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レース・イベント

■文・写真:楠堂亜希






鈴鹿サーキットでは2回にわたる事前テストを終え、8耐参戦チームが出揃いました。勝負もみどころも方向がみえてきたところで、今年の参戦の様子をレポート!

 まずは昨年の優勝チームである#30 HRCがMotoGPライダーのジョアン・ザルコ選手を起用するというサプライズ発表がありました。これはMotoGPカザフスタンの日程がキャンセルになり実現したもの。新型CBR1000RR-Rでのメンバーはザルコ選手のほか、鈴鹿8耐最多勝を狙う高橋 巧選手、全日本にSDGハルクプロから参戦している名越哲平選手。第4ライダーにはモトバムレーシングからST1000に参戦している荒川晃太選手が控えています。昨年の優勝ライダーである長島哲太選手ですが、全日本ロードレースにダンロップタイヤを使用する、ほぼダンロップファクトリーとも言えるチームから出場している関係で、HRCはブリヂストンタイヤを使用するため見送りとなりました。ファンとしてはモヤッとしますが、タイヤによる縛りは致し方なく……。長島選手は、8耐本番ではイベントや解説で参戦する模様。2回目のテストでは高橋選手の走行は少なく、ザルコ選手と名越選手のためにたっぷり時間がとられていました。テスト総合では4番手タイムとなりました。

#スズカ8耐事前テスト
#30 HRCのライダー、左からジョアン・ザルコ、高橋 巧、名越哲平。3人のツナギはそれぞれメーカーが違うので、微妙な色やデザインが非対称だったりします。実はSBKの2人も違うんですよ。
#スズカ8耐事前テスト
テスト2日目はロングのテスト。ザルコの背後にピタリとつけた名越、そして後ろにYAMAHAで1スティント。テストですがとても見応えがありました。

 テスト終了後に開かれたザルコ選手のインタビュー。
「鈴鹿8耐は歴史のある耐久レースです。24時間のレースはボルドールやルマン、スパなどありますが、その中でも鈴鹿8耐はトラックも特別でファンも盛り上がると聞いていて、耐久レースのなかでは一番参加したいと思っていたレースです。カザフスタンが延期になり、ちょうどMotoGPの予定とバッティングしていないので、ルーチョも“いい経験になるから”と快く送り出してくれました。真夏のコンディションの中での良いトレーニングになるとも思っています。ただ“MotoGPがメインなので頑張りすぎないように”と言われてはいますが。
 フランス人だから、というよりも鈴鹿8耐の歴史とか、特別な魅力に惹かれています。僕はフランス人だけどずっとフランスの外で育っているので、鈴鹿に来て逆に、フランス人って耐久レースに強いんだなと」

#スズカ8耐事前テスト
#スズカ8耐事前テスト
初の8耐テストをこなしたジョアン・ザルコ。走行後で疲れているところ、質問すべてに丁寧に答えてくれていました。几帳面な性格が現れます。そして筋肉が凄い。

「今回のテストは、素晴らしい経験でした。鈴鹿サーキットは思ったより難しいコースで、このようなチャレンジができたことを光栄に思います。このテストで、このトラックにだいぶ慣れてきました。次回はレースウィークですがさらにスピードアップしていきたい。
 個人でもCBRを所有していて、トレーニングしていて、今回はファクトリー仕様の耐久仕様に乗ることができました。
 MotoGPとは違って、とてもジェントルで速いバイク。耐久レースなので、セーブしていかないといけないので、乗り方も違います。このバイクを上手く乗りこなしているのは高橋巧選手なので、自分もアジャストしていくことが重要。今回の経験はMotoGPのパフォーマンスにも役立つのではないかと思っている。
 荒川選手の走りを今回見ることができなかったのだけど、一番英語が上手くて助かっている。高橋選手は鈴鹿サーキットを知り尽くして素晴らしい走りを持っているライダーなので、彼のパフォーマンスを見て習得しています。名越選手も素晴らしいライダー、今日一日でラップタイムもすごくUPし、速さをみせた。今回のテストで、3人とも速いラップタイムで走ることができると自信を持って言えます。
 目標は優勝、3連覇。ホンダはそのためのバイクを準備している。私達はその目標にむかって達成するために頑張ります」
 走行後の疲れもあるなか、しっかりと時間をとって丁寧に話してくれました。

#スズカ8耐事前テスト
気温も高いなか汗だくで走行、そしてナイトセッションもかなりのラップをザルコが走行していました。これは、ラストスティントがザルコということ? 本番が楽しみです。
#スズカ8耐事前テスト
全日本ではST1000に参戦中の荒川晃大が第4ライダーに抜擢されました。決勝で走ることは99%無いと思いますが、テスト参加でもしっかり走行していて収穫も多そう。後半の全日本に期待が高まります!

