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試乗・解説






BMWモトラッドにとってGSシリーズは大切な売れ筋プロダクトである。それと同時にライバルメーカーにとっても一つの指針としても過言ではない。いわゆるBMWが築いた王道に対し、ライバル達はフォロワーでもありカウンターパンチで対抗したりもする。その大元的な一台が2014年以来10年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。ASAというオートマチックシフトも新たに加わったほかツール感を出したデザインなど「そうきたか……」という点が多い。スペイン南部コスタデルソルの海岸線も辿りつつGSに相応しいあらゆる道でその実力を試したのである。

次の10年を駆け抜ける開発と
GSらしさを継承した造り。

 2024年7月。ドイツ南部にあるスキーリゾート、ガルミッシュパルテンキルヘンで開催されたBMWモトラッドデイズ。そこでお披露目された新型R1300GSアドベンチャー。多くのBMW乗りが集うその場は大いに盛り上がったにちがいない。そのローンチが終わるやいなや、そこに現れた3台は、9月半ばからアフリカ大陸南部のナミビアで開催されるGSトロフィー2024の会場に向けて出発した。アドベンチャーツーリングをすること、そしてGSトロフィーの優勝トロフィーを届けるのが与えられたミッションだ。なんともGSらしいストーリーではないか。

 超人気機種にもかかわらず事前のリーク写真等が意外に少なかったR1300GSアドベンチャー。初見に近い印象で7月に行われたライブ中継を見たのだが、その印象は……、ちょっとデザインに慣れる時間が必要かも、というものだった。
その後、9月上旬に開催されたモトラッドデイズ・ジャパンにも飛来し、現物を見るチャンスに恵まれた。直接対面すると、画面越しでは解らなかった機能とそれをエクステリアデザインとして成立さえている思想が伝わってきた。

#BMW R1300GS Adventure

 THE RHINO──つまりサイをイメージした強さ、タフさ。アドベンチャーバイクに必須なそのイメージを起点に開発が始まったという。フロント周りを切り取ったデザインスケッチには、兜を被った武者、あるいは永井豪さんの名作、マジンガーZに出てくるロボットのように見えるものもある。

 そして現物にはまるでタクティカルバッグに無数にあるループを使って小分けのバッグを目的に合わせてビルドアップしてゆくような自由度に着想を得たのか、今までにないサーフェイスデザインが目を引く。
 R1300GSアドベンチャーは「いやデカいな、やっぱり」と畏怖の念を抱きつつ近づくのだが、目の前にすると、その張り出しが横方向にはあるものの、縦方向からはR1250GSアドベンチャーのような全方位大きい、というイメージではない。昨年R1300GSと対峙した時も同様の印象を持ったが、R1250GSが大型アドベンチャーバイクなら、R1300GSは全長・全幅・全高といった3サイズは同様なものの、ボディパーツの使い方の手法やボリュームの持たせ方、車体レイアウトの変更により全てのパーツが小型化し低い位置にマウントされたことでプレミアムクラスというより一クラス下のバイクに見えるほどシェイプされた印象と近い。
 重たい、大きいアドベンチャーバイク。それを緩和したかったBMWモトラッドは新型のR1300GSを軽くコンパクトなレイアウト設計した時の思想がそのまま踏襲されている印象だ。

#BMW R1300GS Adventure

ASA──オートメイテッド・シフト・アシスタントに、
大きな注目が注がれる。

 2025年モデルのR1300GSにも採用されたASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)。一言でこのシステムを表現すればMTをAT化したものだ。またマニュアルモード、オートメイテッド・ギア・チェンジ(Dモード)を選択可能で、前者はシフト操作のみライダーが任意に行い、後者はクラッチ操作とシフト操作が自動化され、ライダーはスロットルワークにのみ集中することができる。ASA搭載車はクラッチレバーの装備はない。シフトペダルは装備するが、MT仕様と同じに見えるそれはメカニカルにトランスミッションとの繋がりはなく、あくまでも電気的なスイッチだという。

