大治郎カップ最終戦(全5戦)がサーキット秋ヶ瀬で行われた。74Daijiroクラスはタイトル決定戦となった。他、フレッシュマンクラス、バンビーノクラスが開催された。
●74Daijiro エキスパート
74Daijiroクラスは、開幕から田中 陸(10歳)が2連勝を飾り、その後木村隆之介(10歳)が2連勝した。勝利数も2位の獲得数も同じで同ポイントで並び、先行した方が初のチャンピオンという戦いとなった。
ポケバイは全国のサーキットで開催されており、木村は千葉北ポケバイコース、茂原ツインサーキットでタイトルを獲得。菅原汐恋奈(9歳)はスポーツランド生駒で女性初のチャンピオンとなっている。田中はサーキット秋ヶ瀬でのタイトルを狙っていた。木村も、ここを制すれば千葉北、茂原とトリプルチャンピオン達成となる。木村も田中も今季限りでポケバイ卒業を決めていた。
予選では田中がトップ、2番手に菅原と続いた。木村は3番手に付ける。菅原は初めて33秒台に入り、田中や木村と戦えるスピードを持っていることを示した。決勝は3台のバトルになり接近戦が続いた。最終ラップの最終コーナーで前に出た田中がトップでチェッカー、2位に菅原が入り、3位木村となり、田中が初チャンピオンを決めた。
今季アドバイザー&レポーターとして大治郎カップを訪れていた若松怜は、全日本ロードレース選手権J-GP3ライダーで、今季、タイトル争いを繰り広げた、田中と木村と同じように、先着した方がチャンピオンという戦いで最終戦に挑み尾野弘樹に破れた。若松は「全力を尽くしたレースに後悔はないが、タイトルを逃した悔しさは自分が一番わかる」とチェッカー後のライダーの元を訪れ、田中を祝福、菅原を称えると、木村の肩を抱いた。木村はその腕にもたれるようにしてうなだれた。
若松は「自分の時も大先輩でチームメイトの小山(知良)さんが慰めてくれたんです。ありがたかったから自分も力になりたかった」と木村に寄り添った。
接近戦を制した田中は「予選を走って、今日は勝てると思っていた。スパート出来たら勝てると思った」と言う。グリッドに付く前に父親に「勝って来る」と勝利宣言していた。チェッカーを受けた後は「嬉しくて叫びまくっていた」と言う。新たなチャンピオンに、サーキット秋ヶ瀬にいた人々は「おめでとう」と次々に祝福に訪れた。田中はあまり笑わなくクールな印象だが、この時は、はにかんだような笑顔を見せた。
父・隆光さんは「前半戦は良かったが、中盤戦はうまく行かず、体重が41㎏くらいになり、最終戦では5kg落として挑みました。練習も重ねて来ました。前回は最終ラップの最終コーナーでやられたので、そこはしっかりと戦おうと話をしていました。その通りのレースが出来た」と言う。チャンピオンのお祝いは、ダイエットしていたので、好きなものをたくさん食べさせたいと語った。
田中は、サーキット秋ヶ瀬のタイトルを獲得して、来意はMiniGPへのステップアップを目指しセクションに参加する。
木村はミニバイクへとステップアップする。サーキット秋ヶ瀬で行われたチャリティーで、井筒仁康が鈴鹿8時間耐久優勝の時のセブンスターカラーに塗った74Daijiroをオークションに出し、それを競り落とした木村家が、それをきっかけにポケバイに参戦を開始した。姉の咲那(11歳)も同時期に始めた。咲那も幾度も表彰台に登る活躍を示し、成長期で身長も伸び窮屈そうに見えたがポケバイを器用に操り、ライダーとしての成長を示した。咲那も弟と一緒に卒業し同じくミニバイクに参戦開始する。
父・大輔さんは「この4年間、週3日は練習に通いつめ、出来る時は1週間合宿もして、ふたりでタイヤは100本使いました」と振り返った。母・久永さんは「サーキット秋ヶ瀬の走行時間が午後4時~5時30分なのでコースの営業時間に間に合うように学校に迎えに行く車の中でタイヤウォーマー撒いて、車の中で着替えて走りに来ました」と語った。
親も子も出来る限りのことをして走り続け、技術を磨き続けた。久永さんは「トップを走って全力で彼なりに限界までプッシュしてくれたレースでした。だから悔しいと思いますが、こらからも頑張ってほしい」と語った。大輔さんは「家族で懸命に打ち込んだ時間に悔いはなくバイクに出会えて良かった」と最後は笑顔を見せてくれた。
菅原は来年も参戦を続け、女性初のサーキット秋ヶ瀬チャンピオンを目指す。
●フレッシュマン&バンビーノ
フレッシュマンで独走優勝したのは下家丸絆穣(まきじょう・8歳)、2位に本間太賀(7歳)、3位に佐藤光厳(6歳)が入った。4位に入った下家壬生厳(みぶげん・6歳)は丸絆穣の弟、末っ子の香ノ紬稀(かのつき・5歳)は、初心者クラスのバンビーノに参戦し、チェッカーを受けずにレースを終えてしまい見守る皆が「あ~あぁ」とため息をついて「バンビーノあるあるだね。可愛い~」と微笑ましいエピソードもあり3兄弟は注目の的だった。
父の享梓朗さんは「子供たちがやりたいと始めて、兄たちがやっていることもあり末っ子も乗り始めました。香ノ紬稀は2回目の挑戦でした。去年から初めて中井サーキットがホームコース。自分はバイクのことは分からないので先輩たちから教えてもらっています」と語った。
バンビーノで優勝したのは矢吹 健(7歳)で、YouTubeでポケバイを見つけて乗りたいと親にお願いして始めた。「74Daijiroクラス(エキスパート)のお兄ちゃんたちが、カッコいい」とステップアップを目指している。
お昼休みには、今季74Daijiroのアドバイザー&リポーターを務める若松の所属チームJAPAN POST HondaDream TPからTシャツが贈られた。ブリヂストンからもTシャツとキャップが贈られ、昼休みに記念撮影した。
Moto3の山中琉聖もミニバイクレースに参戦、世界の走りを見せ観客を沸かせた。キッズたちにプレゼントも用意、表彰台のプレゼンターも務めた。
(文・写真:佐藤洋美)