KAWASAKI Z H2 /SE 車両解説
川崎重工ガスタービン・機械カンパニー、航空宇宙カンパニー、そして川崎重工グループ全体を横断する技術開発本部が総力をあげて開発した“究極のロードスポーツ”Ninja H2シリーズ。
2013年の東京モーターショーのカワサキブースで、スーパーチャージャー付エンジンの単体モデルを展示。コンセプトを見せるための展示品の一つとして認知されたそれは、それほど話題を集める存在とはならなかった。が、実際には走行可能なマシンに搭載され着々と開発が進められていた。そして2014年の11月4日、カワサキはスーパーチャージド・エンジンを搭載した市販マシンを「Ninja H2」シリーズとして正式に発表した。
ちなみに公道仕様マシンが存在し、それが「Ninja H2」で、もう一つのクローズドコース専用モデル(サーキット仕様)が「Ninja H2R」という棲み分けになっていた。搭載された直列4気筒、998ccエンジンは、スーパーチャージャーを装着することを前提に開発された専用エンジンで、一般のノーマルアスピレーション(自然吸気)エンジンとは、様々な部分で特性が異なっている。そしてそのエンジンに組み合わされたスーパーチャージャーは川崎重工ガスタービン・機械カンパニー、航空宇宙カンパニー、そして技術開発本部との協働により設計された「全てを自社設計、開発とすることで、モーターサイクルのエンジン特性に合わせた高効率なスーパーチャージャー」が実現したという。
シリンダー背面にレイアウトされたスーパーチャージャーは、高回転化に有利な遠心式が採用されている。インペラの駆動に遊星ギアを採用することで出力損失の最小化と、機構のコンパクト化が図られ、通常のステップアップギアで1.15倍に加速された後、さらに遊星ギアで8倍に。エンジンが14,000rpm時には、実に130,000rpmへと増速されるという。インペラは、直径69mm、12枚のブレードを持ち、圧送能力は、200リットル/秒、吸気のスピードは秒速100m、その時の圧力は大気圧の2.4倍となるという。
そして昨年の東京モーターショーで、スーパーネイキッドのZシリーズにもスーパーチャージャー版がデビュー。ここにリッタークラスのスーパーチャージャーモデルのラインナップの全貌が明らかになったのだ。その超弩級ネイキッド“Z”の国内発売は4月4日に設定された。サーキット仕様のH2Rはともかく、公道へと解き放たれた最高出力147kW(200PS)/11,000rpm、最大トルク137N・m(14.0kgf・m)/8,500rpmのネイキッドに心をときめかせたカワサキ・ビッグマシン遣いたちの歓喜の声が目に浮かぶ。
ちなみにZ H2の主な特徴を、再度紹介すると、最大の特徴である最大出力147Kw(200PS)の水冷DOHC4バルブ並列4気筒998cm3、バランス型スーパーチャージドエンジンを、低中速走行時の操縦性と高速域走行時の安定性のバランスが良い新設計のトレリスフレームに搭載。
衝撃吸収性や減衰特性に優れ路面状況をつかみやすいSHOWA 製SFF-BPフロントフォーク、リヤサスペンションの採用、強力な制動力と優れたコントロール性を誇るブレンボ社製フロントブレーキキャリパー(M4.32)の採用。Zシリーズに共通する・スーパーネイキッドらしい野生味を視覚化した“SUGOMIデザイン”。スーパーチャージドエンジンの搭載を象徴するエアインテーク、そして灯火類すべてLEDとしている。
そしてデバイス類では、KTRC(カワサキトラクションコントロール)、パワーモード、それらを一元的に管理するインテグレーテッドライディングモード・トラクションとブレーキングの情報を統合管理するKCMF(カワサキコーナリングマネージメントファンクション)。きめ細やかな油圧制御でホイールのロックを防ぐKIBS(カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)、発進時の効率的な加速をアシストするKLCM(カワサキローンチコントロールモード)・クラッチ操作なしでシフトチェンジを可能にするKQS(カワサキクイックシフター)、常に車体姿勢を検知してKIBS やKTRC へ情報をフィードバックするボッシュ社製IMU(慣性計測装置)、設定したスピードでの巡航を可能にするエレクトロニッククルーズコントロールなどを装備している。
そのZ H2に新たなラインナップとして「Z H2 SE」が登場したのは2021年4月。