 作動の仕組みはMTモデルと同様のケースを使い、外観上はホンダのDCTのような差異がないのも特徴だ。トランスミッション・コントロール・ユニットが各種センサーから得た情報を元に、ライダーのスロットル操作に会わせてクラッチの断続をするアクチュエーターモーター、シフト操作をするアクチュエーターモーターに指示を出し通常のMT車をライダーが操作をシステムが代行するというもの。

 クラッチパックはMTモデル同様一つ。ミッションなども同じ。制御関係のシステムを搭載しているのみなので、重量差もMTモデルに対し2.5㎏ほど。ホンダのDCTはエンジン停止時にはニュートラルポジションに戻る制御をとっているため、パーキングブレーキが付属する。これもMT車とDCT車の重量差になるのだが、BMMの場合、任意に操作をしないとニュートラルにはならない。イグニッションスイッチを入れ、ブレーキレバーを握り、スタータースイッチをチョンと押す、あるいは、停止時、エンジン運転中であればD/Mスイッチかシフトペダルを上、もしくは下に長押ししてニュートラルを出すことができる。それ以外の場合、停止時は1速にシフトされエンジンを停止してもそのままなので、ギアを入れて停めている状態なのだ。
 ガレージなどでちょっとバイクを押して動かそう、となるとイグニッションスイッチを入れ、以上の操作が必要になる点でオーナーはその儀式に馴れる必要はある。

 ASA車にはクラッチレバーは存在しない。しかしチェンジペダルは標準で装備する。またシフト用パドルスイッチ的なものは装備しない。その理由としてBMWモトラッドの開発者は、MT車からの乗り換えを考えたとき、クラッチレバーがないことだけで充分に「特別」だと考えへ、スイッチ回りは極めてオーソドックスなものを採用したという。

 現在、ホンダのDCTの販売比率がアフリカツインの場合でMT車と50/50程度であることをBMWの開発陣も理解しているが、2010年にVFR1200F、NCシリーズ、そしてアフリカツインなどが出そろう2016年までを振り返ると、目玉技術のDCTが初速から高いシェアを持ったわけではなく、逆にそれをなかなか伸ばせないでいた。ライダーはクルマのユーザーよりもコンサバだ、という判断もあったのかもしれない。スイッチボックスが大柄な電卓ぐらいにスイッチだらけになる景色もASA新規を呼び込むには避けるべし、と考えたとしても不思議ではない。その点でMT車とASA車のスイッチ周りはほぼ同等である。

#BMW R1300GS Adventure

重厚なれど軽快。

 今回のテストはスペインの南部のマラガから30分ほどクルマで移動したベナルマデナにある海岸線沿いのホテルがベースになった。目の前はコスタデルソル。地中海に続く太陽の海岸線だ。ここから初日はタリファを目指す。地図で見るとそこは「でべそ」のように地中海に着き出したアフリカ大陸にもっとも近いジブラルタル海峡に面した町だ。

 最初はMTモデルで走り出す。フロント210mm、リア220mmのサスペンションストロークを持ち、低いウインドスクリーン、一体型のフラットなシートを備えたGSスポーツというグレードのモデルだ。レーシングブルーメタリックといういわゆるトリコロールの外色をもつ一台で、オプションのタンクバッグ、鍛造ホイールが装着されていた。

 跨がった印象はR1250GSアドベンチャーのそれとことなり、燃料タンクが横には広いが上面は低くフラットにおさえられていることもあり、ライダー目線からはひな壇状の劇場のイスに座って見下ろす様に感じる。先代の谷間に収まるような印象はない。

 ハンドルバーとグリップ、そしてステップ、シートなどで造るライディングフォームはGSらしいそれ。高さを抑え多分、幅に広がりがあるデザインになったせいか、太ももから膝に向かった角度は新型のほうが外に向かうような印象だ。シート高は840mm〜860mmから870mm〜890mmとなっている。これはアダプティブライドハイトコントロールを装備した車両で車高調整をAUTOにしておけば、停車時に30mm車高が下がることで前者のシート高が選択可能だ。20mmの幅はシートの装着位置でハイ、ローを選択できる方式を採用しているからだ。
 シートの前方がしっかり絞り込まれ、足を下ろしやすいこと、ステップ位置がふくらはぎなどと干渉しないので足付きに不安な要素は少ない。とはいえ足付きの点で体格を選ぶコトは間違いない。

