世界耐久選手権(EWC)最終戦(第4戦)がフランスで「ボルドール24時間 第88回大会」として開催された。
EWC第3戦鈴鹿8時間耐久を終え、ランキングトップはYamalube YART Yamaha EWC Official Team(YART)が88ポイント(P)。2位にBMW Motorrad World Endurance Team(BMW)が87P、3位Kawasaki Webike Trickstar(KWT)が83P、4位にYoshimura SERT Motul(YOSHIMURA)が73P。6位にF.C.C. TSR Honda France(TSR)が58P。YARTとBMWが1P差。他、上位チームは逆転を狙っての戦いだった。
EWCのポイントシステムは、レース時間によって獲得ポイントが異なり、24時間の場合は途中経過順位にもポイントが加算される。基本ポイントは、1位から20位までに与えられるポイントで、レース時間が8時間以下と8時間を超え12時間以下、12時間を超え24時間までのレースで3段階のポイントとなり、1位はそれぞれ30点、35点、40点と時間が長いほどポイントが多く、20位が1点。最終戦では1.5倍になるので、最終戦までタイトルを争うチームには逆転チャンピオンを獲得する可能性がある。
12時間以上のレースの場合、8時間と16時間経過時の順位にボーナスポイントが加算される。その時点の1位が10点で、10位が1点となる。24時間レースでは、16時間までトップであれば、その後リタイヤしても20点獲得することになる。
予選上位5チームにも予選ポイントが与えられ、予選順位が1位には5P、以降4P、3Pと予選5位までのチームに付与される。
このポイントシステムを見れば、24時間耐久での勝利の価値がとても高いことがわかる。TSRは、鈴鹿8耐テストをキャンセルして、ボルドールでのテストを行っている。それは、世界タイトルに懸ける思いの強さともいえる。
タイトル決定戦となったボルドールは、晴天に恵まれ、透けるような青空の下で予選が行われた。
総合ではトップ#1ヨシムラ、2番手#37BMW、3番手#7YART、4番手#5TSR、5番手#76AutoRaceUbe(UBE)、7番手#11KWT。トップ5にはポイントが加わり、トップ#7YARTと#37BMWは91ポイントで並んだ。3番手#11KWTが83ポイント、4番手#1Yoshimuraで78ポイント。#5TSRは60ポイントで6番手。
決勝スタートから#1Yoshimuraと#37BMWの激しいバトルに#5TSRも加わり、2周目には#5TSRがトップに立った。序盤で転倒車から出たオイルに#11KWTがのって激しく転倒し、ライダーのマイク・ディ・メリオは足首を痛め、病院へ運ばれた。セーフティーカーが導入され、その解除後、#1Yoshimura、2番手#5TSR、3番手#7YARTのトップ争いが続いた。#37BMWは5番手、#76UBE は6番手、ピットでの修復作業のため大きく順位を落とした#11KWTも再スタートした。
3時間を経過するとトップ#1Yoshimura、2番手#5TSR、3番手#7YART、4番手#37BMW、5番手#76UBE。4時間を経過しても、トップ#1Yoshimura、2番手#5TSR、3番手#7YART、4番手#37BMW、5番手#76UBEのトップ5は変わらず。
6時間を経過し、#1Yoshimura、#5TSR、#7YART、#37BMWは1周以内の差で緊迫した戦いを続けていた。スプリントのようなレースが続いた。
8時間経過のポイント付与時間を迎える前に、#1Yoshimuraにはピット作業違反で10秒のストップ&ゴーペナルティーが科された。それでも首位の座は変わらず、8時間経過ボーナスの10ポイントを獲得。2番手は#5TSRで9ポイント、3番手は#37BMWで8ポイント、4番手#7YARTで7ポイント、6番手#76UBEで5ポイントが入った。
#1Yoshimura、#5TSR、#7YART、#37BMWの同一周回での戦いが続く。
12時間を経過し、トップは#1Yoshimura、2番手#37BMW、3番手#5TSRが同一周回。1周差の4番手#7YART、トップと3周差の5番手#76UBEとなる。
だが、トップ争いを繰り広げる#5TSRがマシントラブルでピットイン、#5TSRは1時間半近く修理を行ったが、376周でリタイヤとなった。
13時間が経過すると#1Yoshimuraがトップで、1周差の2番手#37BMW、トップから2周差3番手#7YART、トップと5周差4番手#76UBEになり、#1Yoshimuraが強さを示し始める。#11KWTは7番手まで順位を上げたが、14時間経過後#11KWTはマシントラブルでピットイン、リタイヤとなった。
15時間経過の時点では、トップ#1Yoshimura、2番手#37BMW、2周差3番手#7YART、4周差4番手#76UBE。16時間経過を迎え、トップ#1Yoshimuraから順に再びポイントが加算され、#37BMWがトップで108P、2番手#7YARTが106P、3番手#1Yoshimuraは98Pとなる。