 ロードレース界で今シーズン一番の注目になると思いますが、『黒船襲来』#2 DUCATI Team KAGAYAMA。2月のイタリア大使館での発表会ですでに8耐に参戦を発表していて、パニガーレV4Rファクトリーのマシンも8耐参戦を考慮した仕様で浦賀ならぬ横浜で水揚げされ、全日本で3戦の実戦を重ねて8耐に向けての準備が進められました。鈴鹿8耐参戦は、本国のドゥカティコルセの命題でもあったそうです(https://mr-bike.jp/mb/archives/45256 )。

 全日本では4戦全てで表彰台に登壇している水野 涼選手と、かつて加賀山監督と組んだ8耐で2位表彰台経験をもつジョシュ・ウォータース選手、アジア選手権でパニガーレV4Rファクトリーを駆るハフィス・シャーリン選手の3名。ジョシュ選手はオーストラリア選手権にドゥカティで参戦中、ハフィス選手はアジア選手権第2戦でパニガーレを優勝に導いています。ちなみに水野選手はハフィス選手とは、昨年ワールドスーパーバイクのミサノの代役参戦でチームメイトでした。3人は顔合わせからすぐに打ち解けた雰囲気。2日目は水野がジョシュ、ハフィスを引っ張っての走行で、ジョシュは鈴鹿のベストを更新。DUCATI team KAGAYAMAは総合トップタイム(2’05.162)ですべてのセッションを終え、互いに称え合って決勝に向けて健闘を誓うのでした。

#スズカ8耐事前テスト
ジョシュはオーストラリアスーパーバイクでドゥカティで参戦中、現在ランキング首位につけています。チームカガヤマのライダー3人のなかでは兄貴的な存在ですが、鈴鹿は得意な水野 涼に引っ張ってもらって「新しい発見があったし自己ベストも更新できたんだ」と楽しそうに話してました。

 テストが終わって水野選手。
「8耐はチームワークを築き上げたもん勝ちだと思っています。今回のテストも色々と手探りのなか、チームが意気揚々とトライをしている雰囲気がとても良かったと思う。まずは日曜までバイク壊したくないし転びたくないというのが一番で、あとはなるようにしかならないですが。国内だけでなく海外からも注目されているレース、ライダーとして強い部分を魅せられることができればと思っています」

 そして加賀山監督は。
「我々は、チャンピオン経験のある車両を表彰台、優勝争いをするべく準備をしてきています。ライダー、マシンのすべてが機能すればそれは十分に戦えるポテンシャルがある。しかし、35年間トップカテゴリーでレースをしてきた人間として、鈴鹿8耐というのはそんなに甘くはないと思っている。ホンダファクトリーやEWCの歴代のチャンピオンチームを相手に、耐久一年目の車両、チームがそんなに簡単に行くとも思ってはいない。不安がないわけではない。だからこそ、今はチーム側の不安要素を払拭するために懸命に努力をしています」
 そしてなんと、加賀山監督自ら8耐マシンを初ライド! テストだからこそのサプライズ。燃費チェックのためわずか3周でしたが、オフィシャルテストを盛り上げてくれました。ピットに戻った加賀山監督、初のパニガーレについては、メカニックたちがあまり走らせないように最小限しか燃料を入れてくれなかったため、楽しむのはこれからというところで止まってしまいましたが「色々と国内メーカーのバイクをテストしてきたが、全く違った」とのこと。水野選手との相互理解もさらに深まったようです。

#スズカ8耐事前テスト
全日本を3戦終え、8耐に気持ちをスイッチした水野 涼。耐久仕様はスプリントとは違うものですが、「ドゥカティ」の走らせ方を深めていってる模様。
#スズカ8耐事前テスト
走行したのはほんの3ラップでしたが「燃費テストはどこで止まるかわからないからライダーにリスクを背負わせるより、コースのどこが安全に止まれるか自分が一番分かってる」と買って出てくれた監督でした。でも、一番目立ってた? 