 エンジンを始動する。2023年の暮れに第一便が日本に届きその数を増やしている新型R1300GSから1年遅れでアドベンチャーが登場したのだが、この一年の間にエンジンのマネージメントなどがアップデイトされたのかエンジンの回転フィールがさらに滑らかになり、ヘッドカバー辺りからのノイズが少なくなっている。また、1速から発進するときのクラッチのミートゾーンが広がったようで、格段に扱いやすい印象が伝わってきた。

 20mm増量したホイールストロークによるビギニングストロークのゆとり、あるいは車重がR1300GSよりは増えている分なのか市街地的な路面での乗り心地がさらに良い印象だ。この世代になってテレレバーエボというフロント懸架方式となり細かな路面からの衝撃が伝わらなくなり快適度は増しているのだが、それ以上にフワっとしたソフトなサスペンションの動きに驚く。

 今回のテストでは海岸線ばかりではなく、山岳地路やダート路も走行するのでタイヤは全車メッツラーのカルー4という大型アドベンチャーバイク用ブロックタイヤを装着している。接地感や操舵のダイレクト感はあるのに、ゴロゴロ感などタイヤに起因する振動も極めて少ない。ブロックタイヤの場合、操舵感は当然ややダルな方向になるのだが、全体的なシャーシのアップデイトとメッツラーの開発陣によればBMWとは密に開発をしていたということもあり、R1300GSでも感じたがカルー4と相性はばっちり。その一体感はR1250GSがカルー4を履いた時、もしくはR1250GSアドベンチャーのOEMタイヤ装着時とさほど変わらない印象だ。

#BMW R1300GS Adventure

 それはワインディングを進み、左右に続くターンを行くような場面でも同様だった。ブレーキはコントロール性がよく制動力も高い。旋回性とグリップ感も高いので途中からブロックタイヤということを忘れてこのバイクの旋回性を楽しんだ。アドベンチャーバイクの大半が過ごす舗装路。そこでのアジリティはとても重要。その新世代となったGSとGSアドベンチャーが持つシャーシは、日本で言えば峠をガンガン走るようなペースで移動するスペインの道路事情を考えてもひとことでファンバイクである、と表現ができる。バイクの大きさはすっと消え一体感に常に包まれる。このバイク、スポーツバイクと一緒でも遅れをとらないだろう。

 鍛造ホイールの印象は、ターンインの時に標準装備のスポークホイールよりもやや軽快かな、という印象。重量的に両者同等とのことだが、ハブ、リムに重量物が集中する傾向にあるスポークホイールと、ハブ、スポーク、リムと重量物がバランスよく分散する鍛造ホイールという個性の違いあるのだそうだ。
 スポークホイールユーザーの一人として、洗車時間が鍛造ホイールのほうが時短になってうらやましいと思った次第だ。

 高速道路での移動は快適そのもの。GSスポーツ仕様は標準モデルよりもウインドスクリーンが小型だが新型世代のエアロダイナミクスの進化はなかなかで、コンパクトなのに走行風をカバーする領域が広い。それにサイドデフレクター(こちらもR1300GSアドベンチャーのスタンダードより小型)の効果やタンク周りの空気の流れもあるのだろう。必要であれば左スイッチボックスからスクリーンを電動で上下させられる機構もR1300GSツーリング仕様同様備わっている。

 ダート路でもR1300GSアドベンチャーは不安と不満のない走りを見せたのはもちろん、R1250GSアドベンチャーが持つ安定感と旋回へと移行するときの所作にさらなる一体感とアジリティの良さを印象付ける走りをしてくれた。

 重量物を車体の中央にまとめたバランスの良さはもちろん、フロントの接地感、グリップ感がさらに豊潤になっている。かといってパワーを掛けていってもズルズルとリアタイヤが不安定な挙動を示すこともない。幅広目なハンドルグリップ、少し後方に引いたステップ。これによりライダーは重心位置の上の良い位置に導かれることになり、無駄に腰さえ引いていなければ常にタイヤのグリップを活かせる位置にライダーは乗っていられる。不安が極めて少なく楽しみが増幅するのでアクセルを開けていける。GSは常々ダートでもファンバイクだと感じているが、世界どこでも行かれそうなアドベンチャーでもその世界観がさらにアップデイトされているのが解る。

