。国道152号線をそのまま進んで行くと浜松市だ。市街地に近づくにつれて交通量が増えてきた。このままJR浜松駅に近い宿に向かってもいいが、せっかくなので3日目に訪れようと思っていた御前崎灯台に行くことにした。しかし、これが予想以上に距離があったのと、完全にミスルートをしてしまい、御前崎灯台に到着したのが16時ちょうどだった。
夕陽をバックに御前崎灯台を出発して国道150号線、国道152号線を走って18時00分にJR浜松駅に到着。今回はどうしても浜松餃子が食べたかったので、駅近くの駐輪場にジクサー250を置き、駅近くの餃子屋さんで餃子を食べた。その後、ジクサー250で宿に行ってチェックイン。ここまで614.9㎞走行して燃料ゲージは2目盛り減っていた。300㎞近く走ったわりには燃料の減り具合が少ない。明日以降の給油のタイミングが楽しみだ。
3日目も天気は晴れ。この日は一般道を数十㎞走ってから東名高速道路を通って東京に戻るのだが、前日に御前崎灯台を訪れたので、急遽浜松駅から近い「中田島砂丘」を訪れた。中田島砂丘は日本三大砂丘(残りは鳥取砂丘と吹上浜、諸説あり)のひとつで、入口から海岸に向けて砂丘が広がっている。砂丘を上がると遠州灘海岸があり風光明媚な場所だ。砂丘は鳥取砂丘以来で(約30年前!)砂の上を歩く感触は久々だった。
中田島砂丘を出発して国道1号線を静岡市方面に向けて進む。主要幹線道なので交通量は多いものの流れはいい。どこで東名高速道路に乗るかが問題だったが、静岡市を過ぎた先にある清水IC付近から急に渋滞し始めたので、清水ICから東名高速道路に乗車。国道1号線を走りながら燃料ゲージが気になっていたが、東名高速道路に乗り始めてからほどなくして燃料警告灯が点灯したので富士川SAで給油。前回から399.2㎞走行して8.96リットルを給油。リッター44.6kmを叩き出した。これはVストローム250SXを超える数値で、今まで乗車した250㏄クラスの中でもトップクラスだ。やはりインド軍団の実力は侮れないことを実感した。
ここからは東名高速道路を走り、所用があった関係でアームズマガジン編集部に到着。走行距離は880.3㎞で燃料ゲージは1目盛り減っていた。メーターをよく見るとオイル交換を促すランプが点灯している。これは試乗車のオドメーターがちょうど1.000㎞に達したからで故障ではない。実直にオイル交換のタイミングを知らせてくれていた。結局、試乗車を返却するまでに900.6㎞走行して最後の給油量が4.30リットル。総給油量は21.99リットルで総合燃費はリッター約41㎞(40.95㎞)となった。Vストローム250SXのリッター38.9㎞より良好な数値となったのは車体が軽いためだろうか。
私はスズキというメーカーは実用車を作らせたら世界一のメーカーだと思っている。パワフルでレスポンスが良く、軽量で取り回しやすい。経済的でカッコ良く価格もリーズナブル。油冷エンジンでメンテナンスもしやすい。最近、街中やツーリング先でVストローム250SXを見かけることが多くなり、道中もスズキのお膝元である浜松市のせいかジクサー250を良く見かけた。実直で人懐っこく、けど意外と計算高い……日本に暮らすインド人同様、スズキのインド軍団の魅力がわかってきてしまったのだろうか。
今回、私もあらためてジクサー250、ひいてはインド軍団の魅力を再発見した。強いて要望するならリアキャリアが装着できるようにしてほしい。だったらVストローム250SXに乗ればいいじゃんという声が聞こえてきそうだが、ネイキッドスポーツタイプが好きな方もいるし価格差もある。それはそれで魅力だし、食い合う必要はない。よりデイリーユースやツーリングで使いやすいジクサー250が出れば欲しがる人もいるはずだ。
ジクサー250に試乗したことでスズキのインド軍団で乗車していないのは、カウル付きのジクサーSF250、アヴェニス125、そして新型が導入されたアドレス125だ。今後これらの車種に乗る機会はあるのだろうか。その日のためにインドカレーをもっと食べておこう。(完)
(試乗・文・写真:毛野ブースカ)
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