 最近ではテレビで「Sズキ」として数々のレースに出場し話題を振りまいてくれるSUZUKIですが、8耐では#0 チームスズキCNチャレンジを発足。40%バイオ燃料を使用し、タイヤ、オイル、カウル、ブレーキなどサステナブルアイテムを用いて、耐久レースの厳しい条件の中での実走行を通して環境性能技術の開発を加速することを目的に、ライダーはエティエンヌ・マッソン選手、濱原颯道選手、生形秀之選手で、実験的クラスの「エクスペリメンタルクラス」に出場。再生素材を用いた分、性能が劣るのではないかと心配したところ、そもそも燃費を絞ってるのでちょうどいい。ガソリンとの相性も悪くない、とのこと。ゼッケンは「0」番です。なにより、人間の重さを考慮しないあたりがチャレンジング……。総合11番手のタイム。

#スズカ8耐事前テスト
MotoGPチームスズキとしては活動はなくなってしまいましたが、SUZUKIファンの熱い思いを胸に佐原リーダーが中心となってチームSUZUKIが8耐に復活。今後もこの経験が生かされ、レース活動が続くようにと、スタッフは公募で集ったSUZUKIの社員で構成されています。
#スズカ8耐事前テスト
ヨシムラのレギュラーメンバー、アントニーマッソンをヘッドハンティング。濱原颯道もロードに復活。生形秀之も昨年の大怪我からの復帰レースになります。

 SUZUKIのレギュラーチーム、#12 ヨシムラYoshimura SERT Motulはグレッグ・ブラックが負傷につき欠場が確定、現在、ダン・リンフット選手と渥美心選手となっています。タイムは5番手。
 #76 オートレース宇部が、8フェスに出演のアイドルグループ“WHITE SCORPION”とコラボしてトップ10トライアルはスペシャルカウルで登場するとのこと。メンバーは津田拓也選手、アンソニー・ウエスト選手、Moto2ライダーのバリー・バルトゥス選手です。
 #1 YAMAHAは、昨年のEWCチャンピオンチームであり、前戦のスパ8耐も優勝したYAMALUBE YART YAMAHA、カレル・ハニカ選手、マービン・フリッツ選手、ニッコロ・カネパ選手 。この3人、仲も良いしチームの雰囲気もとても良いです。タイムは2番手3番手を獲得。

#スズカ8耐事前テスト
#スズカ8耐事前テスト
今シーズンは耐久に専念のヨシムラ。残念ながらテスト中の怪我によりグレッグ・ブラックが離脱、現在アナウンスはありませんが、決勝ウィークまでにライダーが見つかるかそれともダン・リンフットと渥美 心でいくのか?

#スズカ8耐事前テスト
オートレース宇部はMoto2ライダーのバリー・バルトゥスを招聘。
#スズカ8耐事前テスト
安定のYARTヤマハメンバー。いつも3人並んでカメラが向かうとまずマービン・フリッツが絶対に目線をくれます。3人とも奥様(彼女?)がめちゃ美人です。昨年の鈴鹿ではレース終盤のトラブルに泣きましたが、総合ではチャンピオンを獲得、今シーズンはスパ8耐優勝と調子がいい。

 ナンバーワンライダーの名越哲平を欠く#73 SDGハルクプロ_SDG Team HARC-PRO.Hondaですが、浦本修充(なおみち)選手、國井勇輝選手、Moto3参戦のインドネシアライダー、マリオ・アジ選手のラインナップです。國井選手は昨年は8耐のためのトレーニング中の事故で欠場、復帰後の全日本ST1000では2戦とも優勝し、さらにアジア選手権もてぎでも優勝と、新型CBRとの相性もバッチリです。

 チームアジア#88 Honda Asia-Dream Racing with Astemoはザクワン・ザイディ選手、アンディ・ファリド・イズディハール選手、ナカリン・アティラプワパ選手。長男のザクワンを中心に、ワチャワチャしてて良いです。チーム監督は玉田誠さん、コーチは高橋裕紀さんです。

#スズカ8耐事前テスト
SDGハルクプロは、全日本レギュラーライダーの名越哲平がHRCから参戦となり、國井勇輝、浦本修充、Moto3のマリオ・アジの3名。マリオ転倒のハプニングもありましたが、若手育成のハルクプロはいい雰囲気です。
#スズカ8耐事前テスト
#88 Honda Asia-Dream Racing with Astemoは昨シーズンで現役引退した高橋裕紀さんがコーチを務めます。玉田誠鬼監督とのコンビは最高です。ザクワンはやさしい英語で話してくれますが、セッション中ほぼ「何言ってるかわからない!」ほほえみの国からきた3人。