 撮影を含め250㎞近くを走りジブラルタル近くにやってきた。ここからはアフリカが見える、と案内された高台の岬から眺めると、大陸は雲に隠れ、残念ながらその姿を見ることは出来なかった。

#BMW R1300GS Adventure

ASAの完成度は想像以上。

 2日目はジブラルタル海峡沿いの町から海岸線沿いのワインディング、ダートを抜けコスタデルソル沿いに高速道路、一般道、ダートを走りながらスタート地点のホテルへと向かった。この日はレーシングジュレッドのGSアドベンチャーで、ASAを搭載したモデルだ。

 今日のモデルもタンクバッグなどは装備しているが、ホイールはスポークホイールなので、ハンドリングの違いも確認できる。これ、結論から言えばわずかにターンインがGSスポーツ+鍛造ホイールよりもゆったりした印象だった。シートがフラットなものではなく、段付きかつシート高も低い印象で、ライダーが重心位置に近い関係で、ちょっとマッタリ感が出ているだけ、とも取れる。つまりスポークホイールと鍛造アルミの乗り味の差は仕様違いで出て差なのか明確には解らない程度の微妙なものだった。個人的にはスポークホイールは汚れると洗車に苦労するので鍛造ホイールが欲しい。でもオプションリストを見ると前後で60万円を超す価格だったので夢は覚めたのだが・・・・。

 イグニッションをオンにしてフロントブレーキを握りながらスターターボタンを押すと1速に入っていたギアがニュートラルに入る。その場でスターターを押し続ければそのままエンジンが始動する。ニュートラルからドライブにシフトするには左ミラーの基部にあるD/Mスイッチをブレーキレバーを握りながら押す、TFTモニター内のギアインジケーターがNから1速にシフトされたのを確認すればあとはアクセルを開けるだけだ。

 1速にシフトしてもアイドリングで前進するようなトルコンAT的クリープはしない。あくまでアクセルを開けることでクラッチの制御が始まる。
 最初に感じたのはスタート時の半クラッチの使い方が巧いこと。回転数で見ると1400回転かそれよりも低い回転でクラッチをミートさせはじめ転がり出しのスムーズさでライダーを緊張させない。発進1回でこれは到底敵わないと思った。ミートをミスって人はエンストする。それに対し、ASAはエンストというプログラムを知らない。製品説明を受けたとき、ASAに学習機能はないと彼らは語ったが、ソレも納得。緊張すると半クラは長く、エンジン回転は高くなる傾向がある自分など、そう、学ぶ価値ナシなのだ。

 このロジックは坂道発進でも変わらず。ダートでも舗装でも極めてスムーズかつクールに決めてくれる。例えば坂道発進後すぐに右折、というような場面。日本でいえば坂道発進の停止線から左折をするのと等しい場面だ。ここでも低い回転で半クラなのかも判断が付かない程度の制御でバイクを前に進めながら旋回に必要なトルクを後輪に与え続けてくれる。スクーターのCVTの裏技のようにブレーキを引きずりながらアクセルを開けて、などの操作をわざわざ入れる必要も無かった。

 坂道発進、小旋回という緊張する場面を忘れていられる。これはスゴイ。ASAならアドベンチャーのサイズが消える、と思った場面だ。この日、こうした体験をいくつもすることになった。

 スタートからしばらくはライディングモードをロードにしていた。一般的なドライの包装路向けのモードだ。市街地を抜ける時、1300のボクサーツインが持つ充実した低速トルクを活かし2000回転程度でシフトアップをする。その時もクラッチとミッションの制御に違和感はない。ごくごく微少なアクセル開度で走行している時、シフトスピードは電光石火ではないが、クラッチの繋ぎ方がやはり絶妙で頭がカクンと動くような駆動の切れと繋がりがない。