スタンダードモデルが持つ圧倒的なパワーとコントロール性の究極の両立を維持しながら、KECS(カワサキ電子制御サスペンション)を装備。ショーワのスカイフックテクノロジーを実装する前後の新しい電子制御サスペンションは、よりスムーズな乗り心地をもたらし、快適性と楽しさの向上に貢献してくれるという。
また、ブレンボのStylemaとマスターシリンダーを採用したフロントブレーキコンポーネントは、制動力とコントロール性をさらに向上させ、スーパーチャージドフラッグシップ“Z”の魅力をより高めている。
Z H2のスタンダードモデルからの主な変更点は、
・路面や走行状況にリアルタイムで適応し、理想的な減衰力を提供するKECS(カワサキエレクトロニックコントロールサスペンション)
・レインモードでの走行安定性が向上するショーワのスカイフックEERA(電子制御ライドアジャスト)テクノロジー
・より強力な制動性能と高いコントロール性を生み出すブレンボ製Stylemaモノブロックキャリパーとブレンボフロントマスターシリンダーを装備したフロントブレーキパッケージ
・スーパーチャージドエンジンの搭載を象徴するエアインテークにあしらわれた銀鏡塗装 以上の4点。
スタンダードモデルから引き継がれた主な特長は、
・最大出力147Kw(200PS)のバランス型スーパーチャージドエンジン
・低中速走行時の操縦性と高速域走行時の安定性のバランスが良い専用設計のトレリスフレーム
・スーパーネイキッドらしい野生味を視覚化したSUGOMIデザイン
・ネイキッドの特徴を生かし、スーパーチャージドエンジンをあえて見せるレイアウト
・操縦性と快適性を両立するアップライトなライディングポジション
・KTRC、パワーモード、それらを一元的に管理するインテグレーテッドライディングモード
・常に車体姿勢を検知してKIBSやKTRCへ情報をフィードバックするボッシュ社製IMU
・トラクションとブレーキングの情報を統合管理するKCMF
・きめ細やかな油圧制御でホイールのロックを防ぐKIBS
・クラッチ操作なしでシフトチェンジを可能にするKQS
・設定したスピードでの巡航を可能にするエレクトロニッククルーズコントロール
・さまざまな車両情報を表示する、フルカラーTFT液晶スクリーン搭載インストゥルメントパネル
・Bluetoothでつながるスマートフォン接続機能。
これらが“SE”の正体だ。
2021年12月、Z H2シリーズの本体が2022年モデルとしてカラー&グラフィックが変更されたが、こちらZ H2 SEはメカニズムはもとよりカラー&グラフィックの変更も無しで発売となった。
2024年モデルはカラー&グラフィックの変更(Z H2 SEのみ)とともに、型式および型式指定・認定番号の変更(令和2年排出ガス規制への適合)、そしてそれとともに燃料消費率の変更 WMTCモード値(16.9km/L→17.1km/L)が行われた。
今回の2025年モデルはZ H2がカラー&グラフィックを変更。Z H2 SEは変更なくマーケットコードのみ変更したイヤーモデル。
★カワサキ ニュースリリースより (2024年8月23日)
Z H2シリーズ発売のご案内
- モデル情報
- 車名 Z H2 <Z H2 SE>
- マーケットコード ZR1000PSFAN<ZR1000RSFNN>
- 型式 8BL-ZRT00K
- 型式指定・認定番号 20628
- メーカー希望小売価格 2,057,000<2,343,000>円
- (本体価格 1,870,000<2,130,000>円、消費税 <213,000>187,000円)
- ※カワサキケア含む
- カラー(カラーコード)エメラルドブレイズドグリーン×メタリックマットグラフェンスチールグレー (GN1)<メタリックマットグラフェンスチールグレー×エボニー (GY2、継続)>
- 発売予定日 2024年9月15日
- 販売店 カワサキ プラザ
- ※メーカー希望小売価格は消費税を含む参考価格です。価格には保険料、税金(消費税を除く)、登録などに伴う諸費用は含まれません。
- ※当モデルは二輪車リサイクル対象車両です。価格には二輪車リサイクル費用が含まれます。
- ※当モデルはABS装着車です。
- ※当モデルはETC2.0標準装備車です。
- ※当モデルは「カワサキケアモデル」です。
- ■主な変更点
- ・カラー&グラフィックの変更 (Z H2のみ)
- ■カワサキケアモデルとは
- 安心・安全なモーターサイクルライフをサポートするため、1ヶ月目点検に加え、3年間の定期点検とオイル交換(オイルフィルター含む)を無償でお受けいただけるモデルです。
https://www.kawasaki-motors.com/after-service/kawasakicare/