 帰ってきた野左根航汰選手の所属する#17 アステモSIレーシングは、羽田太河選手、そして2回目のテストで作本輝介選手に決まった模様。
 アナタの街のバイクやさん桜井ホンダ#71Honda Dream RT SAKURAI HONDAですが、今年は全日本レギュラーの伊藤和輝と日浦大治朗の2人体制と発表されています。このふたりでしっかり回せば上位を狙えますね。2人体制のため、テストも順調にスピーディーに終わらせ、最終セッションの前にはすべて片付けを終えてました。
 #104 TOHOレーシングは、スパ8耐に別のチーム(エトワール)で助っ人参戦もこなした渡辺一樹選手。スパ8耐ではSSTクラスでトップ争いも繰り広げました。清成龍一選手は開幕前に膝を傷めましたが、前戦のSUGOからレースに復帰しています。そして第3ライダー、引退発表はどこへやら? の榎戸育寛選手です。
 今年が最後の8耐となる寺本浩司選手。#52 TERAMOTO@J-TRIP Racingは若手の村瀬 健琉 石塚 健の3名。
 #40 ATJはレギュラーの岩田悟選手に、モトバムから鈴木光来選手、岡谷雄太選手。
 EWCレギュラーチームの#25 エトワールは亀井雄大選手、大久保光選手、ロベルト・ロルフォ選手。

#スズカ8耐事前テスト
YAMAHAからホンダに電撃スイッチした野左根が全日本で暴れまわっております。新型CBRへの乗り換えが思いの外スムーズだねと言ったところ「気合ですよ!」としか返ってきません。トップ10トライアルで野左根の気合いの一発に期待したいです。
#スズカ8耐事前テスト
アナタの街のバイク屋さん、桜井ホンダのスタッフは普段はお店で働いています。8耐ウィークはお店のお客さんもつれて8耐観戦ツーリングなど企画してくれてレースを盛り上げてくれています。通常は3名でまわす8耐ですが、今年は日浦大治朗と伊藤和輝の2人体制、体力もある2人なので心配ないでしょう。

#スズカ8耐事前テスト
TOHOレーシングは全日本開幕前テストで清成龍一が負傷していましたが第3戦から復帰。さらにすでに耐久を1戦済ませてきた渡辺一樹、引退したはずの榎戸育寛。昨年はレギュレーション違反を取られ幻の2位表彰台となってしまったのですが、今年の必勝体制も期待が高まります!
#スズカ8耐事前テスト
新設チームでオーナーの熱意によりEWCレギュラー参戦しています。大久保選手は前回のスパ8耐ではガス欠により登りのピットロードを押す姿が世界配信されました。

 SSTクラスのトップタイムは#13 タイラプロモートは柴田将弘選手、ST600チャンピオンの阿部恵斗選手、西村硝選手。
 SSTの2番手タイムは#64 カワサキプラザレーシング。岩戸亮介選手、彌榮郡選手、ミカ・ペレス選手。
 桜井ホンダから参戦していたジェレミー・スタファーの息子マックスはオーストラリアスーパーバイクで表彰台にも上がる活躍中、現在ランキング5位です。#50 チーム児玉から参戦。
 ちなみに現在のASBKのランキングトップはドゥカティのジョシュ・ウォータース選手。オーストラリア組は8耐の前週にASBK第4戦が控えています。Please ride safety!
 ヘアピンのお楽しみといえばセッション終了後のウィリー。#85 TONEの星野友也選手は毎回魅せてくれます。
 #5 F.C.C. TSR Honda Franceは1回目のテストはスパ8耐のために欠場そして2回目のテストはスタッフの欠員とマシン未完成により欠場と、鈴鹿の2回のテストに一度も現れませんでしたが、本番ではいつもの存在感を魅せてくれると思います。
 さぁ、8耐スタートまであとわずか!
(レポート・写真:楠堂亜希)

#スズカ8耐事前テスト
カワサキプラザレーシングは岩戸亮介、彌榮 郡、ミカ・ペレスの3名で挑む。
#スズカ8耐事前テスト
星野友也の、セッション終了後のヘアピンでのウィリー。

2024/07/11掲載