 郊外路に移動して移動速度が100km/h前後になる。その分アクセル開度も大きくなり、そこにワインディングという成分が入るとオンオフがそれに加わる。シフトタイミングに違和感なく走る。アクセルオフから減速すると速度に合わせシフトダウンも適宜入る。ワインディングではそのタイミングがやや遅いと感じる瞬間もあるが「今欲しいな」と頭のなかでつぶやく程度の時間差でASA+ロードモードではシフトダウンがなされた。

#BMW R1300GS Adventure

 例えばこれをダイナミックモードにすると、そのシフトタイミングはほぼ僕の意識と同調する。しかもバウンというブリッピング付きでシフトダウンするので、こちらの気分もさらに昂ぶるという効果付きだ。
 巧いな、と思ったのはそこからペースを崩さない程度のアクセル開度で加速をすると、何時までもだらしなく回転だけを引っ張ることで、アクセル操作がシビアになり、ライダーがドンツキで嫌な挙動を出してしまうこともない。ASAはダイナミックモードでも加速度が弱ければ2気筒エンジンのうま味を知り尽くしたようにぽんとシフトアップをして快適なツーリングをたのしませてくれた。このあたりの変速マップがバリアブルなのがいい。

 もちろん、ペースをさらに上げて走っても1300GSシリーズのエンジンのキャラクターを引き出すようにシフトプログラムは明解だった。一般道で1300のエンジンに全開をあたえるような場面はそうはない。その点を造り手でありマップを書くという乗り手は忠実に理解しているのが解る。もちろん各種センサーからのフィードバックをもとに決定しているのだろうが、シフトプログラムにあるパワーカーブ的な曲線の描き方が親しみやすかった。

 高速道路でキックダウンを確かめようと100km/hから全開固定で加速を試みたとき、明確にクラッチを切り、6速から5速へシフトダウン、そしてクラッチを繋ぎなら加速、という場面では頭がカクンと後ろに持って行かれたが、その特性を理解していればアクセルをするだろうし、むしろあえてシフトペダルからシフトダウンして追い越しすれば感覚のずれは補正できる。

 結果的にこのDモードの出来映えが素晴らしかった。例えばワインディングでの撮影時にMTモードを試みたが、シフトアップを忘れてレブったりと、逆にリズムがガタガタになる瞬間があった。1000分の1秒単位で制御する電子制御と、せいぜい100分の一秒の単位を安定的には制御できない人の違いをまざまざと見た気がする。

 ダートに入る頃にはASAと自分のチューニングがかなり取れてきた。そう、MTモードで頑張るより、Dモードでシフトダウンだけチェンジペダルを使えば良い、というロジック。これはDCTでもアフリカツインだとツーリングよりレインのほうがこうした手法で自分の感覚通りに走れるのを見つけたのに等しく、無駄なくバリアブルに外れなしで制御するASAに対し、必要であれば、ということだ。

 ダートではエンデューロプロモードを選択。リアのABSだけは作動するようにして、山岳ダートを気持ち良く走るロジックを探すと、やはりカーブへの進入前にシフトダウンをする、荷重を前輪に移し、向きが変わったらスロットル操作で荷重を前後均等になるイメージで戻しつつ次なるカーブに向けて加速するというもの。

 クラッチを使わずいろいろと作業を省きながら走り、右側の轍だけをトレースするようにコントロールすると、これが気持ち良い。それほど一体感を楽しめる。これはGS、特に水平対向2気筒を搭載するRシリーズの真骨頂でオンザレール感のハンドリングを高いレベルまでダートで楽しめる。勿論グリップ限界を超えたその先にはその先でまた別のファン領域があるのだが、旅の途上でリスキーに遊ぶより、そうした走りでペースが乱すよりアベレージを高くキープして楽しむライディングが最高に面白いのだ。

#BMW R1300GS Adventure

最新のアドベンチャーは間違い無く軽々と過去を超えてきた。

 結局多くのジャーナリストと話題になったMTかASAか、という答えは2日目の180㎞程度の行程であっさりと結論が出た。僕ならASAを買う。DCTをホンダが出して15年。最初の数年、DCTはもっと感性に近づくための努力と、MTに対するDCTの個性を打ち出すことで一部を満たしても一部からは不満が出る、という遠回りも経験したように記憶している。DCTも好物な僕としては機械に会わせる悦びのようなものが好きなのだろう。その点で、ASAは感性に普通に沿ってくれる感じで異物感が少なかった。