【Z H2】
バランス型スーパーチャージドエンジンを搭載したスーパーネイキッドモデルZ H2。 “Sugomi”スタイリングを身に纏い、圧倒的な存在感を放ちます。また、多数の最新装備を搭載したことによる優れた操縦性・快適性が、パワー全域を余すところなく“Sugomi”パフォーマンスを発揮。溢れんばかりのパワーと扱い易さを両立したこのモデルは、カワサキが技術の粋を結集しモーターサイクルのあるべき姿を具現化したZシリーズのフラッグシップモデルです。
【Z H2 SE】
Z H2が持つ圧倒的なパワーと優れたコントロール性という究極の両立を維持しながら、KECS(カワサキ電子制御サスペンション)を装備したZ H2 SE。スカイフックテクノロジーを実装する前後の電子制御サスペンションは、よりスムーズな乗り心地をもたらし、快適性と楽しさを向上させます。また、ブレンボ社製のStylemaモノブロックキャリパーとマスターシリンダーを採用したフロントブレーキコンポーネントは、制動力とコントロール性をさらに向上させています。
主要諸元
車名型式 | 8BL-ZRT00K | |
---|---|---|
Z H2 <Z H2 SE> | ||
全長×全幅×全高(m) | 2.085 ×0.810<0.815>×1.130 | |
軸間距離(m) | 1.455 | |
最低地上高(m) | 0.140 | |
シート高(m) | 0.830 | |
車両重量(kg) | 241<241> | |
乾燥重量(kg) | – | |
乗車定員(人) | 2 | |
燃費消費率(km/L)※1 | 21.3(国交省届出値 60km/h・定地燃費値、2名乗車)※2 | |
17.4(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)※3) | ||
登坂能力(tanθ) | – | |
最小回転小半径(m) | 3.3 | |
エンジン型式 | – | |
水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ | ||
総排気量(cm3) | 998 | |
内径×行程(mm) | 76.0×55.0 | |
圧縮比 | 11.2 | |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 147[200]/11,000 | |
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) | 137[14.0]/8,500 | |
燃料供給装置形式 | フューエルインジェクション | |
始動方式 | エレクトリックスターター | |
点火方式 | バッテリ&コイル(トランジスタ点火) | |
潤滑油方式 | ウェットサンプ式 | |
潤滑油容量(L) | 4.7 | |
燃料タンク容量(L) | 19 | |
クラッチ形式 | 湿式多板 | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1速 | 3.076(40/13) |
2速 | 2.470(42/17) | |
3速 | 2.045(45/22) | |
4速 | 1.727(38/22) | |
5速 | 1.523(32/21) | |
6速 | 1.347(31/23) | |
減速比1次/2次 | 1.480(74/50)/2.555(46/18) | |
キャスター(度) | 24.9° | |
トレール(mm) | 104 | |
タイヤサイズ | 前 | 120/70ZR17 M/C(58W) |
後 | 190/55ZR17 M/C(75W) | |
ブレーキ形式 | 前 | φ320mm油圧式デュアルディスク |
後 | φ260mm油圧式シングルディスク | |
懸架方式 | 前 | φ43mm倒立テレスコピック式 |
後 | スイングアーム(ニューユニトラック) | |
フレーム形式 | トレリス |
※1: 燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状況などの諸条件により異なります。
※2: 定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※3: WMTCモード値とは、発進・加速・停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。
※改良のため、仕様および諸元は予告なく変更することがあります。