16時間経過、オイルがコース上に流れ、約30分のセーフティーカーの導入となる。解除後、#1Yoshimura、#37BMW、#7YART、#76UBEが続いた。
#1Yoshimuraはトップを走り続けた。残り1時間となり、#76UBEがマシントラブルでリタイヤとなった。それでも、初挑戦の健闘だった。残り30分を切ったところで、2番手走行の#37BMWのマシンのリヤ付近から煙が噴き出す、2位でチェッカーであれば、初の栄冠だったがトラブルで、タイトル獲得とはならなかった。
トップを譲らなかった#1Yoshimuraがボルドール24時間レースで3連覇達成した。EWCタイトルは、2位でチェッカーを受けた#7YARTが獲得する。2度目の栄冠だった。3位にはわずか1ポイント差で敗れた#37BMW。4位に#11KWT。6位に#5TSRとなり、シーズンを終えた。
優勝したYoshimuraのグレッグ・ブラックのコメント
「信じられないような1週間だったし、スタートからゴールまで本当にすごいレースだった。65ポイントを取れて、もうこれ以上の結果はなかったね。チームと仲間に心から感謝しているよ。勝ててすごくうれしい。もちろんチャンピオンシップも欲しかったけどね。BMWが勝つと思っていたが、でも、これがレース、YARTには心からおめでとうと言いたい。僕らは全力を尽くしたんだ。また来年挑戦するよ」
タイトルを獲得したYARTのマンディ・カインツ監督のコメント
「ゴールラインを越えるまで、何も決まってないんだ。BMWチームには本当に申し訳ない気持ちだよ。彼らは素晴らしい仕事をしたのに、ただただ運が悪かった。正直、信じられない気分だし、彼らも王座に値したと思う。僕らは鈴鹿で不運だったけど、今回はすごく運に恵まれた」
初の栄冠を逃したBMW Motorrad Motorsport責任者スヴェン・ブルーシュ氏のコメント
「もちろん、ゴール目前で世界タイトルが手からすり抜けてしまうのは本当に苦い経験だ。歴史的な成功まであと28分だったのだからね。でも、それが耐久レースというものなんだよ。チェッカーフラッグが振られるまで何も決まらない。ライダーたちもチームも夢をつなぐために全力を尽くしたけれど、運命は別の結末を用意していたんだ。BMW Motorrad World Endurance Teamのみんな、ヴェルナー・デーメン監督、そしてライダーたち、それからこの夢のために懸命に働いてくれたミュンヘンとベルリンの仲間たちに心から感謝したい。来年こそはこの夢を現実にするつもりだ。約束するよ」
KWTのマイク・ディ・メリオのコメント
「自分の最初のスティントでオイルに乗ってしまって、転倒してしまった。検査の結果、脛骨を骨折していることが分かったんだ。僕たちはこの最終戦に向けてしっかり準備してきたし、最後まで諦めなかったチームとチームメイトを誇りに思う」
2人体制で走らざるを得なかったが、グレゴリー・ルブランとロマン・ラモスは6位まで浮上したが、無念のトラブルでリタイヤとなった。
TSRのアラン・テシェのコメント
「レースの終わり方はすごく残念だったね。特にあんなにいいスタートを切れただけにね。スタートを担当してトップに立てたし、コランタン・ペロラリ選手と一緒に勝利を狙える速さを見せられたと思う。いくつもいいスティントを重ねて、スピードも証明できたし、バイクのポテンシャルも示せたんだ。でもメカニカルトラブルは僕たちにはどうにもできなかった」
SSTクラスは、National Motos Honda FMAが2年連続でタイトルを獲得した。タイトルを期待されたチーム・エトワールはトラブルでリタイヤとなり、昨年同様のランキング5位となった。
劇的な幕切れとなった2025年を終え、激闘を繰り広げた各チームは、来季へと目を向ける。2026年シーズンも更に激しいタイトル争いが繰り広げられることになるだろう。
■ランキング
1 YART – YAMAHA K. Hanika M. Fritz J. O’Halloran YZF-R1
2 YOSHIMURA SERT MOTUL G. Black E. Masson D. Linfoot GSX-R1000R
3 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM M. Reiterberger S. Guintoli S. Odendaal M1000RR
4 Kawasaki Webike Trickstar R. Ramos Alvaro M. Di Meglio G. Leblanc
5 ERC Endurance #6 I. Mykhalchyk K. Foray D. Checa Carrera ZX-10R
6 F.C.C. TSR Honda France A. Teche C. Perolari T. HADA CBR1000RR-R
(文・佐藤洋美、写真提供:EWC)