 今回、モデルチェンジを果たした新型R1300GSアドベンチャーを走らせて思ったのは、自己新をまたしても更新してきた、というもの。だれもが認める世界で一番のアドベンチャーバイクだというコトを考えれば、BMWモトラッドはまたもや世界新記録をだしてきた、と表現するのが適当なのかもしれない。アフリカ大陸を見にゆこう、という体験込みでこのバイクが使われるであろうシチュエーションで試し、たった二日間だったが忘れられない体験になった。ソレも込みでこのバイクが一発で好きになってしまったのである。

#BMW R1300GS Adventure

#BMW R1300GS Adventure
2025年モデルからR1300GS、R1300GSアドベンチャーに搭載されるASA。オートメイテッド・シフト・アシスタント搭載車にはクラッチレバーは存在しない。つまり国内ではAT免許での運転が可能となる。
#BMW R1300GS Adventure
歯車の中にD、Mとあるのが手もとのシフトスイッチ。モード切替えと長押しでニュートラルだしが出来る機能も持つ。BMWモトラッドのスイッチ回りは多くのモデルと共通であり、個別にスイッチの学習をする必要がないのも美点だ。

<#BMW R1300GS Adventure
#BMW R1300GS Adventure
D1と描かれたインジケータ−はDモードで1速に入っていることを示す。TFTカラーモニターに先代から変更はとくにない。必要に応じた表示内容はR1300GSと同様だ。MTモードではこのように数字が大きく、Mが小ぶりに表示される。

#BMW R1300GS Adventure
歴代アドベンチャーモデルのアイコンでもあるフォグランプ。LED光源なのはもちろん形状がこれまでの独立した丸型から横長オーバルでボディーワークに溶け込むようなデザインになった。
#BMW R1300GS Adventure
ナックルガードもライダーの快適性を上げてくれるパーツの一つ。スポイラー形状で腕回りにぶつかる風を軽減してくれる。オフロードライディングを意識したGSスポーツグレードでは転倒ダメージを避ける意味でウインカーはノーズカウル(クチバシ的な部分)部に装着される。それ以外のモデルではハンドガード部にウインカーが装着される。夜間などヘッドライトを点灯している、ハイビームを使う等した場合、被視認性はハンドガード部にあったほうが伝わりやすいだろう。

#BMW R1300GS Adventure

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#BMW R1300GS Adventure
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タンク正面、両サイドに張り出したその部分はフラットになり、イメージスケッチでは上部にはられたラバーマットの部分にドリンクホルダー形状のくぼみをつけているものもあった。給油口後部の金属のバーは、純正オプションのタンクバッグを装着する時にラッチをひっかけるためのもの。フック状のそれをヒッカケ、タンク上面左右にある黒い樹脂の受けにカチっとはめるだけで装着が完了する。

#BMW R1300GS Adventure
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リアブレーキはφ285mmのプレートと2ピストンキャリパーを組み合わせる。R1300GS世代のボクサーツインエンジンは、トランスミッションをケース内、クランク下に納めたことでエンジン全長を短縮化。ホイールベース長内におけるスイングアーム長を先代よりも伸ばしてきた。オンロードではもちろん穏やかな挙動変化をダートでしてくれるのもこの車体の恩恵が大きい。

#BMW R1300GS Adventure
#BMW R1300GS Adventure
メインフレームは鋼板をつかってコンパクトかつ高剛性化し、リアサブフレームはR1300GSがアルミダイキャストで成型することでフレーム幅内の空間を鋼管よりも広く摂ったのに対し、GSアドベンチャーでは6角のアルミ押し出しチューブと、アルミ鍛造パーツを組合せ、より荷重強度を高めた設計となっている。先代までは鉄製の枠を左右に取り付けパニアケースの受けとしていたが、新型ではサブフレーム後部に上から引っかけるようなパニアケースキャッチを新たにデザイン。アルミダイキャスト製だ。

#BMW R1300GS Adventure
前後ともスポークホイールが標準装備される。ブレーキはφ310mm径のディスクプレートと対向4ピストンのラジアルマウントキャリパーを装着する。
#BMW R1300GS Adventure
エンジンプロテクションバーを装備するのもGSアドベンチャーの特徴。新型では専用デザインとなり、エクストラループが追加されている。

#BMW R1300GS Adventure
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30リッター容量のアルミ製燃料タンク。素材は先代も同様だがフレームの変更によりより低い位置に搭載出来ている印象だ。新型ではパワーは上がったが実燃費は伸びているR1300GSのユニット。航続距離はさらに延びることに。上部に乗っているタンクバッグはオプションだ。

#BMW R1300GS Adventure
#BMW R1300GS Adventure
スタンダードなスポークホイールとオプションの鍛造アルミのホイール。

#BMW R1300GS Adventure
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これはGSスポーツのグレードが装備するステップ。上下にステップ位置を変更できる仕組みを持ち、ライダーの好みで変更が可能。リアブレーキペダルの踏面は90度回すことで高さを変えることができる。シッティングで移動する場合は低く、スタンディングを多用するダートでは向きを変えて高くする、というセッティング変更が瞬時に可能だ。

#BMW R1300GS Adventure
#BMW R1300GS Adventure
ライダー目線にはいかにもGS、いかにもGSアドベンチャーというアイテムで満たしてくる。タンク後端、シートの前端部が細く絞られ足付き性に影響が出ない配慮がされる。その分、移動時はシート後方に座り広い面に尻を乗せた方がラクに移動ができた。そもそも自動で車高が30mm停止直前に下がる電子制御サスペンションを持つので、これまでの足着き不安はかなり和らぐはずだ。

#BMW R1300GS Adventure
ヘッドライトはR1300GSと共通。中央のLEDヘッドライトと放射状にある4本はDRL。コーナリングランプも備えている。

#BMW R1300GS Adventure
リアトップケース用キャッチプレート。中央の丸いキャップはケースに接続する電源コネクター部分。セントラルロックとケース内でのUSB給電にも対応するという。
#BMW R1300GS Adventure
フェアリングまわりの造形にクリアな樹脂パーツをレイヤリングすることでライダー目線からの抜け感とウインドプロテクションを両立。目の前に立ちはだかる壁感が相当薄まった。

#BMW R1300GS Adventure
#BMW R1300GS Adventure
GSスポーツ仕様にはタンクサイドにもオプションのバッグが装着出来るようにラッチが装備されている。

#BMW R1300GS Adventure
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●BMW R1300GS Adventure主要諸元
■エンジン種類:空・水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ ■総排気量:1300cm3 ■ボア×ストローク:106.5×73.0mm ■圧縮比:13.3 ■最高出力:107kW(145PH)/7,750rpm ■最大トルク:149N・m/6,500rpm ■ 全長×全幅×全高:2,280×1012×1,540mm (ウインドスクリーンハイ)mm ■軸間距離:1,534mm ■シート高:820/840 – 850/870 mm(アダプティブ車高制御 comfort 装備車両) 840/860 – 870/890 mm(アダプティブ車高制御 装備車両) ■車両重量:269kg ■燃料タンク容量:30L ■変速機形式:常時噛合式6 段リターン ■タイヤ( 前・後):120/70R 19・170/60R17 ■ブレーキ(前・後):油圧式ダブルディスク(ABS)・油圧式ディスク(ABS) ■懸架方式(前・後):テレレバーフォーク式・パラレバー/スイングアーム式 ■車体色:レーシング・レッド、レーシング・ブルー・メタリック、ブラック・ストーム・メタリック■メーカー希望小売価格(消費税込み):3,335,000円~

[『2023年 R1300GSの試乗インプレッション記事』へ]

[『2018年 R1300GSの試乗インプレッション記事』へ]

[『20213年 R1300GSの試乗インプレッション記事 Part2』へ]

[BMWのWEBサイトへ]

2024/12/18掲載